和辻哲郎
1889.03.01 〜 1960.12.26
“和辻哲郎”に特徴的な語句
解脱
囚
毫
堪
朧
距
畢竟
斥
何人
躊躇
衣文
肯
活
止
愕然
乃至
如
私
幽
溌剌
培
醒
奢侈
傷
湧
傑
紅
冴
艶
烈
余蘊
跪拝
饑饉
即
煽
烙
湛
淀
活
噂
木下杢太郎
妹
択
慄
著者としての作品一覧
アフリカの文化(新字新仮名)
読書目安時間:約6分
フロベニウスの『アフリカ文化史』は、非常に優れた書であるとともにまた実におもしろい書である。そのおかげでニグロの生活は我々の追体験し得るものとなり、ニグロの文化は我々の理解し得るも …
読書目安時間:約6分
フロベニウスの『アフリカ文化史』は、非常に優れた書であるとともにまた実におもしろい書である。そのおかげでニグロの生活は我々の追体験し得るものとなり、ニグロの文化は我々の理解し得るも …
ある思想家の手紙(新字新仮名)
読書目安時間:約16分
秋の雨がしとしとと松林の上に降り注いでいます。おりおり赤松の梢を揺り動かして行く風が消えるように通りすぎたあとには、——また田畑の色が豊かに黄ばんで来たのを有頂天になって喜んでいる …
読書目安時間:約16分
秋の雨がしとしとと松林の上に降り注いでいます。おりおり赤松の梢を揺り動かして行く風が消えるように通りすぎたあとには、——また田畑の色が豊かに黄ばんで来たのを有頂天になって喜んでいる …
生きること作ること(新字新仮名)
読書目安時間:約17分
私は近ごろ、「やっとわかった」という心持ちにしばしば襲われる。対象はたいていこれまで知り抜いたつもりでいた古なじみのことに過ぎない。しかしそれが突然新しい姿になって、活き活きと私に …
読書目安時間:約17分
私は近ごろ、「やっとわかった」という心持ちにしばしば襲われる。対象はたいていこれまで知り抜いたつもりでいた古なじみのことに過ぎない。しかしそれが突然新しい姿になって、活き活きと私に …
院展遠望(新字新仮名)
読書目安時間:約15分
遠望であるから細かいところは見えないものと承知していただきたい。 ごく大ざっぱな観察ではあるが、美術院展覧会を両分している洋画と日本画とは、時を同じゅうして相並んでいるのが不思議に …
読書目安時間:約15分
遠望であるから細かいところは見えないものと承知していただきたい。 ごく大ざっぱな観察ではあるが、美術院展覧会を両分している洋画と日本画とは、時を同じゅうして相並んでいるのが不思議に …
院展日本画所感(新字新仮名)
読書目安時間:約11分
歌舞伎芝居や日本音曲は、徳川時代に完成せられたものからほとんど一歩も出られない。もし現在の日本に劇や音楽の革新運動があるとすれば、それは西欧の伝統の輸入であって、在来の日本が生み出 …
読書目安時間:約11分
歌舞伎芝居や日本音曲は、徳川時代に完成せられたものからほとんど一歩も出られない。もし現在の日本に劇や音楽の革新運動があるとすれば、それは西欧の伝統の輸入であって、在来の日本が生み出 …
埋もれた日本:――キリシタン渡来文化前後における日本の思想的情況――(新字新仮名)
読書目安時間:約43分
この問題を考えるには、まず応仁の乱(一四六七—一四七七)あたりから始めるべきだと思うが、この乱の時のヨーロッパを考えると、レオナルド・ダ・ヴィンチは二十歳前後の青年であったし、エラ …
読書目安時間:約43分
この問題を考えるには、まず応仁の乱(一四六七—一四七七)あたりから始めるべきだと思うが、この乱の時のヨーロッパを考えると、レオナルド・ダ・ヴィンチは二十歳前後の青年であったし、エラ …
エレオノラ・デュウゼ(新字新仮名)
読書目安時間:約15分
ロシアの都へ行く旅人は、国境を通る時に旅行券と行李とを厳密に調べられる。作者ヘルマン・バアルも俳優の一行とともに、がらんとした大きな室で自分たちの順番の来るのを待っていた。 霧、煙 …
