“さき”のいろいろな漢字の書き方と例文
カタカナ:サキ
語句割合
先24.8%
前22.2%
尖18.0%
先方6.9%
崎4.6%
曩4.0%
尖端3.4%
端1.9%
先刻1.7%
頭1.2%
前途1.1%
幸0.9%
咲0.9%
前方0.7%
先端0.7%
将来0.6%
嚮0.5%
以前0.5%
尖頭0.3%
ヶ崎0.3%
岬0.3%
先頭0.3%
向0.2%
前刻0.2%
先鋒0.2%
埼0.1%
他0.1%
対手0.1%
嚢0.1%
後0.1%
拆0.1%
未来0.1%
沙紀0.1%
狹城0.1%
狹木0.1%
裂0.1%
鋒0.1%
好去0.1%
曩日0.1%
疇昔0.1%
遠方0.1%
他日0.1%
以後0.1%
佐紀0.1%
先途0.1%
光0.1%
其先0.1%
前程0.1%
又前0.1%
向者0.1%
対方0.1%
尖所0.1%
尾0.1%
往日0.1%
徴0.1%
捧0.1%
敵手0.1%
旧0.1%
最先0.1%
未來0.1%
末0.1%
梢0.1%
良人0.1%
襄0.1%
逈0.1%
鋩子0.1%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
此(こ)の按摩(あんま)杖(つゑ)を力(ちから)に、川(かは)べりの水除(みづよ)け堤(づゝみ)へ来(く)ると、杖(つゑ)の先(さき)へ両手(りやうて)をかけて、ズイと腰(こし)を伸(の)ばし、耳(みゝ)欹(そばだ)てゝ考(かんが)えて居(ゐ)る様子(やうす)、——と言(い)ふ。
怪力 (新字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
昔も近江街道を通る馬士(まご)が、橋の上に立った見も知らぬ婦(おんな)から、十里前(さき)の一里塚の松の下の婦(おんな)へ、と手紙を一通ことづかりし事あり。
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
むっと籠(こも)った待合の裡(うち)へ、コツコツと——やはり泥になった——侘(わびし)い靴の尖(さき)を刻んで入った時、ふとその目覚しい処を見たのである。
売色鴨南蛮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
校長先生の筆で、是非彼に勧めたい人があると言って、先方(さき)でもこの話の成立つことをひどく希望していると書いてよこしてくれた。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
と、武田勝頼は、父祖数代の古府——甲府の躑躅(つつじ)ヶ崎(さき)からこの新府へ——年暮(くれ)の二十四日というのに、引き移ってしまったのである。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
主人の君も我を愛し給ふ。この愛は、曩(さき)に料(はか)らずも我母上を、おのが車の轍(わだち)にかけしことありと知りてより、愈〻深くなりまさりぬ。
罵声(ばせい)が子路に向って飛び、無数の石や棒が子路の身体(からだ)に当った。敵の戟(ほこ)の尖端(さき)が頬(ほお)を掠(かす)めた。纓(えい)(冠の紐(ひも))が断(き)れて、冠が落ちかかる。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
私はその女のかんざしを揷した髪の上から鼠色の頭巾を冠つた形が端(さき)の尖つた擬宝珠(ぎぼうしゆ)によく似て居たことを覚えて居る。
犬 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
絵師の家の主人が出て木戸の錠を下(おろ)して出掛けて行つた。先刻(さき)の女客(をんなきやく)の行つたと同じやうにまた石段から直(す)ぐ隠れてしまつた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛、与謝野晶子(著)
いや、此奴(こいつ)狂言がうまいんだ。こっちへ連れて来い、寝台の頭(さき)へ。そうそう、そこなら死人の顔が見えまい。死人は寝がえりを
見開いた眼 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
前途(さき)はどうなっても構わない……というような、一切合財をスッカリ諦らめ切ったような、ガッカリした気持ちになってしまった。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
第三句の字余りは、人麿の歌にも、「幸(さき)くあれど」等があるが、後世の第三句の字余りとは趣がちがうので破綻云々(うんぬん)と云った。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
朝のお食事を軽くすましてから、私は、焼けた薪の山の整理にとりかかっていると、この村でたった一軒の宿屋のおかみさんであるお咲(さき)さんが
斜陽 (新字新仮名) / 太宰治(著)
私は元気づいて前方(さき)を馳ってゆく白(シロ)を悲しそうに見た。「あれだけが生きている。あれがみな知っている。」と思った。「あれがもし話ができたら、よく私を慰めてくれるに違いない。」
