トップ
>
殻
>
から
ふりがな文庫
“
殻
(
から
)” の例文
旧字:
殼
木戸ごしにヒマワリの
実
(
み
)
の
殻
(
から
)
を、通りすがりの若い衆めがけてぶつけもする。そんな育ちの彼女にとって、ここは全く別世界だった。
ムツェンスク郡のマクベス夫人
(新字新仮名)
/
ニコライ・セミョーノヴィチ・レスコーフ
(著)
と、
子家鴨達
(
あひるたち
)
は、
今
(
いま
)
まで
卵
(
たまご
)
の
殻
(
から
)
に
住
(
す
)
んでいた
時
(
とき
)
よりも、あたりがぐっとひろびろしているのを
見
(
み
)
て
驚
(
おどろ
)
いて
言
(
い
)
いました。すると
母親
(
ははおや
)
は
醜い家鴨の子
(新字新仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
眉
(
まゆ
)
だけは時代風に濃く描いていた。復一はもう
伏目勝
(
ふしめがち
)
になって、気合い負けを感じ、寂しく孤独の
殻
(
から
)
の中に引込まねばならなかった。
金魚撩乱
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
と三太郎君は不思議に思い思い近寄ってみますと、それは一つの大きな卵で、生白い
殻
(
から
)
が大理石のような光沢を帯びておりました。
卵
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
結局二人
藻抜
(
もぬ
)
けの
殻
(
から
)
みたいにさして、この世の中に何の望みも興味も持たんと、ただ光子さんいう太陽の光だけで生きてるように
卍
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
▼ もっと見る
木村を払い捨てる事によって、
蛇
(
へび
)
が
殻
(
から
)
を抜け出ると同じに、自分のすべての過去を葬ってしまうことができるようにも思いなしてみた。
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
手水鉢は
殻
(
から
)
で
柄杓
(
ひしゃく
)
はから/\だが、誰もお参りに来ないと見えるな、うんそう/\、
此方
(
こっち
)
へ来な、聖天山の裏手に清水の
湧
(
わ
)
く処がある
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
それでとうとう
鬚
(
ひげ
)
を剃るのをやめて、その代りに、栗の
殻
(
から
)
を真赤に焼かせて、それで以て、娘たちに鬚を焼かせ焼かせしました。
デイモンとピシアス
(新字新仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
その間を、陰気な石の段々が、
蝸牛
(
かたつむり
)
の
殻
(
から
)
みたいに、上へ上へと際限もなく続いて居ります。本当に変てこれんな気持ちでしたよ。
押絵と旅する男
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
室は
小公会堂
(
しょうこうかいどう
)
ぐらいの大きさであるが、まるで卵の
殻
(
から
)
の中に入ったように壁は
曲面
(
きょくめん
)
をなしていてクリーム色に塗られている。
清浄
(
せいじょう
)
である。
海底都市
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
どうせよと言うのか? 君のように自分の
殻
(
から
)
の中にじっと縮こまってることは、僕にはできない。中流人どもの中にいると息がつけない。
ジャン・クリストフ:11 第九巻 燃ゆる荊
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
殻
(
から
)
はきらりと光りを放って、二尺あまりの
陽炎
(
かげろう
)
を
向
(
むこう
)
へ横切る。丘のごとくに
堆
(
うずた
)
かく、積み上げられた、貝殻は
牡蠣
(
かき
)
か、
馬鹿
(
ばか
)
か、
馬刀貝
(
まてがい
)
か。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
火事の用心に板葺きというのはおかしいが、その板の上には
蠣
(
かき
)
の
殻
(
から
)
を多くのせて、火の子の燃えつくのを防がせることにしたのであった。
母の手毬歌
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
殻
(
から
)
に
籠
(
こも
)
って、大事をとっていた山淵父子も、遂に、機先を制したつもりで、
真夜半
(
まよなか
)
から軍をうごかし、笠寺へ朝討ちをかけた。
新書太閤記:02 第二分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
何よりもまず中世の
殻
(
から
)
を脱ぎ捨てよと教えたあの本居翁あたりが開こうとしたものこそ、まことの
近
(
ちか
)
つ
代
(
よ
)
であると信ずる彼なぞにとっては
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
冷した珈琲はやっぱり
平日
(
いつも
)
の通り小匙二杯の珈琲へホンの
少
(
すこし
)
の水と玉子の
殻
(
から
)
を二つ
振
(
ぶり
)
細かく砕いて入れて火の上で
攪
(
か
)
き廻しながら
煎
(
せん
)
じます。
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
エリザベス時代のある英国人は紙が
節倹
(
しまつ
)
したいからといつて、
胡桃
(
くるみ
)
の
殻
(
から
)
にしまはれる程の豆本に、新約全書そつくり書き込んだといふ事だ。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
香以は鶴寿と謀って追善の
摺物
(
すりもの
)
を配った。画は
