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さす
ふりがな文庫
“
擦
(
さす
)” の例文
お玉は嬉しくてたまらない、腰を
屈
(
かが
)
めてムクの背中を
擦
(
さす
)
ってやろうとすると、ムクがその口に何か物を
啣
(
くわ
)
えていることを知りました。
大菩薩峠:06 間の山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
船頭の
半纒
(
はんてん
)
や、客の羽織などを着せて、
擦
(
さす
)
つたり叩いたり、いろ/\介抱に手を盡して居ると、何うやらかうやら元氣を持ち直します。
銭形平次捕物控:024 平次女難
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
同時に触角といふ其の細いしなやかな小さな角でそつと胃を叩いたり、乳管を
擦
(
さす
)
つたりします。此の蟻の仕事は大抵うまくゆくのです。
科学の不思議
(新字旧仮名)
/
ジャン・アンリ・ファーブル
(著)
そんな文句を、下手糞な字で、たどたどしく書きつけ、もう一度、上から
擦
(
さす
)
って見てから、それを、肌身深く
蔵
(
しま
)
いこんで仕舞った……。
夢鬼
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
水をのませても、水天宮様の
御符
(
ごふ
)
を飲ませても、
擦
(
さす
)
っても
揺
(
ゆす
)
ぶっても、お直はもう正体がないので、彼女も途方にくれてしまった。
半七捕物帳:35 半七先生
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
▼ もっと見る
誰一人としてその意味がわからなかった。いたずらにまごまごして彼女の背中を
擦
(
さす
)
ってやったりするほかになす
術
(
すべ
)
も知らなかった。
田舎医師の子
(新字新仮名)
/
相馬泰三
(著)
何だか
独言
(
ひとりごと
)
のように言って聞かせて、
錆茶釜
(
さびちゃがま
)
に
踞
(
しゃが
)
んで、ぶつぶつ
遣
(
や
)
るたびに、黒犬の背中を
擦
(
さす
)
ると、犬が、うううう、ぐうぐうと遣る。
甲乙
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
病気は
腎臓
(
じんぞう
)
に神経痛で、気象のはっきりした銀子が気に入り、肩や腰を
擦
(
さす
)
らせたりして、
小遣
(
こづか
)
いをくれたり、菓子を食べさせたりした。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
國「実にこんなお嬢さまはない、親孝行で、お
父
(
とっ
)
さんのお達者の時分には
八
(
や
)
ツ九ツまで肩を
擦
(
さす
)
ったり足を揉んだりして、実に感心致します」
業平文治漂流奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「僕も自分の商売を正面に
貶
(
けな
)
されたんだから、実はムッとしたんだけれど、まあ/\と思って、胸を
擦
(
さす
)
って帰って来たんだ」
勝ち運負け運
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
親爺は急いで肌を入れた上から二の腕を
擦
(
さす
)
った。吾輩に喰付かれたが、嬉しいらしく女中を振返ってニコニコと笑った。
超人鬚野博士
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
問ひて餘の字を付加へらるゝ時はスハヤと足を
擦
(
さす
)
りたり又まだと
云
(
いふ
)
は
頓
(
やが
)
て
其處
(
そこ
)
ならんと思ふて問ふとき付加へられて力を
木曽道中記
(旧字旧仮名)
/
饗庭篁村
(著)
或る時、あまり足が痛かつたので、
窃
(
そつ
)
と机の下に足を投げ出して脛を
擦
(
さす
)
つてゐると、折悪しくそこへ伯父が出て来て
世の中へ
(新字旧仮名)
/
加能作次郎
(著)
女は眼が悪いので菓子折を
撫
(
な
)
でたり
擦
(
さす
)
ったりして見た上、「どうも御親切に……」と
恭
(
うやうや
)
しく礼を述べたが、その上にある紙包を手で取上げるや否や
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
お利代が寝ずに看護してくれて、腹を
擦
(
さす
)
つたり、温めたタヲルで
罨法
(
あんぱふ
)
を
施
(
や
)
つたりした。トロ/\と
交睫
(
まどろ
)
むと、すぐ烈しい便気の塞迫と腹痛に目が覚める。
鳥影
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
「いや、
折角
(
せっかく
)
の志しだが、それには及ばねえ。今更お前さんに
擦
(
さす
)
ってもらったところで、ひびのはいったおれの体は、どうにもなりようがあるめえからの」
歌麿懺悔:江戸名人伝
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
... 触れずに
置
(
おい
)
ても古くなれば自然と光沢が出る。決して人が手で
擦
(
さす
)
るから光沢の出る訳ではない」小山「それでよく解った。今の問題中に玉子は
何故
(
なにゆえ
)
に銀器を ...
