“朦朧”のいろいろな読み方と例文
読み方割合
もうろう94.0%
ぼんやり2.3%
まうろう1.1%
おぼろ0.9%
おぼろげ0.3%
もうらう0.3%
どんより0.3%
ぼいやり0.3%
ぼけ0.3%
もやもや0.3%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
朦朧もうろうと見えなくなって、国中、町中にただ一条ひとすじ、その桃の古小路ばかりが、漫々として波のしずか蒼海そうかいに、船脚をいたように見える。
絵本の春 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
世話になった昔の人に、心細く附き添うさき影を、わぬ五年をかすみと隔てて、再びうたばかりの朦朧ぼんやりした間柄と云い切ってしまった。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
今夜こよひは満願とてかの橋にもいたり殊更ことさらにつとめて回向ゑかうをなし鉦うちならして念仏ねんぶつしけるに、皎々けう/\たる月遽然にはかくもりて朦朧まうろうたり。
わが汝より聞ける事の我心にとゞむる痕跡あといとあざやかなるをもてレーテもこれを消しまたは朦朧おぼろならしむるあたはず 一〇六—一〇八
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
朦朧おぼろげながらあの小諸の向町に居た頃のことを思出した。移住する前に死んだ母親のことなぞを思出した。『我は穢多なり』——あゝ、どんなに是一句が丑松の若い心を掻乱かきみだしたらう。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
本艦ほんかんこれおうじて手始てはじめには八インチ速射砲そくしやほうつゞいて打出うちだ機關砲きくわんほうつきさんたり、月下げつか海上かいじやう砲火ほうくわとばしり、硝煙せうゑん朦朧もうらう立昇たちのぼ光景くわうけいは、むかしがたりのタラントわん夜戰やせんもかくやとおもはるゝばかり。
智慧ちえの深そうな目の御色も時によると朦朧どんより潤みをって、疲れ沈んで、物を凝視みつめる力も無いという風に変ることが有ました。私は又た旦那様のあごから美しく白く並んだ御歯が脱出はずれるのを見かけました。
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
花嫁の心もまず少しは落ちつきて、初々ういういしさ恥ずかしさの狭霧さぎり朦朧ぼいやりとせしあたりのようすもようよう目にわかたるるようになりぬ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
木洩こもが一筋射している。それが刀身を照らしている。そこだけがカッと燃えている。がその他は朦朧ぼけている。引き添って背後に坐っているのは、女馬子姿の君江である。
神秘昆虫館 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
やがて其蒼いのも朦朧もやもやとなって了った……