“彼処”のいろいろな読み方と例文
旧字:彼處
読み方割合
かしこ36.8%
あすこ36.2%
あそこ21.4%
あちら0.9%
そこ0.9%
あっこ0.6%
あれ0.6%
あそご0.6%
あしこ0.3%
あすけ0.3%
あち0.3%
あっち0.3%
あつち0.3%
かのところ0.3%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
「昨日ノ朝、妙ナ船ニ会イマシタ、三本帆檣マストノ二千トンバカリノ奴デス。船内ニハ誰モ居ナイ様子デ……何処どこ彼処かしこモ血ダラケデシタ」
流血船西へ行く (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
行き合ふ人や後から来る人に顔を見られても、彼処あすこまで行つてしまへば何処から来たのだか分るまいと云ふやうな気がするのである。
買出し (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
どのみち余計なことだけれど、お前さんを見かけたから、つい其処そこだし、彼処あそこうちの人だったら、ちょいと心づけてこうと思ってさ。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それはあだかも旧暦八月の一日の夜で、すなわち名月の晩だったが、私は例の通り、師匠のうちをその朝早く出て、谷中に行って、終日遊んでとうとう夜食を馳走になって、彼処あちらを出たのが、九時少し前
死神 (新字新仮名) / 岡崎雪声(著)
黎明は突如としてき起これる妖雲よううんによって、しばらくは閉ざされようとも、吾々の前途の希望は依然として彼処そこに係っている。
二・二六事件に就て (新字新仮名) / 河合栄治郎(著)
「……いつや姉ちゃんに着物持って来てもろた家なあ? 彼処あっこやったら気分もよう分ってるし、安心やねんけど、……彼処にせえへんか?」
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
実は彼処あれにて聞兼きゝかねて居りましたが、如何にも相手が悪いから、お嬢様をお連れ遊ばしてさぞかし御迷惑でござろうとお察し申します、入らざる事と思召おぼしめすかしらんが
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
さがしたぞ。こんたなどごまで来て。して黙って彼処あそごに居なぃがった。おぢいさん、うんと心配してるぞ。さ、早くべ。」
種山ヶ原 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
あれ、彼処あしこに我が兄子せこの、狩の扮装いでたちをして野原にせて行きやる。あれ、馬から落ちられた。
森の妖姫 (新字新仮名) / 小川未明(著)
母「アヽ痛い、あゝあのお医者様から貰ったお薬は小さえ手包の中へ入れて置いたが、彼処あすけえ上げて置いたが、あれわれ持って来たか」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
うれい重荷おもにうて直下すぐしたに働いて居る彼爺さん達、彼処あち此処こちに鳶色にこがれたけやきの下かしの木蔭に平和を夢みて居る幾個いくつ茅舎ぼうしゃ
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「そうか。お前が彼処あっちに居なくなったのは、誰か好きな人ができて、一緒になったからだと思っていたんだ。こんな処へ稼ぎに出ているとは知らなかったヨ。」
吾妻橋 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
まへ彼処あつちなくなつたのは、だれきなひとができて、一しよになつたからだとおもつてゐたんだ。こんなところかせぎにてゐるとはらなかつたヨ。
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
青柳より筑前領の大島に出で、彼処かのところより便船を求めて韓国からくにに渡り、伝へ聞く火賊くわぞくの群に入りての国を援け、しんの大宗の軍兵に一泡噛ませ呉れむと思ひし也。
白くれない (新字新仮名) / 夢野久作(著)