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虹
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にじ
ふりがな文庫
“
虹
(
にじ
)” の例文
空を横切る
虹
(
にじ
)
の糸、
野辺
(
のべ
)
に
棚引
(
たなび
)
く
霞
(
かすみ
)
の糸、
露
(
つゆ
)
にかがやく
蜘蛛
(
くも
)
の糸。切ろうとすれば、すぐ切れて、見ているうちは
勝
(
すぐ
)
れてうつくしい。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
自然に出る、女の言葉は、瞬間の
虹
(
にじ
)
のやうなものであるだけに、富岡は、誘はれる気持ちで、ゆき子の指を取り、唇に持つて行つた。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
いま、そのうしろ、東の灰色の山脈の上を、つめたい風がふっと通って、大きな
虹
(
にじ
)
が、明るい
夢
(
ゆめ
)
の橋のようにやさしく空にあらわれる。
マリヴロンと少女
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
黒い海は、やがてその底の
蒼緑色
(
あおみどりいろ
)
と、表面の波立ちとをあきらかにし、
舷
(
げん
)
に散る白い
飛沫
(
ひまつ
)
を縫い、ほのかに細い
虹
(
にじ
)
の脚が明滅した。
朝のヨット
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
すると「湯気の中に、
虹
(
にじ
)
のような、赤や青の色がついています。これは白い薄雲が月にかかったときに見えるのと似たようなものです」
「茶碗の湯」のことなど
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
▼ もっと見る
無数の宝石のために、暗やみでも
虹
(
にじ
)
のような光をはなつというので、この時計は、「皇帝の夜光の時計」と名づけられていました。
青銅の魔人
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
他の一隊は、今や帝都の上に
垂
(
た
)
れ
下
(
さが
)
ろうとする毒瓦斯の
煙幕
(
えんまく
)
よりは、更に風上に、
薄紅
(
うすあか
)
い
虹
(
にじ
)
のような瓦斯を
物凄
(
ものすご
)
くまきちらして行った。
国際殺人団の崩壊
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
そこには
華手
(
はで
)
なモスリンの
端切
(
はぎ
)
れが乱雲の中に現われた
虹
(
にじ
)
のようにしっとり朝露にしめったまま
穢
(
きた
)
ない馬力の上にしまい忘られていた。
カインの末裔
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
虹
(
にじ
)
の色を七つに分けるのも、もしも、各色の範囲を定めるならば、境界のないところに境界を造って、一種の模型に直したことにあたる。
我らの哲学
(新字新仮名)
/
丘浅次郎
(著)
両国橋は鉄橋になつて
虹
(
にじ
)
のやうな新興文化の気を
横
(
よこた
)
へてゐる。
本所
(
ほんじよ
)
地先の隅田川百本杭は抜き去られて、きれいな石垣になつた。
蝙蝠
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
処
(
ところ
)
で
艶麗
(
あでやか
)
な、奥方とか、それ、人間界で言ふものが、
虹
(
にじ
)
の目だ、虹の目だ、と云ふものを(
嘴
(
くちばし
)
を
指
(
さ
)
す)此の黒い、鼻の先へひけらかした。
紅玉
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
私が学士と一緒に高い荒廃した石垣の下を帰って行く途中、東の空に深い色の
虹
(
にじ
)
を見た。実に、学士はユックリユックリ歩いた。
千曲川のスケッチ
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
紅の光! ——それは忠烈の光輝だといってもいい。紫の霧! ——それは武神の剣が修羅の中にひいて見せた愛の
虹
(
にじ
)
だと考えてもいい。
三国志:07 赤壁の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
糸が……蜘蛛の巣のような釣り糸が、
粘
(
ねば
)
って、光って、
虹
(
にじ
)
の如くに飛んだ。
絡
(
から
)
んだのである。造酒の刀身に渦をまいて
