“むかう”のいろいろな漢字の書き方と例文
カタカナ:ムカウ
語句割合
先方32.8%
16.4%
彼方13.4%
無何有10.4%
向方4.5%
対岸3.0%
前方3.0%
對岸3.0%
1.5%
前途1.5%
向岸1.5%
対面1.5%
彼国1.5%
彼國1.5%
彼女1.5%
彼岸1.5%
1.5%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
段段先方むかうでは憎しみを増し、此方ではひがみが募る。意地を張つても、悲しいことには、彼女の一家は人のなさけと憐みとできなければならない。
夜烏 (新字旧仮名) / 平出修(著)
更に岸をくだつて水上すゐじやううかかもめと共にゆるやかな波にられつゝむかうの岸に達する渡船わたしぶねの愉快を容易に了解する事が出来るであらう。
水 附渡船 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
「なんだよつて、へ、へ、へ。そこな、酸模すかんぽ蚊帳釣草かやつりさう彼方むかうに、きれいなはなが、へ、へ、はなが、うつむいて、くさつまんでなさるだ。」
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
唯昔の苦行者のやうに無何有むかうの砂漠を家としてゐる。その点は成程気の毒かも知れない。しかし美しい蜃気楼は砂漠の天にのみ生ずるものである。
侏儒の言葉 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
ちよいと、爪先きをあげると、僕の爪先きは遥か彼方の波がしらを蹴つてゐる! ぴよんと飛びあがると僕のあたまは、遥か向方むかうの、月の光りで斑らになつてゐる松林にとゞいてゐるではないか。
センチメンタル・ドライヴ (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
縫直なほして着よと下されたのとは汝の眼にはうつらぬか、一方ならぬ御恩を受けて居ながら親方様の対岸むかうへ廻るさへあるに、それを小癪なとも恩知らずなとも仰やらず
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
米国の戦時通信記者として名高いゼエムス・バアンス氏が、今度の戦争の当初、白耳義ベルジユームにゐた折の事、ある日ブラツセルの市街まち徜徉ぶらついてゐると、前方むかうから独逸の自動車が一りやう風を切つて飛んで来た。
かれ焦慮あせつていつもするやうに大聲おほごゑして對岸むかうつたはずふねんだ。「おうえ」とおうずるこゑみづわたつてつよかもちかきこえた。勘次かんじこゑあつせられてだまつた。ぐにへさきうすきりなかからえた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
のつそりは憎い奴、親方のむかうを張つて大それた、五重の塔を生意気にも建てやうなんとは憎い奴憎い奴、親方がやさし過ぎるので増長した謀反人め
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
日外いつぞやの凌雲院の仕事の時も鐵や慶をむかうにして詰らぬことから喧嘩を初め、鐵が肩先へ大怪我をさした其後で鐵が親から泣き込まれ、嗚呼悪かつた気の毒なことをしたと後悔しても此方も貧的
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
つはくらい。……前途むかうさがりに、見込みこんで、勾配こうばいもつといちじるしい其處そこから、母屋おもや正面しやうめんひく縁側えんがはかべに、薄明うすあかりの掛行燈かけあんどんるばかり。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
駈足をしてる様ないそがしい人々、さては、濁つた大川を上り下りの川蒸気、川の向岸むかうに立列んだ、強い色彩いろ種々いろいろの建物、などを眺めて、取留とりとめもない、切迫塞せつぱつまつた苦痛くるしみおそはれてゐた事などが
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
親に異見を食ふ子より何段増して恥かしかろ、生磔刑いきばりつけより死んだ後塩漬の上磔刑になるやうな目にあつてはならぬ、初めは我も是程に深くも思ひ寄らなんだが、汝が我の対面むかうにたつた其意気張から
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
だが何だね、バイロンはう古いんでさ。辺麽あんなのは今ぢや古典クラシツクになつてるんで、彼国むかうでも第三流位にしきや思つてないんだ。感情が粗雑で稚気があつて、ひとりで感激してると言つた様な詩なんでさ。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
うですか。だが何だね、バイロンはう古いんでさ。あんなのは今ぢや最う古典クラシックになつてるんで、彼國むかうでも第三流位にしきや思つてないんだ。
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
先刻さつき一寸見えたがナ、僕は何だか気の毒の様に感じたから、挨拶もせずに過ぎたのサ、彼女むかうでも成るべく人の居ない方へと、さけてる様子であつたからナ、山木見たいなおやぢに梅子さんのあると云ふは
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
川の彼岸むかうは山、山の麓を流に臨んで、電柱が並んで居る。所々に橋も見える。人道が通つてるのだらうが、往来ゆききの旅人の笠一つ見えぬ。鳥の声もせねば、風の吹く様子もない。
雪中行:小樽より釧路まで (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
恩ある其人のむかうに今は立ち居る十兵衞に連添へる身の面をあはすこと辛く、女気の纎弱かよわくも胸を動悸どきつかせながら、まあ親方様
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)