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擦
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ず
ふりがな文庫
“
擦
(
ず
)” の例文
そしてがっかり
疲
(
くたび
)
れた
脚
(
あし
)
を
引
(
ひ
)
き
擦
(
ず
)
りながら竹早町から同心町の
界隈
(
かいわい
)
をあてどもなくうろうろ駆けまわってまた喜久井町に戻って来た。
うつり香
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
彼は突然湯河の
手頸
(
てくび
)
を
掴
(
つか
)
んでぐいと肩でドーアを押しながら明るい家の中へ
引
(
ひ
)
き
擦
(
ず
)
り込んだ。電燈に照らされた湯河の顔は真青だった。
途上
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
上手
(
かみて
)
から一人の着物の前をはだけてひき
擦
(
ず
)
るように着た痩せた男が路いっぱいにふらりふらりと大股に左右に揺れて降りてくるのを見た。
石ころ路
(新字新仮名)
/
田畑修一郎
(著)
三十前後の顔はそれよりも
更
(
ふ
)
けたるが、鋭き眼の
中
(
うち
)
に言われぬ
愛敬
(
あいきょう
)
のあるを、客
擦
(
ず
)
れたる
婢
(
おんな
)
の一人は見つけ出して口々に友の
弄
(
なぶ
)
りものとなりぬ。
書記官
(新字新仮名)
/
川上眉山
(著)
花曇りの空がだんだん
擦
(
ず
)
り落ちて来る。重い雲がかさなり合って、
弥生
(
やよい
)
をどんよりと抑えつける。昼はしだいに暗くなる。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
▼ もっと見る
かう云つて鏡子は姪に頬
擦
(
ず
)
りをしたが心は寂しかつた。千枝子は口を少し
開
(
あ
)
いて小鳥のやうな愛らしい表情をして居た。
帰つてから
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
若黨
擦
(
ず
)
れがして居ないばかりでなく、傍に居る者に、五月の
薫風
(
くんぷう
)
のやうに爽やかさを感じさせるのです。
銭形平次捕物控:199 蹄の跡
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
男は
然程
(
さほど
)
注意を惹かないが、
行
(
ゆき
)
交
(
か
)
ふ女が
老
(
おい
)
も若きも引
擦
(
ず
)
る様な広い
裳
(
ジユツプ
)
を
穿
(
は
)
いて、腰の下迄ある長い黒の肩掛を
一寸
(
ちよつと
)
中から片手で胸の所の
合目
(
あはせめ
)
を
抓
(
つま
)
んで歩くのが目に附く。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
にじみ出ると、生活から游離された霊魂が、浮ばれずにさまよつてゐるのではなからうかと思はれて、私は大地の底へでも、引き
擦
(
ず
)
り入れられるやうに、たゞもう、
味気
(
あぢき
)
なく
亡びゆく森
(新字旧仮名)
/
小島烏水
(著)
これと
斉
(
ひと
)
しく、どろんとしつつも血走った
眼
(
まなこ
)
を、白眼勝に仰向いて、赤熊の筒袖の皮
擦
(
ず
)
れ、毛の落ち、
処々
(
ところどころ
)
、
大
(
おおい
)
なる
斑
(
まだら
)
をなした
蝦蟇
(
がま
)
のごときものの、ぎろぎろと
睨
(
にら
)
むを見たのである。
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
東の縁側から逃げ出した七代の乱れた
髻
(
もとどり
)
に、飛鳥のごとく掴みかかった与一は、そのまま
飛石
(
とびいし
)
の上をヒョロヒョロと引き
擦
(
ず
)
られて行った。
金剛兵衛
(
こんごうへえ
)
を持直す
間
(
ま
)
もなく泉水の側まで来た。
名君忠之
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
「おゝ
暑
(
あつ
)
え/\、なんち
暑
(
あつ
)
えこつたかな」おつたは
前駒
(
まへこま
)
の
下駄
(
げた
)
を
引
(
ひ
)
き
擦
(
ず
)
つて
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
「一向寒ぐなぃ。
兄
(
あい
)
なのなは大きくて引き
擦
(
ず
)
るがらわがんなぃ。」
種山ヶ原
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
死骸
(
しがい
)
でも引き
擦
(
ず
)
って帰れると、成功の方かも知れません。
崩れる鬼影
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
けど、あの娘、随分田舎
擦
(
ず
)
れがしてゝ仕立て憎いわね。
巴里祭
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
閾際を通る時に、細君は長い寝間着の
裾
(
すそ
)
をぞろぞろ
引
(
ひ
)
き
擦
(
ず
)
って歩くので、その裾が五度に三度までは必ず瓦斯の栓に
触
(
さわ
)
ること。
途上
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
宜道は
懐
(
ふところ
)
から例の書物を出して、
頁
(
ページ
)
を
半
(
なか
)
ば
擦
(
ず
)
らして宗助の前へ置いた。それは
宗門無尽燈論
(
しゅうもんむじんとうろん
)
と云う書物であった。始めて聞きに出た時、宜道は
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「でも継子くらいは殺し兼ねませんよ。お屋敷
擦
(
ず
)
れがしてる上に、ヤットウだって知っているし」
銭形平次捕物控:107 梅吉殺し
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
疲労の足を引き
擦
(
ず
)
って、石壁の上に登りついたとき、眼は先ず晶々
粲々
(
さんさん
)
として、碧空に輝きわたる大雪田、海抜三千百八十九
米突
(
メートル
)
の高頂から放射して、細胞のような小粒の雪が、半ば結晶し
白峰山脈縦断記
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
「
一向
(
いっこう
)
寒
(
さむ
)
ぐなぃ。兄※のなは大きくて引き
擦
(
ず
)
るがらわが※なぃ。」
