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こす
ふりがな文庫
“
擦
(
こす
)” の例文
思いの
他
(
ほか
)
、声だけは確であったが、悪寒がするか、いじけた
小児
(
こども
)
がいやいやをすると
同一
(
おなじ
)
に
縮
(
すく
)
めた首を破れた寝ン寝子の襟に
擦
(
こす
)
って
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
船頭の
半纏
(
はんてん
)
や、客の羽織などを着せて、
擦
(
こす
)
ったり叩いたり、いろいろ介抱に手を尽していると、どうやらこうやら元気を持ち直します。
銭形平次捕物控:024 平次女難
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
弥市は下唇をだらっと垂らし、それを手で
擦
(
こす
)
った。それからひどく慌てて、なにやら叫びながら、あたふたと石段を駈けおりていった。
似而非物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
皆の
跫音
(
あしおと
)
が聞えた時、火鉢に
倚
(
よ
)
りかかって、時々こくりこくりと
居睡
(
いねむ
)
りをしていた母親は、あわてて目を
擦
(
こす
)
って仕事を取りあげた。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
そしてその場でセルの
単衣
(
ひとえ
)
の両肌を脱いで、汗ばんだ背中をきゅッきゅッと
擦
(
こす
)
って、出しなに妻が揃えておいた背広服に着かえてから
蓼喰う虫
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
▼ もっと見る
尚
(
な
)
お一層この娘を嫌う※
但
(
ただ
)
しこれは普通の
勝心
(
しょうしん
)
のさせる
業
(
わざ
)
ばかりではなく、この娘の
蔭
(
かげ
)
で、おりおり高い鼻を
擦
(
こす
)
られる事も有るからで。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
門野
(
かどの
)
が
寐惚
(
ねぼ
)
け
眼
(
まなこ
)
を
擦
(
こす
)
りながら、
雨戸
(
あまど
)
を
開
(
あ
)
けに
出
(
で
)
た時、代助ははつとして、此
仮睡
(
うたゝね
)
から
覚
(
さ
)
めた。世界の半面はもう赤い
日
(
ひ
)
に
洗
(
あら
)
はれてゐた。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
それから赤絵に使う
金
(
きん
)
は、どうしてやるのか忘れたが、とにかく焼き上った時は鈍い黄色をしている。それを
籾殻
(
もみがら
)
で力一杯
擦
(
こす
)
るのである。
九谷焼
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
あわてて
憐寸
(
マッチ
)
をくわえて煙草を
擦
(
こす
)
ろうとしたり—— in a word、どの影法師も困り入ってただやたらにうろうろしている——。
踊る地平線:06 ノウトルダムの妖怪
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
グランテールはびっくりして身を起こし、両腕を伸ばし、眼を
擦
(
こす
)
り、あたりをながめ、
欠伸
(
あくび
)
をし、そしていっさいを了解した。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
毛の乾くのを待つて居られないといふ風に、
家中
(
うちぢゆう
)
馳けずり廻つて、小さな体を到るところに
擦
(
こす
)
りつけて、ごろ/\部屋の
内
(
なか
)
を転がつて歩いた。
犬
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
物好きな宿役人が米友の後ろへ廻って剃刀を取ったが、その剃刀があまり切れないせいか、
山葵卸
(
わさびおろし
)
で
擦
(
こす
)
るようでありました。
大菩薩峠:11 駒井能登守の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「ボブ・クラチットの許へそれを送ってやろうな」と、云いながら、スクルージは両手を
擦
(
こす
)
り擦り腹の皮を撚らせて笑った。
クリスマス・カロル
(新字新仮名)
/
チャールズ・ディケンズ
