“むこう”のいろいろな漢字の書き方と例文
語句割合
28.9%
先方26.5%
彼方16.9%
前方6.7%
対岸2.6%
前途2.3%
1.5%
反対1.2%
向方0.9%
対方0.9%
前面0.9%
対面0.9%
無効0.9%
西洋0.9%
向家0.6%
彼地0.6%
向前0.6%
対向0.6%
対手0.6%
0.6%
前岸0.3%
向側0.3%
向日0.3%
夢想0.3%
夢香0.3%
対機0.3%
彼女0.3%
敵対0.3%
敵手0.3%
本人0.3%
正面0.3%
武光0.3%
無黄0.3%
行途0.3%
西方0.3%
阿波0.3%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
「何里先きだって、向うの方の空が一面に真赤になってるじゃないか」と碌さんはむこうをゆびさして大きな輪を指の先でえがいて見せる。
二百十日 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「はは、判った。お前はの市郎に惚れているのだろう。無効だめだからおしよ。先方むこうじゃアお前を嫌い抜いているのだから……。」
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
『まだ酔っていらっしゃる。そんな説教を長々としているものだから、彼方むこうから何か参りました。はやくがっておしまいなさい』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかも二人の立っている位置は、前方むこうを見ても峨々ががたる山、後方うしろを見ても聳える山、右も左も山と谷の、荒涼寂寞こうりょうせきばくたる境地である。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
一方ならぬ御恩を受けていながら親方様の対岸むこうへ廻るさえあるに、それを小癪こしゃくなとも恩知らずなともおっしゃらず
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
とばかりおびえるように差出した三世相を、ものをも言わず引掴ひッつかんで、追縋おいすがって跡に附くと、早や五六間前途むこうへ離れた。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
鵂鶹ふくろうの鳴く声が鴉の声に交ってむこうの方から聞えてきたが、どこで鳴いているのか場所は判らなかった。
太虚司法伝 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「帰れ! 招喚よびにやるまでは来るな、帰れ!」と老人は言放って寝返ねがえりして反対むこうを向いて了った。
富岡先生 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
「あれは奥さんが、上でしょうとお訊きになったから、大したこともありませんとお答えしたんです。無論実力では負けない積りですけれど、向方むこうは要領が好いから敵いません」
求婚三銃士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
帽を傾け、顔を上げたが、藪に並んで立ったのでは、此方こなたの袖に隠れるので、みち対方むこうへ。別荘の袖垣から、ななめに坂の方を透かして見ると、つれの浴衣は、その、ほの暗い小店にえんなり。
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それよりももッと不思議なは、忽然として万籟ばんらい死して鯨波ときのこえもしなければ、銃声も聞えず、音という音は皆消失せて、唯何やら前面むこうが蒼いと思たのは、大方空であったのだろう。
お丹突然いきなり、「畜生——」と一喝して長羅宇ながらうの煙管を押取おっとり、火鉢の対面むこうに割膝して坐りたる鉄の額を砕けよと一つつ。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
忠弥の方でも狼狽の余り、数十人実は刹那的ただ一人いちにんと認め得ないところが不覚で、無効むこうの労力に疲れた結果到頭動きが取れなくなってしまう
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
書棚は壁に片寄せて、けんの高さを九尺つらねて戸口まで続く。組めば重ね、離せば一段の棚を喜んで、亡き父が西洋むこうから取り寄せたものである。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
... 自堕落者揃いだ。おばにしてもあねにしても。……私だってこれで老父さんには敗けないつもりだからねえ」……「向家むこうの阿母さんが木村の婆さんに、今度工藤の兄さんが脳病で帰ってきたということだが、工藤でもさぞ困ることだろうと言ってたそうなが、考えてみるとつまり脳病といったようなもんさね。ヒヒヒ」
贋物 (新字新仮名) / 葛西善蔵(著)
そうサ東京へ。旅費はもうできたが、彼地むこうへ行って三月ばかりは食えるだけの金を
非凡なる凡人 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
其の役所の向前むこうは低い丘になって、其処に律照寺りっしょうじと云う寺があったが、浜の方から其の寺は見えなかった。
海神に祈る (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
