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まるで
ふりがな文庫
“
宛然
(
まるで
)” の例文
とお
前様
(
まへさま
)
お
聞
(
き
)
かせ
申
(
まを
)
す
話
(
はなし
)
は、これからぢやが、
最初
(
さいしよ
)
に
申
(
まを
)
す
通
(
とほ
)
り
路
(
みち
)
がいかにも
悪
(
わる
)
い、
宛然
(
まるで
)
人
(
ひと
)
が
通
(
かよ
)
ひさうでない
上
(
うへ
)
に、
恐
(
おそろし
)
いのは、
蛇
(
へび
)
で。
高野聖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
『へえ——学校にも居られなくなる、社会からも放逐される、と言へば君、非常なことだ。それでは
宛然
(
まるで
)
死刑を宣告されるも同じだ。』
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
と少年は大喜びで、どんどん兎の飛ぶように駆け歩くと、その身体は
宛然
(
まるで
)
浅草の操人形を見るようにくらくらして首を振りながら、やっている。
月世界跋渉記
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
所が、動機らしいものを持った人物が一人もいない始末だが、その代り、どれもこれも、一目で強烈な印象をうける——
宛然
(
まるで
)
仮面舞踏会なんだよ。
後光殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
愛
(
あい
)
ちやんは
宛然
(
まるで
)
狐
(
きつね
)
に
魅
(
つま
)
まれたやうな
氣
(
き
)
がしました。
帽子屋
(
ばうしや
)
の
云
(
い
)
つた
事
(
こと
)
は
何
(
なに
)
が
何
(
なん
)
だか
譯
(
わけ
)
が
分
(
わか
)
りませんでした、
併
(
しか
)
しそれはそれでも
確
(
たし
)
かに
英語
(
えいご
)
でした。
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
▼ もっと見る
水車
(
すいしゃ
)
の叔父さんに
背負
(
おぶ
)
さって、家に着いたのは
最早
(
もう
)
トボトボ頃であった。お母さんは乃公を
抱占
(
だきし
)
めて涙を流した。
宛然
(
まるで
)
十年も別れていたようである。
いたずら小僧日記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
脳天を
焙
(
あぶ
)
りつける太陽が
宛然
(
まるで
)
火の様で、
習
(
そよ
)
との風も吹かぬから、木といふ木は皆死にかかつた様に其葉を垂れてゐた。
二筋の血
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
細い
路次
(
ろじ
)
を通つて、
宅
(
うち
)
の前まで來ると、表の戸は
一昨日
(
おとゝひ
)
締めて行つたまゝである。何處をほつき𢌞つてゐたのか、
宛然
(
まるで
)
夢中で、自分にも
明瞭
(
はつきり
)
覺
(
おぼへ
)
がない。
絶望
(旧字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
『
何
(
なに
)
を
那樣
(
そんな
)
に
喜
(
よろこ
)
ぶのか
私
(
わたくし
)
には
譯
(
わけ
)
が
分
(
わか
)
りません。』と、
院長
(
ゐんちやう
)
はイワン、デミトリチの
樣子
(
やうす
)
が
宛然
(
まるで
)
芝居
(
しばゐ
)
のやうだと
思
(
おも
)
ひながら、
又
(
また
)
其風
(
そのふう
)
が
酷
(
ひど
)
く
氣
(
き
)
に
入
(
い
)
つて
云
(
い
)
ふた。
六号室
(旧字旧仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
と、
宛然
(
まるで
)
彼が故意にでもやった様に云うのであった。気の早い隼英吉は
疳癪玉
(
かんしゃくだま
)
を破裂さした。
乗合自動車
(新字新仮名)
/
川田功
(著)
そして、
宛然
(
まるで
)
蹲る大獣のように物凄い黒色が仄明るい空を画ると、漸々その極度の暗黒を破って、生みたての卵黄のように、円らかにも美くしい月が現われるのでございます。
C先生への手紙
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
私は棺側に進んで、おしづさんの
亡骸
(
なきがら
