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空虚
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ふりがな文庫
“
空虚
(
から
)” の例文
然
(
しか
)
しそれを
誰
(
たれ
)
も
見
(
み
)
ては
居
(
ゐ
)
なかつた。それでも
彼
(
かれ
)
は
空虚
(
から
)
な
煙草入
(
たばこいれ
)
を
放
(
はな
)
すに
忍
(
しの
)
びない
心持
(
こゝろもち
)
がした。
彼
(
かれ
)
は
僅
(
わづか
)
な
小遣錢
(
こづかひせん
)
を
入
(
い
)
れて
始終
(
しじう
)
腰
(
こし
)
につけた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
全く
空虚
(
から
)
の時もあった。そういう場合には、仕方がないので何時まで経っても立ち上がらなかった。島田も何かに事寄せて
尻
(
しり
)
を長くした。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
そして客間は、
爽
(
さわ
)
やかな春の日の青空と
長閑
(
のどか
)
な陽の光が、其處にゐる人々を戸外に呼び出す時だけ、
空虚
(
から
)
になつて靜かであつた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
結局金博士の智慧を
験
(
た
)
めそうとした奴の蟇口の中身が
空虚
(
から
)
と
相成
(
あいな
)
って、思いもかけぬ
深刻
(
しんこく
)
な負けに終るのが不動の慣例だった。
今昔ばなし抱合兵団:――金博士シリーズ・4――
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
私はそのあとからひとり
空虚
(
から
)
のトランクを持って歩きました。一時間半ばかり行ったとき、私たちは海に沿った一つの
峠
(
とうげ
)
の頂上に来ました。
ビジテリアン大祭
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
▼ もっと見る
箪笥
(
たんす
)
でも、本箱でも、
空虚
(
から
)
にして送らなければ
壊
(
こわ
)
れて了うと言われた。この混雑の中で、
幾度
(
いくたび
)
か町の人は私を引留めに来た。
芽生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
その形の氣高い圓味をかくも美しく見せてゐる半分
空虚
(
から
)
になつたコップ(その厚いガラスの底の透明なことはまるで日光を凍らしでもしたやうだ)
日付のない日記
(旧字旧仮名)
/
堀辰雄
(著)
だから去勢術は生後七、八十日の雛に限る。去勢せんとする雛は施術前三十六時間即ち一昼夜半少しも食物を与えないで腸胃の中を
空虚
(
から
)
にさせる。
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
それを引き上げると穴がある、中は
空虚
(
から
)
だ。またどんと蹴る。穴がある。
空虚
(
から
)
だ。そして三番目もまた
空虚
(
から
)
であった。
奇巌城:アルセーヌ・ルパン
(新字新仮名)
/
モーリス・ルブラン
(著)
病気はよくなったのですが、もう私には世の中がすっかり
空虚
(
から
)
になったようで、ただ生きておるというばかりでした。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
葉子は、瞬間、ハッと胸の中が、
空虚
(
から
)
になったように感じた。それと同時に、こみ上げて来たのは、クラクラするような、倒錯した恍惚感だった……。
夢鬼
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
杖
(
つえ
)
には長く
天秤棒
(
てんびんぼう
)
には短いのへ、
五合樽
(
ごんごうだる
)
の
空虚
(
から
)
と見えるのを、
樹
(
き
)
の皮を
縄
(
なわ
)
代
(
がわ
)
りにして
縛
(
くく
)
しつけて、それを
担
(
かつ
)
いで
雁坂越
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
私は
空虚
(
から
)
のような心でもってぼつりとしているようだ。今はなおさら、そう思われる。そして、一種の捕え難い哀しさが心に薄く雲がかかるようになっている。
黄昏
(新字新仮名)
/
水野葉舟
(著)
これ、ね、中が
空虚
(
から
)
になっている。銅貨で作った何かの容器なんだ。なんと精巧な細工じゃないか、一寸見たんじゃ、普通の二銭銅貨とちっとも変りがないからね。
二銭銅貨
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
懐中
(
ふところ
)
を探ると、
燐寸
(
まっち
)
の箱は
既
(
も
)
う
空虚
(
から
)
であった。彼は
舌打
(
したうち
)
して
明箱
(
あきばこ
)
を
投
(
ほう
)
り出した。
此上
(
このうえ
)
は何とかして燐寸を求め得ねばならぬ。重太郎は思案して町の
方
(
かた
)
へ歩み去った。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
人の降りてしまった
空虚
(
から
)
の船で、千鶴子とジブラルタルを廻る旅の楽しさを思わぬでもなかったが、しかしそれより今千鶴子と別れ彼女がパリへ来る日を待っている方が
旅愁
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
日が
傾
(
かたむ
)
くとソヨ吹きそめた
南風
(
みなみ
)
が、夜に入ると共に水の流るゝ如く吹き入るので、ランプをつけて置くのが骨だった。母屋の縁に
胡座
(
あぐら
)
かいて、身も魂も
空虚
(
から
)
にして
涼風
(
すずかぜ
)
に
浸
(
ひた
)
る。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
……のみならず何とのう中味が
空虚
(
から
)
になっているような手応えでは御座いませぬか。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
一つの部落へ着いた時、不思議にも部落は
空虚
(
から
)
であった。一人の土人の姿もない。そこで一行は安心して部落の空地へ天幕を張って、その夜の旅宿をそこに定め各〻眠りにつこうとした。
沙漠の古都
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「まったくかも知れません、何しろ、この誓文払の前後に、何千
