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ふりがな文庫
“
失踪
(
しっそう
)” の例文
「た、たいへんです。
失踪
(
しっそう
)
されていたロロー王子さまがおかえりになりました。海底第一門のところへ、いまおかえりになりました」
海底大陸
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
抽斎が優善のために座敷牢を作らせたのは、そういう
失踪
(
しっそう
)
の間の事で、その早晩
還
(
かえ
)
り
来
(
きた
)
るを
候
(
うかが
)
ってこの
中
(
うち
)
に投ぜようとしたのである。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
が、それだけの事情はよく判っても、それが乙松の
失踪
(
しっそう
)
や、伊之助の殺された事と、何の関係があるか、容易に見当も付きません。
銭形平次捕物控:051 迷子札
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
先生はつい一日二日前に四半年分の給料を受けとったのだが、有り金はのこらず、
失踪
(
しっそう
)
のときに身につけていたにちがいなかった。
スリーピー・ホローの伝説:故ディードリッヒ・ニッカボッカーの遺稿より
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
と、彼の
失踪
(
しっそう
)
を後から聞いた景行は、目附の者に、なぜその背を、弓でも鉄砲でもで、撃ち止めてしまわなかったかを
詰問
(
なじ
)
った。
新書太閤記:03 第三分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
それは前例があるうえに、自分の
失踪
(
しっそう
)
をうなずかせ、なお、他の者を「かんば沢」へ近よせないための、無言の警告にもなる。
山彦乙女
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
近藤巡査が行方不明になったという奇怪な
噂
(
うわさ
)
が町に
流布
(
るふ
)
された時、ある者は彼がどこかへ
失踪
(
しっそう
)
したのではないか、と疑った。
霧の蕃社
(新字新仮名)
/
中村地平
(著)
白蓮女史
失踪
(
しっそう
)
のニュースが、全面を
埋
(
う
)
めつくし、「
同棲
(
どうせい
)
十年の
良人
(
おっと
)
を捨てて、白蓮女史情人の
許
(
もと
)
へ走る。夫は五十二歳、女は二十七歳で結婚」
柳原燁子(白蓮)
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
広海屋、その人までが、わが子の
失踪
(
しっそう
)
に、平生の落ちつきをなくして、何やら、荒々しく、
癇癪
(
かんしゃく
)
ごえで叫び立てているのだ。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
晩年は藤森とかいう自分の血すじの
甥
(
おい
)
を近づけていたが、その甥は鉱山かなんかに手を出し、失敗して、それきり
失踪
(
しっそう
)
してしまったそうである。
花を持てる女
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
凡児
(
ぼんじ
)
の勤めている会社がつぶれて社長が
失踪
(
しっそう
)
したという記事の載った新聞を、電車の乗客があちらこちらで読んでいる。
映画雑感(Ⅲ)
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
新生徒入学式の前日なる昨一日夕方頃より突然に
失踪
(
しっそう
)
した事が、校務打合せのため同下宿を訪問した同校女教諭虎間トラ子女史によって発見された。
少女地獄
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
春川月子
失踪
(
しっそう
)
事件は、
忽
(
たちま
)
ち家族近親、撮影所、警察、新聞記者と拡がって行った。それが新聞紙を通じて、世間一般に知れ渡ったことは云うまでもない。
妖虫
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
然るに現詩壇の常識は、
極
(
きわ
)
めてこの点があやふやであり、
朦朧
(
もうろう
)
漠然とした雲の中で、認識が全く
失踪
(
しっそう
)
している。
詩の原理
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
「ああ
失踪
(
しっそう
)
者の件だね、人事係のとこへ、その左の方の入口からはいって待っていたまえ。」と云いました。
ポラーノの広場
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
外が
遽
(
にわ
)
かに騒がしくなって、
失踪
(
しっそう
)
の茂太郎と、それを探索の三人が立帰って来たのは、その時でありました。
大菩薩峠:26 めいろの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
法皇の
失踪
(
しっそう
)
はたちまち京の町に知れ渡った。人々の驚きは大きかった。それまではまだ冷静を保っていた平家の一族にとって、それは決定的な打撃に近かった。
現代語訳 平家物語:07 第七巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