)
に
見
(
まみ
)
えた。おしづさんは病症の
所爲
(
せゐ
)
とかで、
宛然
(
まるで
)
石膏細工のやうな顏や手をして居ました。髮だけは生前私が記憶して居るまゝに、黒く長く枕邊に亂れて居た。
「青白き夢」序
(旧字旧仮名)
/
森田草平
(著)
腦天を
焙
(
い
)
りつける太陽が
宛然
(
まるで
)
火の樣で、
習
(
そよ
)
との風も吹かぬから、木といふ木が皆死にかかつた樣に其葉を垂れてゐた。
二筋の血
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
「太郎さん、お前は何を
那麽
(
そんな
)
にポケットに入れて置くの? 大変
膨
(
ふく
)
らんでるじゃないか。
宛然
(
まるで
)
通
(
つう
)
の
懐中
(
ふところ
)
のようだよ」
いたずら小僧日記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
山麓
(
さんろく
)
には、
紅白
(
こうはく
)
だんだらの
幕
(
まく
)
を
張
(
は
)
り、
天幕
(
テント
)
を
吊
(
つ
)
り、
高等官休憩所
(
かうとうくわんきうけいじよ
)
、
新聞記者席
(
しんぶんきしやせき
)
、
參觀人席
(
さんくわんにんせき
)
など
區別
(
くべつ
)
してある。
別
(
べつ
)
に
喫茶所
(
きつさじよ
)
を
設
(
まう
)
けてある。
宛然
(
まるで
)
園遊會場
(
えんいうくわいぢやう
)
だ。
探検実記 地中の秘密:29 お穴様の探検
(旧字旧仮名)
/
江見水蔭
(著)
蟋蟀
(
こほろぎ
)
でさへ、
其
(
そ
)
の
蟲
(
むし
)
は、
宛然
(
まるで
)
夕顏
(
ゆふがほ
)
の
種
(
たね
)
が
一
(
ひと
)
つこぼれたくらゐ
小
(
ちひさ
)
くつて、なか/\
見着
(
みつ
)
かりませんし、……
何
(
ど
)
うして
掴
(
つか
)
まりつこはないさうです……
貴女
(
あなた
)
がなさいますやうに
浅茅生
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
そう言って私が
転
(
ころ
)
がり込んで行った……
宛然
(
まるで
)
ユスリですネ……どうしても
先方
(
さき
)
で逢わない。
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
來
(
く
)
ると、
宛然
(
まるで
)
空々
(
そら/″\
)
しい
無理
(
むり
)
な
元氣
(
げんき
)
を
出
(
だ
)
して、
強
(
し
)
ひて
高笑
(
たかわらひ
)
をして
見
(
み
)
たり、
今日
(
けふ
)
は
非常
(
ひじやう
)
に
顏色
(
かほいろ
)
が
好
(
い
)
いとか、
何
(
なん
)
とか、ワルシヤワの
借金
(
しやくきん
)
を
拂
(
はら
)
はぬので、
内心
(
ないしん
)
の
苦
(
くる
)
しく
有
(
あ
)
るのと、
恥
(
はづか
)
しく
有
(
あ
)
る
所
(
ところ
)
から
六号室
(旧字旧仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
「子供のことよ。
宛然
(
まるで
)
玩具箱を引っくり
覆
(
かえ
)
したようだわ。今朝は
最早
(
もう
)
慣れてしまったけれど、昨日は頭痛がしてよ」
ぐうたら道中記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
遺骨
(
ゐこつ
)
は三四
體
(
たい
)
、
合葬
(
がつそう
)
した
形跡
(
けいせき
)
がある。
其所
(
そこ
)
にも
此所
(
こゝ
)
にも
人骨
(
じんこつ
)
が
横
(
よこた
)
はつて
居
(
ゐ
)
るが、
多年
(
たねん
)
泥水
(
どろみづ
)
に
浸
(
した
)
されて
居
(
ゐ
)
たので、
手
(
て
)
に
觸
(
ふ
)
れると
宛然
(
まるで
)
泥
(
どろ
)
の
如
(
ごど
)
く、
形
(
かたち
)
を
全
(
まつた
)
く
取上
(
とりあ
)
げる
事
(
こと
)
は
出來
(
でき
)
ぬ。
探検実記 地中の秘密:29 お穴様の探検
(旧字旧仮名)
/
江見水蔭
(著)
さつきは
雨脚
(
あめあし
)
が
繁
(
しげ
)
くつて、
宛然
(
まるで
)
、
薄墨
(
うすゞみ
)
で
刷
(
は
)
いたやう、
堤防
(
どて
)
だの、
石垣
(
いしがき
)
だの、
蛇籠
(
じやかご
)
だの、
中洲
(
なかず
)
に
草
(
くさ
)
の
生
(
は
