“から”のいろいろな漢字の書き方と例文
カタカナ:カラ
語句割合
空23.9%
絡21.4%
搦12.4%
辛11.5%
殻7.9%
唐5.1%
縛2.0%
空虚1.8%
乾1.7%
殼1.5%
枯0.8%
鹹0.8%
骸0.7%
虚0.7%
韓0.5%
嗄0.5%
括0.5%
紮0.4%
苛0.3%
褰0.3%
柄0.2%
唐土0.2%
以来0.2%
弄0.2%
稈0.2%
空車0.2%
涸0.2%
漢土0.2%
幹0.1%
漢0.1%
雀0.1%
呵0.1%
壳0.1%
外殻0.1%
掛絡0.1%
穀0.1%
纒0.1%
屍0.1%
掠0.1%
狩0.1%
緘0.1%
衣0.1%
以來0.1%
借0.1%
全然0.1%
剪0.1%
加羅0.1%
咳0.1%
唐金0.1%
売0.1%
屍體0.1%
廓0.1%
戞0.1%
戯0.1%
掲0.1%
搴0.1%
攘0.1%
支那0.1%
故0.1%
死骸0.1%
渇0.1%
滓0.1%
猾0.1%
皮殻0.1%
空弾0.1%
空箱0.1%
空間0.1%
端折0.1%
縋0.1%
繞0.1%
纏0.1%
落葉0.1%
藉0.1%
虚空0.1%
蜾蠃0.1%
訶良0.1%
諢0.1%
醎0.1%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
遠くから、もう一台、四頭の毛の長い馬に曳かれた空(から)の軽馬車がガタゴトやって来たが、馬の頸圏(くびわ)はぼろぼろで、馬具は荒縄だった。
お前が気がつく人間なら、絡(から)みついたとき腰のあたりを捜して見るところさ、夢中になって一杯飲んで居ちゃそこまでは気が廻るめえ
ところが、浅原の所持の刀が、三条ノ宰相実盛の家に伝わる“鯰尾(なまずお)”と鑑定されて、三条ノ宰相も即刻、検断所の手で搦(から)め捕られた。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その時は、四斗樽の鏡をも抜いて、清酒のほかに甘酒まで用意し、辛(から)い方でも甘い方でも、御勝手(ごかって)飲み放題という振る舞いであった。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
と、子家鴨達(あひるたち)は、今(いま)まで卵(たまご)の殻(から)に住(す)んでいた時(とき)よりも、あたりがぐっとひろびろしているのを見(み)て驚(おどろ)いて言(い)いました。すると母親(ははおや)は
唐(から)にしかいない恐ろしい獣の形とかを描く人は、勝手ほうだいに誇張したもので人を驚かせて、それは実際に遠くてもそれで通ります。
源氏物語:02 帚木 (新字新仮名) / 紫式部(著)
このお浦さえ抑えていたなら、田沼様といえども憚って、左右(そう)なく自分を討ちもせず、縛(から)めとるようなこともあるまいと、そう思ったからであった。
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
全く空虚(から)の時もあった。そういう場合には、仕方がないので何時まで経っても立ち上がらなかった。島田も何かに事寄せて尻(しり)を長くした。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
漆(うるし)に似た液体に乾(から)びついて、みだれた黒髪はほおといわず額(ひたい)といわず、藻(も)のようにはりついていた。——凝然(ぎょうぜん)、盛遠は、またたきもしない。
もぬけの殼(から)なりアナヤとばかり蹴(け)かへして起(た)つ枕元(まくらもと)の行燈(あんどん)有明(ありあけ)のかげふつと消(き)えて乳母(うば)が涙(なみだ)の聲(こゑ)あわたゞしく孃(ぢやう)さまが孃(ぢやう)さまが。
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
自分はその後(ご)いろいろな目に逢(あ)って、幾度となく泣きたくなった事はあるが、擦(す)れ枯(から)しの今日(こんにち)から見れば、大抵は泣くに当らない事が多い。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
五分間かからんでワッフルが一度に四つ出来る。一つ食べてみ給え、極く淡泊な味だろう。甘くも鹹(から)くも好き自由になる。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
このままにして乾燥した玉虫の骸(から)のように永久に自分から離さずに置く方法があればよいと、こんなことも思った。
源氏物語:49 総角 (新字新仮名) / 紫式部(著)
甚句(じんく)を歌うものがある。詩を吟ずるものがある。覗機関(のぞきからくり)の口上を真似る。声色(こわいろ)を遣う。そのうちに、鍋も瓶も次第に虚(から)になりそうになった。
ヰタ・セクスアリス (新字新仮名) / 森鴎外(著)
かれその大年の神一、神活須毘(かむいくすび)の神の女伊怒(いの)比賣に娶ひて生みませる子、大國御魂(おほくにみたま)の神。次に韓(から)の神。次に曾富理(そほり)の神。次に白日(しらひ)の神。次に聖(ひじり)の神二五神。