この許嫁は、子供の頃から寺へやられて出家していましたが、この坊さんだけは真相を聞かぬ限り何としても、自分の許嫁の
失踪
(
しっそう
)
には諦めがつかなかったのです。
棚田裁判長の怪死
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
嫂の
失踪
(
しっそう
)
はこんどが初めてではなく、もう二回も康子が家の留守をあずかっていることを正三は知った。
壊滅の序曲
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
大将が遺骸も残さず死んだと聞いては必ずどこかへ
失踪
(
しっそう
)
をしてしまったことと疑うであろうし、親族関係の濃い宮様のほうへその話の伝わってゆかぬはずもない
源氏物語:54 蜻蛉
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
女房にこれぐらい馬鹿馬鹿しく見えるものはない。彼女は亭主の小説などもはや三文の値もつけられない。ロクデナシメ、覚えていやがれ、と
失踪
(
しっそう
)
してしまった。
オモチャ箱
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
立ち話でだんだんに
訊
(
き
)
けば、蝶子の
失踪
(
しっそう
)
はすぐに抱主から知らせがあり、どこにどうしていることやら、悪い男にそそのかされて売り飛ばされたのと違うやろか
夫婦善哉
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
そうして家へ戻ってから五カ月
(4)
ばかりだったころ、彼女の知人たちは彼女が二度目に
失踪
(
しっそう
)
したのにびっくりさせられた。三日たったが、なんの消息もなかった。
マリー・ロジェエの怪事件
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
「
失踪
(
しっそう
)
」と題する小説の腹案ができた。書き上げることができたなら、この小説はわれながら、さほど拙劣なものでもあるまいと、幾分か自信を持っているのである。
濹東綺譚
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
村瀬の腕だつた。明子は村瀬と一つ影になつて
失踪
(
しっそう
)
した。白痴的なこの最後の芝居が、一つの決定を
促
(
うなが
)
すことになつた。彼等の失踪の翌夜、伊曾と劉子の情死が行はれたのである。
青いポアン
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
が、
横佩垣内
(
よこはきかきつ
)
の大臣家の姫の
失踪
(
しっそう
)
事件を書こうとして、尻きれとんぼうになった。
山越しの阿弥陀像の画因
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
二人
(
ふたり
)
が一緒になってから二か月目に、葉子は突然
失踪
(
しっそう
)
して、父の親友で、いわゆる物事のよくわかる
高山
(
たかやま
)
という医者の病室に閉じこもらしてもらって、
三日
(
みっか
)
ばかりは食う物も食わずに
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
半三郎の
失踪
(
しっそう
)
も彼の復活と同じように
評判
(
ひょうばん
)
になったのは勿論である。しかし常子、マネエジャア、同僚、山井博士、「順天時報」の主筆等はいずれも彼の失踪を
発狂
(
はっきょう
)
のためと解釈した。
馬の脚
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
証拠のないことだし、自分も暗い
饗応
(
きょうおう
)
に
預
(
あず
)
かっているので、素知らぬ顔をしてパリーへ着いたが、大使館へ出頭して外交郵便夫の役目を果すと同時に
失踪
(
しっそう
)
してしまった。その後大戦は始まる。
戦雲を駆る女怪
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
しかも昔話にまでなって、このように弘く伝わっているのを見ると、猿の婿入は恐らくある遠い時代の現実の
畏怖
(
いふ
)
であった。少なくとも女性
失踪
(
しっそう
)
の不思議に対する、世間普通の解釈であった。
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
そして、章一の
細君
(
さいくん
)
はその日から
失踪
(
しっそう
)
して今に生死不明である。——これは明治の晩年に関西の大都市で起った怪奇事件であるが、さしさわることがあるので、場所、姓名をかえたのであった。
一握の髪の毛
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
それだのに今や教団は、教主優婆塞
失踪
(
しっそう
)
のために、大混乱に
墜落
(
おちい
)
った。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
ふと今頃は、わたくしの
失踪
(
しっそう
)
で池上の寮でも、母の家でも夜明しで騒いでいることが思い出されると、眼をぱっちり開きます。すると、すぐそれを撫で
臥
(
ふ
)
せるように男の地声が力を張って参ります。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
ある日ドリスが
失踪
(