幼年時代 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
噛み砕いた鉛筆の末端の様に、先端(さき)のほうけたステッキに、小さな風呂敷を結えつけて、それを肩にひっ担いでいた。
放浪の宿 (新字新仮名) / 里村欣三(著)
「だって将来(さき)の事なんかわかんないんですもの……貴方みたいに正直に、何もかも真(ま)に受けて、青くなったり、赤くなったり……」
二重心臓 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
嚮(さき)にも述べた通り、様々な工藝の中で最も吾々の日常生活に深い交りを有(も)つものは民藝です。民藝こそは国民生活の一番偽りなき反映なのです。
美の国と民芸 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
わが用ゐし言葉は、ネムブロットの族(やから)がかの成し終へ難き業(わざ)を試みしその時よりも久しき以前(さき)に悉く絶えにき 一二四—一二六
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
無花果(いちじく)のような顎の下の肉、白い脂肪、断面(きりくち)あらわに首は危く竹の尖頭(さき)に留まっている。
話をしているうちに偶然(ぐうぜん)、そのお嬢さんがぼくの育った鎌倉(かまくら)の稲村(いなむら)ヶ崎(さき)につい昨年迄(まで)、おられたことが解(わか)り、二人の間に、七里ヶ浜や極楽寺(ごくらくじ)辺(あた)りの景色や土地の人の噂(うわさ)などがはずみ
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
しかし、これを裏へ出れば屏風(びょうぶ)ヶ浦(うら)となり、遠からずして犬吠(いぬぼう)ヶ岬(さき)があり、銚子の港がある。銚子の港の前面には、利根の長江が遮(さえぎ)っているから、まさかそれをよこぎるほどのことはあるまい。
大菩薩峠:28 Oceanの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
武右衛門と孫右衛門は左角の鍵屋の軒へ忍んで北谷口で逸する敵の退路(にげみち)を切取ると共に先頭(さき)に立つ一人を斬る。荒木、渡辺の二人は万屋の小影に身をひそめて又五郎と附人に当る。
鍵屋の辻 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
向(さき)に御相談申し候尊攘堂の本山ともなるべし。人物集り書籍集りたる上にて、神道を尊び神国を尊び 天皇を尊び、正論ばかり抜き取り一書として天下に頒(わか)つべし。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
柳町の裏長屋で……魚頭も鱗もない、黄肌鮪(きはだ)に弱った事は、——前刻(さき)に言った通りです。
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
其の言には、政宗今日夕刻より俄(にわか)に虫気(むしけ)に罷(まか)り在り、何とも迷惑いたし居り候、明日の御働き相延ばされたく、御ン先鋒(さき)を仕(つかまつり)候事成り難く候、とあるのであった。
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
オホキビツ彦の命とワカタケキビツ彦の命とは、お二方で播磨(はりま)の氷(ひ)の河(かわ)の埼(さき)に忌瓮(いわいべ)を据(す)えて神(かみ)を祭(まつ)り、播磨からはいつて吉備(きび)の國を平定されました。
家(うち)へ尋(たづ)ねて行(ゆ)く、他(さき)も来る、そこで学校外(がくかうぐわい)の交(まじはり)を結(むす)ぶやうに成(な)つたのです
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
が、それは自分勝手に、対手(さき)が色仕掛けにする……いや、してくれる……と思った、こっちが大の自惚(うぬぼれ)……
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
弁(べん)ジ其名実ヲ覈(ただ)シ集メテ以テ之ヲ大成シ此ニ日本植物誌ヲ作ルヲ素志(そし)トナシ我身命ヲ賭(と)シテ其成功ヲ見ント欲ス嚢(さき)ニハ其宿望遂ニ抑フ可カラズ僅カニ一介書生ノ身ヲ以テ敢テ此大業ニ当リ自ラ貲(し)ヲ擲(なげう)ツテ先ヅ其図篇ヲ発刊シ其事漸ク緒(ちょ)ニ就(つき)シト雖(いえど)モ後幾(いくば)クモナク悲運ニ遭遇シテ其梓行(しこう)ヲ停止シ此ニ再ビ好機来復ノ日ヲ
死刑執行者(しけいしつかうしや)の論據(ろんきよ)は斯(か)うでした、それから斬(き)り離(はな)さるべき體(からだ)がなければ、頭(あたま)を切(き)ることは出來(でき)ない、甞(かつ)てそんな事(こと)をしたこともなければ、これから後(さき)とても一生涯(しやうがい)そんな事(こと)の有(あ)らう筈(はづ)がない。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
拆(さき)竹のとををとををに二九、天の眞魚咋(まなぐひ)三〇獻る
未来(さき)のことを考えると、絶望が真っ暗な大きな口を開けて待っているだけだった。
