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先刻
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さき
ふりがな文庫
“
先刻
(
さき
)” の例文
先刻
(
さき
)
に干したる湯呑の中へ、吸子の茶の濃くなれるを、細く長くうつしこみて、ぐっと一口飲みたるが、あまり苦かりしにや湯をさしたり。
化銀杏
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
絵師の家の主人が出て木戸の錠を
下
(
おろ
)
して出掛けて行つた。
先刻
(
さき
)
の
女客
(
をんなきやく
)
の行つたと同じやうにまた石段から
直
(
す
)
ぐ隠れてしまつた。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
心得ましたと
先刻
(
さき
)
より
僕人部屋
(
おとこべや
)
に
転
(
ころ
)
がりいし
寺僕
(
おとこ
)
ら立ちかかり引き出さんとする、土間に坐り込んで
出
(
いだ
)
されじとする十兵衛。
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
すると池の上で
先刻
(
さき
)
がたの鶺鴒が一声
啼
(
な
)
いて向うの岸に飛んで行くのである。二郎は、その鶺鴒の下りた林の方に目を移して又考え込んでしまう。
稚子ヶ淵
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
透
(
す
)
きとほるやうに
蒼白
(
あをじろ
)
きがいたましく
見
(
み
)
えて、
折柄
(
をりから
)
世話
(
せわ
)
やきに
來
(
き
)
て
居
(
ゐ
)
たりし
差配
(
さはい
)
が
心
(
こゝろ
)
に、
此人
(
これ
)
を
先刻
(
さき
)
のそゝくさ
男
(
をとこ
)
が
妻
(
つま
)
とも
妹
(
いもと
)
とも
受
(
うけ
)
とられぬと
思
(
おも
)
ひぬ。
うつせみ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
▼ もっと見る
案事
(
あんじ
)
けれどもお菊が
情
(
なさけ
)
に
惹
(
ひか
)
されて毎夜々々通ひはなすものゝ何時も
泊
(
とま
)
る事なく
夜更
(
よふけ
)
て歸りけるが今夜も
最早
(
もはや
)
丑刻
(
やつ
)
過
(
すぎ
)
頃馬喰町へぞ歸りける然るに
先刻
(
さき
)
より樣子を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
去るほどに三匹の獣は、互ひに尽す秘術
剽挑
(
はやわざ
)
、右に
衝
(
つ
)
き左に躍り、縦横
無礙
(
むげ
)
に
暴
(
あ
)
れまはりて、
半時
(
はんとき
)
ばかりも
闘
(
たたか
)
ひしが。金眸は
先刻
(
さき
)
より飲みし酒に、四足の働き心にまかせず。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
つい
先刻
(
さき
)
ほどまで、このごろ静子と一緒に寝ることになっているお今が、
枕頭
(
まくらもと
)
に明りをつけて、何やら読んでいたのであったが、それもそのころにはもう深い眠りに陥ちていた。
爛
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
路も
先刻
(
さき
)
よりは
平
(
ひら
)
たくなって、真白に草と木の間を
貫
(
つらぬ
)
いている。ある所には大きな松があった。葉の長さが日本の倍もあって色は
海辺
(
うみべ
)
のそれよりも黒い。ある所は荒れ果てた庭園の
体
(
てい
)
に見えた。
満韓ところどころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「東京警備一般警報第二号!」
先刻
(
さき
)
ほどの将校の声がした。「発声者は東京警備参謀塩原大尉。唯今より
以降
(
いこう
)
、東京地方一円は、警戒管制を実施すべし。東京警備司令官陸軍大将別府九州造。終り」
空襲葬送曲
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
扨
(
さて
)
も鳩ら
先刻
(
さき
)
にせる姿を改め
ランボオ詩集≪学校時代の詩≫
(新字旧仮名)
/
ジャン・ニコラ・アルチュール・ランボー
(著)
おりからしとやかに戸を排して、静かにここに入り来たれるは、
先刻
(
さき
)
に廊下にて行き逢いたりし三人の腰元の中に、ひときわ目立ちし
婦人
(
おんな
)
なり。
外科室