読書目安時間:約15分
ロシアの都へ行く旅人は、国境を通る時に旅行券と行李とを厳密に調べられる。作者ヘルマン・バアルも俳優の一行とともに、がらんとした大きな室で自分たちの順番の来るのを待っていた。 霧、煙 …
岡倉先生の思い出(新字新仮名)
読書目安時間:約4分
今度岡倉一雄氏の編輯で『岡倉天心全集』が出始めた。第一巻は英文で発表せられた『東洋の理想』及び『日本の覚醒』の訳文を載せている。第二巻は『東洋に対する鑑識の性質と価値』その他の諸篇 …
読書目安時間:約4分
今度岡倉一雄氏の編輯で『岡倉天心全集』が出始めた。第一巻は英文で発表せられた『東洋の理想』及び『日本の覚醒』の訳文を載せている。第二巻は『東洋に対する鑑識の性質と価値』その他の諸篇 …
巨椋池の蓮(新字新仮名)
読書目安時間:約13分
蓮の花は日本人に最も親しい花の一つで、その大きい花びらの美しい彎曲線や、ほのぼのとした清らかな色や、その葉のすがすがしい匂いや肌ざわりなどを、きわめて身近に感じなかった人は、われわ …
読書目安時間:約13分
蓮の花は日本人に最も親しい花の一つで、その大きい花びらの美しい彎曲線や、ほのぼのとした清らかな色や、その葉のすがすがしい匂いや肌ざわりなどを、きわめて身近に感じなかった人は、われわ …
歌集『涌井』を読む(新字新仮名)
読書目安時間:約6分
わたくしは歌のことはよくわからず、広く読んでいるわけでもないが、岡麓先生のお作にはかねがね敬服している。誠に滋味の豊かな歌で、くり返して味わうほど味が出てくるように思う。中でも最も …
読書目安時間:約6分
わたくしは歌のことはよくわからず、広く読んでいるわけでもないが、岡麓先生のお作にはかねがね敬服している。誠に滋味の豊かな歌で、くり返して味わうほど味が出てくるように思う。中でも最も …
蝸牛の角(新字新仮名)
読書目安時間:約18分
(大正十一年十一月) ロダンの「接吻」が公開を禁止されたとき、大分いろいろな議論が起こった。がその議論の多くは、検閲官を芸術の評価者ででもあるように考えている点で、根本に見当違いが …
読書目安時間:約18分
(大正十一年十一月) ロダンの「接吻」が公開を禁止されたとき、大分いろいろな議論が起こった。がその議論の多くは、検閲官を芸術の評価者ででもあるように考えている点で、根本に見当違いが …
茸狩り(新字新仮名)
読書目安時間:約6分
松茸の出るころになるといつも思い出すことであるが、茸という物が自分に対して持っている価値は子供時代の生活と離し難いように思われる。トルストイの確か『戦争と平和』だったかにそういう意 …
読書目安時間:約6分
松茸の出るころになるといつも思い出すことであるが、茸という物が自分に対して持っている価値は子供時代の生活と離し難いように思われる。トルストイの確か『戦争と平和』だったかにそういう意 …
樹の根(新字新仮名)
読書目安時間:約6分
松の樹に囲まれた家の中に住んでいても松の樹の根が地中でどうなっているかはあまり考えてみた事がなかった。美しい赤褐色の幹や、わりに色の浅い清らかな緑の葉が、永いなじみである松の樹の全 …
読書目安時間:約6分
松の樹に囲まれた家の中に住んでいても松の樹の根が地中でどうなっているかはあまり考えてみた事がなかった。美しい赤褐色の幹や、わりに色の浅い清らかな緑の葉が、永いなじみである松の樹の全 …
京の四季(新字新仮名)
読書目安時間:約16分
京都に足かけ十年住んだのち、また東京へ引っ越して来たのは、六月の末、樹の葉が盛んに茂っている時であったが、その東京の樹の葉の緑が実にきたなく感じられて、やり切れない気持ちがした。本 …
読書目安時間:約16分