纏
(
まつ
)
わりついたのだ。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
噴き井の上には
白椿
(
しろつばき
)
が、まだ
疎
(
まばら
)
に咲き残って、絶えず湧きこぼれる水の
水沫
(
しぶき
)
は、その花と葉とを
洩
(
も
)
れる日の光に、かすかな
虹
(
にじ
)
を描いていた。
素戔嗚尊
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
そして属名の Iris は
虹
(
にじ
)
の意で、それは属中多くの花が
美麗
(
びれい
)
ないろいろの色に咲くから、これを虹にたとえたものだ。
植物知識
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
赤と黄と、
緑青
(
ろくしょう
)
が、白を溶いた絵の具皿のなかで、流れあって、
虹
(
にじ
)
のように見えたり、
彩雲
(
あやぐも
)
のように混じたりするのを
田沢稲船
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
プーッと吹き出す血の
泡沫
(
しぶき
)
が、松明の光で
虹
(
にじ
)
のように見えた。と、もうその時には葉之助は、ピタリ中段に付けていた。
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
七色の
虹
(
にじ
)
を望みながら、悠然と御帰館相成ろうという寸法であったが、問屋がそう
旨
(
うま
)
く卸してくれぬことがあって、一度
酷
(
ひで
)
え目に遭ったことがある。
雷嫌いの話
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
この黒いものは彼女の血と、弾薬の
煤
(
すす
)
なのです。けれども、この中から光っているダイヤ特有の
虹
(
にじ
)
の色を御覧なさい。
死後の恋
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
ナポレオン・ボナパルトの腹は、チュイレリーの観台の上で、折からの
虹
(
にじ
)
と対戦するかのように張り合っていた。
ナポレオンと田虫
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
真綿
(
まわた
)
のように
柔
(
やわら
)
かい雪の上を
駈
(
か
)
け
廻
(
まわ
)
ると、雪の
粉
(
こ
)
が、しぶきのように飛び散って小さい
虹
(
にじ
)
がすっと映るのでした。
手袋を買いに
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
みごとな
虹
(
にじ
)
が立ってその下の海面が強く黄色に光って見えた。
右舷
(
うげん
)
の島の上には大きな
竜巻
(
たつまき
)
の雲のようなものがたれ下がっていた。ミラージュも見えた。
旅日記から
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
□三月上巳の節句とて往来し、
艾糕
(
くさもち
)
を作て
餉
(
おく
)
る、石竹・
薔薇
(
ろうさばら
)
・
罌粟
(
けし
)
倶
(
とも
)
に花咲く、紫蘇生じ、麦
秋
(
みの
)
り
虹
(
にじ
)
始て見ゆ。
南嶋を思いて:――伊波文学士の『古琉球』に及ぶ――
(新字新仮名)
/
新村出
(著)
夕立の後では、ここ以外ではめったに見られないようなくっきりと美しい
虹
(
にじ
)
が、空いっぱいに橋をかける。その丸い橋の下を、
白鷺
(
しらさぎ
)
が群をして飛んでいる。
蝗の大旅行
(新字新仮名)
/
佐藤春夫
(著)
これから
腹
(
はら
)
がだぶだぶになるまで
呑
(
の
)
むのです。そして
眠
(
ねむ
)
くなると、
虹
(
にじ
)
でも
吐
(
は
)
くやうなをくび を一つして、ごろりと
横
(
よこ
)
になるのです。と
雷
(
かみなり
)
のやうな
鼾
(
いびき
)
です。
ちるちる・みちる
(旧字旧仮名)
/
山村暮鳥
(著)
消えてゆく雲の上に
虹
(
にじ
)
が輝き出していた。涙に洗われたようないっそう滑らかな空の
眼差
(
まなざし
)
が、雲を通して
微笑
(
ほほえ
)
んでいた。それは山上の静かな夕べであった。
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
日本兵のなすに足らざるを言って、
虹
(
にじ
)
のごとき
気焔
(
きえん
)
を吐いた。その室に、今、垂死の兵士の
叫喚
(
うめき
)
が響き渡る。
一兵卒
