“蟋蟀”のいろいろな読み方と例文
読み方(ふりがな)割合
こおろぎ55.6%
こほろぎ20.4%
きりぎりす16.9%
きり/″\す2.8%
いとど0.7%
きりざりす0.7%
こうろぎ0.7%
しっしゅつ0.7%
イトド0.7%
コホロギ0.7%
(注)作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
かのかけいの水のほとりには、もう野菊と紫苑しおんとが咲きみだれて、穂に出た尾花の下には蟋蟀こおろぎの歌が手にとるようである。
駅夫日記 (新字新仮名) / 白柳秀湖(著)
しもに、はやくもよわてた蟋蟀こおろぎであろう。床下ゆかしたにあえぐ細々ほそぼそかれた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
押えられて、手を突込つっこんだから、脚をばったのように、いや、ずんぐりだから、蟋蟀こおろぎのようにもがいて、頭でうすいていた。
神鷺之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
白砂しらすなあがつてて、やがて蟋蟀こほろぎねやおもはるゝのが、數百すうひやく一群ひとむれ赤蜻蛉あかとんぼ
十和田の夏霧 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ふと目が覺めると、消すを忘れて眠つた枕邊まくらもとの手ランプの影に、何處から入つて來たか、蟋蟀こほろぎが二匹、可憐な羽を顫はして啼いてゐる。
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
有峰杉之助は面白さうに笑ふのです。秋の單衣ひとへがひどく潮垂れて、調度のないガランとした住居は、蟋蟀こほろぎ跳梁てうりやうに任せた姿です。
某百貨店でトリルダインと称する機械を買って来て据付けた最初の日の夕食時に聞いたのは、伴奏入りの童話で「あり蟋蟀きりぎりす」の話であった。
ラジオ雑感 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
老人はしきりに虫の講釈をはじめて、今日こんにちでは殆ど子供の玩具おもちゃにしかならないような一匹三銭ぐらいの蟋蟀きりぎりすを大いに讃美していた。
半七捕物帳:07 奥女中 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
これが引摺ひきずって、足を見ながら情なそうな顔をする。蟋蟀きりぎりす𢪸がれたあしを口にくわえて泣くのを見るよう、目もあてられたものではない。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
唯、所々丹塗にぬりの剥げた、大きな圓柱まるばしらに、蟋蟀きり/″\すが一匹とまつてゐる。
羅生門 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
風呂に入り乍ら蟋蟀きり/″\すを聴くなんて、成程なるほど寺らしい趣味だと思つたねえ。今迄の下宿とは全然まるで様子が違ふ——まあ僕は自分のうちへでも帰つたやうな心地こゝろもちがしたよ。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
八月十二日。月明晝の如し。舊七月の望なるべし。門外の松林を歩む。草中既に蟲聲をきく。蟋蟀きり/″\す促織こほろぎか定かならず。多年東京にて聞馴れしこほろぎとは其の鳴き方少しく異るところあり。
荷風戦後日歴 第一 (旧字旧仮名) / 永井荷風(著)
蟋蟀いとどならばひとり鳴きてもありぬべしひとり鳴きても夜は明けぬべし
桐の花 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
柳屋のお夏さんとはいわないで、お夏さんの柳屋、お夏さんの柳屋ッて、花がるたを買いに来まさ。何だ畜生、上野の下あたりに潜ってやあがって、歌読もすさまじい、糸瓜へちまとも思うんじゃあねえ。茄子なすを食ってる蟋蟀きりざりす野郎の癖に、百文なみに扱いやあがって、お姫様を煽げ、べらぼうめ。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
路ばたの草叢では蟋蟀こうろぎが鳴き始めていた。
武装せる市街 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
それから医者をかえて、さらに有名な大先生にかかったが、こんどは、蘆の根や、三年霜に打たれた甘蔗のかわりに、蟋蟀しっしゅつ一つがい、平地木十株、敗鼓皮丸はいこひがんなどという不思議なものが必要だった。
惜別 (新字新仮名) / 太宰治(著)
いつも自分の目先にちらついているものは、少年の頃、三春秋、父の病気をなおそうとして質屋の店台と薬屋の店台の間を毎日のように往復し、名医と称せられる詐欺師の言を信じて、平地木やら原配の蟋蟀しっしゅつやらをうろうろ捜し廻っている自分の悲惨な姿であった。
惜別 (新字新仮名) / 太宰治(著)
蜑が家は 小蝦にまじる蟋蟀イトドかな
日本美 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
もう外の叢で鳴き出した、蟋蟀コホロギの声を、瞬間思ひ浮べて居た。
死者の書 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
蟋蟀コホロギは、昼も苑一面に鳴くやうになつた。
死者の書 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)