京都に足かけ十年住んだのち、また東京へ引っ越して来たのは、六月の末、樹の葉が盛んに茂っている時であったが、その東京の樹の葉の緑が実にきたなく感じられて、やり切れない気持ちがした。本 …
享楽人(新字新仮名)
読書目安時間:約10分
五、六年前のことと記憶する。ある夜自分は木下杢太郎と、東京停車場のそのころ開かれてまだ間のない待合室で、深い腰掛けに身を埋めて永い間論じ合った。何を論じたかは忘れたが、熱心に論じ合 …
読書目安時間:約10分
五、六年前のことと記憶する。ある夜自分は木下杢太郎と、東京停車場のそのころ開かれてまだ間のない待合室で、深い腰掛けに身を埋めて永い間論じ合った。何を論じたかは忘れたが、熱心に論じ合 …
『偶像再興』序言(新字新仮名)
読書目安時間:約13分
偶像破壊が生活の進展に欠くべからざるものであることは今さら繰り返すまでもない。生命の流動はただこの道によってのみ保持せらる。我らが無意識の内に不断に築きつつある偶像は、注意深い努力 …
読書目安時間:約13分
偶像破壊が生活の進展に欠くべからざるものであることは今さら繰り返すまでもない。生命の流動はただこの道によってのみ保持せらる。我らが無意識の内に不断に築きつつある偶像は、注意深い努力 …
偶像崇拝の心理(新字新仮名)
読書目安時間:約13分
私がここに観察しようとするのは、「偶像破壊」の運動が破壊の目的物とした、「固定観念」の尊崇についてではない。文字通りに「偶像」を跪拝する心理についてである。しかしそれも、庶物崇拝の …
読書目安時間:約13分
私がここに観察しようとするのは、「偶像破壊」の運動が破壊の目的物とした、「固定観念」の尊崇についてではない。文字通りに「偶像」を跪拝する心理についてである。しかしそれも、庶物崇拝の …
孔子(新字新仮名)
読書目安時間:約2時間29分
自分には孔子について書くだけの研究も素養も準備もない。その自分を無理にしいてこの書を書くに至らしめたのは小林勇君である。が、書いてしまった以上は、この書の責任は自分が負うほかはない …
読書目安時間:約2時間29分
自分には孔子について書くだけの研究も素養も準備もない。その自分を無理にしいてこの書を書くに至らしめたのは小林勇君である。が、書いてしまった以上は、この書の責任は自分が負うほかはない …
古寺巡礼(新字新仮名)
読書目安時間:約4時間47分
この書は大正七年の五月、二三の友人とともに奈良付近の古寺を見物したときの印象記である。大正八年に初版を出してから今年で二十八年目になる。その間、関東大震災のとき紙型をやき、翌十三年 …
読書目安時間:約4時間47分
この書は大正七年の五月、二三の友人とともに奈良付近の古寺を見物したときの印象記である。大正八年に初版を出してから今年で二十八年目になる。その間、関東大震災のとき紙型をやき、翌十三年 …
鎖国:日本の悲劇(新字新仮名)
読書目安時間:約14時間19分
この書は近世初頭における世界の情勢のなかで日本の状況・境位を考察したものである。著者はその境位の特徴を最も端的に現わすものとして「鎖国」という言葉を選んだが、それはここでは「国を鎖 …
読書目安時間:約14時間19分
この書は近世初頭における世界の情勢のなかで日本の状況・境位を考察したものである。著者はその境位の特徴を最も端的に現わすものとして「鎖国」という言葉を選んだが、それはここでは「国を鎖 …
自己の肯定と否定と(新字新仮名)
読書目安時間:約11分
自分にとっては、強く内から湧いて来る自己否定の要求は、自己肯定の傾向が隈なく自分を支配していた後に現われて来た。そうしてそれは自分を自己肯定の本道に導いてくれそうに思われる。 自我 …
読書目安時間:約11分
自分にとっては、強く内から湧いて来る自己否定の要求は、自己肯定の傾向が隈なく自分を支配していた後に現われて来た。そうしてそれは自分を自己肯定の本道に導いてくれそうに思われる。 自我 …