)
へた
処
(
ところ
)
だのが、
点々
(
ぽつちり/\
)
、
彼方此方
(
あちらこちら
)
に
黒
(
くろ
)
ずんで
居
(
ゐ
)
て、それで
湿
(
しめ
)
つぽくツて
化鳥
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
……
終
(
しまひ
)
にや山も川も人間の顔もゴチヤ交ぜになつて、胸の中が
宛然
(
まるで
)
、火事と洪水と一緒になツた様だ。……僕は一晩泣いたよ、枕にして居た帆綱の束に噛りついて泣いたよ。
漂泊
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
「母さん、母さん、母さん——母さんちゃん——ちゃん——ちゃん——ちゃん」
宛然
(
まるで
)
、気が
狂
(
ちが
)
ったような声だ……それは三吉の耳について
了
(
しま
)
って、何処に居ても
頭脳
(
あたま
)
へ響けるように聞えた。
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
彼
(
かれ
)
の
容貌
(
ようばう
)
はぎす/\して、
何處
(
どこ
)
か
百姓染
(
ひやくしやうじ
)
みて、
※鬚
(
あごひげ
)
から、ベツそりした
髮
(
かみ
)
、ぎごちない
不態
(
ぶざま
)
な
恰好
(
かつかう
)
は、
宛然
(
まるで
)
大食
(
たいしよく
)
の、
呑※
(
のみぬけ
)
の、
頑固
(
ぐわんこ
)
な
街道端
(
かいだうばた
)
の
料理屋
(
れうりや
)
なんどの
主人
(
しゆじん
)
のやうで、
素氣無
(
そつけな
)
い
顏
(
かほ
)
には
青筋
(
あをすぢ
)
が
顯
(
あらは
)
れ
六号室
(旧字旧仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
「
彼処
(
あすこ
)
が好いのさ。そうしてジャリッと
粗目
(
ざらめ
)
が歯に当るところは何ともいえないと此処の人は言っている。東京のはパク/\していて
宛然
(
まるで
)
食パンのようだよ」
ぐうたら道中記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
尤
(
もツと
)
も
那
(
あ
)
のこれから
冬
(
ふゆ
)
になりまして
山
(
やま
)
が
宛然
(
まるで
)
氷
(
こほ
)
つて
了
(
しま
)
ひ、
川
(
かは
)
も
崖
(
がけ
)
も
不残
(
のこらず
)
雪
(
ゆき
)
になりましても、
貴僧
(
あなた
)
が
行水
(
ぎやうずゐ
)
を
遊
(
あそ
)
ばした
彼処
(
あすこ
)
ばかりは
水
(
みづ
)
が
隠
(
かく
)
れません、
然
(
さ
)
うしていきりが
立
(
た
)
ちます。
高野聖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
自分らの
這入
(
はい
)
っていた一室はどうにか壊れずにいるが、部屋の中は
宛然
(
まるで
)
玩具箱を引繰り返したように、
種々
(
いろいろ
)
の道具が何一つとして正しく位置を保っているのはなく、悉く転倒して
月世界跋渉記
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
破壞した跡の燒野には、君、必ず新しい勢の
可
(
い
)
い草が生えるよ。僕はね。
宛然
(
まるで
)
自分が革命でも起した樣な氣で、大威張で局へ行ツて、「サカンニヤレ」といふ
那
(
あ
)
の電報を打ツたんだ。
漂泊
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
「この足袋を見給へ、
宛然
(
まるで
)
死人
(
しびと
)
が穿いたやうだ。」
伊豆の旅
(旧字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
そうして万事
御台所
(
みだいどころ
)
本位で御機嫌を取っている。妻め
悉皆
(
すっかり
)
増長してしまって
宛然
(
まるで
)
女王
(
クイーン
)
だね。大きな目をして婆さん染みたところはトランプの
女王
(
クイーン
)
に能く似ているだろう
ぐうたら道中記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
けれども
鰤
(
ぶり
)
ではたしかにない、あの
腹
(
はら
)
のふくれた
様子
(
やうす
)
といつたら、
宛然
(
まるで
)
、
鮟鱇
(
あんかう
)
に
肖
(
に
)
て
居
(
ゐ
)
るので、
私
(
わたし
)
は