「一体どんな様子だね。」その声は声を嗄(から)して叫ぶやうで、号令に疲れた隊長が、腹を立てゝ何か云ふやうに聞えた。己はちよつと不愉快に思つた。
その道の人にいわせれば魔術と奇術に相違はある、だが大ざっぱに一つ括(から)げにいえば、手品をつづめた「ずま」である。
奇術考案業 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
と云ううちに浅黄色の垂幕を紮(から)げて出て来た。生々しい青大将色の琉球飛白(がすり)を素肌に着て、洗い髪の櫛巻(くしまき)に、女たちと同じ麻裏の上草履(うわぞうり)を穿(は)いている。
超人鬚野博士 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
苛(から)き濁れる空氣をわけ、わが導者の、汝我と離れざるやう心せよとのみいへる言(ことば)に耳を傾けて歩めり 一三—一五
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
着物の裾を褰(から)げて浅葱の股引をはき、筒袖の絆纏に、手甲(てっこう)をかけ、履物は草鞋をはかず草履か雪駄かをはいていた。
巷の声 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
然(しか)し、球台(たまたい)、球(たま)、キユウ、チヨウク、お客(きやく)の人柄(から)、建物(たてもの)の感(かん)じ、周圍(しうい)の状態(ぜうたい)、經營者(けいえいしや)の經營振(けいえいふり)——さうした條件(ぜうけん)がいい氣(き)持に揃(そろ)ふのは實(じつ)に困難(こんなん)な事なので
文壇球突物語 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
陶器と申す物も唐土(から)には古来から有った物ですが、日本では行基菩薩(ぎょうきぼさつ)が始まりだとか申します。
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
とは云え夫(そ)れさえあの夜以来——外務大臣の夜会の席で、外務大臣の二番目の娘、マリア姫の姿を見て以来(から)は、一通りの愛さえも消えて了(しま)って、濃厚な彼女の心尽しをさえ
西班牙の恋 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
と弄(から)かうごとく、団扇を膝でくるりと遣(や)る。
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
役に立たなくなった古い手押し車を原に出して置いて、框(わく)の上に、大麦や裸麦の稈(から)をかぶせて屋根を作り、番人はその中にはいって寝るんです
お客様を乗せやうが空車(から)の時だらうが嫌やとなると用捨なく嫌やに成まする、呆(あき)れはてる我まま男、愛想(あいそ)が尽きるでは有りませぬか、さ、お乗りなされ、お供をしますと進められて
十三夜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
涸(から)沢へは誰々が先発する、人夫が何人ついて行く、米は何斗持って行く。飛脚が何人帰って来る、何時頃五千尺に着く、島々からはもう電車が無い、自動車に乗って行け。
可愛い山 (新字新仮名) / 石川欣一(著)
見分(みわけ)ざれば目鼻(めはな)のある人とは申さずと云ふに武士は大いに笑ひ夫(それ)は餘り譽過(ほめすぎ)るなりと云つゝ最早(もはや)酒も頓(やが)て三升ばかり飮(のみ)たる故ほろ/\機嫌(きげん)になりコレ亭主貴樣は田舍(ゐなか)に似合(にあは)ず漢土(から)の事など引事(ひきごと)にして云は感心々々(かんしん/\)談(はな)せる男だイヤ面白し/\と暫時(しばし)興(きよう)にぞ入りたりける
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
馬鹿(ばか)に降(ふ)つてばかし居(ゐ)た所爲(せゐ)か幹(から)ばかし延(の)びつちやつて、そんだがとれねえ方(はう)でもあんめえが、夏蕎麥(なつそば)とれる樣(やう)ぢや世柄(よがら)よくねえつちから
土 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
あんずと漢(から)めきたる名を呼ばるゝからもゝの花は、八重なる、一重なる、ともに好し。
花のいろ/\ (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
四十雀(から)の色彩ある羽を見ることも稀ではなかつた。春は鶯が私の籠飼ひのものででもあるかのやうにして家の周囲を去らずに好い声を立てた。何うかするとほゝじろの細かい囀(さへづり)などもきかれた。
中秋の頃 (新字旧仮名) / 田山花袋、田山録弥(著)
医学士は鍵穴の辺へ口を接近させた様子で「イヤ貴方は其の室の中の住者を大層お可愛がり成さる様子だから当分同居させて上げようと思いまして」と無体極まる言葉を吐いて呵(から)々と打ち笑った
幽霊塔 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
