向方むこう)” の例文
窓の下はまだ朝霧が立ちこめていたが、いも畑の向方むこう側にあたる栗林の上にはもう水々しい光がして、栗拾いに駈けてゆく子供たちの影があざやかだった。
鬼涙村 (新字新仮名) / 牧野信一(著)
「あれは奥さんが、上でしょうとお訊きになったから、大したこともありませんとお答えしたんです。無論実力では負けない積りですけれど、向方むこうは要領が好いから敵いません」
求婚三銃士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
そのうちに向方むこうの社殿のあたりから、妙に不調和な笑い声とも鬨の声ともつかぬどよめきが起って、突然二十人ちかい一団がわッと風を巻いて森を突き走り出た。
鬼涙村 (新字新仮名) / 牧野信一(著)
そうこうしているうちに向方むこうの円光の中には様々な人影が次第に増して来て、焚火のまわりをグルリと取り巻いて、景気の好い仕事を見物している。彼らは、口々によろこびの言葉を発しているらしい。
吊籠と月光と (新字新仮名) / 牧野信一(著)