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先方
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むこう
ふりがな文庫
“
先方
(
むこう
)” の例文
「じゃ
御止
(
およ
)
しになれば好いのに。つまらないわ、貴夫、今になってあんな人と交際うのは。一体どういう気なんでしょう、
先方
(
むこう
)
は」
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「はは、判った。お前は
彼
(
あ
)
の市郎に惚れているのだろう。
無効
(
だめ
)
だからお
止
(
よ
)
しよ。
先方
(
むこう
)
じゃアお前を嫌い抜いているのだから……。」
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
何処で何う聞き出して来るんですか、矢っ張り
蛇
(
じゃ
)
の
道
(
みち
)
は
蛇
(
へび
)
ね。日本橋の金輪さんの娘さんの縁談の時なぞも
先方
(
むこう
)
が
匿
(
かく
)
していたことを……
脱線息子
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
圖「馬の鞍へ種が島を附けて行ったから、打落そうと思ったら、
先方
(
むこう
)
もどっこい
此方
(
こっち
)
にもと小筒を出した時は実にどうも驚いたよ」
松の操美人の生埋:02 侠骨今に馨く賊胆猶お腥し
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
先方
(
むこう
)
の知らぬを幸いに地底を深く
螺旋形
(
らせんけい
)
に掘り、大富金山に属すべきものを我らが方へ横取りするは、天意に
背
(
そむ
)
いたいわば
盗
(
ぬす
)
み。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
▼ もっと見る
そう
言
(
い
)
いながら、
私
(
わたくし
)
は
成
(
な
)
るべく
先方
(
むこう
)
を
驚
(
おどろ
)
かさないように、
徐
(
しず
)
かに
徐
(
しず
)
かに
腰
(
こし
)
を
降
(
おろ
)
して、この
可愛
(
かわい
)
い
少女
(
しょうじょ
)
とさし
向
(
むか
)
いになりました。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
「ええ、
何
(
なん
)
ですか、
大
(
たい
)
へん
行
(
い
)
きたがって、わたしに、六
週間
(
しゅうかん
)
だけ、
泊
(
とま
)
りにやってくれッて
言
(
い
)
いますの。
先方
(
むこう
)
へ
行
(
い
)
けばきっと
大切
(
だいじ
)
にされますよ。」
杜松の樹
(新字新仮名)
/
ヤーコプ・ルートヴィッヒ・カール・グリム
、
ヴィルヘルム・カール・グリム
(著)
だが、こちらの運転手には、事の
仔細
(
しさい
)
が分らぬ。何事かとたまげて、
躊躇
(
ちゅうちょ
)
している間に、
先方
(
むこう
)
の車は矢の様に走りだした。
恐怖王
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
それを
先方
(
むこう
)
で言い出したのです。「あなたに内緒で妹に指輪を買ってやりましたが、誠に済みませんでした」と言った。
あの世から便りをする話:――座談会から――
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
「外国の保険だの、外国の銀行にあったものだのが、かえって、こっちでは、わからなくなってしまっても、ポツポツ
先方
(
むこう
)
から知らせてくれて。」
朱絃舎浜子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
先方
(
むこう
)
からわざ/\足を運んで、もしうんといってくれゝば、いまゝで御用立したものは綺麗にこゝで棒を引く。——まずそれがさし当っての御相談。
春泥
(新字新仮名)
/
久保田万太郎
(著)
先方
(
むこう
)
じゃあ
巴里
(
パリイ
)
で、
麺麭
(
パン
)
を食ってバイブルを読んでいた時に、こっちじゃあ、雪の朝、
顫
(
ふる
)
えてるのを
戸外
(
おもて
)
へ突出されて、横笛の
稽古
(
けいこ
)
をさせられたんだ。
湯島詣
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「それじゃなるべく早くつれて行ってやる方がいいね、どうせ
先方
(
むこう
)
の子なら余り大きくならないうちの方がいいよ」
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
後の木蔭でその時、誰か、馬を
繋
(
つな
)
がせていた。喜兵衛がその方へ
面
(
おもて
)
を向けて、あっと口の裡で云うと、
先方
(
むこう
)
からも
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
先方
(
むこう
)
から世の中の
区画
(
くぎり
)
を打ち破って友達
交際
(
づきあい
)
を申し出ているのだから、伝二郎が大得意なのも無理ではなかった。
釘抜藤吉捕物覚書:07 怪談抜地獄
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
先方
(
むこう
)
の悟り方は悪いにしたところが即座に難儀を免れたのも仏の教えのお蔭であると思い私も大いに
悦
(
よろこ
)
んだです。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
けれどもね
先方
(
むこう
)
に着いてみるとわたしのからだの具合がどうもよくなくって上陸はとてもできなかったからしかたなしにまた同じ船で帰るようになったの。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