四十年前のエキスカージョン(新字新仮名)
読書目安時間:約7分
このごろは大和の国も電車やバスの交通が大変便利になって来たので、昔に比べると、古寺めぐりはよほど楽になったようである。欲張って回れば一日の内にかなり方々の古い寺々を見ることができる …
読書目安時間:約7分
このごろは大和の国も電車やバスの交通が大変便利になって来たので、昔に比べると、古寺めぐりはよほど楽になったようである。欲張って回れば一日の内にかなり方々の古い寺々を見ることができる …
「自然」を深めよ(新字新仮名)
読書目安時間:約14分
我々の生活や作物が「不自然」であってはならないことは、今さらここに繰り返すまでもない。我々は絶対に「自然」に即かなくてはならぬ。しかしそれで「自然」についての問題がすべて解決された …
読書目安時間:約14分
我々の生活や作物が「不自然」であってはならないことは、今さらここに繰り返すまでもない。我々は絶対に「自然」に即かなくてはならぬ。しかしそれで「自然」についての問題がすべて解決された …
城(新字新仮名)
読書目安時間:約9分
大地震以後東京に高層建築の殖えて行った速度は、かなり早かったと言ってよい。毎日その進行を傍で見ていた人たちはそれほどにも感じなかったであろうが、地方からまれに上京する者にはそれが顕 …
読書目安時間:約9分
大地震以後東京に高層建築の殖えて行った速度は、かなり早かったと言ってよい。毎日その進行を傍で見ていた人たちはそれほどにも感じなかったであろうが、地方からまれに上京する者にはそれが顕 …
人物埴輪の眼(新字新仮名)
読書目安時間:約7分
埴輪というのは、元来はその言葉の示している通り、埴土で作った素焼き円筒のことである。それはたぶん八百度ぐらいの火熱を加えたものらしく、赤褐色を呈している。用途は大きい前方後円墳の周 …
読書目安時間:約7分
埴輪というのは、元来はその言葉の示している通り、埴土で作った素焼き円筒のことである。それはたぶん八百度ぐらいの火熱を加えたものらしく、赤褐色を呈している。用途は大きい前方後円墳の周 …
すべての芽を培え(新字新仮名)
読書目安時間:約11分
青春を通り越したというのでしきりに残り惜しく感じている人があるようですが、私はまだその残り惜しさをしみじみ感ずるほどな余裕をもっていません。それよりも、やっと自分がハッキリしかかっ …
読書目安時間:約11分
青春を通り越したというのでしきりに残り惜しく感じている人があるようですが、私はまだその残り惜しさをしみじみ感ずるほどな余裕をもっていません。それよりも、やっと自分がハッキリしかかっ …
『青丘雑記』を読む(新字新仮名)
読書目安時間:約4分
『青丘雑記』は安倍能成氏が最近六年間に書いた随筆の集である。朝鮮、満州、シナの風物記と、数人の故人の追憶記及び友人への消息とから成っている。今これをまとめて読んでみると、まず第一に …
読書目安時間:約4分
『青丘雑記』は安倍能成氏が最近六年間に書いた随筆の集である。朝鮮、満州、シナの風物記と、数人の故人の追憶記及び友人への消息とから成っている。今これをまとめて読んでみると、まず第一に …
「ゼエレン・キェルケゴオル」序(新字新仮名)
読書目安時間:約5分
キェルケゴオルのドイツ訳全集は一九〇九年から一九一四年へかけて出版せられた。その以前にも前世紀の末八〇年代から九〇年代へかけて彼の著書はかなり翻訳せられたが、宗教的著作のほかは、か …
読書目安時間:約5分
キェルケゴオルのドイツ訳全集は一九〇九年から一九一四年へかけて出版せられた。その以前にも前世紀の末八〇年代から九〇年代へかけて彼の著書はかなり翻訳せられたが、宗教的著作のほかは、か …
世界の変革と芸術(新字新仮名)
