かす)” の例文
それもかすみていな事を根に持ちやがってね、若衆は笑いも何もしねえのに、笑い方が気に喰わねえと、こうぬかしゃがるんですよ。
搾り取られた人間のかすはバタバタ死んで行くと、一方から新しく誘拐されて、タコ誘拐者に引率されてゾロゾロやって来る。
監獄部屋 (新字新仮名) / 羽志主水(著)
「ひどく醉つてゐるよ。かす臭いぢやないか。だが、醉つただけぢやない、醉つたところでこの通り死ぬわけはない。八、耳の穴を覗いて見ろ」
釘づけだろうがかすづけだろうが、かもうこたアねえて。そいつをぶっこわしゃ銀の十字架かメダイが取れようってもんだ。そうすりゃそいつを
豆腐のかす薩摩芋さつまいもつるとが、山羊夫妻の大好物である。豆腐の粕はまだ三太が床のなかにいる時分豆腐屋から毎朝一個ずつ規則的に届けてくれる。
南方郵信 (新字新仮名) / 中村地平(著)
それからまた岱水では「もろみのかびをかき分けて」というのと、巻はちがうが「月もわびしき醤油しょうゆうかす」というのがある。
連句雑俎 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
お杉は漆喰の欄干にもたれたまま片手で額をおさえていた。彼女の傍には、豚の骨や吐き出された砂糖黍の噛みかすの中から瓦斯燈ガスとうが傾いて立っていた。
上海 (新字新仮名) / 横光利一(著)
前代の俳諧のごときは殊に読者を限定して、いわば銘々めいめいの腹の中のわかる者だけで鑑賞し合い、今日存する篇什へんじゅうはその楽しみのかすのようなものである。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
マゴマゴしているうちにかすを絞らせられるような事になっては堪らぬと気が付いたので、すぐに一通の偽筆、匿名の手紙を書いて、面会の時日を東都日報
けむりを吐かぬ煙突 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
婆さんはその粉をふるいにかけてかすり、それがすむと人形をはじめ農具を箱の中へ入れてしまった。
蕎麦餅 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
酒のかす、それに釣り場のドロをこね合わせて、釣りの仕かけをする前に釣り場へ投げ込んでおく。
江戸前の釣り (新字新仮名) / 三遊亭金馬(著)
描金まきゑよくして人のかすをなめず、別に一趣いつしゆ奇工きこうす。破笠はりつ細工とて今にしやうせらる。吉原の七月はじめ機燈からくりとうろを作りて今に其余波よはのこせり、でんつまびらかなれどもさのみはとてもらせり。
そのかすに過ぎないところの稼ぎためなんぞは、思ったより淡泊に投げだしてしまうに違いない。
大菩薩峠:31 勿来の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
粕共かすごと焼いて、いざ皿へ写すと云ふ時に、かすを取らないとあぢが抜けると云つて教へてやつた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
こっとりつつんだかすの底からぱくりと西瓜すいかの丸漬がでてきた。さもうまそうに太いしわがよってずっくりと酒の気がしみてるのを蓋のうえでほどよく切って皿につける。汁も煮えた。
島守 (新字新仮名) / 中勘助(著)
どうして拵えますかというと、はさみを持って行って良い白馬の尾の具合のいい、古馬にならないやつのを頂戴して来る。そうしてそれを豆腐とうふかすで以て上からぎゅうぎゅうと次第〻〻にこく。
幻談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「山羊はお豆腐のかすを食べるんでございますか。」とおくみは聞いた。
桑の実 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
巴里は奈良漬のたるのようなもので、あの中へ日本人をしばらく漬けておくとどんな下手でも相当の匂いにまで到達する。日本の現代にはまだ酒のかすが充分国民全般にまで浸み込み行き渡っていない。
れたるは新酒にあらず酒のかす
六百句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
たべるまでは、とても調子のいいだんなでしたが、あれからこっち、また少し気が変のようじゃござんせんか。奈良づけのかすにまだ酔ってらっしゃるんですかい
「そうよ。この世に興味を喪失なくしてしまった人間のかすみたいな人間が、みんな主義者になるのよ」
女坑主 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
描金まきゑよくして人のかすをなめず、別に一趣いつしゆ奇工きこうす。破笠はりつ細工とて今にしやうせらる。吉原の七月はじめ機燈からくりとうろを作りて今に其余波よはのこせり、でんつまびらかなれどもさのみはとてもらせり。
と、ぷんとかすの匂いがする。そうっと粕をはいでみる。下のほうにすばらしいうりの奴がうまそうに色づいて隠れている。奥にはまだなにかいる様子だったが楽しみにしてわざと見ずに瓜をだす。
島守 (新字新仮名) / 中勘助(著)
「釘づけだらうがかすづけだらうが構ふ事アねえて。そいつをぶつこはしや、銀の十字架かめだいか取れようつてもんだ。さうすれやそいつをぶして銭にした上に褒美の酒手さかてが貰へるつて訳だ。」
「神様が男のかすから女を作った」の、「女は家庭の付属物」だのと心得ているのは、中世紀か封建時代の思想である。その粕が馬に乗って民衆運動の先登せんとうに立った時代も過去の事である。
東京人の堕落時代 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
そんな処を戦友に射撃してもらったり、自分で射撃したりして作った傷は、距離が近いために貫通創の附近に火傷が出来る。火薬の燃えかすが黒いポツポツとなって沁み込んでいる事もある。
戦場 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
この世間知らずの山猿どもが。キングコングのかすどもが……
笑う唖女 (新字新仮名) / 夢野久作(著)