蔭
(
かげ
)
じやあ
鮟鱇博士
(
あんかうはかせ
)
とさういひますワ。
此間
(
このあひだ
)
も
学校
(
がくかう
)
へ
参観
(
さんくわん
)
に
来
(
き
)
たことがある。
化鳥
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
破壊した跡の焼野には、君、必ず新しい勢ひの
可
(
い
)
い草が生えるよ。僕はね。
宛然
(
まるで
)
自分が革命でも起した様な気で、大威張で局へ行ツて、「サカンニヤレ」といふ
那
(
あ
)
の電報を打ツたんだ。
漂泊
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
「
宛然
(
まるで
)
——この船は幽霊だ」
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
……
夢
(
ゆめ
)
なんだか、
現
(
うつゝ
)
なんだか、
自分
(
じぶん
)
だか
他人
(
たにん
)
だか、
宛然
(
まるで
)
弁別
(
わきまへ
)
が
無
(
な
)
いほどです——
前刻
(
さつき
)
からお
話
(
はな
)
し
被為
(
なす
)
つた
事
(
こと
)
も、
其方
(
そちら
)
では
唯
(
たゞ
)
あはあは
笑
(
わら
)
つて
居
(
ゐ
)
らつしやるのが、
種々
(
いろ/\
)
な
言
(
ことば
)
に
成
(
な
)
つて
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
学問があり演説は巧し、
剰
(
おまけ
)
に金があると来てるから、
宛然
(
まるで
)
火の玉の様に転げ歩いて、熱心な遊説をやつたもんだが、七八万の財産が国会開会
以前
(
まへ
)
に一文も無くなつたとか云ふ事だつた。
病院の窓
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
ちやるめらを吹く、さゝらを
摺
(
す
)
る、
鈴
(
ベル
)
を鳴らしたり、小太鼓を打つたり、
宛然
(
まるで
)
お
神楽
(
かぐら
)
のやうなんですがね、
家
(
うち
)
が
大
(
おおき
)
いから、遠くに聞えて、夜中の、あの魔もののお
囃子
(
はやし
)
見たやうよ
印度更紗
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
男は、
宛然
(
まるで
)
鷲が
黄鳥
(
うぐひす
)
でも
攫
(
つかま
)
へた様に、小さい藤野さんを小脇に抱へ込んでゐたが、美しい顔がグタリと前に垂れて、後には膝から下、雪の様に白い脚が二本、力もなくブラ/\してゐた。
二筋の血
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
ちやるめらを
吹
(
ふ
)
く、さゝらを
摺
(
す
)
る、
鈴
(
ベル
)
を
鳴
(
な
)
らしたり、
小太鼓
(
こだいこ
)
を
打
(
う
)
つたり、
宛然
(
まるで
)
お
神樂
(
かぐら
)
のやうなんですがね、
家
(
うち
)
が
大
(
おほき
)
いから、
遠
(
とほ
)
くに
聞
(
きこ
)
えて、
夜中
(
よなか
)
の、あの
魔
(
ま
)
もののお
囃子
(
はやし
)
見
(
み
)
たやうよ
印度更紗
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
男は、
宛然
(
まるで
)
鷲が
黄鳥
(
うぐひす
)
でも
攫
(
つかま
)
へた樣に、小さい藤野さんを小脇に抱へ込んでゐたが、美しい顏がグタリと前に垂れて、後には膝から下、雪の樣に白い脚が二本、力もなくブラ/\してゐた。
二筋の血
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
えい、
其
(
それ
)
は
又
(
また
)
、
変
(
かは
)
つたもんだね。
船
(
ふね
)
と
一所
(
いつしよ
)
に
焼
(
や
)
けたものは、
活
(
い
)
きた
人
(
ひと
)
で
無
(
な
)
うて、
私
(
わし
)
先
(
ま
)
づ
安堵
(
あんど
)
をしたでがすが、
木彫
(
きぼり
)
だ、と
聞
(
き
)
けば
尚
(
なほ
)
魂消
(
たまげ
)
る……
豪
(
えれ
)
え
見事
(
みごと
)
な、
宛然
(
まるで
)
生身
(
しやうじん
)
のやうだつけの。
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
學問があり演説は巧いし、
剩
(
おまけ
)
に金があると來てるから、
