空虚くうきょ)” の例文
ただいつまでも試合場しあいじょう中央ちゅうおうが大きな空虚くうきょになりッぱなしとなって、人ばかり右往左往うおうさおうしているので、さかんにガヤガヤもめている。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
くちびるのことばは目のことばにくらべては小さなものである。目つきに比べて、ことばのいかにつめたく、空虚くうきょであることよ。
失望と空虚くうきょとさびしい生活とから起こった身体からだ不摂生ふせっせい、このごろでは何をする元気もなく、散歩にも出ず、雑誌も読まず、同僚との話もせず
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
ただ無性むしょうに弱くなった気持ちが、ふと空虚くうきょになった胸に押し重なって、疲れと空腹とを一度に迎えたような状態じょうたいなのだ。
落穂 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
幸に語学の方はあやしいにせよ、どうかこうかお茶をにごして行かれるから、その日その日はまあ無事に済んでいましたが、腹の中は常に空虚くうきょでした。
私の個人主義 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その隣にはお千の空虚くうきょ寝床ねどこがあった。これはいけないと思って、彼は前後の見境もなく、今まで寝ていた自分の寝床を畳んで横の方に近づけた。
棺桶の花嫁 (新字新仮名) / 海野十三(著)
でも、その笑い声には、何かしら空虚くうきょな、からいばりみたいなひびきがまじっていました。
怪人二十面相 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
国家という語は、ケルゼンのいうごとく、「最も空虚くうきょな言葉が最も便利な言葉」
政治学入門 (新字新仮名) / 矢部貞治(著)
それが、次第に着物をつけ、着物を重ぬるに従って、人間の身体から力が、輝いた力がぬけて来たんだ。そして失った力の跡に大きい空虚くうきょが残されたんだ。空虚や微力はいつも悪徳なんだ。
生あらば (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
いや、そんな空虚くうきょゆめではない。
兄の声 (新字新仮名) / 小川未明(著)
空虚くうきょな目つきをしています。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
そしてその頭部が開かれ、頭骸骨がおわんのようになって、中身が空虚くうきょなことをしめしていた。
金属人間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
と、郷左衛門の声が、闇の中で空虚くうきょにひびいた。しかし、すぐにはっとして立ち上がった。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
自分は疲れたように、空虚くうきょになった身を村に向かった。もう耕地には稲を刈り残してある田は一枚も見えなかった。組稲くみいねの立ってるあぜから、各家に稲をかつぐ人達が、おちこちに四五人も見える。
落穂 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
舞台しばらく空虚くうきょ
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
お座敷の方を空虚くうきょにして置いただけで、電話が終ると酒田と婆やさんとは再びお座敷の方へ戻って来て、婆やさんは雨戸あまどの残りを戸袋からり出すし、酒田はラジオをちょっとひねって
鞄らしくない鞄 (新字新仮名) / 海野十三(著)
と、博士は、空虚くうきょな頭のからの中を指さした。
超人間X号 (新字新仮名) / 海野十三(著)
空虚くうきょのベッド
蠅男 (新字新仮名) / 海野十三(著)