“あちら”のいろいろな漢字の書き方と例文
カタカナ:アチラ
語句割合
彼方60.8%
彼地10.2%
外国3.0%
西洋3.0%
彼処1.8%
彼国1.8%
那地1.8%
先方1.2%
彼室1.2%
彼家1.2%
(他:23)14.0%
(注)作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
と云ったぎりで、お米が此方こちらへ来れば此方へきたり、彼方あちらけば彼方へ行き、始終女中のうしろにばかりくッついて居る。
運を天にまかして船の漂うまゝに彼方あちらへ揺られ、此方こちらへ流されて居ります内に、東の方がぼんやりと糸を引いたように明るくなりました。
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「たぶんあったと思いますが」と鎮子はしばらく考えた後に云った。「もしお急ぎでしたら、彼方あちらの製本に出す雑書の中を探して頂きましょう」
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
彼地あちらでは女が、誠に済みませんが手拭も冠りませんで御挨拶を致します、と云う処を見れば手拭を冠るのが礼になって居る事と見えます。
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
けれどチベットの方が余程よいと言って彼地あちらからわざわざ取り寄せる位ですから、チベット人にはこれが最も適当した食物であります。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
彼地あちらへ往らっしったお方は御案内でいらっしゃいますが、社殿はけやき総彫そうぼりで、花鳥雲竜かちょううんりょうが彫ってごく名作でございます。
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
私はこの生意気千万な外国あちら帰りの流暢りゅうちょう英語へ臆面もなく昔寝床の中で独学した英語で聞いてくれた。
ナリン殿下への回想 (新字新仮名) / 橘外男(著)
外国あちらでは原語でございますとジョン、ハミールトンという人が、ナタンブノルという朋友ともだちの同類と、かのスマイル、スミスを打殺うちころしまして莫大ばくだいの金を取ります。
兎もあれ一双揃わねば意味をなさぬ、そのあてにしていた片双が、電報で外国あちらに問い合せたりして貰った結果どうやら間にあいかねる様子の知れたのが、もう十二月になってからのことです。
「これはね、ブランと申しましてね、西洋あちらのきついお酒なのです、あなたに一口上げたいと思って待構えておりましたの」
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ところ西洋あちらでは遣物つかひものを持つてつた者に、使賃つかひちんといつて名をけるわけではないが、どるの二ツぐらゐれるさうでございます。
西洋の丁稚 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
何か西洋あちらの事で、私どもにはよく解りませぬけれども、夢遊病にかかってした事なら罪にならぬから、これから夢遊病の真似をして悪い事をしようか……なぞ若い者が申して笑っておりましたから、その事を思出しまして
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
御出立ごしゅったつになるまでは、彼処あちら入用にゅうようもあるまい。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
「では、主人も彼処あちらで待っておるゆえ、ここで御免——」
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それはあだかも旧暦八月の一日の夜で、すなわち名月の晩だったが、私は例の通り、師匠のうちをその朝早く出て、谷中に行って、終日遊んでとうとう夜食を馳走になって、彼処あちらを出たのが、九時少し前、てくてく歩きながら帰途に就いたが、まだその時分のことで、あれから芝まで来る道には、随分ずいぶん淋しい所もあった。
死神 (新字新仮名) / 岡崎雪声(著)
ながく支那に居て、彼国あちらの事情によく通じてゐる加奈陀カナダ出身の青年将校が、西部戦線の後方勤務に支那苦力を使つたらといふので、その募集に最近支那へ派遣せられて往つた。
スマイル、スミスと申しまする人は、彼国あちらで蒸汽の船長でございます。
米国はヰスコンシンの上院議員ラ・フオレツト氏の愛嬢フオラ・ラ・フオレツト女史は彼国あちらでも新しい女として名高い人で、先年脚本作家のヂヨルヂ・ミツドルトン氏と結婚したが、結婚後も良人をつとの姓は名乗らないで、矢張里方さとかたの娘のまんまで押通してゐる。
長く那地あちらの医師協会の会長を勤めてゐたバウガン氏なども、忙がしいなかに閑を見つけると、冒険小説を手に取る事にしてゐる。
森村商事会社の取締役村井保固やすかた氏は、なが/\米国へ渡つてゐて、那地あちらで会社の地位を据ゑたのは、全くこの人一人の骨折だと言はれてゐる男である。
若い登山家として知られてゐるK氏が、急に用事が出来て信州へ往つたからといつて、那地あちらの深い山から折つて帰つた山独活やまうどを四五本とどけてくれた。
独楽園 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
「道理でさっき私がこの事をいいかけるとあのかたが目で留めたんですよ。やはり先方あちらでもあなたに知らせまいとして。いじらしいじゃありませんか」
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
『それやね、決めるまでにはマア、間違ひはないでせうけれど、先方あちらの事も詳しくナンして見てから……。』
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
お坊主 (次の間の敷居ぎわへ来て)申し上げます。皆様彼室あちらでお待ちかねでいらっしゃいますが、お歌のほうは、もはや——。
稲生播磨守 (新字新仮名) / 林不忘(著)
女組は一まづ別室に休息した。富江一人は彼室あちらへ行き此室こちらへ行き、宛然さながら我家の樣に振舞つた。お柳は朝から口喧しく臺所を指揮さしづしてゐた。
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