宛然
(
まるで
)
火の玉の樣に轉げ歩いて、熱心な遊説をやつたもんだが、七八萬の財産が國會開會以前に一文も無くなつたとか云ふ事だつた。
病院の窓
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
其までは
宛然
(
まるで
)
恁
(
こ
)
う、
身体
(
からだ
)
へ
絡
(
まつわ
)
つて、肩を包むやうにして、
侍女
(
こしもと
)
の手だの、袖だの、
裾
(
すそ
)
だの、
屏風
(
びょうぶ
)
だの、
襖
(
ふすま
)
だの、
蒲団
(
ふとん
)
だの、
膳
(
ぜん
)
だの、枕だのが、あの、
所狭
(
ところせま
)
きまでといふ風であつたのが
二世の契
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
盛岡の肴町位だとお定の思つた菊坂町は、此處へ來て見ると
宛然
(
まるで
)
田舍の樣だ。
天鵞絨
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
盛岡の肴町位だとお定の思つた菊坂町は、此処へ来て見ると
宛然
(
まるで
)
田舎の様だ。
天鵞絨
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
同じものを、来る
途
(
みち
)
の
爺
(
じじい
)
が
茶店
(
ちゃみせ
)
でも売つて居た。が、其の形は
宛然
(
まるで
)
違ふ。
貴婦人
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
五十幾つの胸にも火事が始まる。四間に五間の教場は
宛然
(
まるで
)
熱火の洪水だ。自分の骨
露
(
あら
)
はに痩せた拳が
礑
(
はた
)
と
卓子
(
テイブル
)
を打つ。と、躍り上るものがある、手を振るものがある、万歳と叫ぶものがある。
雲は天才である
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
……
其處
(
そこ
)
で、
昨日
(
きのふ
)
穿
(
は
)
いた
泥
(
どろ
)
だらけの
高足駄
(
たかあしだ
)
を
高々
(
たか/″\
)
と
穿
(
は
)
いて、
此
(
こ
)
の
透通
(
すきとほ
)
るやうな
秋日和
(
あきびより
)
には
宛然
(
まるで
)
つままれたやうな
形
(
かたち
)
で、カラン/\と
戸外
(
おもて
)
へ
出
(
で
)
た。が、
出
(
で
)
た
咄嗟
(
とつさ
)
には
幻
(
まぼろし
)
が
消
(
き
)
えたやうで
一疋
(
ひとつ
)
も
見
(
み
)
えぬ。
番茶話
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
此
(
この
)
榎
(
えのき
)
の
下
(
した
)
に
箱
(
はこ
)
のやうな、
小
(
ちひ
)
さな、
番小屋
(
ばんごや
)
を
建
(
た
)
てゝ、
其処
(
そこ
)
に
母様
(
おつかさん
)
と
二人
(
ふたり
)
で
住
(
す
)
んで
居
(
ゐ
)
たので、
橋
(
はし
)
は
粗造
(
そざう
)
な、
宛然
(
まるで
)
、
間
(
ま
)
に
合
(
あ
)
はせといつたやうな
拵
(
こしら
)
え
方
(
かた
)
、
杭
(
くい
)
の
上
(
うへ
)
へ
板
(
いた
)
を
渡
(
わた
)
して
竹
(
たけ
)
を
欄干
(
らんかん
)
にしたばかりのもので
化鳥
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
宛然
(
まるで
)
僕の平生の理想が君によつて実行された様な気がしたよ。
漂泊
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
お
媼
(
ばあ
)
さん、
風説
(
うわさ
)
を知りつゝ
恁
(
こ
)
うやつて一人で来た位だから、打明けて云ひます、見受けた
処
(
ところ
)
、君は何だ、様子が
宛然
(
まるで
)
野の
主
(
ぬし
)
とでもいふべきぢやないか、何の
馬鹿々々
(
ばかばか
)
しいと思ふだらうが、
好事
(
ものずき
)
です
二世の契
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
“宛然”の意味
《形容動詞》
そっくりなさま。そのままであるさま。
(出典:Wiktionary)
宛
常用漢字
中学
部首:⼧
8画
然
常用漢字
小4
部首:⽕
12画
“宛”で始まる語句
宛
宛名
宛行
宛城
宛嵌
宛転
宛字
宛如
宛子
宛子城