“にじ”のいろいろな漢字の書き方と例文
カタカナ:ニジ
語句割合
33.1%
26.9%
11.5%
5.8%
4.7%
3.5%
2.0%
煮染1.9%
膝行1.3%
1.3%
浸染0.9%
虹霓0.6%
二時0.6%
入染0.5%
鈍染0.5%
浸潤0.5%
濁染0.3%
二字0.3%
彩虹0.3%
0.3%
0.3%
0.3%
蹂躙0.3%
0.3%
煑染0.2%
二点0.2%
染潤0.2%
湿0.2%
滲染0.2%
潤染0.2%
0.2%
0.2%
煮浸0.2%
膝進0.2%
荷締0.2%
0.2%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
彼は荒く息をしながら、左の腕で顔をおおった。するとその二の腕の内側に、大きな掻き傷が二すじできて、血のにじんでいるのが見えた。
暴風雨の中 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
自然に出る、女の言葉は、瞬間のにじのやうなものであるだけに、富岡は、誘はれる気持ちで、ゆき子の指を取り、唇に持つて行つた。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
自宅うちへも寄らずにその足で海老床へ駈けつけた勘次は、案の定暢気そうな藤吉を見出してそのままにじり寄ると何事か耳許へ囁いた。
「どこから。」といって勇美子は嬉しそうな、そしてつむりを下げていたせいであろう、耳朶みみもとに少し汗がにじんで、まぶちの染まった顔を上げた。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
(興奮しつつ、びりびりと傘を破く。ために、きずつき、指さき腕など血汐ちしおにじむ——取直す)——畜生——畜生——畜生——畜生——
山吹 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
わたくしは、そういうと女の本能から、差し向いのテーブルながら掛けた椅子をちょっと池上の方へにじり寄せるしなを致しました。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
すると美留藻は乱暴にも、突然いきなり馬を紅矢に乗りかけて、逃げる間もなく踏みにじり蹴散らして、大怪我をさせてしまいました。
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
先生のくぼんだ眼が煮染にじんで来た。しきりに咳が出る。浅井君はなるほどそれが事実ならと感心した。ようやく気の毒になってくる。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
権六は主膳の近くへ膝行にじり寄る。そうすると主膳の声がいっそう低くなって、権六のほかは何人なんぴとにも聞き取れない声で
大菩薩峠:08 白根山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
雪こそ降つてゐませんでしたが、湿つた夜の黒い空は私の窓の前迄にじみよせて居りました。まるで私は湖の底に坐つてゐるやうに思はれました。
嘆きの孔雀 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
そして何といふことなし、瞼の裏に涙の浸染にじんで來るのを覺えて、ちよつとの間ながら病苦の薄らいで行くやうなうと/\した氣持になりかけた。
奇病患者 (旧字旧仮名) / 葛西善蔵(著)
何しろこんな時は気を落ちつけて寝るのが肝心かんじんだと堅く眼を閉じて見る。すると虹霓にじにして振りくように、眼の前が五色の斑点でちらちらする。
琴のそら音 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
こくは、草木くさきねむる、一時いちじ二時にじとのあひだ談話だんわ暫時しばし途絶とだえたとき、ふと、みゝすますと、何處いづこともなく轟々ごう/\と、あだか遠雷えんらいとゞろくがごとひゞき同時どうじ戸外こぐわいでは、猛犬稻妻まうけんいなづまがけたゝましく吠立ほえたてるので
薄紫色に大体は癒着ゆちゃくしているように見えながら、探りを入れたら、深く入りそうに思える穴もあって、そこから淋巴液りんぱえきのようなものが入染にじんでいた。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
花薄荷はなはくか、燃えたつ草叢くさむら火焔ほのほしゝむら火蛇ひへびのやうなこの花の魂は黒い涙となつて鈍染にじんでゐる。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
だが、見つめていると、あかい一面の雲のような花の層に柔かい萌黄もえぎいろの桃の木の葉が人懐ひとなつかしく浸潤にじみ出ているのに気を取りされて、蝙蝠傘こうもりがさをすぼめて桃林へ入って行った。
桃のある風景 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
丁度膝頭のあたりからふくらはぎへかけて、血管が青く透いて見える薄い柔かい肌の上を、紫の斑点がぼかしたように傷々いた/\しく濁染にじんでいる。
少年 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