先方
(
むこう
)
があなたに逢いたがって、是非一度引き逢わせてくれといってるんです。先方からいい出したことだから、先方がこっちへ出向いて来るのが順序ですよ。
幕末維新懐古談:46 石川光明氏と心安くなったはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
原町の交番の巡査が十二時過ぎに、受持の区域を巡廻して居ると、
先方
(
むこう
)
からばたばた駈けて来る者があった。
呪われの家
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
それは
先方
(
むこう
)
も気の毒、浪もかあいそうなよなものじゃが、病気すっがわるかじゃなッか。何と思われたて、川島家が断絶するよかまだええじゃなッか、なあ。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
悪くするばかしで、結局君の不利益じゃないか。そりゃ
先方
(
むこう
)
の云う通り、今日中に引払ったらいゝだろうね
子をつれて
(新字新仮名)
/
葛西善蔵
(著)
が、こっちは
能
(
よ
)
く覚えていても、
先方
(
むこう
)
の眼中には背の低い
児供
(
こども
)
々々した私が残ってるはずがないから、何度摺れ違ってもツイぞ一度顔で会釈した事さいなかった。
硯友社の勃興と道程:――尾崎紅葉――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
晴次は何やら見出して、
不思
(
おもわず
)
また「ヤッ」といったが、気が着いて博士の袖を曳きながら、頻りに
先方
(
むこう
)
を指差すので、そちらを見ると如何にも石碑らしいものがある。
月世界跋渉記
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
先方
(
むこう
)
では私が叔母の家の者であり、学校の先生ということで遇うたびに礼をして行き過ぎるのでございます、田舎の娘に
似
(
にや
)
わない色の白い、眼のはっきりとした女で
女難
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
そうして妾は矢っ張り
旧来
(
もと
)
の通りの美留藻で、お姫様でも何でもなかったのだと思いまして、あまりの恥かしさに顔を手で隠しますと、
先方
(
むこう
)
でも顔に手を当てました。
白髪小僧
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
あんなお世辞気のない人ですけれど、どことなく好いたような気象の人ですの。私の顔さえみるといろいろなことを話しかけて、
先方
(
むこう
)
でも私のことをそう言うんですよ。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
私は実に人を
斬
(
きる
)
と云うことは大嫌い、見るのも嫌いだ、けれども逃げれば斬られる、仕方がない、
愈
(
いよい
)
よ
先方
(
むこう
)
が
抜掛
(
ぬきかか
)
れば背に腹は換えられぬ、
此方
(
こっち
)
も
抜
(
ぬい
)
て先を取らねばならん
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
先方
(
むこう
)
に金があるのだから、空手で入り込むというのは少し虫が好過ぎる。ここは矢張り、資格として、お婿さんのほうからも幾らかの持参金があって然る可きところだろう。成程。
斧を持った夫人の像
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
実は
先方
(
むこう
)
から何とか一言位は挨拶でもあるかと心待ちに待っていたが、それなり音沙汰がないので、結句手切金をやるの遣らぬのと云うような面倒な事にならなかったのを幸いと
夏すがた
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
雨を
衝
(
つ
)
いてでも、風を衝いてでも、自分は行ってもいゝ。が、
先方
(
むこう
)
は? そう思うと、美奈子は寂しかった。普通にお墓詣りをする人が、こんな雨降りの日に出かけて来る訳はない。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
「そんな心配はない。
先方
(
むこう
)
も爵位を持っているほどの人物だから……」
月世界競争探検
(新字新仮名)
/
押川春浪
(著)
偶然
(
ふと
)
先方
(
むこう
)
に座敷の
燈
(
あかり
)
が見えるから、その方へ行こうとすると、それがまた飛んでもない方に見えるので、
如何
(
どう
)
しても方角が考えられない、ついぞ見た事のない、
谿谷
(
たに
)
の崖の上などへ出たりするので
怪物屋敷
(新字新仮名)
/
柳川春葉
(著)
案
(
あん
)
じ
煩
(
わずら
)
う必要があるのだろう——天意が、力を貸してくれたというか、神仏が見そなわしたというか、いのちがけで抱いて来た復讐の大望は、彼が、こうしたいと思う以上に、
先方
(
むこう
)
から動いて来て
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
是非
先方
(
むこう
)
より
頭
(
かしら
)
を低くし身を
縮
(
すぼ
)
めて
此方
(
こち
)
へ相談に来たり、何とぞ半分なりと仕事をわけて下されと、今日の上人様のお
慈愛
(
なさけ
)
深きお言葉を頼りに泣きついても頼みをかけべきに、何としてこうは遅きや
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
「だって、
先方
(
むこう
)
は殿様だもの」
大菩薩峠:19 小名路の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「現に出し抜かれているじゃありませんか?