五階の窓:04 合作の四 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
天皇、御年九十五歳(ここのそぢまりいつつ)(乙卯の年三月十五日崩りたまひき。)御陵は、沙紀(さき)の多他那美(たたなみ)六にあり。
狹城(さき)の楯列(たたなみ)の御陵にお葬り申し上げました。
またその皇后ヒバス姫の命の時に、石棺作りをお定めになり、また土師部(はにしべ)をお定めになりました。この皇后は狹木(さき)の寺間(てらま)の陵にお葬り申しあげました。
火薬袋の紐(ひも)をクルクルと短銃の筒(つつ)に巻いて、打(ぶ)ッ裂(さき)羽織(ばおり)の後ろへ差した最前の武士が、こういって止め合図をかけると、その露をふくんだ春草の上へ駕尻軽く下ろされて、若党らしい者三、四名
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
火はその習ひにしたがひてしばらく鳴りて後とがれる鋒(さき)をかなたこなたに動かし、氣息(いき)を出していひけるは 五八—六〇
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
さて、それでは、マア坊のいない間に、さっきの歌の「如何に好去(さき)くや」というところを、なんと解釈してやったらいいか、考えて置かなければならぬ。
パンドラの匣 (新字新仮名) / 太宰治(著)
相見ずて日(け)長くなりぬ此(この)頃は如何(いか)に好去(さき)くやいぶかし吾妹(わぎも)
パンドラの匣 (新字新仮名) / 太宰治(著)
因って儂ら同感の志士は、これを未萌(みほう)に削除(さくじょ)せざるを得ずと、即(すなわ)ち曩日(さき)に政府に向かって忠告したる所以(ゆえん)なり。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
曩日(さき)に政府は卑屈無気力にして、かの辮髪奴のために辱(はずかし)めを受けしも、民間には義士烈婦ありて、国辱をそそぎたりとて、大いに外交政略に関する而已(のみ)ならず
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
疇昔(さき)の日おん身が物思はしげに打沈みてのみ居給ひしとき、拙(つたな)き身のそを慰め參らせばやとおもひしことあり。その時より今日までは、まだしみ/″\とおん物語せしことなし。
唯だ小尼公のすゞしき目の我面を見上げて、衆人の罪惡の爲めに代りて我に謝するに似たるありて、われはその辱の疇昔(さき)よりも忍び易きを覺えたり。竊(ひそか)におもふに我にはまことに弱點あり。
いよいよ配る段になると、聞き伝えて十町遠方(さき)からも貰いに来て、半時間経つと、一袋も残らず、葬礼人夫は目がまわった。
婚期はずれ (新字新仮名) / 織田作之助(著)
ある日、敬二郎が二階の窓からたんを吐くと、路地を通っている銭湯(ふろ)屋の娘の顔に掛った。それでおたかと銭湯屋との仲は目立って仲がわるくなり、子供たちは二町も遠方(さき)の銭湯へ行った。
婚期はずれ (新字新仮名) / 織田作之助(著)
「君はばかだよ。帰らなくてどうして生きかえることができる。僕が他日(さき)で湖南にゆくから、その時逃げないようにするがいい。機嫌よくね。」
連城 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
承知して居ながら、其が我輩には出来ないから情ない。是から以後(さき)我輩に働けと言ふのは、死ねといふも同じだ。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
長皇子(ながのみこ)(天武天皇第四皇子)が志貴皇子(しきのみこ)(天智天皇第四皇子)と佐紀(さき)宮に於て宴せられた時の御歌である。御二人は従兄弟(いとこ)の関係になっている。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
……実は、自宅玄関へ出た私ども家内が、「先途(さき)は麻布の色町ですよ、」とこの運転手に聞かせたからですが。
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
卯平(うへい)は竹(たけ)の火箸(ひばし)の光(さき)で落葉(おちば)を少(すこ)し透(すか)すやうにして灰(はひ)を掻(か)き立(た)てゝ見(み)ても火(ひ)はもうぽつちりともなかつたのである。彼(かれ)はそれから燐寸(マツチ)を深(さが)して見(み)たが何處(どこ)にも見出(みいだ)されなかつた。
土 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「其先(さき)を僕が言おうか、こうでしょう、最後(おしまい)にその少女(むすめ)が欠伸(あくび)一つして、それで神聖なる恋が最後(おしまい)になった、そうでしょう?」と近藤も何故(なぜ)か真面目で言った。
牛肉と馬鈴薯 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
『どうせ待(ま)つなら品川(しながは)で待(ま)ちましようか、同(おな)じことでも前程(さき)へ行(い)つて居(ゐ)る方(はう)が氣持(きもち)が可(い)いから』