読書目安時間:約10分
講和近づけりという噂がある。しかし戦争はまだやむまい。ばかばかしい話だが、英独両国で面目をつぶすのをイヤがっている間は、とうてい仲なおりはできぬ。 戦争はまだ幾年も続くだろう。そう …
読書目安時間:約10分
講和近づけりという噂がある。しかし戦争はまだやむまい。ばかばかしい話だが、英独両国で面目をつぶすのをイヤがっている間は、とうてい仲なおりはできぬ。 戦争はまだ幾年も続くだろう。そう …
創作の心理について(新字新仮名)
読書目安時間:約8分
我々は創作者として活らく時、その創作の心理を観察するだけの余裕を持たない。我々はただ創作衝動を感ずる。内心に萌え出たある形象が漸次醗酵し成長して行くことを感ずる。そうして我々はハッ …
読書目安時間:約8分
我々は創作者として活らく時、その創作の心理を観察するだけの余裕を持たない。我々はただ創作衝動を感ずる。内心に萌え出たある形象が漸次醗酵し成長して行くことを感ずる。そうして我々はハッ …
漱石の人物(新字新仮名)
読書目安時間:約23分
私が漱石と直接に接触したのは、漱石晩年の満三個年の間だけである。しかしそのおかげで私は今でも生きた漱石を身近に感じることができる。漱石はその遺した全著作よりも大きい人物であった。そ …
読書目安時間:約23分
私が漱石と直接に接触したのは、漱石晩年の満三個年の間だけである。しかしそのおかげで私は今でも生きた漱石を身近に感じることができる。漱石はその遺した全著作よりも大きい人物であった。そ …
地異印象記(新字新仮名)
読書目安時間:約39分
(大正十二年九月) 大正十二年ごろ関東地方に大地震がある、ということをある権威ある地震学者が予言したと仮定する。その場合今度のような大災害は避けられたであろうか。大本教は二、三年前 …
読書目安時間:約39分
(大正十二年九月) 大正十二年ごろ関東地方に大地震がある、ということをある権威ある地震学者が予言したと仮定する。その場合今度のような大災害は避けられたであろうか。大本教は二、三年前 …
月夜の東大寺南大門(新字旧仮名)
読書目安時間:約7分
夕方から空が晴れ上つて、夜は月が明るかつた。N君を訪ねるつもりでひとりブラ/\と公園のなかを歩いて行つたが、あの広い芝生の上には、人も見えず鹿も見えず、たゞ白白と月の光のみが輝いて …
読書目安時間:約7分
夕方から空が晴れ上つて、夜は月が明るかつた。N君を訪ねるつもりでひとりブラ/\と公園のなかを歩いて行つたが、あの広い芝生の上には、人も見えず鹿も見えず、たゞ白白と月の光のみが輝いて …
停車場で感じたこと(新字新仮名)
読書目安時間:約15分
ある雨の降る日、私は友人を郊外の家に訪ねて昼前から夜まで話し込んだ。遅くなったのでもう帰ろうと思いながら、新しく出た話に引っ張られてつい立つことを忘れていた。ふと気づいて時計を見る …
読書目安時間:約15分
ある雨の降る日、私は友人を郊外の家に訪ねて昼前から夜まで話し込んだ。遅くなったのでもう帰ろうと思いながら、新しく出た話に引っ張られてつい立つことを忘れていた。ふと気づいて時計を見る …
寺田さんに最後に逢った時(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
去年の八月の末、谷川君に引っ張り出されて北軽井沢を訪れた。ちょうどその日は雨になって、軽井沢駅に降りた時などは土砂降りであった。その中を電車の終点まで歩き、さらに玩具のように小さい …
読書目安時間:約3分
去年の八月の末、谷川君に引っ張り出されて北軽井沢を訪れた。ちょうどその日は雨になって、軽井沢駅に降りた時などは土砂降りであった。その中を電車の終点まで歩き、さらに玩具のように小さい …
