“濡”のいろいろな読み方と例文
読み方割合
84.7%
ぬれ4.7%
ぬら4.7%
しめ1.8%
うるお1.3%
うる1.0%
0.3%
うるほ0.2%
うるを0.2%
そほ0.2%
ぬね0.2%
ぬる0.2%
0.2%
0.2%
ひた0.2%
ヌラ0.2%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
勝気な寅二郎は、そういって笑ったが、雨が間もなく降り出し、保土ヶ谷の宿へ丑満うしみつの頃帰ったときは、二人の下帯までれていた。
船医の立場 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
年齢としのころ三十あまりと見ゆる女白く青ざめたる㒵に黒髪くろかみをみだしかけ、今水よりいでたりとおもふばかりぬれたる袖をかきあはせてたてり。
そそけがみの頭をあげて、母は幾日か夢に描きつづけた一男の顔を、じっと眺めた。涙が一滴ひとしずく、やつれた頬をつたって、枕のきれぬらした。
秋空晴れて (新字新仮名) / 吉田甲子太郎(著)
手紙は藥劑師の書くもので、それも豫め酢で舌をしめしてから書かないと、顏ぢゆうに疱疹ぶつぶつが出て堪つたものぢやないて。
狂人日記 (旧字旧仮名) / ニコライ・ゴーゴリ(著)
句意は三伏さんぷくの暑き天気にかわきたる咽元のどもとうるおさんと冷たき水を飲めば、その水が食道を通過する際も胸中ひややかに感ずる所を詠みたるなり。
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
この刀は外国から買ったものですが、人を殺すにいまだ一度だって、いとすじうるおしたことがありません。私で三代これをつけております。
田七郎 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
オオ父上かと、人前をも恥じず涙にめる声を振りしぼりしに、皆々さこそあらめとて、これも同情の涙にむせばれぬ。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
蓮太郎は其様そんなことゝも知らないで、さも/\うまさうに乾いた咽喉のどうるほして、さて種々さま/″\談話はなしに笑ひ興じた。就中わけても、丑松がまだ紙鳶たこを揚げたり独楽こまを廻したりして遊んだ頃の物語に。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
晩餐をわりてみんく、少焉しばらくありて眼覚めさむれば何ぞはからん、全身あめうるをうて水中におぼれしが如し、しうすでに早くむ、皆わらつて曰く君の熟睡うらやむにへたりと、之より雨益はなはだしく炉辺ろへんながれて河をなし
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
水霜繁く霧たちて、 すすきはそほぢ幾そたび
文語詩稿 五十篇 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
二た刻ばかり後、今日一日の店を仕舞い、借りた物は返し、やとった人には手当をやっているところへ、ガラッ八の八五郎はぬねずみのようになって飛込んで来ました。
春雨や小磯の小貝ぬるるほど
郷愁の詩人 与謝蕪村 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
しかし彼はみずからそれをほとんど気にかけていなかった。そして母はなお叱りつづけていたので、彼女かられた布を手荒く鼻につめてもらっても、別にありがたいとは思わなかった。
藻の花のしろきを摘むと山みづに文がらぢぬうすものの袖
みだれ髪 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
懷中時計くわいちうどけい海水かいすいひたされて、最早もはやものようにはらぬが、とき午前ごぜんの十と十一とのあひだであらう、此時このとき不圖ふと心付こゝろづくと、今迄いままでは、たゞなみのまに/\たゞよつてるとのみおもつてつた端艇たんてい
姫は、何処ドコをどう歩いたか、覚えがない。唯家を出て、西へ/\と辿つて来た。降り募るあらしが、姫の衣をヌラした。姫は、誰にも教はらないで、裾をハギまであげた。風は、姫の髪を吹き乱した。
死者の書 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)