“かす”のいろいろな漢字の書き方と例文
カタカナ:カス
語句割合
31.2%
24.2%
20.7%
12.2%
3.7%
1.6%
1.5%
1.3%
1.1%
0.6%
(他:25)1.9%
(注)作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
雪は、窓をかすめて、サラ/\、サラ/\とかすかな音を立てる……辛うじて心で聞取れるやうなしづかな響であツた。
解剖室 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
そうして余の頭をかすめてる心の波紋はもんは、したがっておこるかと思えばしたがって消えてしまった。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
自分の精神と同じように世界もぼんやりしているが、ただちょっと眼についたのは、雨の間からかすかに見える山の色であった。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
この時余は眼をあげて、ちょと女の顔を見た。今結んだ口元には、かすかなる笑の影が消えかかりつつある。意味はせぬ。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
敗北を意識せず、自身の仕事にかすかながらも希望を感じて生きているのは、いまは、世界中で日本の芸術家だけかも知れない。
風の便り (新字新仮名) / 太宰治(著)
ときどき小鳥が、そんな私達の頭とすれすれのところを、かすかな羽音をさせながら、よろめくようにんでぎった。
晩夏 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
あおかすんだ春の空と緑のしたたるような東山とを背負って名桜は小高いところに静かに落ちついて壮麗な姿を見せている。
祇園の枝垂桜 (新字新仮名) / 九鬼周造(著)
来たほうを見ると山々が遠くかすんでいて、三千里外の旅を歌って、かいしずくに泣いた詩の境地にいる気もした。
源氏物語:12 須磨 (新字新仮名) / 紫式部(著)
されど此間我胸中には、猶少しの寺院教育のかす殘り居たれば、我も何となく自らやすんぜざる如き思をなすことありき。
それで急いで袋を縦に切り開いて見ると、はたして袋の底にかすのようになった簔虫の遺骸いがいの片々が残っていた。
簔虫と蜘蛛 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
搾り取られた人間のかすはバタバタ死んで行くと、一方から新しく誘拐されて、タコ誘拐者に引率されてゾロゾロやって来る。
監獄部屋 (新字新仮名) / 羽志主水(著)
それもかすみていな事を根に持ちやがってね、若衆は笑いも何もしねえのに、笑い方が気に喰わねえと、こうぬかしゃがるんですよ。
初雄 えへん、君はこの村において、肥料こやしかすにもならない、更に、あえて、しかしてその、いささかも用のない人です。
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
かすもそのまま飯の菜に充るが、なお糠を混じていて糠味噌と名付け、そのままにも喰ったが多くは味噌汁にした。
鳴雪自叙伝 (新字新仮名) / 内藤鳴雪(著)
源之助の屍体には、喜三郎の屍体に見られた様な打撲傷やかすり傷はなかった。ただ、心臓の上に、同じ様な刺傷があるだけだ。
カンカン虫殺人事件 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
「なあに、後から来るのんはほんのかすり傷みたいなもんやから、大事ありません。――時にせんせい、何んぼ差上げたらえゝでせう?」
医師高間房一氏 (新字旧仮名) / 田畑修一郎(著)
義経の声も、おののいて、情のたかぶりのみが、ことばの上にかすれていたし、頼朝の耳も、いたずらに熱していた。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして、ふたたびダンス場の桃色の迷宮のなかで僕は、かすれ声のジャズ・シンガーの唱う恋歌に聞きれていた。
それをあの婆あさんが一撮程づゝ手に取つて、かすんだ目で五味をり出したところで、それが何のたしになるのでもない。
半日 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
取っつきのお美野の寝間には、有明行燈の灯がぼうっと障子にかすんで、何の異状もありそうに思えない。
「えへへ。」と笑う、茶色な前歯、金の入歯と入乱れて、窪んだ頬に白粉おしろい残滓かす
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
骨は、もう、その身体を支えきれなくなって、地上へ曲ってしまっていたし、肉は干れきって、残滓かすのように、皮膚の色は変色して、紫灰色に――牧は、干した蛙のように、草の中にうずくまっていた。
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
哀れ、戀の鴆毒ちんどくかすも殘さず飮みせる瀧口は、只〓坐して致命の時を待つの外なからん。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
儉約な祖母おばあさんはそのソップかすへ味を附けて自分等にも食はせたが、しまひにはそのにほひが鼻へ着いて、誰も食ふ氣に成れなかつた。
その間に、今浮かんだ思ひつきの大部分は消えてしまひ、頭を掠めた中の最もくだらない殘滓かすが紙の上に殘るだけなのだ。
かめれおん日記 (旧字旧仮名) / 中島敦(著)
養子の喜三郎、良い男で道樂者で、精力的で押が強くて、遊びに飽きることを知らないのが聲を掛けると、撥條ぜんまいを卷かれた竹田人形のやうに、一座の人數は再び勇氣を取り戻して、歡樂の殘滓かすの追求に立ち直るのでした。
そうでなくてもやみの女の生血いきちから絞りとる、あぶぜに下滓かすを吸って生きている、低級無智な者の中にはさまれて暮していなければならなかった母君の
樋口一葉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
「耳を、」肩を取って、口をつけ、二人はの下蔭にささやきを交え、手を組んで、短いのと、長いのと、四脚を揃えたのがかすかに見える。お雪は少し離れて立って、身を切裂かるる思いである。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「成駒屋も正直やなあ、あれが仁左衛門まつしまややつて見なはれ、稽古にかゝつてから、そない語り口やと乃公わしが出られへんと小言かすを食はせて、あべこべに雲の方から謝らせまんがな。」
お照は本箱の上に載せた蝋色の箱の中から青い切手のはつた封筒の手紙を出した。手に取つて宛名を見ると、鏡子は思ひも及ばなかつたかすかな妬みの胸に湧くのを覚えたのであつた。
帰つてから (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
われは客の、たまは脇を擦過かすりたり、いさゝかの血を失ひつれど、一月の間には治すべしといふを聞き得たり。
遂に文化三年(千八百六年)より四年にわたり、露人来りて樺太からふと及び蝦夷えぞかすめぬ。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
いずれにしても卵の殻、お茶の澱滓かす、その他すべての家の屑は、奇麗にどこかへ持って行って了うので、どこにも見えぬ。
日浮びてひかりを重ね、雲散りてかすまず。
窓の外のポプラ並木の間から、遙か向うの暗黒の中に重なり合っていた選炭場、積込場、廃物の大クレーン、機械場、ポンプ場、捲上場まきど、トロ置場、ボタ捨場、燃滓かす捨場に至るまで、新張炭坑構内に何千何百となく並んでいた電灯と弧光灯が
女坑主 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
無論他人ひとのものを盜掠かすめることも知らない手
『なるほど山だ、どうですこのかすかな色は!』とさもなつかしそうに叫んだ。
小春 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
その大暗渠あんきょは、社会の穢粕かす疲憊ひはいとを吸いこんでゆく。
地虫 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
白い雨外套あまがいとうを着た職工風の男が一人、かすりの着流しに八字髭はちじひげはやしながらその顔立はいかにも田舎臭い四十年配の男が一人、めかけ風の大丸髷おおまるまげ寄席よせ芸人とも見える角袖かくそでコートの男が一人。
寺じまの記 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
もう口じゃまどろっこしい、眼の廻る様な奴を鼻梁にがんとくれてかすんだのよ。
かんかん虫 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
風のない村の上に、いつでも落ちついて、じっと動かずにかすんでいる。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)