空虚からつぽ)” の例文
その間に渠の頭脳は、表面うはつつらだけ益々苛立つて来て、底の底の方が段々空虚からつぽになつて来る様な気分になつた。
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
寒さのとつつきのこの空虚からつぽな座敷の中は唯お互の心を一層すさましくさせるばかりだつた。
木乃伊の口紅 (旧字旧仮名) / 田村俊子(著)
晴代は変だと思つて、起ちあがつて函を卸して見たが、中は空虚からつぽになつてゐた。
のらもの (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
此二このふたつ悲劇ひげきをわつて彼是かれこれするうち大磯おほいそくと女中ぢよちゆうが三にんばかり老人夫婦としよりふうふ出迎でむかへて、その一人ひとりまどからわたしたつゝみ大事だいじさうに受取うけとつた。其中そのなかには空虚からつぽ折箱をりも三ツはひつてるのである。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
さうして、部屋が、見たところ空虚からつぽなのに、氣づいた。
しかしその中には誰もゐない 全く空虚からつぽ
鳥料理:A Parody (旧字旧仮名) / 堀辰雄(著)
美くしい空虚からつぽであつたのか
晶子詩篇全集拾遺 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
と同時に、腹の中が空虚からつぽになつた様でフラ/\とする。で、男の手を放して人々のうしろしやがんだ。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
それでこんなに空虚からつぽなのかも知れん……
鳥料理:A Parody (旧字旧仮名) / 堀辰雄(著)