寺田寅彦(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
(昭和十一年) 寺田さんは有名な物理学者であるが、その研究の特徴は、日常身辺にありふれた事柄、具体的現実として我々の周囲に手近に見られるような事実の中に、本当に研究すべき問題を見出 …
読書目安時間:約3分
(昭和十一年) 寺田さんは有名な物理学者であるが、その研究の特徴は、日常身辺にありふれた事柄、具体的現実として我々の周囲に手近に見られるような事実の中に、本当に研究すべき問題を見出 …
転向(新字新仮名)
読書目安時間:約22分
過去の生活が突然新しい意義を帯びて力強く現在の生活を動かし初めることがある。その時には生のリズムや転向が著しく過去の生活に刺激され導かれている。そうしてすべての過去が「過ぎ去って」 …
読書目安時間:約22分
過去の生活が突然新しい意義を帯びて力強く現在の生活を動かし初めることがある。その時には生のリズムや転向が著しく過去の生活に刺激され導かれている。そうしてすべての過去が「過ぎ去って」 …
藤村の個性(新字新仮名)
読書目安時間:約14分
藤村は非常に個性の強い人で、自分の好みによる独自の世界というふうなものを、おのずから自分の周囲に作り上げていた。衣食住のすみずみまでもその独特な好みが行きわたっていたであろう。酒粕 …
読書目安時間:約14分
藤村は非常に個性の強い人で、自分の好みによる独自の世界というふうなものを、おのずから自分の周囲に作り上げていた。衣食住のすみずみまでもその独特な好みが行きわたっていたであろう。酒粕 …
土下座(新字新仮名)
読書目安時間:約5分
ある男が祖父の葬式に行ったときの話です。 田舎のことで葬場は墓地のそばの空地を使うことになっています。大きい松が二、三本、その下に石の棺台、——松の樹陰はようやく坊さんや遺族を覆う …
読書目安時間:約5分
ある男が祖父の葬式に行ったときの話です。 田舎のことで葬場は墓地のそばの空地を使うことになっています。大きい松が二、三本、その下に石の棺台、——松の樹陰はようやく坊さんや遺族を覆う …
夏目先生の追憶(新字新仮名)
読書目安時間:約21分
夏目先生の大きい死にあってから今日は八日目である。私の心は先生の追懐に充ちている。しかし私の乱れた頭はただ一つの糸をも確かに手繰り出すことができない。私は夜ふくるまでここに茫然と火 …
読書目安時間:約21分
夏目先生の大きい死にあってから今日は八日目である。私の心は先生の追懐に充ちている。しかし私の乱れた頭はただ一つの糸をも確かに手繰り出すことができない。私は夜ふくるまでここに茫然と火 …
西の京の思ひ出(新字旧仮名)
読書目安時間:約24分
老人の思ひ出話など、今の若い人にはあまり興味はあるまいと思はれるが、老人にとつては、思ひ出に耽ることは楽しいのである。さういふ楽しみに耽る機会を与へられた北島葭江先輩自身が、すでに …
読書目安時間:約24分
老人の思ひ出話など、今の若い人にはあまり興味はあるまいと思はれるが、老人にとつては、思ひ出に耽ることは楽しいのである。さういふ楽しみに耽る機会を与へられた北島葭江先輩自身が、すでに …
日本精神史研究(新字新仮名)
読書目安時間:約6時間55分
今度版を新たにするに当たり、全体にわたって語句の修正を施し、二、三の個所にはやや詳しく修補を加えた。が、根本的に変更したものはない。もともと習作的な論文を集めたものであるから、根本 …
読書目安時間:約6時間55分
今度版を新たにするに当たり、全体にわたって語句の修正を施し、二、三の個所にはやや詳しく修補を加えた。が、根本的に変更したものはない。もともと習作的な論文を集めたものであるから、根本 …
能面の様式(新字新仮名)
読書目安時間:約6分