蓮生坊
(
れんしょうぼう
)
に扮した肖像で、豊国がかいた。香以の追悼の句の中に「かへりみる春の姿や
海老
(
えび
)
の
殻
(
から
)
」
細木香以
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
頭を
胡果
(
くるみ
)
の
殻
(
から
)
のように叩き潰されたお萩の死体は、物馴れた八五郎の眼にも
凄惨
(
せいさん
)
で、二度と調べて見る気も起させません。
銭形平次捕物控:242 腰抜け彌八
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
ふたりは再び顔を見合せながら、さらに忍んで内をのぞくと、病人の寝床は藻ぬけの
殻
(
から
)
で、蛇吉のすがたは見えなかった。
青蛙堂鬼談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
たいてい自分の望む
種子
(
たね
)
さえ
播
(
ま
)
けばひとりでにどんどんできます。米だってパシフィック辺のように
殻
(
から
)
もないし十倍も大きくて匂もいいのです。
銀河鉄道の夜
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
すなわちカーコゥディーにおける
蟄居
(
ちっきょ
)
六年間の彼の仕事は、倫理学者としての
殻
(
から
)
を打ち割り、自己多年の面目を打破し
貧乏物語
(新字新仮名)
/
河上肇
(著)
キャラコさんは、お弁当の
殻
(
から
)
の始末をして崖の上にあがってゆく。が、夕方までぼんやりしているわけにはゆかない。
キャラコさん:04 女の手
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
栗の枝が吹き折られたこと、鳥が
蜆
(
しじみ
)
の
殻
(
から
)
を落していったこと……それらは島の歴史に残るべき大きな出来事である。
島守
(新字新仮名)
/
中勘助
(著)
しかし精神はもぬけの
殻
(
から
)
だ。ヨルダン川で洗礼を受けられてから今日までのイエスの戦いは、真に国民を救うためでありました。彼は愛国者であります。
イエス伝:マルコ伝による
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
その本を取り出した置き
棚
(
だな
)
にあった、それぞれ違った色の紙に書かれた手紙の
殻
(
から
)
の内容を
頭中将
(
とうのちゅうじょう
)
は見たがった。
源氏物語:02 帚木
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
社会の耳目を
攲
(
そば
)
だたせたおりに——無気力無抵抗につくりあげられた因習の
殻
(
から
)
を切り裂いて、多くの女性を
桎梏
(
しっこく
)
の
檻
(
おり
)
から引出そうとしたけなげなあなたを
平塚明子(らいてう)
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
つまんで見ると
殻
(
から
)
は柔らかくてぶよぶよしていた。一つ鋏にかかってつぶれたのをあけて見たら中には
蜥蜴
(
とかげ
)
のかえりかかったのがはいっていたそうである。
芝刈り
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
蝸牛
(
かたつむり
)
が背中に自分の
殻
(
から
)
を背負つてゐるやうに、自分の心一つに、自分の寂しさを背負つて、その寂しさを
怺
(
こら
)
へていくことが、きつと立派な修行なんだらう。
良寛物語 手毬と鉢の子
(新字旧仮名)
/
新美南吉
(著)
一
百
(
そく
)
仕方
(
しあ
)
げたに教育せられ
薫陶
(
くんとう
)
せられた中から
良妻賢母
(
れうさいけんぼ
)
も
大袈裟
(
おほげさ
)
だが
並
(
なみ
)
一人前の
日本
(
にほん
)
婦人が出て来る
訳
(
わけ
)
なら
芥箱
(
ごみばこ
)
の玉子の
殻
(
から
)
もオヤ/\
鶏
(
とり
)
に
化
(
くわ
)
さねばならない
もゝはがき
(新字旧仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
この風呂に入り給えと勧められてそのまま湯あみすれば小娘はかいがいしく玉蜀黍の
殻
(
から
)
を抱え来りて風呂にくべなどするさまひなびたるものから中々におかし。
旅の旅の旅
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
余り好くしたとはいへない継母の手元で習慣づけられた、硬くなつて自分の
殻
(
から
)
に閉ぢこもるやうな癖を、動もすると出すので、それが気にかゝつてならなかつた。
二人の病人
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
それでも、かれらの
殻
(
から
)
をやぶることができなかったのである。——よほどの忍耐と、年月をかけるつもりがなければ、決してうまくはゆくまい、と老人は云った。
ちくしょう谷
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
いかに秘密の堅い
殻
(
から
)
に包まれたできごとであっても、いったん八丁堀のむっつり右門がこれに手を染めた以上は、あくまでも解決しないではおかぬといったように
右門捕物帖:09 達磨を好く遊女
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
然
(
しか
)
し今彼の目前に
横
(
よこた
)
はつてゐる此の港、此の小都会の全景は其の時の錯覚の冷たい
殻
(
から
)
に過ぎなかつた。
煤煙の匂ひ
(新字旧仮名)
/
宮地嘉六
(著)
それは
檞
(
くぬぎ
)
の
殻
(
から
)
を踏んだので、踏まれた殻は平らにへし潰された。疵をするまでもないものであつた。彼はちつと舌打をして、忌々しさうにそれを拾つて抛りつけた。