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
是は
虹
(
にじ
)
の地方語変化についてすでに証明せられ、古くは『
徒然草
(
つれづれぐさ
)
』にミナムスビ・ニナムスビの説もあった。
海上の道
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
その神は不思議な
大釜
(
おおがま
)
に五色の
虹
(
にじ
)
を焼き出し、シナの天を建て直した。しかしながら、また女媧は
蒼天
(
そうてん
)
にある二個の
小隙
(
しょうげき
)
を埋めることを忘れたと言われている。
茶の本:04 茶の本
(新字新仮名)
/
岡倉天心
、
岡倉覚三
(著)
その霧の上には、マホメット教徒が現世から
永劫
(
えいごう
)
の国へゆく
唯一
(
ゆいいつ
)
の通路だという、あのせまいゆらゆらする橋
(14)
のような、壮麗な
虹
(
にじ
)
がかかっていました。
メールストロムの旋渦
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
新羅
(
しらぎ
)
の
国
(
くに
)
の
阿具沼
(
あぐぬま
)
という
沼
(
ぬま
)
のそばで、ある日
一人
(
ひとり
)
の女が
昼寝
(
ひるね
)
をしておりました。するとふしぎにも日の
光
(
ひかり
)
が
虹
(
にじ
)
のようになって、
寝
(
ね
)
ている女の
体
(
からだ
)
にさし
込
(
こ
)
みました。
赤い玉
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
この二十夜のうち五編はすでに一八三六年に文学誌『イリス(
虹
(
にじ
)
の
女神
(
めがみ
)
)』第二号上に発表されている。
絵のない絵本:02 解説
(新字新仮名)
/
矢崎源九郎
(著)
私の胸に
幽
(
かす
)
かな淡い
虹
(
にじ
)
がかかって、それは恋でも愛でもなかったけれども、年月の経つほど、その虹はあざやかに色彩の濃さを増して来て、私はいままで一度も
斜陽
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
この二十夜のうち五編はすでに一八三六年に文学誌『イリス(
虹
(
にじ
)
の
女神
(
めがみ
)
)』第二号上に発表されている。
絵のない絵本:01 絵のない絵本
(新字新仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
見よ! 彼の馬のゆくところ
蹄
(
ひづめ
)
をもって雑兵をけちらし、彼の太刀のひらめくところ、血けむり
虹
(
にじ
)
のごとく立ちのぼって敵兵の
屍
(
しかばね
)
をつむ、壮絶まさに鬼神の勇である。
だんまり伝九
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
雲根志
(
うんこんし
)
灵異
(
れいい
)
の部に曰、
予
(
よ
)
が
隣家
(
となり
)
に
壮勇
(
さうゆう
)
の者あり儀兵衛といふ。或時
田上谷
(
たがみだに
)
といふ山中に
行
(
ゆき
)
て
夜更
(
よふけ
)
て
皈
(
かへ
)
るに、むかうなる山の
澗底
(
たにそこ
)
より青く光り
虹
(
にじ
)
の如く
昇
(
のぼり
)
てすゑは
天
(
そら
)
に
接
(
まじは
)
る。
北越雪譜:06 北越雪譜二編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
と、天地に身の置き所も無い若い盗賊、権勢家三斎を前に置いて、
虹
(
にじ
)
の如き気を吐くのだった。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
肉づきのいい
項
(
うなじ
)
には
虹
(
にじ
)
のようにギラギラ光る水晶の
頸飾
(
くびかざ
)
りをして、
眼深
(
まぶか
)
に被った黒
天鵞絨
(
びろうど
)
の帽子の下には、一種神秘な感じがするほど恐ろしく白い鼻の
尖端
(
せんたん
)
と
頤
(
あご
)
の先が見え
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
また、はねあがるしぶきは、高い絶壁をおおい、熱帯の強い日光があたって、絶壁の肩に、七色の
虹
(
にじ
)
をかけている。このたたかいは、はてもなく、くりかえされているのである。
無人島に生きる十六人
(新字新仮名)
/
須川邦彦
(著)
依怙贔屓
(
えこひいき
)
でない程度で、「地上の
虹
(
にじ
)
」と題した彼女の作品が、どうにか二等くらいに当選すべき運命にまで
漕
(
こ
)
ぎつけた時になって、栗原夫人の名をつかったことが暴露した結果