へえ、只今彼家あちらの奉公人が参りまして、お千代どんが皿ア割っただ、われ受人だアからなんぼ証文通りでも断りなしにゃア扱えねえから、ちょっくら届けるから、立合うがいと云って来ました、わしが考えますに
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「いえ、親類と申しますでもございませんが、ちと懇意に致しますもので、ついこの坂下まで手前用事で参りましたに就いて、彼家あちらから頼まれまして、先生様の御邸へ伺いますように、かねてお世話に相成ります御礼を申上げますよう、またどうぞ何分お願い申上げまするようにと、ことづかりましたんで、へい、めっきりお暑うございますな、」といいながら
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「叔父さん、」と彼が口を開いた。「京都あちらでも度々音楽をお聞きになりますか。」
恩人 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
「それではこれからまた新らしく京都あちらに赴任するつもりで出かけるかね。」
恩人 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
「あなた、新さんが、ちょっと雪岡さんに話しがあるといって、他室あちらでさっきから来て待っています」
うつり香 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
「お医者さん? 伊勢あちらのお医者さんかえ」
「さようでございますよ。加藤あちらのお嬢様がおいで遊ばしたら、どんなにおにぎやかでございましょう。——本当にわたくしなぞがまあこんな珍しい見物さしていただきまして——あの何でございますか、さっき渡りましたあの川が宇治川で、あのほたるの名所で、ではあの駒沢こまざわ深雪みゆきにあいました所でございますね」
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
わっし勝山あちらに伺うようになりました翌年あくるとし一昨年おととしですな。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「それに鶴さんは、着物や半衿はんえりや、香水なんか、ちょいちょい北海道あちらへ送るんだそうだよ。島ちゃんしっかりしないと駄目だよ」姉はそうも言った。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
倫敦ロンドン上総かずさ天神山てんじんやま、鉄道は朝船あさふね夕船ゆうふねに成っておりますだけで、お話はすべて原書あちらまゝにしてお聞きに入れますから
「武男さんはもう台湾あちらに着いて、きっといろいろこっちを思いやっていなさるでしょう。近くにさえいなされば、どうともして、ね、——そうおとうさまもおっしゃっておいでだけれども——浪さん、あんたの心尽くしはきっとわたしが——手紙も確かに届けるから」
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
「あのね塀和さん、此梅ちやんとはね、私が吉原あちらにゐた時分姉妹のやうにしてゐたのですよ。此方こちらはね、宅のお友達で京都からいらつしやつたのよ」と細君は雙方を引合せて急須に湯を入れに立つ。
俳諧師 (旧字旧仮名) / 高浜虚子(著)
「どうも御苦労さまでした……失礼ながら、あなたは何とおっしゃいますか、そうして何の目的で対岸あちらへお渡りになるのですか」
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「その要と申しますのは、——申し兼ねますが、その実は川島家あちらの奥様浪子様——」
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
御可哀想に早く御全快おさせもふしたい、そして又御本宅の御取込とは御噂の有た奧樣の御妹子が御方附になるの、彼宅あちらは御目出度事さぞ此宅の旦那樣もどんなにか御うらやましいだろふねとの同情、ほむに御隱居樣も御出掛遊ばすのであつた、いそいで御頼申升よ御藥取に𢌞らねばとかけ行に
うづみ火 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
彼等あちらはお前様、昨夜は夜祭おたびを見ね行くし、明日は角力すもうに行かんならんさかい。」
恭三の父 (新字新仮名) / 加能作次郎(著)
それが戦争後もずつとその儘やして置かれるか、うかといふ事が、後方あちらでは今好事家かうずか仲間の話題になつてゐる。
なるほど、そうでござんしたか。ほんにそのとおりでござんす。日本橋あちらではお客ばかりでゆるゆるおやすみなさるところもござんすまいからね。ええもう、こっちならば何をあそばそうと、目のあいている者はこのばあやばかりでござんす。そのばあやの目も、近ごろはとんと鳥目になりましてね。
どうぞ御身おみを大事に遊ばして、必ず気をながくお持ち遊ばして、ね、決して短気をお出しなさらぬように——御気分のいい時分ときはこのほんをごらん遊ばして——私は東京あちらに帰りましても
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
「本当に冷えますこと! 東京あちらとはよほど違いますでございますねエ」
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
栄町へめえりましたら栄町あちら世帯しょてえは仕舞って、太田の方へ行ったてえから、気になってなんねえで、此方へ参りましたが、し茂之助が此処こけえ参りまして、どんなハア詰らねえことを言いかけても、あんた取合わずにまア柳に受けて居て下さると
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
時「へえ、王子あちらの方でも、何うも彼方あちらいらっしゃいませんそうで彼方でもお驚きで、いず此方こちらからお訪ね申すという事で」
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
琉球あちらの、古い昔の聖人ひじりの息が、この竜の手にかかっておりますんじゃ。先ざきのことまで、ずんと見通しのきく、世にも偉い御仁であったと申す。そのお方は、人の生命を司る運命さだめと、宿縁をないがしろにする者のかなしみとを、後代のものに示さんとおぼし召されて、これなる竜の手をお遺しなされた。
私は聖林あちらにいる時分から、これが本職だったのです。
撮影所殺人事件 (新字新仮名) / 酒井嘉七(著)