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前方
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むこう
ふりがな文庫
“
前方
(
むこう
)” の例文
前方
(
むこう
)
を見ると高い山が半天にそそりたっていた。曾はとてもその山を越えることができないと思った。曾は妻と向きあって泣いた。
続黄梁
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
しかも二人の立っている位置は、
前方
(
むこう
)
を見ても
峨々
(
がが
)
たる山、
後方
(
うしろ
)
を見ても聳える山、右も左も山と谷の、
荒涼寂寞
(
こうりょうせきばく
)
たる境地である。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
何でも皆が駈出すのに、俺一人それが出来ず、何か
前方
(
むこう
)
が青く見えたのを憶えているだけではあるが、兎も角も小山の上の
此
(
この
)
畑
(
はた
)
で倒れたのだ。
四日間
(新字新仮名)
/
フセヴォロド・ミハイロヴィチ・ガールシン
(著)
そこで
小児
(
こども
)
は、
鈴見
(
すずみ
)
の橋に
彳
(
たたず
)
んで、
前方
(
むこう
)
を見ると、正面の
中空
(
なかぞら
)
へ、仏の
掌
(
てのひら
)
を開いたように、五本の指の並んだ形、
矗々
(
すくすく
)
立ったのが
戸室
(
とむろ
)
の
石山
(
いしやま
)
。
薬草取
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
大異は橋などを尋ねる暇がないので、そのまま水の中へ走り込んで、全身をずぶ濡れにしながらやっと
前方
(
むこう
)
の岸へあがった。
太虚司法伝
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
▼ もっと見る
……その
後
(
あと
)
から、鼠色の影法師。女の影なら月に
地
(
つち
)
を
這
(
は
)
う
筈
(
はず
)
だに、寒い
道陸神
(
どうろくじん
)
が、のそのそと四五尺離れた処を、ずっと
前方
(
むこう
)
まで附添ったんだ。
歌行灯
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
シュッシュッという
弾丸
(
たま
)
の中を
落来
(
おちく
)
る小枝をかなぐりかなぐり、
山査子
(
さんざし
)
の株を縫うように進むのであったが、
弾丸
(
たま
)
は段々烈しくなって、森の
前方
(
むこう
)
に何やら赤いものが
隠現
(
ちらちら
)
見える。
四日間
(新字新仮名)
/
フセヴォロド・ミハイロヴィチ・ガールシン
(著)
前方
(
むこう
)
を睨んだ。部屋の壁と、紙帳の側面とで出来ている空間が、ただ、暗く細長く見えるばかりで、敵の姿は見えなかった。頼母は、ソロソロと進んだ。すぐに、紙帳の二つ目の角まで来た。
血曼陀羅紙帳武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
黒い山の背がやはり
前方
(
むこう
)
の空を支えていた。暗い
谷間
(
たにあい
)
の方へ眼をやった時、蛍火のような
一個
(
ひとつ
)
の微な微な光を見つけた。
殺神記
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
処へ、荷車が一台、
前方
(
むこう
)
から押寄せるが如くに動いて、来たのは
頬被
(
ほおかぶり
)
をした百姓である。
星あかり
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
今だって
些
(
ちっ
)
ともこうしていたくはないけれど、こう
草臥
(
くたびれ
)
ては
退
(
の
)
くにも
退
(
の
)
かれぬ。少し休息したらまた
旧処
(
もと
)
へ戻ろう。幸いと風を
後
(
うしろ
)
にしているから、臭気は
前方
(
むこう
)
へ持って行こうというもの。
四日間
(新字新仮名)
/
フセヴォロド・ミハイロヴィチ・ガールシン
(著)
広巳の感情はたかぶって来たが、それでもその感情の
前方
(
むこう
)
には錦絵の女があった。広巳の感情はすぐやわらいだ。広巳は八幡宮の前へ往っていた。
春心
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
そして、すらすらと石橋を
前方
(
むこう
)
へ渡った。それから、森を通る、姿は
翠
(
みどり
)
に青ずむまで、
静
(
しずか
)
に落着いて見えたけれど、二ツ三ツ
重
(
かさな
)
った不意の出来事に、心の騒いだのは争われない。
伯爵の釵
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
広巳は飛びかかって
円木棒
(
まるたんぼう
)
を
揮
(
ふ
)
った。円木棒は松山の背に当った。松山は
前方
(
むこう
)
向けによろよろとなって倒れてしまった。
春心
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
そして、すら/\と
石橋
(
しゃっきょう
)
を
前方
(
むこう
)
へ渡つた。それから、森を通る、姿は
翠
(
みどり
)
に青ずむまで、
静
(
しずか
)
に落着いて見えたけれど、