しっそう
)
した。
暇乞
(
いとまごい
)
もせずに、こっそりいなくなった。焼餅喧嘩に
懲
(
こ
)
りたのである。ポルジイは独り残って、二つの学科を修行した。
溜息
(
ためいき
)
の音楽を奏して、日を数える算術をしたのである。
世界漫遊
(新字新仮名)
/
ヤーコプ・ユリウス・ダビット
(著)
四 磯山の
失踪
(
しっそう
)
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
「ポントス——つまりキャバレーの
失踪
(
しっそう
)
した主人ですネ。部下は懸命に捜索に当っています。
今明日中
(
こんみょうにちじゅう
)
にきっと発見してみせますから」
恐怖の口笛
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
矢島
優善
(
やすよし
)
は前年の暮に
失踪
(
しっそう
)
して、渋江氏では
疑懼
(
ぎく
)
の間に年を送った。この年
一月
(
いちげつ
)
二日の午後に、石川駅の人が二通の手紙を持って来た。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
それはかなりきみの悪い、
妖
(
あや
)
しい話であり、のちに、兵庫という叔父の奇怪な
失踪
(
しっそう
)
、という出来ごとにも、関連していた。
山彦乙女
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
平馬は、雪之丞
呪
(
のろ
)
わしさのあまり、三斎屋敷の秘事を——
浪路
(
なみじ
)
失踪
(
しっそう
)
について、その一端を
洩
(
も
)
らしたものの、さすが、屋敷名を出すことはしなかった。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
城主の
失踪
(
しっそう
)
! 備前児島の城は、一時、城下城内ともに、
覆
(
くつがえ
)
るような騒ぎであった。——四郎高綱の消息はそれきり分らなくなってしまったのである。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
大地へ吸い込まれたか、それとも仁王様の
草鞋
(
わらじ
)
に化けたか、そうでも思わなければ、考えようのない不思議な
失踪
(
しっそう
)
に、お勢はしばらく
呆気
(
あっけ
)
に取られてしまいました。
銭形平次捕物控:005 幽霊にされた女
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「モナリザの
失踪
(
しっそう
)
」という映画に、ヒーローの寝ころんで「ナポレオンのイタリア侵入」を読んでいる横顔へ、女がいたずらの光束を送るところがあったようである。
異質触媒作用
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
失踪
(
しっそう
)
した椙のことをついに一言もいわなかったのは、さすがにお定の気の強さだったろうか。
蛍
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
この心持は「
失踪
(
しっそう
)
」の主人公種田順平が世をしのぶ境遇を描写するには
必須
(
ひっしゅ
)
の実験であろう。
濹東綺譚
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
だが、三日目の四月十日の夜、
銀座
(
ぎんざ
)
通りの有名な百貨店に、前代未聞の珍事が
出来
(
しゅったい
)
した。そして、山野三千子
失踪
(
しっそう
)
事件が、決してありふれた家出なんかでないことが判明した。
一寸法師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
昨日の一夕刊新聞はロジェエ嬢の以前の不可解な
失踪
(
しっそう
)
について語っている。
マリー・ロジェエの怪事件
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
感心に女には手を掛けないようだと話がきまると人は別にまた
山賊
(
さんぞく
)
の頭領という類の
兇漢
(
きょうかん
)
を描き出して、とにかくにこの
頻々
(
ひんぴん
)
たる人間
失踪
(
しっそう
)
の不思議を、説明せずにはおられないようであった。
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
例の白蓮女史
失踪
(
しっそう
)
事件があり、彼女の生活の豪華であったことが、知らぬものもないというほどであり、和歌集『
踏絵
(
ふみえ
)
』を出してから、その物語りめく
美姫
(
びき
)
の情炎に、世人は魅せられていたからだ。
柳原燁子(白蓮)
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
しかし、客には
失踪
(
しっそう
)
したとも云えないので、聞く者があると
萌黄色の茎
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
大西洋において、奇怪なる
失踪
(
しっそう
)
をした海の豪華船クイーン・メリー号の行方については、ありとあらゆる捜査がこころみられた。
海底大陸
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
失
常用漢字
小4
部首:⼤
5画
踪
常用漢字
中学
部首:⾜
15画
“失踪”で始まる語句
失踪者
失踪人
失踪船
失踪事件