宛然ゑんぜん)” の例文
つらつらあんずるにわが俳諧修業は「ホトトギス」の厄介にもなれば、「海紅かいこう」の世話にもなり、宛然ゑんぜんたる五目流ごもくりうの早じこみと言ふべし。
わが俳諧修業 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
之が堤防を築き、之が柵門を建られつれど、進歩の勢力は之に激して更に勢を増すのみにして、反動の盛なると共に正動もまた盛にして、今や宛然ゑんぜんとして欧羅巴ヨーロッパナイズされんとせり
僕は頭重うして立つあたはず。円月堂、僕の代りに徹宵てつせう警戒の任に当る。脇差わきざしを横たへ、木刀ぼくたうひつさげたる状、彼自身宛然ゑんぜんたる○○○○なり。
宛然ゑんぜん僕にその硯屏けんびやうを買ふ義務でもありさうな口吻こうふんである。しかし御意ぎよい通りに買つたことをいまだに後悔してゐないのは室生の為にも僕の為にもかく欣懐きんくわいと云ふほかはない。
野人生計事 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
たとへば日本の王朝時代は、男女関係の考へ方でも、現代のそれとは大分だいぶ違ふ。其処そこ宛然ゑんぜん作者自身も、和泉式部いづみしきぶの友だちだつたやうに、虚心平気に書き上げるのである。
澄江堂雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
宛然ゑんぜん僕にその硯屏を買ふ義務でもありさうな口吻こうふんである。しかし御意ぎよい通りに買つたことをいまだに後悔こうくわいしてゐないのは室生のためにも僕のためにもかく欣懐きんくわいといふほかはない。
身のまはり (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
いや、コレクシヨンと云ふよりも寧ろ宛然ゑんぜんたる博物館である。
僻見 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)