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冴
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さえ
ふりがな文庫
“
冴
(
さえ
)” の例文
……
蓋
(
ふた
)
は
黄金無垢
(
きんむく
)
の雲の高彫に、千羽鶴を
透彫
(
すかしぼり
)
にして、一方の波へ、毛彫の
冴
(
さえ
)
で、月の影を
颯
(
さっ
)
と映そうというのだそうですから。……
ピストルの使い方:――(前題――楊弓)
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
このかすかな梅の匂につれて、
冴
(
さえ
)
返る心の底へしみ透って来る寂しさは、この云いようのない寂しさは、一体どこから来るのであろう。
或日の大石内蔵助
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
そこでも、味い
剰
(
あま
)
すがゆえにいつも
暗鬱
(
あんうつ
)
な未練を残している人間と、飽和に達するがゆえに明色の恬淡に
冴
(
さえ
)
る人間とは極端な対象を做した。
食魔
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
眞つ向から斬つたのは、あの月夜では懇意なものでなければならず、腕の
冴
(
さえ
)
から見て、私は御用人の外にないと見拔きました
銭形平次捕物控:172 神隠し
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
夫人の言葉は、銘刀のように鮮かな
冴
(
さえ
)
を持っていた。信一郎が、夫人の奔放な言葉に圧せられたように、モジ/\している間に、夫人はボーイに合図した。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
▼ もっと見る
お勢も今日は取分け気の晴れた
面相
(
かおつき
)
で、
宛然
(
さながら
)
籠
(
かご
)
を出た小鳥の如くに、言葉は勿論
歩風
(
あるきぶり
)
身体
(
からだ
)
のこなしにまで何処ともなく
活々
(
いきいき
)
としたところが有ッて
冴
(
さえ
)
が見える。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
じつに見事な腕の
冴
(
さえ
)
であった。相手の下士官は、ついに一発の弾丸も放たないで、あの世へ旅立ったのだ。
浮かぶ飛行島
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
よしや我身の
妄執
(
もうしゅう
)
の
憑
(
の
)
り移りたる者にもせよ、今は恩愛
切
(
きっ
)
て
捨
(
すて
)
、迷わぬ
初
(
はじめ
)
に
立帰
(
たちかえ
)
る珠運に
妨
(
さまたげ
)
なす
妖怪
(
ようかい
)
、いでいで仏師が腕の
冴
(
さえ
)
、恋も未練も
段々
(
きだきだ
)
に
切捨
(
きりすて
)
くれんと
突立
(
つったち
)
て
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
ぽつ/\と
簇
(
むらが
)
つた
村落
(
むら
)
の
木立
(
こだち
)
の
孰
(
いづ
)
れも
悉
(
こと/″\
)
く
赭
(
あか
)
いくすんだ
葉
(
は
)
を
以
(
もつ
)
て
掩
(
おほ
)
はれて
居
(
ゐ
)
る。さうして
低
(
ひく
)
く
相
(
あひ
)
接
(
せつ
)
して
居
(
ゐ
)
る
木立
(
こだち
)
との
間
(
あひだ
)
に
截然
(
くつきり
)
と
強
(
つよ
)
い
線
(
せん
)
を
描
(
ゑが
)
いて
空
(
そら
)
は
憎
(
にく
)
い
程
(
ほど
)
冴
(
さえ
)
て
居
(
ゐ
)
る。さうだ。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
跡には友次郎只一人思ひ
廻
(
まは
)
せば廻す程お花の事が心に
係
(
かゝ
)
り
眠
(
ねむ
)
らんと爲れども心
冴
(
さえ
)
其上夜の更るに隨ひて漸次に
蚊
(
か
)
は多くなり右左より
群付
(
むれつく
)
にぞ斯ては
勿々
(
なか/\
)
眠られずと起上りて圍爐裏に柴を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
世間から
款待
(
もては
)
やされて非常な大文豪であるかのように持上げられて自分を高く買うようになってからの緑雨の皮肉は
冴
(
さえ
)
を失って、或時は田舎のお大尽のように
横柄
(
おうへい
)
で
鼻持
(
はなもち
)
がならなかったり
斎藤緑雨
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
近頃は戦さの
噂
(
うわさ
)
さえ
頻
(
しき
)
りである。
睚眦
(
がいさい
)
の
恨
(
うらみ
)
は人を欺く
笑
(
えみ
)
の衣に包めども、解け難き胸の乱れは空吹く風の音にもざわつく。夜となく日となく磨きに磨く刃の
冴
(
さえ
)
は、人を
屠
(
ほふ
)
る遺恨の刃を磨くのである。
幻影の盾
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
練りに練った日本砲術の
冴
(
さえ
)
を見よ!