(著)
居ても立ってもいられない悩みの
焔
(
ほのお
)
となって彼を焼くのであるが、その焦熱を感ずれば感ずるほど、彼はそれをまわりで
擦
(
こす
)
って
掻
(
か
)
き落すよう
食魔
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
何を見ても
沈
(
しづむ
)
だ
光彩
(
くわうさい
)
である。それで妙に氣が
頽
(
くづ
)
れて
些
(
ちつ
)
とも氣が
引
(
ひ
)
ツ立たぬ處へ
寂
(
しん
)
とした
家
(
うち
)
の
裡
(
なか
)
から、ギコ/\、バイヲリンを
引
(
ひ
)
ツ
擦
(
こす
)
る響が起る。
青い顔
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
白い体をした頸の長い山羊は、大きな赤い乳房をだらりと垂れて、一匹は柵の柱に頭を
擦
(
こす
)
り/\していたづらをしてゐる。
桑の実
(新字旧仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
院長
(
いんちょう
)
は
片手
(
かたて
)
で
頬杖
(
ほおづえ
)
を
突
(
つ
)
きながら
考込
(
かんがえこ
)
んで、ただ
機械的
(
きかいてき
)
に
質問
(
しつもん
)
を
掛
(
か
)
けるのみである。
代診
(
だいしん
)
のセルゲイ、セルゲイチが
時々
(
ときどき
)
手
(
て
)
を
擦
(
こす
)
り
擦
(
こす
)
り
口
(
くち
)
を
入
(
い
)
れる。
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
「そうであろう」と頷いたが、葉之助の方へ眼をやると、「さて、お前に聞くことがある。
中
(
あ
)
てずに縁を
擦
(
こす
)
ったは、竹林派に故実あってかな?」
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
暫時
(
しばらく
)
其處の
煖爐
(
ストーブ
)
にあたつて、濡れた足袋を赤くなつて燃えて居る煖爐に
自暴
(
やけ
)
に
擦
(
こす
)
り附けると、シュッシュッと
厭
(
いや
)
な音がして、變な臭氣が鼻を
撲
(
う
)
つ。
病院の窓
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
梅喜
(
ばいき
)
さん/\、こんな
処
(
ところ
)
に
寐
(
ね
)
て
居
(
ゐ
)
ちやアいけないよ、
風
(
かぜ
)
え引くよ……。梅「はい/\……(
眼
(
め
)
を
擦
(
こす
)
り
此方
(
こつち
)
を見る)×「おや……お
前
(
まい
)
眼
(
め
)
が
開
(
あ
)
いたぜ。 ...
心眼
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
さも樂しさうな林檎の木よ、昔はおまへの
香
(
にほひ
)
をかいで
悦
(
よろこ
)
んだこともある、その時おまへの幹へ、牛が
鼻先
(
はなづら
)
を
擦
(
こす
)
つてゐた。
牧羊神
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
と膝の上の
巫女
(
みこ
)
の文をここまで読み下して、藤吉は鼻を
擦
(
こす
)
った。畳のけばをむしった。深く勘考する時の
習癖
(
くせ
)
である。
釘抜藤吉捕物覚書:06 巷説蒲鉾供養
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
十
分
(
ぶん
)
に
酩酊
(
よつぱら
)
つた
足
(
あし
)
を
大股
(
おほまた
)
に
踏
(
ふ
)
んで、
肌
(
はだ
)
を
脱
(
ぬ
)
いだ
兩方
(
りやうはう
)
の
手
(
て
)
をぎつと
握
(
にぎ
)
つて、
手拭
(
てぬぐひ
)
で
背中
(
せなか
)
を
擦
(
こす
)
るやうな
形
(
かたち
)
をして
見
(
み
)
せた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
しゅっこは、今日は、毒もみの
丹礬
(
たんぱん
)
をもって来た。あのトラホームの
眼
(
め
)
のふちを
擦
(
こす
)
る青い石だ。あれを五かけ、紙に包んで持って来て、ぼくをさそった。
さいかち淵
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
果たして例の女給は眼を