やまかづら、かすみ二字にじくも三色みいろ明初あけそめて、十人十色じふにんといろさます。
大阪まで (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「まあごらんあそばせ、美しい、大きな彩虹にじが」
彩虹 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
寝起きらしい不活溌なところの微塵もない、爽やかな表情のうちにも、愛児を喪った悲痛なくまがあって、ろうたきばかりの美しさに、にじみ出る自然の愛嬌も世の常ではありません。
おのずとにじみ出るような、なにか薄膜を無数に重ね合せたふうな雲が、風に追われて後から後から、大空に堆積し、山にのしかかった果ては、雨になる。
ある偃松の独白 (新字新仮名) / 中村清太郎(著)
心柄とはいいながら、夜風に吹きさらされて、私は眼頭に涙をにじませて帰った。
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
対う河岸は宗右衛門町で、何をする家か、灯がゆら/\と動いて、それが、螢を踏み蹂躙にじつた時のやうに、キラ/\と河水に映つた。初秋の夜風は冷々ひえ/″\として、河にはさゞなみが立つてゐた。
鱧の皮 (新字旧仮名) / 上司小剣(著)
生を愛して心にじなす寶石の胸
展望 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
ゆびしてると、くびかた繼目つぎめすこ脊中せなかつた局部きよくぶが、いしやうつてゐた。御米およねをとこちから一杯いつぱいにそれをおさえてれとたのんだ。宗助そうすけひたひからはあせ煑染にじした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
兎角とかくするうちにせつ立秋りつしうつた。二百十日にひやくとをかまへには、かぜいて、あめつた。そらには薄墨うすずみ煑染にじんだやうくもがしきりにうごいた。寒暖計かんだんけいが二三にちがりりにがつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
柱時計の午後二点にじをうつ拍子に、入り来たりしは三十八九のたけ高き婦人なり。束髪の前髪をきりて、ちぢらしたるを、たかき額の上にて二つに分けたり。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
たちまち柱時計は家内やうちに響き渡りて午後二点にじをうちぬ。おどろかれし浪子はのがるるごとく次の間に立てば、ここには人もなくて、裏のかたに幾と看護婦と語る声す。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
とこから起上おきあがって、急いでその戸棚をガラリ開けて見ると、こは如何いかに、内には、油の染潤にじんだ枕が一つあるばかり、これは驚いて、男は暫時しばし茫然としていたが
一つ枕 (新字新仮名) / 柳川春葉(著)
眼尻には涙さえ湿にじんでいる。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
墓塲を片側にした裏町には赤い提燈の灯がところ/″\に、表の賑やかさを少しちぎつて持つて來た樣な色を浮べてぼんやりと滲染にじんでゐた。
木乃伊の口紅 (旧字旧仮名) / 田村俊子(著)
侯爵は枯蔦かれつたをひいてひさしの雪を落した。家のなかに寝てゐた薄闇が匂ひもののやうに大気へ潤染にじんで散る。腰めの葡萄蔓ぶどうづるの金唐草に朝の光がまぶしく射す。
(新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
近くにも遠くの枝にも——紅梅は黒く、白梅は青く、夜がすみににじんでいた。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
インクのにじんだのを吸ひ取るすなが、皿に盛つてあるのを取つて、又非常に早く窓に帰つて、その皿の中の沙を、丁度中庭を通つてゐた誰やらに蒔き掛けた。
(新字旧仮名) / ジュール・クラルテ(著)
昨日きのうまでは身体からだから火花が出て、むくむくと血管を無理に越す熱き血が、汗を吹いて総身そうみ煮浸にじみ出はせぬかと感じた。東京はさほどにはげしい所である。
京に着ける夕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「それは戴いて居ります。だが、実を申しますと、警察の旦那方にああやつて表へ立たれましては、こゝいらの店子たなこがすつかり弱つちまひますので。」とおやぢさんは膝進にじり寄つて来て声を低めた。
かれは三つのときわかれて五つのあき一寸ちよつと與吉よきちがもう八つか九つにつてるとかぞへて土産みやげひたくつたのである。煎餅せんべいふくろ毎日まいにち使つかつて手拭てぬぐひくゝつて荷締にじめのひもしばりつけた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
洗練せんれんされた近代フランス人の「憂鬱ゆううつな朗らかさ」が、大気のように軽く、にじのように鮮麗に、そして夢のように果敢はかなく動くのである。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)