“一向”のいろいろな読み方と例文
読み方割合
いっこう69.9%
いつかう13.5%
ひたすら8.6%
ひとむき1.8%
ヒタスラ1.8%
ひたぶる1.2%
いつこう1.2%
ひたす0.6%
ひたむき0.6%
ひとむ0.6%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
なにしろそういう人々はこと生命財産に関係することだとあって、衣服が破れ、鼻血を出し、靴の脱げ落ちることなど一向いっこう意にかいせず
竹田は詩書画三絶を称せられしも、和歌などはたくみならず。画道にて悟入ごにふせし所も、三十一文字みそひともじの上には一向いつかうき目がないやうなり。
雑筆 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「慣れない人はよく迷いますよ」と言われた嬢の言葉に全く恐縮して、一向ひたすらに好意を謝するのみであった。午後九時頃であったろう。
春の大方山 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
が、女の一向ひとむきになって何かを堪え忍んでいようとするような様子は、いよいよ誰の目にも明らかになるばかりだった。
姨捨 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
郎女は、一向ヒタスラ、あの音の歩み寄つて來る畏しい夜更けを、待つやうになつた。をとゝひよりは昨日、昨日よりは今日といふ風に、其跫音が間遠になつて行き、此頃はふつに音せぬやうになつた。
死者の書 (旧字旧仮名) / 折口信夫釈迢空(著)
一向ひたぶるしんを労し、思を費して、日夜これをのぶるにいとまあらぬ貫一は、肉痩にくやせ、骨立ち、色疲れて、宛然さながら死水しすいなどのやうに沈鬱しをはんぬ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
十間も行くと雪が二、三尺も積っているのに驚いたが、更に進むともう何処も真白に雪に埋れて、地面の露れている所などは少しもない。路筋さえも一向いつこうに判然せぬ。
釜沢行 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
もとよりその辺の用意は一と通りしたりしも、かかる病魔に襲われんとは、全く思い寄らざることなれば、僅かに下剤を用いなどして、一向ひたすら恢復を祈りしも、浮腫容易に減退するに至らず
ひたすら思ふ一人にすがりついてひとり今生のみならず来世までも頼んで悔いざる一向ひたむきな心を歌つたもの。
晶子鑑賞 (新字旧仮名) / 平野万里(著)
様子は変っていても、こんな静かな、同じことを繰り返すような為事をするには差支さしつかえなく、また為事がかえって一向ひとむきになった心を散らし、落ち着きを与えるらしく見えた。
山椒大夫 (新字新仮名) / 森鴎外(著)