夜烏
(新字旧仮名)
/
平出修
(著)
その
面
(
つら
)
つきいと
真面目
(
まじめ
)
なれば逃げんとしたれども、ふと思い付きて、まず
殻
(
から
)
をとりてたまわれと答えける。亭主
噴飯
(
ふきだ
)
して、さてさておかしきことを云う人よと云う。
突貫紀行
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
あのよろし蟹よ
蝦蛄
(
しやこ
)
よ、それよこれよ、そをめせ、かくめせとあはれ、中つつき、
殻
(
から
)
ほじりあはれ。
夢殿
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
「文字ノ精ガ人間ノ眼ヲ
喰
(
く
)
イアラスコト、
猶
(
なお
)
、
蛆虫
(
うじむし
)
ガ
胡桃
(
くるみ
)
ノ固キ
殻
(
から
)
ヲ
穿
(
うが
)
チテ、中ノ実ヲ
巧
(
たくみ
)
ニ喰イツクスガ
如
(
ごと
)
シ」と、ナブ・アヘ・エリバは、新しい粘土の備忘録に
誌
(
しる
)
した。
文字禍
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
今まで石の下に隠れていた古来からの迷信が
復活
(
よみがえ
)
った。家々の
門
(
かど
)
の柱に赤い紙や、
鮑
(
あわび
)
の
殻
(
から
)
などを吊した。まだ花の咲くに間のある北国の、曇った空の下に吹く風が寒かった。
悪魔
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
まだ
殻
(
から
)
が脱けきらんのだ! わしの原則によるとな、どんな女の中にも、けっして他の男には見つからんような、すこぶる、そのおもしろいところが見つけ出せる——だが
カラマゾフの兄弟:01 上
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
海岸を歩けば、
帆立貝
(
ほたてがい
)
の
殻
(
から
)
が山の如く積んである。浅虫で食ったものゝ中で、帆立貝の柱の
天麩羅
(
てんぷら
)
はうまいものであった。海浜随処に
玫瑰
(
まいかい
)
の花が紫に咲き乱れて汐風に
香
(
かお
)
る。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
二十六年
故山
(
こざん
)
を出でて、熊谷の桜に近く住むこと数年、三十三年にはここ
忍沼
(
おしぬま
)
のほとりに移りてより、また数年を出でずして
蝸牛
(
ででむし
)
のそれのごとく、またも重からぬ
殻
(
から
)
を
負
(
お
)
ひて
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
「お京様のお身の上、さる
御方
(
おんかた
)
なつかしがられ、お預かり致す」という文面であった。アッと仰天した一同の者、隣室へかけ込んだが、サア事だ! お京はもぬけの
殻
(
から
)
であった。
剣侠受難
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
既
(
すで
)
に政府が
貴
(
たっと
)
いと
云
(
い
)
えば政府に入る人も自然に貴くなる、貴くなれば自然に威張るようになる、その威張りは
即
(
すなわ
)
ち
殻
(
から
)
威張で、誠に
宜
(
よろ
)
しくないと知りながら、
何
(
なに
)
も
蚊
(
か
)
も自然の
勢
(
いきおい
)
で
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
その
龕子
(
がんす
)
一つでも二百円以上三百円位するそうです。で右の腕には小さな
法螺貝
(
ほらがい
)
の
殻
(
から
)
の
腕環
(
うでわ
)
、左の腕には銀の
彫物
(
ほりもの
)
のしてある腕環を掛けて居る。それから
前垂
(
まえだれ
)
は誰でも掛けて居る。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
耳朶
(
みゝたぶ
)
にぶんと響き、脳にぐわら/\と
浸
(
し
)
み
渡
(
わた
)
れば、
眼
(
まなこ
)
眩
(
くら
)
み、
心
(
こゝろ
)
消
(
き
)
え、気も
空
(
そら
)
になり足
漾
(
ただよ
)
ひ、魂ふら/\と抜出でて
藻脱
(
もぬけ
)
となりし五尺の
殻
(
から
)
の縁側まで逃げたるは、一秒を経ざる瞬間なりき。
妖怪年代記
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
あんたがたの誰よりも上なんだ! (頭の包帯をむしりとる)あんたがた古い
殻
(
から
)
をかぶった連中が、芸術の王座にのしあがって、自分たちのすることだけが正しい、本物だと
極
(
き
)
めこんで
かもめ:――喜劇 四幕――
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
谷中尉は、
煎豆
(
いりまめ
)
の
殻
(
から
)
をはき出しながら、じろりと私の顔を眺め、そう言った。
桜島
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
確かに、法皇だけがもぬけの
殻
(
から
)
であった。二位殿、丹後殿以下の女房たちは、そのまま居残っているが、誰一人法皇がいつ御所を脱け出られたのか、何処へ行かれたのか知る者もなかった。
現代語訳 平家物語:07 第七巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
“殻”の意味
《名詞》
(から)内部をおおう硬い外皮。
(から)中身のない外皮。ぬけがら。
(物理学)(カク)電子殻の略称。
(出典:Wiktionary)
殻
常用漢字
中学
部首:⽎
11画
“殻”を含む語句
枳殻
吸殻
紅殻
蠣殻町
吹殻
紅殻塗
殻竿
貝殻
脱殻
苧殻
地殻
蠣殻
枳殻垣
介殻
紅殻色
麻殻
出殻
外殻
燃殻
枳殻寺
...