おあとから行まする、恋しき君、さる詞(ことば)をば次第なく並べて、身は此処(ここ)に心はもぬけの壳(から)に成りたれば、人の言へるは聞分(ききわく)るよしも無く、楽しげに笑ふは無心の昔しを夢みてなるべく
うつせみ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
正覚坊(しょうがくぼう)の卵みたいな、三寸玉から五寸玉ぐらいまでの花火の外殻(から)が、まだ雁皮貼(がんぴば)りの生乾(なまび)になって幾つも蔭干しになっているし、膠(にかわ)を溶いた摺鉢(すりばち)だの、得体(えたい)の知れない液体を入れた壺だの
銀河まつり (新字新仮名) / 吉川英治(著)
袈裟(けさ)、掛絡(から)をまとえば、そのまま、虚無僧(こむそう)といった風采である。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この新人ピアニストの古典には、古い伝統の穀(から)を破った、新しいリアリズムの生命があるのであろう。清楚(せいそ)なうちに情熱を盛った、不思議なモーツァルトである。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂、野村あらえびす(著)
と云いながら鉄砲を放り出して雑木山へ逃げ込んだが、木の中だから帯が木の枝に纒(から)まってよろける所を一刀(ひとたち)あびせると
ケブリオネ,スの屍(から)の故、二將さながら飢ゑはてし 755
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
裸の屍(から)を引きとらん、武具はヘクト,ル剥ぎ取りぬ。
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
岩角に突っ張った懸命の拳(こぶし)を収めて、肩から斜めに目暗縞(めくらじま)を掠(から)めた細引縄に、長々と谷間伝いを根限り戻り舟を牽(ひ)いて来る。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
岡は夜(よ)を掠(から)めて本郷から起る。高き台を朧(おぼろ)に浮かして幅十町を東へなだれる下(お)り口(くち)は、根津に、弥生(やよい)に、切り通しに、驚ろかんとするものを枡(ます)で料(はか)って下谷(したや)へ通す。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
熊はいでずして一山の破隙(われめ)こゝかしこより烟(けふり)をいだして雲(くも)の起(おこる)が如(ごと)くなりければ、奇異(きい)のおもひをなし熊を狩(から)ずして空(むな)しく立かへりしと清水村の農夫(のうふ)が語(かた)りぬ。
一年(ひとゝせ)四月の半(なかば)雪の消(きえ)たる頃(ころ)清水村の農夫(のうふ)ら二十人あまり集(あつま)り、熊(くま)を狩(から)んとて此山にのぼり、かの破隙(われめ)の窟(うろ)をなしたる所かならず熊の住処(すみか)ならんと、例(れい)の番椒烟草(たうがらしたばこ)の茎(くき)を薪(たきゞ)に交(まぜ)
上て引せけるに曲者は爰(こゝ)ぞと思ひ滑々(ずる/\)と引出す處を半四郎は寢返(ねがへ)りをする體にて曲者の首(くび)を股間(またぐら)へ挾(はさ)み足を緘(から)みて締付(しめつけ)けるに大力(だいりき)無雙(ぶさう)の後藤に締(しめ)付られて曲者は言(もの)を云事も叶(かな)はず只(たゞ)眼(め)を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
云へ御殿場迄(ごてんばまで)の旦那殿(だんなどの)と讓合(ゆづりあ)う中何時か我家の表(おもて)へ來りしが日は西山へ入て薄暗(うすくら)ければ外より是お里遠州(ゑんしう)の兄が來たと云にお里は應(あい)と云出る此家の構(かま)へ昔は然るべき百姓とも云るれど今は壁(かべ)落(おち)骨(ほね)顯(あらは)れ茅(かや)の軒端(のきば)の傾(かたむ)きて柱(はしら)に緘(から)む蔦葛(つたかづら)糸瓜(へちま)の花の亂(みだ)れ咲(ざ)き住荒(すみあら)したる賤(しづ)が家に娘のお里は十七歳縹致(きりやう)は
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
蛇が衣(から)を脱ぐ如く、人は昨日(きのう)の己が死骸を後ざまに蹴て進まねばならぬ。個人も、国民も、永久に生くべく日々死して新に生(うま)れねばならぬ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎、徳冨蘆花(著)
ある時彼が縁に背向(そむ)けて読書して居ると、後(うしろ)に撞(どう)と物が落ちた。彼はふりかえって大きな青大将(あおだいしょう)を見た。葺(ふ)きっぱなしの屋根裏の竹に絡(から)んで衣(から)を脱ぐ拍子に滑り落ちたのである。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎、徳冨蘆花(著)
あれもお愛想さと笑つて居るに、大底におしよ卷紙二尋(ひろ)も書いて二枚切手の大封じがお愛想で出來る物かな、そして彼の人は赤坂以來(から)の馴染ではないか
