“冴”のいろいろな読み方と例文
読み方(ふりがな)割合
88.2%
さえ6.0%
4.7%
さや0.7%
0.2%
0.2%
(注)作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
「いいえ。まったくよ……俺よりも仕事がえている上に、今の財産は愛太郎のお蔭で出来たようなもんだから、跡を継がせるのは当り前だって……」
鉄鎚 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
見わたすと、その檸檬の色彩しきさいはガチヤガチヤした色の階調をひつそりと紡錘形の身體の中へ吸收してしまつて、カーンとえかへつてゐた。
檸檬 (旧字旧仮名) / 梶井基次郎(著)
春の夜も、山荒れのあと二、三日は、冬のような月のえ方をしていた。世阿弥は真夜中ごろになって、けもののように、間者牢から這いだした。
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこでも、味いあますがゆえにいつも暗鬱あんうつな未練を残している人間と、飽和に達するがゆえに明色の恬淡にさえる人間とは極端な対象を做した。
食魔 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
か何かの片手なぐりが、見事に首をころりと落す。こぶしさえに、白刃しらはさきが姉の腕をかすって、カチリと鳴った。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
このかすかな梅の匂につれて、さえ返る心の底へしみ透って来る寂しさは、この云いようのない寂しさは、一体どこから来るのであろう。
或日の大石内蔵助 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
買いものの好きなお銀は、出たついでにいろいろなものをこまごまとかかえて、別の通りからえした顔をして家へ帰って来ていた。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
客が帰ってしまうと、瀟洒しょうしゃな浴衣に薄鼠の兵児帯へこおびをぐるぐるきにして主が降りて来たが、何となく顔がえしていた。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
とても疲れていて、さっきまでは眠くっていまにも倒れそうであったのに、さて電燈を消してしまうと、よくあるやつだが、急に目がえとしてきた。
旅の絵 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
その間に月が変って十月になり、長い間降りつづいた秋霖あきさめれると、古都の風物は日に日に色を増して美しくびてゆくのがさやかに眼に見えた。
狂乱 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
さやかなる眼にキトわれを見しが、互に肩を擦合せて小走りにるよとせしに、つかつかと引返して、冷たききぬの袖もてわがうなじを抱くや否や、アと叫ぶ頬をしたたかに吸いぬ。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
一年あるとし夏のなかば驟雨後ゆふだちあとの月影さやかにてらして、北向きたむきの庭なる竹藪に名残なごりしづく白玉しらたまのそよ吹く風にこぼるゝ風情ふぜい、またあるまじきながめなりければ、旗野は村に酌を取らして、夜更よふくるを覚えざりき。
妖怪年代記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
そのみきったよくみがかれた青ぞらで、まっ白なけむりがパッとたち、それから黄いろな長いけむりがうねうね下って来ました。
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
モチの夜の月がえて居た。若人たちは、今日、郎女の織りあげた一反ヒトムラ上帛ハタを、夜の更けるのも忘れて、見讃ミハヤして居た。
死者の書 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
其が又、此えざえとした月夜を、ほつとりと、暖かく感じさせて居る。
死者の書 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)