野上豊一郎君の『能面』がいよいよ出版されることになった。昨年『面とペルソナ』を書いた時にはすぐにも刊行されそうな話だったので、「近刊」として付記しておいたが、それからもう一年以上に …
読書目安時間:約6分
野上豊一郎君の『能面』がいよいよ出版されることになった。昨年『面とペルソナ』を書いた時にはすぐにも刊行されそうな話だったので、「近刊」として付記しておいたが、それからもう一年以上に …
麦積山塑像の示唆するもの(新字新仮名)
読書目安時間:約9分
麦積山の調査が行なわれたのは四年ほど前で、その報告も、すぐその翌年に出たのだそうであるが、わたくしはついに気づかずにいた。だから名取洋之助君が撮影して来た写真の一部を見せられた時に …
読書目安時間:約9分
麦積山の調査が行なわれたのは四年ほど前で、その報告も、すぐその翌年に出たのだそうであるが、わたくしはついに気づかずにいた。だから名取洋之助君が撮影して来た写真の一部を見せられた時に …
初めて西田幾多郎の名を聞いたころ(新字新仮名)
読書目安時間:約9分
わたくしが初めて西田幾多郎という名を聞いたのは、明治四十二年の九月ごろのことであった。ちょうどその八月に西田先生は、学習院に転任して東京へ引っ越して来られたのであるが、わたくしが西 …
読書目安時間:約9分
わたくしが初めて西田幾多郎という名を聞いたのは、明治四十二年の九月ごろのことであった。ちょうどその八月に西田先生は、学習院に転任して東京へ引っ越して来られたのであるが、わたくしが西 …
非名誉教授の弁(新字新仮名)
読書目安時間:約12分
わたくしは東京大学の名誉教授ではない。というよりも、わたくしには東京大学の名誉教授となる資格はないのである。しかるに近ごろわたくしは時々東京大学の名誉教授と間違えられる。間違えられ …
読書目安時間:約12分
わたくしは東京大学の名誉教授ではない。というよりも、わたくしには東京大学の名誉教授となる資格はないのである。しかるに近ごろわたくしは時々東京大学の名誉教授と間違えられる。間違えられ …
文楽座の人形芝居(新字新仮名)
読書目安時間:約10分
日本文化協会の催しで文楽座の人形使いの名人吉田文五郎、桐竹紋十郎諸氏を招いて人形芝居についての講演、実演などがあった。竹本小春太夫、三味線鶴沢重造諸氏も参加した。人形芝居のことをあ …
読書目安時間:約10分
日本文化協会の催しで文楽座の人形使いの名人吉田文五郎、桐竹紋十郎諸氏を招いて人形芝居についての講演、実演などがあった。竹本小春太夫、三味線鶴沢重造諸氏も参加した。人形芝居のことをあ …
ベエトォフェンの面(新字新仮名)
読書目安時間:約5分
人生が苦患の谷であることを私もまたしみじみと感じる。しかし私はそれによって生きる勇気を消されはしない。苦患のなかからのみ、真の幸福と歓喜は生まれ出る。 ある人は言うだろう。歓喜を産 …
読書目安時間:約5分
人生が苦患の谷であることを私もまたしみじみと感じる。しかし私はそれによって生きる勇気を消されはしない。苦患のなかからのみ、真の幸福と歓喜は生まれ出る。 ある人は言うだろう。歓喜を産 …
松風の音(新字新仮名)
読書目安時間:約3分
東京の郊外で夏を送っていると、時々松風の音をなつかしく思い起こすことがある。近所にも松の木がないわけではないが、しかし皆小さい庭木で、松籟の爽やかな響きを伝えるような亭々たる大樹は …
読書目安時間:約3分
東京の郊外で夏を送っていると、時々松風の音をなつかしく思い起こすことがある。近所にも松の木がないわけではないが、しかし皆小さい庭木で、松籟の爽やかな響きを伝えるような亭々たる大樹は …
面とペルソナ(新字新仮名)
読書目安時間:約10分
問題にしない時にはわかり切ったことと思われているものが、さて問題にしてみると実にわからなくなる。そういうものが我々の身辺には無数に存している。「顔面」もその一つである。顔面が何であ …