二
(
ふた
)
ツ
三
(
み
)
ツ
重
(
かさな
)
つた不意の出来事に、心の騒いだのは
争
(
あらそ
)
はれない。
伯爵の釵
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
摺鉢
(
すりばち
)
の底のような
窪地
(
くぼち
)
になった庭の前には
薬研
(
やげん
)
のように
刳
(
えぐ
)
れた
渓川
(
たにがわ
)
が流れて、もう七つさがりの
輝
(
かがやき
)
のない
陽
(
ひ
)
が渓川の
前方
(
むこう
)
に在る山を
静
(
しずか
)
に染めていた。
山寺の怪
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
壑の
前方
(
むこう
)
の峰の凹みに陽が落ちかけていた。情熱のなくなったような冷たいその光が
微赤
(
うすあか
)
く
此方
(
こちら
)
の峰の一角を染めて、どこかで
老鶯
(
ろうおう
)
の声が聞えていた。
陳宝祠
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
世高は何の
目的
(
めあて
)
もなくその街をとぼとぼ歩いていると、
前方
(
むこう
)
から一人の老婆が
酒壷
(
さけどくり
)
を持ってきたが、擦れ違うひょうしに見るとそれは施十娘であった。
断橋奇聞
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
六七人の人夫の一群が
前方
(
むこう
)
から来た。
礁
(
はえ
)
の
破片
(
かけら
)
を運んでいる人夫であるから、邪魔になってはいけないと思ったので、権兵衛は体を片寄せて往こうとした。
海神に祈る
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
「ほんとうは、この
前方
(
むこう
)
の山に、お嬢さんの叔母さんになる方が隠れておりますから、そこへ遊びに往きます」
狼の怪
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
どこへ往こうと云う
当
(
あて
)
もなしに歩いているところである。とにかく入ってみようと思いだした。広巳は
前方
(
むこう
)
が知っていて己の知らないと云う女に好奇心を動かした。
春心
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
(平兵衛殿には、土州で
郡奉行
(
こおりぶぎょう
)
になっておられるが、
前方
(
むこう
)
で
御妻室
(
ごかない
)
を持って、男の子まであります)
水面に浮んだ女
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
旅人は笠をそのままにして、
路
(
みち
)
へあがって来て勘作に礼を云ってさっさと
前方
(
むこう
)
へ往ってしまった。
ある神主の話
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
彼は亥の刻になると外へ出て
湖水縁
(
こすいべり
)
の
路
(
みち
)
を歩いた。星の多い夏の
夜
(
よ
)
であった。と、
前方
(
むこう
)
からばたばたと足音をさして走って来る者があった。勘作は星の光に
透
(
すか
)
して見た。
ある神主の話
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
真澄はコールターで塗った裏門の扉をそっと開けて、
前方
(
むこう
)
を
透
(
すか
)
して見た
後
(
のち
)
に裏門を出て歩いた。
岐阜提灯
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
木客たちは夕飯の後で、例によって露骨な男女の話をしていると、谷を
距
(
へだ
)
てた
前方
(
むこう
)
の山から
死んでいた狒狒
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
倉知の家は電車線路の
前方
(
むこう
)
になった丘の上にあった。主人は小さな銀行の重役をしていてからそこへ移って来ていたものであった。主人が
歿
(
な
)
くなったのは五六年前のことであった。
白っぽい洋服
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
河野はそのまま
行
(
ぎょう
)
を続けてその日の夕方になったが、水が
喫
(
の
)
みたくなったので
渓
(
たに
)
へおりようと思っておりかけた。二三
丁
(
ちょう
)
ばかり往ったところで、
前方
(
むこう
)
から不思議な
風体
(
ふうてい
)
をした男がやって来た。
神仙河野久
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
章は朝食をすますと、往くともなしに
前方
(
むこう
)
の山の方へ谷をくだって往った。
狼の怪
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
「この、すぐ、
前方
(
むこう
)
の谷陰にいる者でございます」
狼の怪
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
前
常用漢字
小2
部首:⼑
9画
方
常用漢字
小2
部首:⽅
4画
“前方”で始まる語句
前方後圓
前方向