)” の例文
吾輩の背中せなかの毛が靴刷毛くつばけで逆にすられたような心持がする。しばらくは足音もしない。細君を見るとだ口をあいて太平の空気を夢中に吐呑とどんしている。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
茲こそはと、燐燧をすると、未だ其の火が燃えも揚らぬ中に、忽ち右手の暗から黒い一物が飛び出し、余の前を掠めて左の暗へ跳ねて這入った。余の燐燧は消されて了った。
幽霊塔 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
するやうなものですね。
最初に肉がちぢむ、詰め込んだガーゼで荒々しくその肉をすられた気持がする、次にそれがだんだん緩和かんわされて来る、やがて自然の状態に戻ろうとする
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
代助は首から上をじ曲げて眼を外面そとに着けながら、幾たびか自分の眼をすった。しかし何遍こすっても、世界の恰好かっこうが少し変って来たと云う自覚が取れなかった。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
代助はくびからうへげて外面そとけながら、いくたびか自分のすつた。然し何遍こすつても、世界の恰好が少し変つてたと云ふ自覚が取れなかつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
きりきりと回ったあとで、眼を開けて見ると世界が変っている。眼をすっても変っている。変だと考えるのはるく変った時である。小野さんは考えずに進んで行く。友達は秀才だと云う。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)