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
此所等(ここら)あたりは場末(ばずゑ)の土地とて厠(かはや)を借(から)んと思へども茶屋さへ無に困(こう)じたる長三郎の容子(ようす)を見て和吉は側の裏(うら)へ入り其所此所(そこここ)見れば汚(きたな)げなる惣雪隱(そうせついん)ありたれば斯と告(つぐ)るに喜びて其所へ這入(はひり)て用を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
『さあ、この怪我人を何うして下さる』というような次第(わけ)で、今度は車屋仲間が私達を取り巻きました。江戸っ子も斯うなると全然(から)意気地がありません
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
長さが一尺ばかりだから男でもチョン髷に結(いっ)て居る髪の毛は是だけの長(たけ)は有るが今時の事だから男は縮毛なら剪(かっ)て仕舞う剪(から)ないのは幾等(いくら)か髪の毛自慢の心が有る奴だ男で縮れっ毛のチョン髷と云うのは無い(大)爾々(そう/\)縮れッ毛は殊に散髪に持(もっ)て来いだから縮れッ毛なら必ず剪て仕舞う本統に君の目は凄いネ(谷)爾すれば是は
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
我は加羅(から)の翡翠(ひすい)を持っている。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
一〇〇眠蔵(めんざう)より一〇一痩槁(やせが)れたる僧の一〇二漸(よわ)々とあゆみ出で、咳(から)びたる声して、御僧は何地(いづち)へ通るとてここに来るや。
主人八郎兵衛と番頭、度を失って挨拶も忘れたものか、蒼褪(あおざ)めた顔色も空虚(うつろ)に端近の唐金(から)の手焙(てあぶ)りを心もち押し出したばかり——。
文学者(ぶんがくしや)を以て大(だい)のンきなり大(だい)気楽(きらく)なり大(だい)阿呆(あはう)なりといふ事の当否(たうひ)は兎(と)も角(かく)も眼(め)ばかりパチクリさして心(こゝろ)は藻脱(もぬけ)の売(から)となれる木乃伊(ミイラ)文学者(ぶんがくしや)は豈(あ)に是れ人間(にんげん)の精粋(きつすゐ)にあらずや。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵、三文字屋金平(著)
魂さりての屍體(から)は痩せ犬の餌食にならば事たる身なり。
暗夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「ちっと、日本間の方へ話にでも来て御覧。あっちは、廓(から)っとして、書斎より心持が好いから。たまには、一(はじめ)のようにつまらない女を相手にして世間話をするのも気が変って面白いものだよ」
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
こんなことを云っている中(うち)に、噂の主(ぬし)は帯剣(たいけん)を戞(から)めかしながら入って来た。近所の人であるから、忠一とも予(かね)て相識(あいし)っているのである。双方の挨拶は式(かた)の如くに終った。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「あの定という奴は、年甲斐もなしにお前になにか戯(から)かったことでもありゃあしねえか」
半七捕物帳:38 人形使い (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「痒(かゆ)い痒いと思ったら、こんなに食いからかいて」とお種は単衣(ひとえ)の裾(すそ)の方を掲(から)げながら捜してみた。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
混合ふ見物人に交りながら裾を搴(から)げて登る厭な気持の後(あと)で、幾多の囚人の深い怨みを千古に留(とゞ)めた題壁(だいへき)の文字や絵を頂上の室に眺めた時は
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛、与謝野晶子(著)
觀棚は内壁の布張汚れ裂けて、天井は鬱悒(いぶせ)きまで低し。少焉(しばし)ありて、上衣を脱ぎ襯衣(はだぎ)の袖を攘(から)げたる男現れて、舞臺の前なる燭を點(とも)しつ。客は皆無遠慮に聲高く語りあへり。
古來(こらい)支那(から)、日本(につぽん)等(とう)に用(もちふ)る大陰暦(たいゝんれき)との相違(さうゐ)を示(しめ)すこと左(さ)の如(ごと)し。
改暦弁 (旧字旧仮名) / 福沢諭吉(著)
この鸚鵡は最前(さっき)の紅木という総理大臣の息子で、平生(ふだん)王の御遊び相手として毎日宮中に来ている紅矢(べにや)という児(こ)が、今日は少し加減が悪くて御機嫌伺いに参りかねます故(から)
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作、杉山萠円(著)
