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二時
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にじ
二時を
過ぎても
鷄の
聲も
聞えない。
鳴かないのではあるまい。
燃え
近づく
火の、ぱち/\/\、ぐわう/\どツと
鳴る
音に
紛るゝのであらう。
刻は、
草木も
眠る、
一時と
二時との
間、
談話暫時途絶えた
時、ふと、
耳を
澄すと、
何處ともなく
轟々と、
恰も
遠雷の
轟くが
如き
響、
同時に
戸外では、
猛犬稻妻がけたゝましく
吠立てるので
……
大抵眞夜中の
二時過ぎから、
一時ほどの
間を
遠く、
近く、
一羽だか、
二羽だか、
毎夜のやうに
鳴くのを
聞く。
寢ねがての
夜の
慰みにならないでもない。
二時を
過ぎ、
三時になり、
彼方此方で
一人起き、
二人さめると、
起きたのが、
覺めたのが、いづれもきよとんとして
四邊を
見ながら、
皆申合はせたやうに、ハンケチで
口を
押へて、げゞツと
咽せる。