朦朧おぼろ)” の例文
わが汝より聞ける事の我心にとゞむる痕跡あといとあざやかなるをもてレーテもこれを消しまたは朦朧おぼろならしむるあたはず 一〇六—一〇八
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
雨晴れて月朦朧おぼろの夜にちび筆の軸を伝つてのみ、そのじくじくした欲情のしたたりを紙にとどめ得た。『雨月』『春雨はるさめ』の二草紙はいはばその欲情の血膿ちうみぬぐつたあとの故紙こしだ。
上田秋成の晩年 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
泉太は眼をまるくして父の周囲まわりに集る人々を見廻していたが、やがて首をれて涙ぐんだ。その時になってこの兄の方の子供だけは、父が遠いところへ行くことを朦朧おぼろげながらに知ったらしかった。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)