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
透きとほるやうに蒼白きがいたましく見えて、折から世話やきに來て居たりし、差配が心に、
此人
(
これ
)
を
先刻
(
さき
)
のそゝくさ男が妻とも妹とも受とられぬと思ひぬ。
うつせみ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
酒の廻りしため
面
(
おもて
)
に
紅色
(
くれない
)
さしたるが、一体
醜
(
みにく
)
からぬ上
年齢
(
としばえ
)
も
葉桜
(
はざくら
)
の
匂
(
におい
)
無くなりしというまでならねば、女振り十段も
先刻
(
さき
)
より上りて
婀娜
(
あだ
)
ッぽいいい
年増
(
としま
)
なり。
貧乏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
わたしは
先刻
(
さき
)
から眠くてならない。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
先刻
(
さき
)
に赤城得三が、人形室を
出行
(
いでゆ
)
きたる
少時
(
しばらく
)
後に、不思議なることこそ起りたれ。風も無きに人形の
被
(
かずき
)
揺めき落ちて、
妖麗
(
あでやか
)
なる顔の
洩
(
も
)
れ出でぬ。
活人形
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
たゞし
然
(
さ
)
までに浮世をば思ひ切りたる身としては、懐旧の情はさることながら余りに涙の遣る瀬無くて、我を恨むかとも見えし故、
先刻
(
さき
)
のやうには云ひつるなり
二日物語
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
娘は
先刻
(
さき
)
の涙に身を揉みしかば、さらでもの疲れ甚しく、なよなよと母の膝へ寄添ひしまゝ眠れば
うつせみ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
地に
転
(
まろ
)
びてようよう
起
(
た
)
ち、力無ければ争い得ず、
悄然
(
しょうぜん
)
として立去るを、
先刻
(
さき
)
より見たる豆府屋は、同病相憐の情に堪えず
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
娘は
先刻
(
さき
)
の涙に身を
揉
(
も
)
みしかば、さらでもの疲れ甚しく、なよなよと母の膝へ寄添ひしまま
眠
(
ねぶ
)
れば
うつせみ
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
夫の膝を右の手で揺り動かしつ
掻
(
か
)
き
口説
(
くど
)
けど、
先刻
(
さき
)
より無言の仏となりし十兵衛何ともなお言わず、
再度
(
ふたたび
)
三度かきくどけど
黙黙
(
むっくり
)
としてなお言わざりしが、やがて
垂
(
た
)
れたる
首
(
こうべ
)
を
抬
(
もた
)
げ
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
その
佃煮
(
つくだに
)
に
駈
(
か
)
けつけた
時
(
とき
)
は……
先刻
(
さき
)
に
見着
(
みつ
)
けた
少
(
すこ
)
しばかりの
罐詰
(
くわんづめ
)
も、それも
此
(
これ
)
も
賣切
(
うりき
)
れて
何
(
なん
)
にもなかつた。
間引菜
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
娘
(
むすめ
)
は
先刻
(
さき
)
の
涙
(
なみだ
)
に
身
(
み
)
を
揉
(
も
)
みしかば、さらでもの
疲
(
つか
)
れ
甚
(
はなはだ
)
しく、なよ/\と
母
(
はゝ
)
の
膝
(
ひざ
)
へ
寄添
(
よりそ
)
ひしまゝ
眠
(
ねぶ
)
れば
うつせみ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
反響
(
ひゞき
)
のみは我が耳に堕ち来れど
咳声
(
しはぶき
)
一つ聞えず、玄関にまはりて復頼むといへば、
先刻
(
さき
)
見たる憎気な怜悧
小僧
(
こばうず
)
の一寸顔出して、庫裡へ行けと教へたるに、と
独語
(
つぶや
)
きて早くも障子ぴしやり。
五重塔
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
満堂
斉
(
ひと
)
しく声を
呑
(
の
)
み、高き
咳
(
しわぶき
)
をも漏らさずして、
寂然
(
せきぜん
)
たりしその瞬間、
先刻
(
さき
)
よりちとの身動きだもせで、死灰のごとく、見えたる高峰、軽く見を起こして
椅子