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
淡白
(
うすじろ
)
い空に黒い輪郭を画している寺の屋根。その上方に
虹
(
にじ
)
のような輪をかぶった黄色な月がかかっている。通用門の両側には
提灯
(
ちょうちん
)
を持った僧二人立ちいる。舞台月光にてほの暗し。
出家とその弟子
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
が、そこに新生した
蒼穹
(
そうきゅう
)
は、全く旧態をやぶったすがただった。
白髪白髯
(
はくはつはくぜん
)
の博識たちがあっとおどろいているうちに、山から山へ、いつの間にか脈々たる
黄道
(
こうどう
)
の
虹
(
にじ
)
が横たわっていた。
ヤトラカン・サミ博士の椅子
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
車漸く進みゆくに霧晴る。
夕日
(
ゆうひ
)
木梢
(
こずえ
)
に残りて、またここかしこなる
断崖
(
だんがい
)
の白き処を照せり。忽
虹
(
にじ
)
一道
(
いちどう
)
ありて、近き山の麓より立てり。幅きわめて広く、
山麓
(
さんろく
)
の人家三つ四つが程を占めたり。
みちの記
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
総じて貴人というものは、
上淫
(
じょういん
)
を
嗜
(
たしな
)
むのです。そなた二人は、
虹
(
にじ
)
とだに雲の上にかける思いと——いう、恋歌を御存じか。そのとおり、王侯の
妃
(
きさき
)
さえも、犯したいと思うのが
性情
(
ならい
)
なのじゃ。
紅毛傾城
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
時々、薄い雲がそれにかかって
虹
(
にじ
)
のような色に染められた。庭には木々の黒い影が、足の入れどころもないまでに縦横に落ちていた、庸介は小松の林をぬけ、池を廻って
母屋
(
おもや
)
の裏手へ出た。
田舎医師の子
(新字新仮名)
/
相馬泰三
(著)
独身の将校のためのその寄宿舎は、営門をはいって左手へ降りた
窪地
(
くぼち
)
にあった。ひら家の陰気な建物だが、錦旗革命を夢みている青年将校たちがそこで
虹
(
にじ
)
のような
気焔
(
きえん
)
をあげていたものだ。
いやな感じ
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
或
(
ある
)
事務所の入口近くにいつも出来ている
水溜
(
みずたま
)
りの中に石油が
虹
(
にじ
)
のようにぎらぎら光っているのなどを、いかにも不安そうに、じっと何か
怺
(
こら
)
えている様子で、見守っていなければならなかった。
幼年時代
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
薬売
(
くすりう
)
りの
少年
(
しょうねん
)
は、
下
(
した
)
を
見
(
み
)
るとはるかに
波
(
なみ
)
が
岩
(
いわ
)
に
砕
(
くだ
)
け、
日
(
ひ
)
の
光
(
ひかり
)
が
射
(
さ
)
して、
美
(
うつく
)
しい
虹
(
にじ
)
を
描
(
えが
)
いています。なるほど、がけの
下
(
した
)
まで、
土
(
つち
)
は
削
(
けず
)
り
落
(
お
)
とされて、五
色
(
しき
)
に
彩
(
いろど
)
られた
潮
(
しお
)
の
匂
(
にお
)
う
海
(
うみ
)
が
迫
(
せま
)
っていました。
薬売りの少年
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
父は冬の
藁為事
(
わらしごと
)
の暇に教員のところに遊びに行くと、今しがた届いたばかりだといふ
三稜鏡
(
さんりようきやう
)
を見せられた。さうして日光といふものは
斯
(
か
)
うして七色の光から出来て居る。
虹
(
にじ
)
の立つのはつまりそれだ。
念珠集
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
“虹”の意味
《名詞》
(にじ)アーチ状に掛かる光の帯。多くは雨がやんだ後に天空に現れるものを指すが、雨上がりに限らず滝やスプリンクラーの付近などでしばしば見られる。太陽光が大気中の水滴によって屈折・反射されるとき、太陽光に含まれる各波長の光の屈折率の違いによって作られる。
(出典:Wiktionary)
虹
常用漢字
中学
部首:⾍
9画
“虹”を含む語句
白虹
虹霓
夜虹
彩虹
虹霓関
虹色
虹鱒
虹彩
虹猫
夕虹
虹梁
虹光
虹蓋
虹梁鴛瓦
虹橋
虹汀
虹渡
虹口
虹蜺
虹輪
...