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煮染
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にじ
ふりがな文庫
“
煮染
(
にじ
)” の例文
彼はこう注意して、じかに局部を
抑
(
おさ
)
えつけている個所を少し
緩
(
ゆる
)
めて見たら、血が
煮染
(
にじ
)
み出したという話を用心のためにして
聴
(
き
)
かせた。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
先生の
窪
(
くぼ
)
んだ眼が
煮染
(
にじ
)
んで来た。しきりに咳が出る。浅井君はなるほどそれが事実ならと感心した。ようやく気の毒になってくる。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
時に厚い
切
(
き
)
り
口
(
くち
)
が、急に
煮染
(
にじ
)
む様に見えて、しばらく眺めてゐるうちに、ぽたりと椽に
音
(
おと
)
がした。
切口
(
きりくち
)
に
集
(
あつま
)
つたのは
緑色
(
みどりいろ
)
の濃い
重
(
おも
)
い
汁
(
しる
)
であつた。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
あの力の
出所
(
でどころ
)
はとうてい分らない。しかしこの時は一度に出ないで、少しずつ、腕と腹と足へ
煮染
(
にじ
)
み出すように来たから、自分でも、ちゃんと自覚していた。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
今まで日の
透
(
とお
)
る澄んだ空気の下で、手を動かしていた
所為
(
せい
)
で、頬の所が
熱
(
ほて
)
って見えた。それが額際へ来て何時もの様に
蒼白
(
あおしろ
)
く変っている辺に、汗が少し
煮染
(
にじ
)
み出した。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
▼ もっと見る
古き五年は夢である。ただ
滴
(
した
)
たる絵筆の勢に、うやむやを貫いて
赫
(
かっ
)
と染めつけられた昔の夢は、深く記憶の底に
透
(
とお
)
って、
当時
(
そのかみ
)
を裏返す折々にさえ
鮮
(
あざや
)
かに
煮染
(
にじ
)
んで見える。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
余はその下に
綿入
(
わたいれ
)
を重ねた上、フラネルの
襦袢
(
じゅばん
)
と毛織の
襯衣
(
シャツ
)
を着ていたのだから、いくら不愉快な夕暮でも、肌に
煮染
(
にじ
)
んだ汗の
珠
(
たま
)
がここまで浸み出そうとは思えなかった。
三山居士
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
指で
圧
(
お
)
してみると、
頸
(
くび
)
と肩の継目の少し背中へ寄った局部が、石のように
凝
(
こ
)
っていた。御米は男の力いっぱいにそれを抑えてくれと頼んだ。宗助の額からは汗が
煮染
(
にじ
)
み出した。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
とかくするうちに
節
(
せつ
)
は立秋に入った。二百十日の前には、風が吹いて、雨が降った。空には
薄墨
(
うすずみ
)
の
煮染
(
にじ
)
んだような雲がしきりに動いた。寒暖計が二三日下がり切りに下がった。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
生温
(
なまぬる
)
く帽を吹く風に、
額際
(
ひたいぎわ
)
から
煮染
(
にじ
)
み出す
膏
(
あぶら
)
と、
粘
(
ねば
)
り着く
砂埃
(
すなほこ
)
りとをいっしょに
拭
(
ぬぐ
)
い去った
一昨日
(
おととい
)
の事を思うと、まるで去年のような心持ちがする。それほどきのうから寒くなった。
琴のそら音
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
血が流れて
法衣
(
ころも
)
を
煮染
(
にじ
)
ましたという大燈国師の話もその
折
(
おり
)
宜道から聞いた。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
下から眺めた余の眼と上から
見下
(
みおろ
)
す女の視線が五間を
隔
(
へだ
)
てて互に行き当った時、女はすぐ下を向いた。すると
飽
(
あ
)
くまで白い頬に裏から朱を
溶
(
と
)
いて流したような濃い色がむらむらと
煮染
(
にじ
)
み出した。
趣味の遺伝
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「
無
(
ぶ
)
用
心
(
じん
)
だから」と云つた。
今迄
(
いままで
)
日の
透
(
とほ
)
る
澄
(
す
)
んだ空気の
下
(
した
)
で、
手
(
て
)
を
動
(
うご
)
かしてゐた
所為
(
せゐ
)
で、
頬
(
ほゝ
)
の
所
(
ところ
)
が
熱
(
ほて
)
つて見えた。それが
額際
(
ひたひぎは
)
へ
来
(
き
)
て
何時
(
いつ
)
もの様に
蒼白
(
あをしろ
)
く
変
(
かは
)
つてゐる
辺
(
あたり
)
に、
汗
(
あせ
)
が少し
煮染
(
にじ
)
み
出
(
だ
)
した。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
残る一個は背の真中に、
黄
(
き
)
な
汁
(
しる
)
をしたたらしたごとく
煮染
(
にじ
)
んで見える。背と足と縁を残して余る部分はほとんど一寸余の深さに掘り下げてある。墨を
湛
(
たた
)
える所は、よもやこの
塹壕
(
ざんごう
)
の底ではあるまい。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
この心の底一面に
煮染
(
にじ
)
んだものを、ある不可思議の力で、
一所
(
ひとところ
)
に集めて
判然
(
はっきり
)
と熟視したら、その形は、——やっぱりこの時、この場に、自分の手のうちにある鳥と同じ色の同じ物であったろうと思う。
永日小品
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
そうしてその葉を折れ込んだ手前から、
剪
(
き
)
って棄てた。時に厚い切り口が、急に
煮染
(
にじ
)
む様に見えて、しばらく眺めているうちに、ぽたりと縁に音がした。切口に集ったのは緑色の濃い重い汁であった。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「
足袋
(
たび
)
の上へ雨といっしょに
煮染
(
にじ
)
んでる」
二百十日
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
“煮染(煮しめ)”の解説
煮しめ(煮締め、煮染め、にしめ)とは、煮物料理のひとつ。日本の代表的な家庭料理の一つでもある。根菜類や芋類、こんにゃく、昆布、油揚げなどを甘辛く煮たものをこう呼ぶことが多い。
なお、基本的な煮方は同じだが、最後の仕上げに味醂を使って照りを出したものは「旨煮」という。
(出典:Wikipedia)
煮
常用漢字
中学
部首:⽕
12画
染
常用漢字
小6
部首:⽊
9画
“煮染”で始まる語句
煮染屋
煮染皿
煮染出
煮染商