“擦”のいろいろな読み方と例文
読み方割合
43.7%
こす31.7%
さす13.7%
4.4%
かす3.0%
1.1%
すり0.9%
さつ0.3%
0.3%
0.2%
あてこすり0.2%
おさ0.2%
すれ0.2%
ずれ0.2%
なす0.2%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
「それでもおへそが大きいやろ。あんまり大き過ぎるのでれて血が出やへんかしら思うて、心配してるのやが、どうもなかったか?」
御身 (新字新仮名) / 横光利一(著)
思いのほか、声だけは確であったが、悪寒がするか、いじけた小児こどもがいやいやをすると同一おなじすくめた首を破れた寝ン寝子の襟にこすって
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
お玉は嬉しくてたまらない、腰をかがめてムクの背中をさすってやろうとすると、ムクがその口に何か物をくわえていることを知りました。
大菩薩峠:06 間の山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そしてがっかりくたびれたあしりながら竹早町から同心町の界隈かいわいをあてどもなくうろうろ駆けまわってまた喜久井町に戻って来た。
うつり香 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
「なあに、後から来るのんはほんのかすり傷みたいなもんやから、大事ありません。——時にせんせい、何んぼ差上げたらえゝでせう?」
医師高間房一氏 (新字旧仮名) / 田畑修一郎(著)
吾輩の背中せなかの毛が靴刷毛くつばけで逆にすられたような心持がする。しばらくは足音もしない。細君を見るとだ口をあいて太平の空気を夢中に吐呑とどんしている。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
むかし富士山に登つた時、砂走で轉んですりむいた膝子ひざつこの傷痕を撫でながら、日本晴の空にそそり立つ此の國の山々の姿を想ひ描くのである。
山を想ふ (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)
けんさつ、三しんせん緊々きんきん縮々しゅくしゅく、などという表字法にみても、別してこの裴如海はいにょかいひとりがそう傑出した色坊主であったわけでもあるまい。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
縄を解き、懐中ふところよりくし取りいだして乱れ髪けと渡しながら冷えこおりたる肢体からだを痛ましく、思わず緊接しっかりいだき寄せて、さぞや柱に脊中がと片手にするを、女あきれて兎角とかくことばはなく
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
奈何どうなりとも、そこは貴方の御意見通りに。』と白髯の議員は手をみ乍ら言つた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
彼は明かに一族中の曾呂利で、婦人たちに向つて人のわるい冗談やあてこすりを盛に投げつけ昔からの話の種をむしかへして、いつまでも皆のものを可笑しがらせた。
高祖保よ おさへよ 揚るべからず はかつて しかるべからず矣……
(新字旧仮名) / 高祖保(著)
隣室りんしつには、Aの夫人ふじん、Cの母堂ぼだうわかいTの夫人ふじんあつまつてゐた。病室びやうしつはうでのせはしさうな醫員いゐん看護婦かんごふ動作どうさしろふくすれおと、それらは一々病人びやうにん容態ようたいのたゞならぬことを、隣室りんしつつたへた。
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
文壇ずれごうも無い、謙遜温雅な態度のうちに、一脈鬱々たる覇気があって、人をして容易にれしめないのは、長袖者ちょうしゅうしゃ流でないからである。
日本探偵小説界寸評 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
はるか向うには、白銀しろかねの一筋に眼を射る高野川をひらめかして、左右は燃えくずるるまでに濃く咲いた菜の花をべっとりとなすり着けた背景には薄紫うすむらさき遠山えんざん縹緲ひょうびょうのあなたにえがき出してある。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)