“うる”のいろいろな漢字の書き方と例文
カタカナ:ウル
語句割合
28.6%
19.5%
17.4%
湿11.2%
8.8%
3.9%
2.3%
1.6%
1.3%
1.0%
0.8%
0.8%
0.5%
0.5%
0.3%
0.3%
0.3%
0.3%
浸潤0.3%
蒼蠅0.3%
0.3%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
谷崎君は平安朝の文学の清冽な泉によって自己の詩境をうるおしているとゝもに、江戸末期の濁った趣味を学ばずして身にそなえている。
武州公秘話:02 跋 (新字新仮名) / 正宗白鳥(著)
「あるとも」婆さんは相変らず腰をかがめたままで、「皆がお前やセリーヌの噂をしているだ。何のかのとうるさくいっているだよ」
麦畑 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
いかに時頼、人若ひとわかき間は皆あやまちはあるものぞ、萌えづる時のうるはしさに、霜枯しもがれの哀れは見えねども、いづれか秋にはでつべき。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
三千代みちよの顔をあたまなかうかべやうとすると、顔の輪廓が、まだ出来あがらないうちに、此くろい、湿うるんだ様にぼかされたが、ぽつとる。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「わたくしとても何気ない朝のうるわしさには、こころからうれしくぞんじています。貞時さまのおせきのこえまで覚えましてございます。」
津の国人 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
けれどもその黒くうるんだ瞳と、心持ち微笑を含んだ唇が明かに私のこうした妄想を裏切っている事を認めない訳に行かなかった。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
それは如何にも彫刻家が物のかたちを見極める無言の観察であるかの如く、余念のない、清澄なうるみを持つてゐた。
熱い風 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
深山を下ること二里余り、紺碧こんぺきの水をたたえたる湖のほとりへ出た。ここで渇したるのどを清水にうるおし、物凄き山中を行くと、深林の中に人が歩るいたらしい小径しょうけいがある。
雨がはれあがって、しめっぽい六月の空の下に、高原地の古い町が、おどんだような静さと寂しさとで、彼女のうるんだ目に映った。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
何の妙観あるを知らず、善あり、悪あり、何等思議すべからざるところありて始めて其本性を識得するをうるなり、善鬼悪鬼美鬼醜鬼、人間の心池に混交し
心機妙変を論ず (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
はては片足進みて片足戻る程のおかしさ、自分ながら訳も分らず、名物くり強飯こわめしうるいえ牀几しょうぎに腰打掛うちかけてまず/\と案じ始めけるが、箒木ははきぎは山の中にも胸の中にも、有無分明うむぶんみょうに定まらず
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
努力ぬりき』のうるひ、『思慧しゑ』のかげおほしいつきて
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
斯の如きは世なり。斯の如きは人間なり。深く心を人世に置くもの、いづくんぞ憂なきを得ん。安くんぞ悲なきを得ん。甘露をらす法の道も、世をうるほすこと遅く、仁義の教も人の心をいかにせむ。
哀詞序 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
うるはしき花の笑ひもながめて過ぎぬ
恋しき最後の丘 (新字旧仮名) / 漢那浪笛(著)
うるわしい調子で古いスペインの小唄こうたガレガを歌った、おそらく二本の木の間の綱の上に勢い込めて揺られてる美しい娘から感興を得たのであろう。
通行人らの騒ぎに、トロミエスの愉快な聴衆もふり向いてながめた。そしてその間にトロミエスは、次のうるわしい一節ひとふしを歌っておしゃべりの幕を閉じた。
うるすべなど知らざる上にみやこは知らず在方ざいかたでは身の賣買うりかひ法度はつとにて誰にたのまん樣もなく當惑たうわくなして居たりしが十兵衞はたひざ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
うるやと容子を尋ねけるに親十兵衞が云々しか/″\にて年貢のお金に差支さしつかよんどころなく身をうる時宜しぎなれば何卒おかゝへ下されたく如何樣いかやうつらかなしひ事成とも御主人大事御客樣きやくさま
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
小兒ちごうつくしきさまるべきを、格子かうしそとよりうかゞふに燈火ともしびぼんやりとして障子しようじうるるかげもし、お美尾みを美尾みをよびながらるに、こたへはとなりかたきこえて
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
渭城ゐじやうの朝雨、軽塵をうるほす
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
すわっているだけの物腰にも紛飾を透けて浸潤うるんでいる。
雛妓 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
彼の頭に妹のいう意味は判然はっきり入った。けれども彼女の予期する感情は少しも起らなかった。彼は先刻から蒼蠅うるさいのを我慢して彼女の云い草を聴いていた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
朝柏あさがしはうる八河辺はかはべ小竹しぬのしぬびて宿ればいめに見えけり 〔巻十一・二七五四〕 作者不詳
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)