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
蔦蘿(つたかづら)に包まれたる水道の址(あと)とこれを圍める橄欖(オリワ)の茂林とは、黯澹(あんたん)たる一幅の圖をなして、わが刻下の情に愜(かな)へり。われは又前(さき)に過ぎたる門を出でたり。門外に大廢屋あり。
向者(さき)より待合所の縁に倚(よ)りて、一篇(ぺん)の書を繙(ひもと)ける二十四、五の壮佼(わかもの)あり。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
金剛杖(こんごうづえ)を棄置いて、腰の据(すわ)らぬ高足を摚(どう)と踏んで、躍上(おどりあが)るようにその前を通った、が、可笑(おかし)い事には、対方(さき)が女性(にょしょう)じゃに因って、いつの間にか、自分ともなく、名告(なのり)が慇懃(いんぎん)になりましてな。……
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それはさうと、只今(たゞいま)も申(まう)しました通(とほ)り、妾(わたし)の乳(ちゝ)の尖所(さき)の苦艾(にがよもぎ)を嘗(な)めさっしゃると、苦(にが)いので、阿呆(あはう)どのがむづかって、乳(ちゝ)をなァ憎(にく)がって! すると鳩小舍(はとごや)が、がた/\/\。
柄(にぎり)には緑色の玉(ぎよく)を獅子頭(ししがしら)に彫(きざ)みて、象牙(ぞうげ)の如く瑩潤(つややか)に白き杖(つゑ)を携へたるが、その尾(さき)をもて低き梢の花を打落し打落し
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
そしてヨブの所に来り見れば往日(さき)の繁栄、往日の家庭、往日の貴き風采(ふうさい)悉く失せて今は見る蔭もなく、身は足の跖(うら)より頂(いただき)まで悪しき腫物(はれもの)に悩み
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
徴(さき)惡(わる)し、憎(につ)くき奴(やつ)
鬼桃太郎 (旧字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
その全生涯の大部分を捧(さき)げ尽して書いた、最も貴重なる作品「カンタータ」でさえその有様である。もっとも、一部分だけ抽(ぬ)いて吹込んだものは相当たくさん入っている。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂、野村あらえびす(著)
それを私が今日(こんにち)始めて知つたのではない、知つて身を堕(おと)したのは、私は当時敵手(さき)を殺して自分も死にたかつたくらゐ無念極(きはま)る失望をした事があつたからです。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
主(あるじ)夫婦を併(あは)せて焼亡(しようぼう)せし鰐淵(わにぶち)が居宅は、さるほど貫一の手に頼(よ)りてその跡に改築せられぬ、有形(ありがた)よりは小体(こてい)に、質素を旨としたれど専(もつぱ)ら旧(さき)の構造を摸(うつ)して差(たが)はざらんと勉(つと)めしに似たり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
最先(さき)に歩めるかの二人が今しも街(まち)の端にいたれる時、闇中(あんちゅう)を歩めるかの黒影は猛然と暗を離れて、二人を追いぬ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
「歸りたいわ。だけど誰だつて未來(さき)の事はわからないわ。」
かれ二柱の神、天(あめ)の浮橋(うきはし)三に立たして、その沼矛(ぬぼこ)を指(さ)し下(おろ)して畫きたまひ、鹽こをろこをろに畫き鳴(な)して四、引き上げたまひし時に、その矛の末(さき)より滴(したた)る鹽の積りて成れる島は、淤能碁呂(おのごろ)島五なり。
怖いわねえ! この辺には一本だつて天までとどくやうな樫の樹はないのね。だけれど、どこかしら遠い遠いお国に、梢(さき)が天国までもとどいて、ゆらゆら揺れてゐる樹が一本あるつてことよ。
私ゃお祖父さんのことばかり考えて、別に何にも良人(さき)の事は思わないもんだから、ちょいと見たばかりで、ずんずん葛籠(つづら)の裡(なか)へしまいこんで打棄(うっちゃ)っといたわ。
化銀杏 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
私の手元には此の写真(襄(さき)の譚(はなし)に云へる民友社の揷絵に似たるもの是也)一枚だけしか有りませむ。
よし、当時は大内氏の全盛時代で、Y町の文化が逈(さき)に京都を凌ぐものがあつたにしろ、他の通俗的な工芸美術の跋扈(ばつこ)に圧倒されて、雪舟の墨絵ぐらゐ、それほど重きに置かるわけはない。
故郷に帰りゆくこころ (新字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
身を低めて背(しり)えに退いたから源十郎はすんでのことでわれと吾が足を愛刀の鋩子(さき)にかけるところだった。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)