条
(
すじ
)
ですかね、黒焼屋の
瓶
(
かめ
)
が
空虚
(
から
)
になった事があるって言いますから。慾は
可恐
(
おそろ
)
しい。悪くすると、ぶら提げてるのに
打撞
(
ぶつか
)
らないとも限りませんよ。」
南地心中
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
わたしは
全
(
まつた
)
く
空虚
(
から
)
である。
晶子詩篇全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
空虚
(
から
)
の棺桶は、ローマの国会議事堂前へなぞらえた壇の下に、
据
(
す
)
えられていたが、これはふたたび女生徒に担がれて講堂入口の方へ
搬
(
はこ
)
ばれた。
棺桶の花嫁
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
都合のいゝことには、客間へは、皆が
晩餐
(
ばんさん
)
の席に着いてゐる客間を通らなくても、他に入口があつた。部屋は
空虚
(
から
)
であつた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
それは
空虚
(
から
)
になつた
飯
(
めし
)
つぎを
返
(
かへ
)
す
時
(
とき
)
に
其
(
そ
)
の
中
(
なか
)
へ
入
(
い
)
れてやる
爲
(
ため
)
であつた。
飯
(
めし
)
つぎには
大抵
(
たいてい
)
菱餅
(
ひしもち
)
と
小豆飯
(
あづきめし
)
とが
入
(
い
)
れられてあつた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
ジェルミノールさんの邸は直ちに警官で厳重に警戒し、総監は病床に付き切りでしたが、ジェルミノールさんが、死なれたので、金庫を開けて見ると、中は
空虚
(
から
)
……
水晶の栓
(新字新仮名)
/
モーリス・ルブラン
(著)
長羅の細まった憂鬱な眼は、踊りを
外
(
はず
)
れて森の方を眺めていた。君長は
空虚
(
から
)
の
酒盃
(
さかずき
)
を持ったまま、忙しそうに踊りの中へ眼を走らせながら、再び一人の婦人を指差していった。
日輪
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
第一の穴は
行止
(
ゆきどま
)
りになっていて、別に何者をも発見しなかった。第二の穴も
空虚
(
から
)
であった。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「行くのかい。さよなら、えい、
畜生
(
ちくしょう
)
、その
骨汁
(
ほねじる
)
は、
空虚
(
から
)
だったのか。」
タネリはたしかにいちにち噛んでいたようだった
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
その形の氣高い圓味をかくも美しく見せてゐる半分
空虚
(
から
)
になつたコップ(その厚いガラスの底の透明なことはまるで日光を凍らしでもしたやうだ)薄暗いなりに
照明
(
あかり
)
できらきらしてゐる葡萄酒の殘り
プルウスト雑記:神西清に
(旧字旧仮名)
/
堀辰雄
(著)
ところが、そのアントニオは、
空虚
(
から
)
の棺桶を前にしては、一向力も感じも出てこないため、どうしても熱弁がふるえないという苦情を申立てた。——
棺桶の花嫁
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
卯平
(
うへい
)
は
庭
(
には
)
に
立
(
た
)
つた
儘
(
まゝ
)
、
空虚
(
から
)
になつてさうして
雨戸
(
あまど
)
が
閉
(
とざ
)
してある
勘次
(
かんじ
)
の
家
(
いへ
)
を
凝然
(
ぢつ
)
と
見
(
み
)
た。
家
(
いへ
)
は
窶
(
やつ
)
れて
居
(
ゐ
)
る。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
落ちました。初め操縦士と合図しといて落下傘で飛び降りてから、その後の
空虚
(
から
)
の飛行機へ光線をあてたのです。うまくゆきましたよ。操縦士と夕べは握手して、ウィスキイを
微笑
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
正親 内は
空虚
(
から
)
ぢや。藻拔の殼ぢや。鬼も人も棲んでゐるやうに思はれぬ。はてなう。
能因法師
(旧字旧仮名)
/
岡本綺堂
(著)
もとはこの穴は
空虚
(
から
)
じゃなかったんだ。ルイ十四世とルイ十五世の時、とうとうこの
宝物
(
ほうもつ
)
を
費
(
つか
)
っちゃったんだよ。しかし第六番目は
空虚
(
から
)
じゃない。ここはまだ誰も手をつけていない。
奇巌城:アルセーヌ・ルパン
(新字新仮名)
/
モーリス・ルブラン
(著)
同じような操作がくりかえされたが、これも開かれた内部は、第一のタンクと同じく、
空虚
(
から
)
だった。
爬虫館事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
甲谷の話を振払うように、左右を見たり、
空虚
(
から
)
のお茶をすすったりしながら早口にいった。
上海
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
その形は、夜店で売っている硝子の金魚鉢に似ていたが、内部は
空虚
(
から
)
だった。
火葬国風景
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
「中国人というのはこのパリを見ていても、みな人間の死んでしまった跡の
空虚
(
から
)
ばかりが眼につくんだね。また後へどこの馬の骨かしら這入って来るだろうぐらいに思ってるんじゃないか。」
旅愁
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
僕は
鬼神
(
きじん
)
のような冷徹さでもって、ミチミの身体を
嚥
(
の
)
んだ
空虚
(
から
)
の棺桶のなかを点検した。そのとき両眼に、
灼
(
や
)
けつくようにうつったのは、棺桶の底に、ポツンと一と
雫
(
しずく
)
、溜っている
凝血
(
ぎょうけつ
)
だった。
棺桶の花嫁
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
「
空虚
(
から
)
っぽだッ」
爬虫館事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
空
常用漢字
小1
部首:⽳
8画
虚
常用漢字
中学
部首:⾌
11画
“空”で始まる語句
空
空地
空想
空洞
空腹
空家
空気
空嘯
空手
空蝉