読書目安時間:約10分
問題にしない時にはわかり切ったことと思われているものが、さて問題にしてみると実にわからなくなる。そういうものが我々の身辺には無数に存している。「顔面」もその一つである。顔面が何であ …
夢(新字新仮名)
読書目安時間:約25分
夢の話をするのはあまり気のきいたことではない。確か痴人夢を説くという言葉があったはずだ。そう思って念のために辞書をひいて見ると、痴人が夢を説くというのではなくして、痴人に対して夢を …
読書目安時間:約25分
夢の話をするのはあまり気のきいたことではない。確か痴人夢を説くという言葉があったはずだ。そう思って念のために辞書をひいて見ると、痴人が夢を説くというのではなくして、痴人に対して夢を …
『劉生画集及芸術観』について(新字新仮名)
読書目安時間:約10分
自分は現代の画家中に岸田君ほど明らかな「成長」を示している人を知らない。誇張でなく岸田君は一作ごとにその美を深めて行く。ことにこの四、五年は我々を瞠目せしめるような突破を年ごとに見 …
読書目安時間:約10分
自分は現代の画家中に岸田君ほど明らかな「成長」を示している人を知らない。誇張でなく岸田君は一作ごとにその美を深めて行く。ことにこの四、五年は我々を瞠目せしめるような突破を年ごとに見 …
霊的本能主義(新字新仮名)
読書目安時間:約25分
荒漠たる秋の野に立つ。星は月の御座を囲み月は清らかに地の花を輝らす。花は紅と咲き黄と匂い紫と輝いて秋の野を飾る。花の上月の下、潺湲の流れに和して秋の楽匠が技を尽くし巧みを極めたる神 …
読書目安時間:約25分
荒漠たる秋の野に立つ。星は月の御座を囲み月は清らかに地の花を輝らす。花は紅と咲き黄と匂い紫と輝いて秋の野を飾る。花の上月の下、潺湲の流れに和して秋の楽匠が技を尽くし巧みを極めたる神 …
露伴先生の思い出(新字新仮名)
読書目安時間:約9分
関東大震災の前数年の間、先輩たちにまじって露伴先生から俳諧の指導をうけたことがある。その時の印象では、先生は実によく物の味のわかる人であり、またその味を人に伝えることの上手な人であ …
読書目安時間:約9分
関東大震災の前数年の間、先輩たちにまじって露伴先生から俳諧の指導をうけたことがある。その時の印象では、先生は実によく物の味のわかる人であり、またその味を人に伝えることの上手な人であ …
“和辻哲郎”について
和辻 哲郎(わつじ てつろう、1889年(明治22年)3月1日 - 1960年(昭和35年)12月26日)は、日本の哲学者・倫理学者・文化史家・日本思想史家。『古寺巡礼』『風土』などの著作で知られ、その倫理学の体系は和辻倫理学と呼ばれる。法政大学教授・京都帝国大学教授・東京帝国大学教授を歴任。日本倫理学会会員。文化勲章受章。
兵庫県出身。東大哲学科卒。ニーチェなど西洋哲学を研究。奈良の寺院建築や仏像の美を再発見し、『古寺巡礼』(1919年)も人気を博す。『人間の学としての倫理学』(1934年)で新しい倫理学の体系を構築。『風土』(1935年)、『面とペルソナ』(1937年)も名高い。
(出典:Wikipedia)
兵庫県出身。東大哲学科卒。ニーチェなど西洋哲学を研究。奈良の寺院建築や仏像の美を再発見し、『古寺巡礼』(1919年)も人気を博す。『人間の学としての倫理学』(1934年)で新しい倫理学の体系を構築。『風土』(1935年)、『面とペルソナ』(1937年)も名高い。
(出典:Wikipedia)
“和辻哲郎”と年代が近い著者
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今年で生誕X百年
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