昭和遊撃隊
(新字新仮名)
/
平田晋策
(著)
冴
(
さえ
)
は一刀
新頌
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
ワルターの持つロマンティシズムと技巧の
冴
(
さえ
)
が、パリの練達な管弦楽団を得て、ベルリオーズの幻想を
手際
(
てぎわ
)
よく描いている。
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
分
(
わ
)
けて
爰
(
こゝ
)
に、がたりびしりは、
文章
(
ぶんしやう
)
の
冴
(
さえ
)
で、
杖
(
つゑ
)
の
音
(
おと
)
が
物凄
(
ものすご
)
く
耳
(
みゝ
)
に
響
(
ひゞ
)
く。なか/\
口
(
くち
)
で
言
(
い
)
つても
此
(
こ
)
の
味
(
あぢ
)
は
声
(
こゑ
)
に
出
(
だ
)
せぬ。
怪力
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
眠られぬままに
過去
(
こしかた
)
将来
(
ゆくすえ
)
を思い
回
(
めぐ
)
らせば回らすほど、尚お気が
冴
(
さえ
)
て眼も合わず、これではならぬと気を取直し
緊
(
きび
)
しく両眼を閉じて
眠入
(
ねい
)
ッた
風
(
ふり
)
をして見ても自ら
欺
(
あざむ
)
くことも出来ず
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
抑
(
そ
)
も幾年の学びたる力一杯鍛いたる腕一杯の経験
修錬
(
しゅれん
)
、
渦
(
うず
)
まき起って
沸々
(
ふつふつ
)
と、今
拳頭
(
けんとう
)
に
迸
(
ほとばし
)
り、
倦
(
うむ
)
も
疲
(
つかれ
)
も忘れ果て、心は
冴
(
さえ
)
に
冴
(
さえ
)
渡る不乱不動の
精進波羅密
(
しょうじんはらみつ
)
、骨をも休めず筋をも緩めず
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
宵々
(
よひ/\
)
の
稻妻
(
いなづま
)
は、
火
(
ひ
)
の
雲
(
くも
)
の
薄
(
うす
)
れ
行
(
ゆ
)
く
餘波
(
なごり
)
にや、
初汐
(
はつしほ
)
の
渡
(
わた
)
るなる、
海
(
うみ
)
の
音
(
おと
)
は、
夏
(
なつ
)
の
車
(
くるま
)
の
歸
(
かへ
)
る
波
(
なみ
)
の、
鼓
(
つゞみ
)
の
冴
(
さえ
)
に
秋
(
あき
)
は
來
(
き
)
て、
松蟲
(
まつむし
)
鈴蟲
(
すゞむし
)
の
容
(
かたち
)
も
影
(
かげ
)
も、
刈萱
(
かるかや
)
に
萩
(
はぎ
)
に
歌
(
うた
)
を
描
(
ゑが
)
く。
五月より
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
修業の功を
積
(
つみ
)
し上、
憤発
(
ふんぱつ
)
の勇を加えしなれば
冴
(
さえ
)
し腕は
愈々
(
いよいよ
)
冴
(
さ
)
え鋭き
刀
(
とう
)
は
愈
(
いよいよ
)
鋭く
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
ハイフェッツに技巧の驚くべき
冴
(
さえ
)
はあっても、メニューインの
天賦
(
てんぷ
)
の輝きには及び難いかも知れない。「第三ソナタ=ハ長調」もメニューインのがある(ビクターJD一五〇八—一〇)。
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
先刻
(
さっき
)
口を指したまま、
鱗
(
うろこ
)
でもありそうな汚い胸のあたりへ、ふらりと釣っていた手が動いて、ハタと横を払うと、
発奮
(
はずみ
)
か、
冴
(
さえ
)
か、折敷ぐるみ、バッタリ落ちて、昔々
海異記
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
合気の術は剣客武芸者等の我が神威を以て敵の意気を
摧
(
くじ
)
くので、鍛錬した我が気の
冴
(
さえ
)
を微妙の機によって敵に徹するのである。
正木
(
まさき
)
の
気合
(
きあい
)
の
談
(
はなし
)
を考えて、それが如何なるものかを
猜
(
さい
)
することが出来る。
魔法修行者
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
帽子の
裡
(
うち
)
の日の蔭に、長いまつげのせいならず、
甥
(
おい
)
を見た目に
冴
(
さえ
)
がなく、顔の色も薄く曇って
悪獣篇
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と