擦
(
こす
)
りながら、我々を迎えました。俊夫君は彼女を片隅へ呼んでまず大村氏の写真を、横顔と正面の顔と二枚とも差しだしました。
墓地の殺人
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
梶は身の周囲を取り包んでいる
漠
(
ばく
)
とした得体の知れない不伝導体をごしごし
擦
(
こす
)
り落しにかかったが、ふと前に一足触った芳江の皮膚の柔かな感触だけが
厨房日記
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
色若衆
(
いろわかしゅう
)
のような、どちらかといえば、職人向でない
花車
(
きゃしゃ
)
な体を、きまり悪そうに縁先に小さくして、
鷲
(
わし
)
づかみにした手拭で、やたらに顔の汗を
擦
(
こす
)
っていた。
歌麿懺悔:江戸名人伝
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
それに續いて、お駒も眼を
擦
(
こす
)
り/\起きて、よた/\しながら便所へ行つた。二人は縁側で
眩
(
まぶ
)
しさうな眼をして、顏を見合つたまゝ默つて突つ立つてゐた。
天満宮
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
彼は眼を
擦
(
こす
)
って、白い砂っ原、それからひろい野になっている川向うをながめだした。どうしてこの際、そんな湿っぽいことを考えたか自分でさえ
呆
(
あき
)
れた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
すると、全身にビリビリした神経的なものが現われてきて、それから、
瘤
(
こぶ
)
の表面をいとしげに
擦
(
こす
)
りはじめた。
白蟻
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
男
(
をとこ
)
は
皆
(
みんな
)
あんな
物
(
もの
)
、
氣
(
き
)
が
多
(
おほ
)
いからとお
福
(
ふく
)
の
笑
(
わら
)
ひ
出
(
だ
)
すに、
惡
(
わる
)
く
當
(
あて
)
つ
擦
(
こす
)
りなさる、
耳
(
みゝ
)
が
痛
(
いた
)
いでは
無
(
な
)
いか、
己
(
お
)
れは
斯
(
か
)
う
見
(
み
)
えても
不義理
(
ふぎり
)
と
土用干
(
どようぼし
)
は
仕
(
し
)
た
事
(
こと
)
の
無
(
な
)
い
人間
(
にんげん
)
だ
われから
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
擦
(
こす
)
りながら
浴室
(
ふろ
)
に至れば門前に待ち詫びたる馬の高く
嘶
(
いなゝ
)
くにいよ/\慌て
朝餉
(
あさげ
)
の膳に向へば
昨日
(
きのふ
)
鯉の
濃汁
(
こくしやう
)
を
木曽道中記
(旧字旧仮名)
/
饗庭篁村
(著)
文部視学官の丸山
環
(
たまき
)
氏は九人の
子福者
(
こふくしや
)
で、お湯に入る時には自分が
湯槽
(
ゆぶね
)
に
浸
(
つか
)
りながら、順ぐりに飛び込んで来る子供達を芋の子でも洗ふやうに
垢
(
あか
)
を
擦
(
こす
)
つてやる。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
新ばしの
袂
(
たもと
)
に夜あかしの車夫が、寝の足らぬ眼を
擦
(
こす
)
りつ驚くばかりの
大欠
(
おおあくび
)
して身を起せば、乞食か立ん坊かと見ゆる
風体
(
ふうてい
)
怪しの男が、酔えるように
踉蹌
(
よろめ
)
き来りて
銀座の朝
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
すぐあとでファラデーが管を
擦
(
こす
)
ったら、破れて口が開いたが、油のような液は見えなくなってしまった。
ファラデーの伝:電気学の泰斗
(新字新仮名)
/
愛知敬一
(著)
余程経って海が見え始めた時、僕は窓から乗り出して石炭の燃え
滓
(
かす
)
を目に入れた。頻りに
擦
(
こす
)
っていると
ぐうたら道中記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
垢
(
あか
)
じみた毛布を
刎
(
は
)
ねのけるが早いか、金花は寝台の上に起き直つた。さうして両手に眼を
擦
(
こす
)
つてから、重さうに下つた帷を掲げて、まだ渋い視線を部屋の中へ投げた。
南京の基督