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
ただこの上は遮二無二言うことを聞かせようと胸を
擦
(
さす
)
って今宵を待っていた今日というこの十三日——待てば海路の何とやらで、これはまたどえらい儲け口が
釘抜藤吉捕物覚書:05 お茶漬音頭
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
有王は、その小屋で、
主
(
しゅ
)
に生き写しの二人の男の子と三人の女の子を見た。俊寛は、長男の頭を
擦
(
さす
)
りながら、これが
徳寿丸
(
とくじゅまる
)
であるといって、有王に引き合せた。
俊寛
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
刀を差した男の体は鳥のようであった。河野は
何時
(
いつ
)
の間にか
人事不省
(
じんじふせい
)
に陥ってしまった。そして、気がついた時には、刀を差した男が
後
(
うしろ
)
へ廻って背を
擦
(
さす
)
っていた。
神仙河野久
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
群集もちりぢりになって、
親戚
(
みうち
)
の者ばかり残りました頃、父親は石の落ちたように胸を
撫
(
な
)
で
擦
(
さす
)
りながら
藁草履
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
私の手を兩手でとつて彼は
擦
(
さす
)
つた。同時に彼は最も困惑した陰鬱な樣子で、じつと私を見つめてゐた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
啓吉は、そっと、ラジオを手で
擦
(
さす
)
って見た。どこに音が貯えてあるのか不思議だったし、まるで噴き井戸から無限に溢れる音のように、ラジオはよくお
喋
(
しゃべ
)
りしている。
泣虫小僧
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
そうしてその一頭の長い額を叩き、頬の膨らみから頤の毛並を軽く軽く撫で
擦
(
さす
)
った。馬は眼を細め、薄あかい歯茎をむき出し、
顫
(
ふる
)
わせながら、さも
擽
(
こそ
)
ばゆそうに笑った。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
それでもなお睡るようになって来ると、その番人が立って行って後ろの方から少し
擦
(
さす
)
り気味に押えて、そうしてその病人に少しこう圧迫を感ぜしめて眼を覚まさせます。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
嫋
(
しなや
)
かではあるが
粗
(
あら
)
い手で私の
全身
(
からだじゅう
)
を
擦
(
さす
)
っている。その快い触覚が疲労と苦痛とで麻痺している私の
肉体
(
からだ
)
を
労
(
いた
)
わってくれる。私の意識は次第次第に恢復するように思われた。
沙漠の古都
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
兄は
柱
(
はしら
)
に
倚
(
よ
)
つて立上り、縄の食ひ込んだ、血の
滲
(
にじ
)
んだ
手首
(
てくび
)
を
擦
(
さす
)
り乍ら言つた。貢さんは
蓬生
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
(著)
増さんは恥ずかしそうに眼をしばしばさせ、右手で、銀色の無精髭の伸びた顎を
擦
(
さす
)
った。
青べか物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
はっと息を呑んで其の儘注視して居りますと、先ず泣き
歇
(
や
)
んだ男が、鼻を鳴らし乍ら、泣くのよそう、ね、泣くのよそうよ、と妻の背を
擦
(
さす
)
りつつ優しく
劬
(
いた
)
わり始めたのであります。
陳情書
(新字新仮名)
/
西尾正
(著)
立ち上らんとするに足の凍えたれば、両手にて
擦
(
さす
)
りて、漸やく歩み得る程にはなりぬ。
舞姫
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
そして、恰度木を
擦
(
さす
)
っているようじゃないか。大体屍体の粘膜と云えば、死後に乾燥するのが通例だろう。だが、二時間やそこいらで斯んなに酷いのは、恐らく異例に属する事だぜ。
夢殿殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
固
(
もと
)
より承諾を得たりとは、その場合われと心を
欺
(
あざむ
)
ける答えなりしが、果ては質問の
箭
(
や
)
の堪えがたなく、
最
(
い
)
とど苦しき胸を押さえ
額
(
ひたい
)
を
擦
(
さす
)
りて、
眩暈
(
めまい
)
に
托言
(
ことよ
)
せ、
委
(
くわ
)
しくはいずれ上陸のうえと
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
「あいた。ひどいことをするぜ。おお痛い」と、西宮は仰山らしく腕を
擦
(
さす
)
る。
今戸心中
(新字新仮名)
/
広津柳浪
(著)
眼のなかへ入れても痛くない、子供の顔を見ないでは夜も日も明けないと云う可愛がり方。そして、車大工とその女房は、交わるがわるその一粒種を手にとって、撫でたり
擦
(
さす
)
ったりしていた。
親ごころ
(新字新仮名)
/
ギ・ド・モーパッサン