中庭を隔てた対向むこうの三ツ目の室には、まだ次の間で酒を飲んでいるのか、障子に男女なんにょ二個ふたつの影法師が映ッて、聞き取れないほどの話し声も聞える。
今戸心中 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
愛想だからわざと二三目音羽が負けて対手むこうの快いように致します。
むこうが使ってる道具を反対あべこべにこっちで使われたんだね、別なこたあねえ、知事様がお豪いのでござりますだ。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
三左衛門はみちに注意した。岩がいしだたみを敷いたようになっていて前岸むこうわたるにはぞうさもなかった。二人はその岩を伝って往った。
竈の中の顔 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
しかし女が捻らない先に鉄の取手がガチャリと鳴って扉が向側むこうから押し開らいた。女は二、三歩よろめいた。その鼻先へ突き出されたものは自動拳銃の銃口つつさきである。女はまたもよろめいた。
沙漠の古都 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
その付近に今ひとつ、向日むこう町という上産地がある。洛東の南、伏見稲荷の孟宗藪も近来とみに上物ができて、樫原に劣らぬと自慢している。
筍の美味さは第一席 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
船はシャロンのほうへわかれて行ったのであろう。そう思ってわたしたちはシャロンに着いたが、やはり船を見ることなしにまた進まなければならなかった。これがわたしの夢想むこう結末けつまつであった。
夢香むこうなんぞの香奩体こうれんたいの詩を最も気の利いた物だと思う位の事であった。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
……と同時に向うの機もユラユラと前に傾いたが、その一刹那せつなに見えた対機むこうのマークは紛れもなく……T11……と読まれたではないか……。
怪夢 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
あながち惚れたという訳でも無い。が、何だか自分に欠乏してる生命の泉というものが、彼女むこうには沸々と湧いてる様な感じがする。
予が半生の懺悔 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
あんな鼻附でも何となく尊いもののように存じましたけれども、今度のお米のことで、すっかり敵対むこうになりまして、憎らしくッて、しゃくに障ってならないのでございます。
政談十二社 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
向う葛西領の敵手むこう北條氏綱ほうじょううじつな氏康うじやす父子が陣を取り、此方こっち里見安房守義弘さとみあわのかみよしひろ太田新おおたしんろう康資やすもと同苗おなじく美濃守資正入道みのゝかみすけまさにゅうどうらくさいなどすこぶる処のものが籠城をして
旦那様何でございます、まア其の本人むこうが坊主でございますから、死んだと云う事を風の便りに聞いて、本当の親と思えば、死んだのちでもにくいとは思いますまいから
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
是れでお瀧は茂之助へ面当つらあてしく、わざとつい一里と隔たぬ猿田村やえんだむら取附とりつきに山王さんのうさまの森が有ります、其の鎮守の正面むこうに空家が有りましたからこれを借り、葮簀張よしずばり掛茶店かけぢゃやを出し
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
右には武光むこう岩、鬼岩、がま岩、帽子岩、ただ見あぐる岩石の突屹相とっきつそう乱錯相らんさくそう、飛躍相、蟠居相ばんきょそう、怪異相、趺坐相ふざそう相相である。点綴てんてつするには赤松がある、黒松がある、矮樹わいじゅがある、疎林がある。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
御伽小説専門の巌谷小波いわやさざなみ氏や、法官の滝川愚仏氏、また森無黄むこう岡野知十おかのちじゅう氏などが連合して、一箇の俳社が出来た、此方でも俳声という雑誌を出して、後には卯杖と改称した。
鳴雪自叙伝 (新字新仮名) / 内藤鳴雪(著)
と同音に、鯉はふらふらと袖を動かし、蟹は、ぱッぱッとけむを吹いて、==山を川にしょう、山を川にしょう==と同音に唄い行く。行掛けてよどみ、行途むこうを望む。
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それにもかかわらず、ほら、御覧の通り、機関車の操縦室キャッブの床から落ちた血の雫は、こんな処まで続いているじゃないか⁉ いや、それどころかまだまだ西方むこうまで続いている様だ。
気狂い機関車 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
「船はご一緒でも、私には宅助といううるさい者が付いていますし、阿波むこうへ行っても、また落ちあえるまでは、しばらくお別れでございます」
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)