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
雪白
(
せっぱく
)
の麻布に掩われた糸杉の卓上に身を横たえると、黒奴がはいって来て橄欖の香油に浸した手で我々の全身を
擦
(
こす
)
り始めた。そしてさらに次なる室へと導いてくれた。
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
色が美しく、
擦
(
こす
)
れに強く、
香
(
かおり
)
が良く、洗いに堪え、古くなればなるほど色に
味
(
あじわ
)
いが加わります。こんな優れた染料が他にないことは誰も経験するところでありました。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
その時あたりに
人気
(
ひとけ
)
のないのを見すますと、いきなり氏はその絵に近づいて行って、自分の小指を唇で濡らしながら、それでもってその絵の一部をしきりに
擦
(
こす
)
っていた。
窓
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
義男も
腮
(
あご
)
の先きを片手で
擦
(
こす
)
りながら笑つて云つた。けれども義男の眼にはみのるの笑顏が底を含んでるやうな鋭い影を走らしてゐたと思つていやな氣がしたのであつた。
木乃伊の口紅
(旧字旧仮名)
/
田村俊子
(著)
幾度も幾度も眼を
擦
(
こす
)
った。
何故
(
なにゆえ
)
ともなく胸の躍るのを感じながら、左右に白々と横たわっている闇夜の街道を見まわした。自分で自分に云い聞かせるようにつぶやいた。
白菊
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
寝台の
縦
(
たて
)
の鉄枠に
触
(
さわ
)
れるように、彼は全身をねじまげた。そして狭窄衣の長い袖の下に隠れている手頸がそれに触ると、勢いよくごしごしと袖を鉄に
擦
(
こす
)
りつけはじめた。
紅い花
(新字新仮名)
/
フセヴォロド・ミハイロヴィチ・ガールシン
(著)
清吉は
一々
(
いちいち
)
姓を上げて、
小山
(
おやま
)
、清水、林などといって、やはり眼を両手で
擦
(
こす
)
って泣いている。
蝋人形
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
少年達は、長い牛の骨を持っていたが、時々それで、汗にこびりついた
埃
(
ほこり
)
を
擦
(
こす
)
り落していた。
雲南守備兵
(新字新仮名)
/
木村荘十
(著)
頭から眼顔胴を
擦
(
こす
)
り、それを川に流したという説もあるが(同上六巻二号)、これも必ず方言ネブタ、すなわち合歓の木を用いたもので、イボタというのは誤りだろうと思う。
年中行事覚書
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
先ず麻の
布巾
(
ふきん
)
のようなもので米をゴシゴシ
擦
(
こす
)
るように
拭
(
ふ
)
いて
炮烙
(
ほうろく
)
か鉄鍋で狐色に
炒
(
い
)
ります。
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
婆やは
肥
(
ふと
)
った身体をもみまくられた。手の甲をはげしく
擦
(
こす
)
る釘のようなものを感じた。「あ痛いまあ」といって片手で痛みを押えながらも、
延
(
の
)
び上って西山さんを見ようとした。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
あら不思議、
慥
(
たしか
)
に
其
(
その
)
声、是もまだ
醒
(
さめ
)
ぬ
無明
(
むみょう
)
の夢かと
眼
(
め
)
を
擦
(
こす
)
って見れば、しょんぼりとせし像、耳を
澄
(
すま
)
せば
予
(
かね
)
て知る
樅
(
もみ
)
の木の
蔭
(
かげ
)
あたりに子供の集りて
鞠
(
まり
)
つくか、風の
持来
(
もてく
)
る数え
唄
(
うた
)
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
それを聞くと、私は跳ね起きて、眼を
擦
(
こす
)
りながら、壁の銃眼のところへ走って行った。
宝島:02 宝島
(新字新仮名)
/
ロバート・ルイス・スティーブンソン
(著)
擦
常用漢字
中学
部首:⼿
17画
“擦”を含む語句
擦違
手擦
摩擦
擦剥
擦合
擦過傷
擦傷
擦付
足擦
引擦
衣擦
当擦
頬擦
擦硝子
垢擦
擦過
面擦
擦着
擦創
擦上
...