叔父のたおれている座敷には、帯や時計や紙入れや飲食いした死骸(から)などがだらしなく散らばっていた。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
彼もまた、火みたいに、喉(のど)の渇(から)びを覚えていたところである。さっそく大きな平(ひら)たい青石の上へ、背の老母を下ろして言った。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
門番呆れて、「汝等(きさまら)何が買えるもんか。干葉(ひば)や豆府の滓(から)を売りやしまいし、面桶(めんつう)提げて残飯屋へ行(ゆ)くが可(い)い、馬鹿め。」
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あいつは子供の時から根性がよくなくてな、喧嘩口論でもしたが最後、いつまでも根に持っている奴だ、小狡(こす)ッ猾(から)くって裏表があるから、わしは昔からあの男が大嫌いだった。
中山七里 二幕五場 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
ナンキン豆の皮殻(から)を散らかしはじめた。
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「素直にしなければ、撃つのよ。空弾(から)だと思うならば、撃ってみましょうか、見本にネ」
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「今夜は珍しく、お師匠さんも、鍋島さまのお留守居のお招きで、お出かけ——隣は空間(から)でござります」
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
どうも快(よ)い心地が致しませんでしたが、お八代さんの顔付きが、生やさしい顔付では御座いませんので、余儀なく下駄を脱ぎまして、尻を端折(から)げまして、梯子を登り詰めますと
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
そのうすあまい匂いは私のどうすることもできない、樹木にでも縋(から)みつきたい若い情熱をそそり立て、悩ましい空想を駆り立ててくるのであった。
性に眼覚める頃 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
塀の中から立ち上った大きな欅の樹に、二つ三つ赤い実をつけた烏瓜(からすうり)が繞(から)み上って、風に吹かれて揺れている。
平賀源内捕物帳:萩寺の女 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
彼は今夜の泊りを考えながら、前よりはやや注意深く、両岸に眼を配(くば)って行った。松は水の上まで枝垂(しだ)れた枝を、鉄網のように纏(から)め合せて、林の奥の神秘な世界を、執念(しゅうね)く人目(ひとめ)から隠していた。
素戔嗚尊 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
白頭の嶺を越え、落葉(から)松の林を越え
間島パルチザンの歌 (新字旧仮名) / 槙村浩(著)
この書小なりといえども、外国宣教師の手を離れ、教会の力を藉(から)ずして、ただちに神に聴(きき)つつその御言を伝うる卒先者の一たりし事を以て光栄とする。
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
煙草入(たばこいれ)は虚空(から)であつた。彼(かれ)は自分(じぶん)の體力(たいりよく)が滅切(めつきり)と減(へつ)て仕事(しごと)をするのに手(て)が利(き)かなくなつて、小遣錢(こづかひせん)の不足(ふそく)を感(かん)じた時(とき)、自棄(やけ)に成(な)つた心(こゝろ)から斷然(だんぜん)其(その)噛(か)む程(ほど)好(すき)な煙草(たばこ)を廢(よ)さうとした。
土 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
そこへ矢島玄碩の二女、優善(やすよし)の未来の妻たる鉄が来て、五百に抱かれて寝ることになった、蜾蠃(から)の母は情を矯(た)めて、暱(なじみ)のない人の子を賺(すか)しはぐくまなくてはならなかったのである。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
先に問ひたまへる女子(むすめ)訶良(から)比賣は、侍(さもら)は一八む。
と野崎君が諢(から)かった。
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
同じく大椀に添へ山葵(わさび)大根葱(ねぎ)海苔(のり)等藥味も調(とゝの)ひたり蕎麥は定めて太く黒きものならん汁(つゆ)の醎(から)さもどれほどぞと侮(あな)どりたるこそ耻かしけれ篁村一廉(いつかど)の蕎麥通なれど未だ箸には掛けざる妙味切方も細く手際よく汁加减(つゆかげん)甚はだ佳(よ)し思ひ寄らぬ珍味ぞといふうち膳の上の椀へヒラリと蕎麥一山飛び來りぬ心得たりと箸を
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)