(
いす
)
を離れ
外科室
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
反響
(
ひびき
)
のみはわが耳に
堕
(
お
)
ち来れど
咳声
(
しわぶき
)
一つ聞えず、玄関にまわりてまた頼むといえば、
先刻
(
さき
)
見たる憎げな
怜悧小僧
(
りこうこぼうず
)
のちょっと顔出して、庫裡へ行けと教えたるに、と
独語
(
つぶや
)
きて早くも障子ぴしゃり。
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
此人
(
これ
)
を
先刻
(
さき
)
のそそくさ男が妻とも
妹
(
いもと
)
とも受とられぬと思ひぬ。
うつせみ
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
先刻
(
さき
)
より我知らず悲しくなりしを
押耐
(
おしこら
)
えていたりしが、もはや忍ばずなりて、わッと泣きぬ。驚きて口をつぐみし
婦人
(
おんな
)
は、ひたと
呆
(
あき
)
れし
状
(
さま
)
にて、手も着けでぞ
瞻
(
みまも
)
りける。
照葉狂言
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
曲りたるもの、
直
(
すぐ
)
なるもの、心の趣くままに落書したり。しかなせるあいだにも、頬のあたり
先刻
(
さき
)
に毒虫の触れたらむと覚ゆるが、しきりにかゆければ、袖もてひまなく
擦
(
こす
)
りぬ。
竜潭譚
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
曲りたるもの、
直
(
すぐ
)
なるもの、心の趣くままに
落書
(
らくがき
)
したり。しかなせるあひだにも、頬のあたり
先刻
(
さき
)
に毒虫の触れたらむと覚ゆるが、しきりにかゆければ、
袖
(
そで
)
もてひまなく
擦
(
こす
)
りぬ。
竜潭譚
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
「どうも
姉様
(
ねえさん
)
難有
(
ありがと
)
う。」車夫は輪軸を検せんとて梶棒を下すを
暗号
(
あいず
)
に、おでん
燗酒
(
かんざけ
)
、
茄小豆
(
ゆであずき
)
、大福餅の屋台
店
(
みせ
)
に、
先刻
(
さき
)
より
埋伏
(
まいふく
)
して待懸けたる、車夫、
日雇取
(
ひようとり
)
、立ン坊、七八人
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
渠は
先刻
(
さき
)
にいかにしけん、ひとたびその平生を
失
(
しっ
)
せしが、いまやまた自若となりたり。
外科室
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
お前さま
先刻
(
さき
)
のほど、
血相
(
けっそう
)
をかへて
謂
(
い
)
はしつた、何か珍しいことでもあらうかと、
生命
(
いのち
)
がけでござつたとの。良いにつけ、悪いにつけ、
此処等
(
ここら
)
人の
来
(
こ
)
ぬ
土地
(
ところ
)
へ、珍しいお客様ぢや。
二世の契
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
それも心細く、その言う処を確めよう、
先刻
(
さき
)
に老番頭と語るのをこの隠れ家で聞いたるごとく、自分の
居処
(
いどころ
)
を
安堵
(
あんど
)
せんと欲して、立花は手を伸べて、心覚えの隔ての襖に触れて
試
(
み
)
た。
伊勢之巻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
赤大名の城が落ちて、木曾殿打たれたまいぬ、と
溝
(
どぶ
)
の中で鳴きそうな、どくどくの
袷
(
あわせ
)
の
褄
(
つま
)
、膝を払って蹴返した、
太刀疵
(
たちきず
)
、鍵裂、
弾疵
(
たまきず
)
、焼穴、
霰
(
あられ
)
のようにばらばらある、
態
(
なり
)
も、
振
(
ふり
)
も、今の
先刻
(
さき
)
。
式部小路
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
また
先刻
(
さき
)
に便所より
顕
(
あらわ
)
れしお丹といえる女乞食、今この処に
殿
(
しんがり
)
せり。
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
“先刻”の意味
《名詞・形容動詞》
先程。ちょっと前。
以前から。すでに。とっくに。
(出典:Wiktionary)
先
常用漢字
小1
部首:⼉
6画
刻
常用漢字
小6
部首:⼑
8画
“先刻”で始まる語句
先刻程