熟
(
じっ
)
と
睜
(
みは
)
った、目の
冴
(
さえ
)
は、勇士が
剣
(
つるぎ
)
を
撓
(
た
)
むるがごとく、袖を抱いてすッくと立つ、姿を絞って、じりじりと、絵図の
面
(
おもて
)
に——
捻向
(
ねじむ
)
く血相、暗い影が
颯
(
さっ
)
と
射
(
さ
)
して、線を描いた紙の上を
白金之絵図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と
今度
(
こんど
)
のは
完成
(
くわんせい
)
した。
而
(
そ
)
して
本堂
(
ほんだう
)
の
正面
(
しやうめん
)
に、
支
(
さゝえ
)
も
置
(
お
)
かず、
内端
(
うちは
)
に
組
(
く
)
んだ、
肉
(
にく
)
づきのしまつた、
膝
(
ひざ
)
脛
(
はぎ
)
の
釣合
(
つりあひ
)
よく、すつくりと
立
(
た
)
つた
時
(
とき
)
、
木
(
き
)
の
膚
(
はだえ
)
は
小刀
(
こがたな
)
の
冴
(
さえ
)
に、
恰
(
あたか
)
も
霜
(
しも
)
の
如
(
ごと
)
く
白
(
しろ
)
く
見
(
み
)
えた。
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
宛如
(
さながら
)
、狂人、乱心のものと覚えたが、いまの気高い姿にも、
慌
(
あわ
)
てゝあとへ
退
(
ひ
)
かうとしないで、ひよろりとしながら前へ出る時、
垂々
(
たらたら
)
と血の
滴
(
したた
)
るばかり
抜刀
(
ばっとう
)
の
冴
(
さえ
)
が、
脈
(
みゃく
)
を打つてぎらりとして
妖魔の辻占
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
お妻の胸元を刺貫き——
洋刀
(
サアベル
)
か——はてな、そこまでは聞いておかない——返す刀で、
峨々
(
がが
)
たる
巌石
(
いわお
)
を
背
(
そびら
)
に、十文字の立ち腹を
掻切
(
かっき
)
って、
大蘇芳年
(
たいそよしとし
)
の筆の
冴
(
さえ
)
を見よ、描く処の
錦絵
(
にしきえ
)
のごとく
開扉一妖帖
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
鏨
(
たがね
)
はほんとうのを
懐中
(
ふところ
)
から、
鉄鎚
(
かなづち
)
を取って、御新造さんと
熟
(
じっ
)
と顔を見合って、(目はこう入れたわ。)
丁
(
とん
)
!(左は)
丁
(
ちょう
)
と打込む
冴
(
さえ
)
に、ありありとお美しい御新造さんの
鬢
(
びん
)
のほつれをかけて
ピストルの使い方:――(前題――楊弓)
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
また
其
(
そ
)
の
岬
(
みさき
)
を
大蛇灘
(
おろちなだ
)
が
巻
(
ま
)
いて、めぐつて、八
雲崎
(
くもさき
)
、
日暮崎
(
くれのさき
)
、
鴨崎
(
かもさき
)
、
御室
(
みむろ
)
、
烏帽子岩
(
えぼしいは
)
、
屏風岩
(
べうぶいは
)
、
剣岩
(
つるぎいは
)
、一つ一つ、
神
(
かみ
)
が
斧
(
おの
)
を
打
(
う
)
ち、
鬼
(
おに
)
が、
鉞
(
まさかり
)
を
下
(
おろ
)
した
如
(
ごと
)
く、やがては、
巨匠
(
きよしやう
)
、
名工
(
めいこう
)
の、
鑿鏨
(
のみたがね
)
の
手
(
て
)
の
冴
(
さえ
)
に
十和田湖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
処々
(
ところどころ
)
汽車の窓から
視
(
み
)
た桜は、奥が暗くなるに従って、ぱっと
冴
(
さえ
)
を見せて咲いたのはなかった。
薄墨
(
うすずみ
)
、
鬱金
(
うこん
)
、またその
浅葱
(
あさぎ
)
と言ったような、どの桜も、皆ぽっとりとして曇って、暗い紫を帯びていた。
七宝の柱
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
拳
(
こぶし
)
の
冴
(
さえ
)
に、
白刃
(
しらは
)
の
尖
(
さき
)
が姉の腕を
掠
(
かす
)
って、カチリと鳴った。
星女郎
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と腰を入れると腕の
冴
(
さえ
)
、
颯
(
さっ
)
と吹いて、鱗がぱらぱら。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
冴
漢検準1級
部首:⼎
7画
“冴”を含む語句
冴々
冴渡
冴返
冴切
音冴