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ひたぶる
一向に
神を労し、思を費して、日夜これを
暢るに
遑あらぬ貫一は、
肉痩せ、骨立ち、色疲れて、
宛然死水などのやうに沈鬱し
了んぬ。
一向に名声
赫々の豪傑を
良人に持ちし思いにて、その以後は毎日公判廷に
出づるを楽しみ、かの人を待ち
焦れしぞかつは怪しき。
宮は男の手をば益す
弛めず、益す激する心の
中には、夫もあらず、世間もあらずなりて、唯この命を
易ふる者を失はじと
一向に思入るなり。
起居振舞のお
転婆なりしは言うまでもなく、修業中は髪を
結う
暇だに
惜しき
心地せられて、
一向に書を読む事を好みければ、十六歳までは髪を
剪りて前部を左右に分け
かくいへばとて
単に閑寂を好み、山野に跡を
晦さんとにはあらず、やゝ病身人に
倦みて世を厭ひし人に似たり。