“宛然”のいろいろな読み方と例文
読み方割合
さながら54.6%
まるで21.7%
えんぜん15.1%
ゑんぜん4.6%
まるきり1.3%
あたかも0.7%
あだかも0.7%
そつくり0.7%
ちやうど0.7%
(注)作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
みずかそれを結んだとも覚えぬに、宛然さながら糸をにしたやうな、萌黄もえぎまるいのが、ちら/\ひとツ見え出したが
蠅を憎む記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
——それもこれも今はわづかに、老人達としよりたち追憶談むかしばなしに残つて、村は年毎に、宛然さながら藁火の消えてゆく様に衰へた。
赤痢 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
ゴウというかとすれば、スウと、或は高く或は低く、単調ながら拍子を取って、宛然さながら大鋸おおのこぎりで大丸太を挽割ひきわるような音だ。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
さつきは雨脚あめあししげくつて、宛然まるで薄墨うすゞみいたやう、堤防どてだの、石垣いしがきだの、蛇籠じやかごだの
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
と少年は大喜びで、どんどん兎の飛ぶように駆け歩くと、その身体は宛然まるで浅草の操人形を見るようにくらくらして首を振りながら、やっている。
月世界跋渉記 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
「太郎さん、お前は何を那麽そんなにポケットに入れて置くの? 大変ふくらんでるじゃないか。宛然まるでつう懐中ふところのようだよ」
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
銀波、銀砂につらなる千古の名松は、清光のうちに風姿をくして、宛然えんぜん、名工の墨技ぼくぎ天籟てんらいを帯びたるが如し。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
現在この夜のカッフェで給仕とテエブルを分っている先生は、宛然えんぜんとして昔、あの西日にしびもささない教室で読本を教えていた先生である。
毛利先生 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
もし樹木も雑草も何も生えていないとすれば、東京市中の崖は切立った赤土の夕日を浴びる時なぞ宛然えんぜん堡塁ほうるいを望むが如き悲壮の観を示す。
今や宛然ゑんぜんとして欧羅巴ヨーロッパナイズされんとせり、勿論輓今ばんきんやゝ我人心が少しく内に向ひ、国粋保存の説が歓迎さるゝの現象は見ゆれど
つらつらあんずるにわが俳諧修業は「ホトトギス」の厄介にもなれば、「海紅かいこう」の世話にもなり、宛然ゑんぜんたる五目流ごもくりうの早じこみと言ふべし。
わが俳諧修業 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
其処そこ宛然ゑんぜん作者自身も、和泉式部いづみしきぶの友だちだつたやうに、虚心平気に書き上げるのである。
澄江堂雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
彼は絨毯の上を、しつかりと歩んでゐたつもりであつたが、もし傍観者があつたならば、その足付が、宛然まるきり躍つてゐるやうに見えたかも知れない。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
彼は絨毯の上を、しっかりと歩んでいたつもりであったが、もし傍観者があったならば、その足付が、宛然まるきり躍っているように見えたかも知れない。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
自転車にまたがっている彼女の姿は宛然あたかも働きものの娘さんを一枚の絵にしたようだ。
落穂拾い (新字新仮名) / 小山清(著)
斯うして千曲川の下流に添ふ一面の平野は、宛然あだかも、戦場の光景ありさまであつた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
いや、それよりも、たうげ屋根やねちかかつた、あの可恐おそろしくもみね宛然そつくりであります。
雪霊続記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
それから横手よこてさかはうかゝつてると、るわ/\、打石斧だせきふが、宛然ちやうど砂利じやりいたやう散布さんぷしてる。