種山ヶ原
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
やはり子供を安心させたさに
惹
(
ひ
)
き
擦
(
ず
)
られて、喜ぶ顔が見たいために妻と
馴
(
な
)
れ合いで
睦
(
むつま
)
しい風を装うこともあるのである。
蓼喰う虫
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
窓から首を出す訳には行かないから、姿を
突
(
つ
)
き留める事は出来ないが、だんだん近づいて来る模様だ。からんからんと
駒下駄
(
こまげた
)
を引き
擦
(
ず
)
る音がする。
坊っちゃん
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
入れたものはきっと
泥
(
どろ
)
の底に引き
擦
(
ず
)
り
込
(
こ
)
んでやろう。
土神ときつね
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
そう云って片手でぱっぱっと煙を吐きながら、もう好い加減
屑屋
(
くずや
)
へ売っても惜しくなさそうな旅行
擦
(
ず
)
れのしたスーツケースを、寝台の上へ一杯にひろげた。
蓼喰う虫
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
小野さんは重い足を引き
擦
(
ず
)
ってまた部屋のなかへ
這入
(
はい
)
って来た。坐らずに机の前に立っている。過去の
節穴
(
ふしあな
)
がすうと
開
(
あ
)
いて昔の歴史が細長く遠くに見える。暗い。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
自分が嬉しさの余り、疲れた足を
擦
(
ず
)
りながら、いそいそ近づいてくると、初さんは
奇怪
(
けげん
)
な顔をして
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
あの時も米吉どんと結婚するようなしないような、若旦那に対しても愛着があるような無いような、
曖昧
(
あいまい
)
な態度だったので、つい若旦那も引き
擦
(
ず
)
られて来たのであるが
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
やがて
提唱
(
ていしやう
)
が
始
(
はじ
)
まつた。
宜道
(
ぎだう
)
は
懷
(
ふところ
)
から
例
(
れい
)
の
書物
(
しよもつ
)
を
出
(
だ
)
して
頁
(
ページ
)
を
半
(
なか
)
ば
擦
(
ず
)
らして
宗助
(
そうすけ
)
の
前
(
まへ
)
へ
置
(
お
)
いた。それは
宗門
(
しゆうもん
)
無盡
(
むじん
)
燈論
(
とうろん
)
と
云
(
い
)
ふ
書物
(
しよもつ
)
であつた。
始
(
はじ
)
めて
聞
(
き
)
きに
出
(
で
)
た
時
(
とき
)
、
宜道
(
ぎだう
)
は
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
しかし私には、此の人の好い、気の弱い両親が、もうすつかり恒川に足元を見られてゐるので、結局彼の望み通りに引き
擦
(
ず
)
られてしまふことが、分り切つてゐるやうに思へた。
青春物語:02 青春物語
(新字旧仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
私は死の恐怖に眼を閉じて
一途
(
いちず
)
に性の
衝動
(
しょうどう
)
の
赴
(
おもむ
)
くままに身を
委
(
まか
)
せた。夫も私の大胆さと無鉄砲さに
呆
(
あき
)
れ、今にどうなるであろうかと案じながらも結局私に引き
擦
(
ず
)
られて行った。
鍵
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
光沢
(
つや
)
のある髪で
湿
(
しめ
)
っぽく
圧
(
お
)
し付けられていた空気が、弾力で
膨
(
ふく
)
れ上がると、枕の位置が畳の上でちょっと廻った。同時に
駱駝
(
らくだ
)
の
膝掛
(
ひざかけ
)
が
擦
(
ず
)
り落ちながら、裏を返して
半分
(
はんぶ
)
に折れる。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
そして二つの展覧会を見るとくたくたに疲れてしまったが、悦子の懇望で動物園も見ることになり、くたびれた足を引き
擦
(
ず
)
って簡略に一と廻りして、帰ったのは夕刻六時過ぎであった。
細雪:02 中巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
第三と知らぬ
間
(
あいだ
)
に心変りがしたようなものの、変りつつ進んで来た、心の状態は、うやむやの間に縁を引いて、
擦
(
ず
)
れ落ちながらも、振り返って、もとの所を慕いつつ押されて行くのである。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
それは
丁稚
(
でっち
)
から写真館の主にまでなったのだから、啓ちゃんのような
坊々
(
ぼんぼん
)
とは違うだろうけれども、それだけに、そう云っては悪いが、世間
擦
(
ず
)
れのした
狡猾
(
こうかつ
)
さを持っているような気がする
細雪:02 中巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
それで歩き出すや否や、少し話もし掛けて見たくらいに、近しい仲となってしまった。これから
推
(
お
)
して考えると、川で死ぬ時は、きっと船頭の一人や二人を引き
擦
(
ず
)
り込みたくなるに相違ない。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
貞之助は彼女達の
喚
(
わめ
)
き声と廊下をばたばた駈け
擦
(
ず
)
り廻る音で一睡も出来ず
細雪:02 中巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
例
(
たと
)
えば椅子の足の折れかかったのに腰をかけて uneasy であるとか、ズボン釣りを忘れたためズボンが
擦
(
ず
)
り落ちそうで uneasy であるとか、すべて落ちつかぬ様子であります。
文芸の哲学的基礎
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
擦
常用漢字
中学
部首:⼿
17画
“擦”を含む語句
擦違
手擦
摩擦
擦剥
擦合
擦過傷
擦傷
擦付
足擦
引擦
衣擦
当擦
頬擦
擦硝子
垢擦
擦過
面擦
擦着
擦創
擦上
...