“空虚”のいろいろな読み方と例文
読み方(ふりがな)割合
うつろ48.7%
から20.1%
くうきょ10.4%
からっぽ5.8%
からつぽ5.2%
くうきよ4.5%
からあき1.3%
うゐ0.6%
がらん0.6%
がらんど0.6%
(他:3)2.2%
(注)作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
振向いて、じっと、しばらく空虚うつろな眼をすえていたが——あっ、とそれから初めて常態の神経にかえって、おどろきを口から洩らした。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こちらから現世げんせりかえると、それはくらい、せせこましい、空虚うつろ世界せかい——おもなおしてても
解けないものが次々に彼の心をさいなむ。一つ解くとまた一つの迷いに逢着ほうちゃくする。そしてまったく、剣も心も、空虚うつろになる。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ところが、そのアントニオは、空虚からの棺桶を前にしては、一向力も感じも出てこないため、どうしても熱弁がふるえないという苦情を申立てた。——
棺桶の花嫁 (新字新仮名) / 海野十三(著)
葉子は、瞬間、ハッと胸の中が、空虚からになったように感じた。それと同時に、こみ上げて来たのは、クラクラするような、倒錯した恍惚感だった……。
夢鬼 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
空虚からの棺桶は、ローマの国会議事堂前へなぞらえた壇の下に、えられていたが、これはふたたび女生徒に担がれて講堂入口の方へはこばれた。
棺桶の花嫁 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ただ無性むしょうに弱くなった気持ちが、ふと空虚くうきょになった胸に押し重なって、疲れと空腹とを一度に迎えたような状態じょうたいなのだ。
落穂 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
くちびるのことばは目のことばにくらべては小さなものである。目つきに比べて、ことばのいかにつめたく、空虚くうきょであることよ。
そして失った力の跡に大きい空虚くうきょが残されたんだ。空虚や微力はいつも悪徳なんだ。吾々の精神に就いてもそれと全く同一じゃないか。
生あらば (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
渋谷しぶやの美術村は、昼は空虚からっぽだが、夜になるとこうやってみんな暖炉ストーブ物語を始めているようなわけだ。
不吉の音と学士会院の鐘 (新字新仮名) / 岩村透(著)
叔母は黙って津田を眺めた。たとい軽薄とまで行かないでも、こういう巫山戯ふざけ空虚からっぽうな彼の態度は、今の叔母の生活気分とまるでかけ離れたものらしく見えた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
愚痴を並べ、苦情を云っていられるうちは、貧乏の部には入らないという、そのほんとの「空虚からっぽ」が来たのである。
禰宜様宮田 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
「やアい、馬鹿野郎。」と、ジョン・リードが、大聲で叫んで、ちよつと息をついた。さうして、部屋が、見たところ空虚からつぽなのに、氣づいた。
智恵子はグンと胸が迫つた。と同時に、腹の中が空虚からつぽになつた様でフラ/\とする。で、男の手を放して人々のうしろしやがんだ。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
その間に渠の頭脳は、表面うはつつらだけ益々苛立つて来て、底の底の方が段々空虚からつぽになつて来る様な気分になつた。
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
たがひになんとなくつまらない、とりとめもない不安ふあん遣瀬やるせなさが、空虚くうきよこゝろつゝんでゐるやうであつた。
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
再び空虚くうきよな沈默。時計が八時を打つた。その音に、我に歸つて、彼は、組合はせてゐた足を揃へ、眞直まつすぐに坐りなほすと、私の方を向いた。
英國イングランドを離れる事は、愛するが、しかし空虚くうきよな國を離れることだ——ロチスターさまは此處にはゐらつしやらないのだから。
と怒りのあまりに家の内を空虚からあきとなし、下女とともに中川家の前におもむきてひそかに中の様子を窺う。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
十一月も深い夜の事だ。外套がいとうを着て、彼等夫妻は家を空虚からあきにして出かけた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
いづちやるも空虚うゐのみ
砂上の低唱 (新字旧仮名) / 漢那浪笛(著)
もとより廣き家の人氣すくなければ、いよいよ空虚がらんとして荒れ寺などの如く、掃除もさのみは行屆かぬがちに、入用の無き間は雨戸を其まゝの日さへ多く、俗にくだきし河原の院も斯くやとばかり、夕がほの君ならねど、おらんさまとて册かるるひとの鬼にも取られで、淋しとも思はぬか習慣ならはしあやしく無事なる朝夕が不思議なり
暗夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
しかしあれむく空虚がらんどか分らないから、近日そのうちに穴を明けて見よう。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
Kの室は空虚がらんどうでしたけれども、火鉢には継ぎたての火が暖かそうに燃えていました。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
歩いて行く先々さきざきにぷつんと杜切れる虫の音は、その突然の空虚むなしさで凡太の心をおびやかして、その激しい無音状態がむしろうるさく堪えがたい饒舌に思はれてくる、なぜかと言へば自分自身の精神が湧く波の如く饒舌なものになりはぢめるから。
黒谷村 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
二歳ふたつ年齡としから十六歳じふろくになるまで何度見たか知れないこの海を、わたしは畢竟ウヂケデ空虚ボヤラと見て居たのだ。
地方主義篇:(散文詩) (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)