先方
(
むこう
)
は奥さんばかりでなく、御主人まで本気になって、
種々
(
いろいろ
)
と計略を
繞
(
めぐ
)
らすんですから」
求婚三銃士
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
先方
(
むこう
)
でも声に応じて駈けて来た。が、惨憺たる
此場
(
このば
)
の
光景
(
ありさま
)
を見て、
何
(
いず
)
れも
霎時
(
しばらく
)
は
呆気
(
あっけ
)
に取られた。巡査は
剣鞘
(
けんざや
)
を握って進み出た。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
定「これを貴方の物にして、此の手紙を開けて御覧なすって、
若
(
も
)
し
入用
(
にゅうよう
)
の手紙なれば
先方
(
むこう
)
へ返したって
宜
(
い
)
いじゃア有りませんか」
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
『私以外の娘だったら、
先方
(
むこう
)
が惚れて来るのをいい事にして、絞って絞って絞り抜いて、その揚句未練無く捨てるだろうに』
西班牙の恋
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
すると学校を出たての平岡でないから、
先方
(
むこう
)
に解らない、かつ都合のわるいことはなるべく云わない様にして置く。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
先方
(
むこう
)
では大宅を知っていたのか、やがて血みどろの山犬は、ノソノソと樹の蔭を出て、二三度彼の足元を
嗅
(
か
)
いだかと思うと、森の奥へと駈込んで行った。
鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
「先生、
惜
(
おし
)
いことをしました、
同
(
おんなじ
)
一杯
回生剤
(
きつけ
)
を頂かして下さるのなら、
先方
(
むこう
)
へ参りません
前
(
さき
)
に、こうやって、」
三枚続
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
折には
先方
(
むこう
)
からこちらへ教えに来てくれるというような都合で余程進歩するのも早いように思いました。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
「よし、俺は木で彫るものなら何んでも彫ろう。そして
先方
(
むこう
)
から頼んで来たものなら何でも彫ろう」
幕末維新懐古談:39 牙彫りを排し木彫りに固執したはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
「だが伊助どん、待ちねえよ。ただの
難癖言掛
(
なんくせいいがか
)
りじゃすまねえことを、そうやって担ぎ込んで来るからにゃあ、
先方
(
むこう
)
にだってしかとした証拠ってものがあろうはず。」
早耳三次捕物聞書:02 うし紅珊瑚
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
イヤイヤ一
度
(
ど
)
は
逢
(
あ
)
わせることに、
先方
(
むこう
)
の
指導霊
(
しどうれい
)
とも
手筈
(
はず
)
をきめて
置
(
お
)
いてある。
良人
(
おっと
)
と
逢
(
あ
)
った
位
(
くらい
)
のことで、すぐ
後戻
(
あともど
)
りするような
修行
(
しゅぎょう
)
なら、まだとても
本物
(
ほんもの
)
とは
言
(
い
)
われぬ。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
はじめは
何処
(
どこ
)
のお子さんと
訊
(
き
)
いたりして、姉妹で私の肩上げをつまんだり
袂
(
たもと
)
の振りを揃えて見たりしていたが、段々に
馴染
(
なじ
)
んで
先方
(
むこう
)
でも大っぴらに表の障子を明け
開
(
ひろ
)
げて
旧聞日本橋:14 西洋の唐茄子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
「だけど、お前の目が始終
先方
(
むこう
)
を捜していると同じに、先方の目だってお前を
見遁
(
みのが
)
すもんか。」
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
... 行ってごらんになったら
宜
(
よ
)
かろう」とその患者さんに名刺を渡して
先方
(
むこう
)
へ行って貰うと同時に、私は心霊研究会へ電話を掛けまして「今
斯
(
こ
)
う
斯
(
こ
)
うした人が行くから、
宜
(
よろ
)
しく頼む」
あの世から便りをする話:――座談会から――
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
オヤと思いながら立ち上って向うを見ますと、向うも矢張り立ち上ってこの
方
(
ほう
)
を見ていました。試しに両手を動かして見ますと、向うでも動かします。足を踏みますと
先方
(
むこう
)
も踏みます。
白髪小僧
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
“先方”の意味
《名詞》
先方(せんぽう)
相手の方向。また、その人。
先の方向。
(出典:Wiktionary)
先
常用漢字
小1
部首:⼉
6画
方
常用漢字
小2
部首:⽅
4画
“先方”で始まる語句
先方様
先方衆
先方持
先方樣
先方組