(著)
さし
詰
(
つむ
)
る
癪
(
しゃく
)
押
(
おさ
)
えて御顔
打守
(
うちまもり
)
しに、
暢
(
のび
)
やかなる御気象、
咎
(
とが
)
め
立
(
だて
)
もし玉わざるのみか何の苦もなくさらりと
埒
(
らち
)
あき、重々の御恩
荷
(
にの
)
うて余る
甲斐
(
かい
)
なき身、せめて肩
揉
(
も
)
め脚
擦
(
さす
)
れとでも
僕使
(
つかい
)
玉わばまだしも
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
署長は頻に床の上の厚い
絨氈
(
じゅうたん
)
を
擦
(
さす
)
っていた。見ると、厚ぼったい絨氈が直径一寸ばかりの円形に、すっかり色が変っているのだ。そして、手で擦ると恰で焼け焦げのように、ボロボロになるのだった。
血液型殺人事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
とお延は新九郎が痛いと云った足のところを
擦
(
さす
)
り始めた。
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
お祖母さんは、病人の足を
擦
(
さす
)
ってやりながら言った。
次郎物語:01 第一部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
上へも下へも通らぬので、唇の色も紫になっていたのが、蝶吉の手で
擦
(
さす
)
られると、恩愛の情に和げられて、すやすやと寝ることが出来た。
湯島詣
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
両手を上へ伸ばして、
突伏
(
つっぷ
)
しになっていたお庄は、
懈
(
だる
)
い体を崩して、べッたりと坐りながら、大きい手で顔を
撫
(
な
)
でたり、腕を
擦
(
さす
)
ったりしていた。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
加世は道に崩折れて、涙に
溺
(
おぼ
)
れるように泣き濡れておりました。波打つ老女の背中を、八五郎の
朴訥
(
ぼくとつ
)
な平手が怖ず怖ず
擦
(
さす
)
っているのもあわれです。
銭形平次捕物控:078 十手の道
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
尼「さア
此方
(
こちら
)
へお這入りさア/\
擦
(
さす
)
って上げましょう
憫然
(
かわいそう
)
に、此の子が小さい手で押しても、擦っても利きはしない、おゝ
酷
(
ひど
)
く差込んで来る様だ」
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
鉢合せをして
打倒
(
ぶったお
)
れたまでのことで、道庵が痛い腰を
擦
(
さす
)
って起き直ろうとした時に、先方のさむらいも同じく後ろに打倒れていることを認めました。
大菩薩峠:19 小名路の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
美代子さんは後ろへ廻って、銀さんの背中を
擦
(
さす
)
ってやった。銀さんは嬉しさ余って、クッ/\と泣き出したのだった。その晩のことが身に
沁
(
し
)
みて、未だに忘れられない。
心のアンテナ
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
多勢が四方から、
咳
(
せ
)
き入る先生をなでるやら、
擦
(
さす
)
るやら、
半暗
(
はんあん
)
のひと
間
(
ま
)
のうちが、ざわざわ騒ぎたったすきに
乗
(
じょう
)
じて、お蓮さまはするりと脱け出て、廊下に立ちいでた。
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
黒吉は、鼻血は止ったけれど、まだ腫れ上った体を
擦
(
さす
)
りながら、それでも、嬉しそうだった。
夢鬼
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
増さんは恥ずかしそうに眼をしばしばさせ、右手で、銀色の
無精髭
(
ぶしょうひげ
)
の伸びた
顎
(
あご
)
を
擦
(
さす
)
った。
青べか物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
法水が語り終えると、検事は冷たくなった手の甲を
擦
(
さす
)
りながら、歩み寄って云った。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
胸を
擦
(
さす
)
って山を下り、甲府お城下へ入り込んだら、憎い奴だ、コレ
贋物
(
いかもの
)
、問屋場人足をけしかけて、二度目の喧嘩を売りおったな、それも遁がれて福島入り、もうよかろうと思ったら
任侠二刀流
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
女は痺れ痛む右手を抱えて
撫
(
な
)
で
擦
(
さす
)
りながら、暫くの間無言でいたが、忽ち両手をうしろに廻して、真白な頸筋の処を揺り動かした。それから髪毛の中に指を入れて二三箇所いじり廻した。
暗黒公使
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
擦
常用漢字
中学
部首:⼿
17画
“擦”を含む語句
擦違
手擦
摩擦
擦剥
擦合
擦過傷
擦傷
擦付
足擦
引擦
衣擦
当擦
頬擦
擦硝子
垢擦
擦過
面擦
擦着
擦創
擦上
...