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躪
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にじ
ふりがな文庫
“
躪
(
にじ
)” の例文
政宗
謀叛
(
むほん
)
とは初めより覚悟してこそ若松を出たれ、と云った主人が、政宗に招かれて
躪
(
にじ
)
り上りから其茶室へ
這入
(
はい
)
ろうというのである。
蒲生氏郷
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
わたくしは、そういうと女の本能から、差し向いのテーブルながら掛けた椅子をちょっと池上の方へ
躪
(
にじ
)
り寄せるしなを致しました。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
必ず力を合わせて満月を泥の中に蹴落し、世間に顔向けの出来ぬまで散々に踏み
躪
(
にじ
)
って京、大阪の
廓雀
(
くるわすずめ
)
どもを驚かしてくれよう。
名娼満月
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
滔々
(
とうとう
)
颯爽
(
さっそう
)
として士道の本義を説いての傍若無人な高笑いに、
躪
(
にじ
)
り寄った若侍は返す言葉もなく、ぐッと二の句につまりました。
旗本退屈男:07 第七話 仙台に現れた退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
両腕から股や脛の方までも喰い散らし土のついた草履のまゝ目鼻の上でも胸の上でも勝手に
蹈
(
ふ
)
み
躪
(
にじ
)
るので、又しても仙吉は体中泥だらけになった。
少年
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
▼ もっと見る
恐
(
おそ
)
ろしく
潔癖
(
けつぺき
)
な
霜
(
しも
)
は
其
(
そ
)
の
見窄
(
みすぼ
)
らしい
草木
(
さうもく
)
の
葉
(
は
)
を
地上
(
ちじやう
)
に
躪
(
にじ
)
りつけた。
人間
(
にんげん
)
の
手
(
て
)
を
藉
(
か
)
りたものは
田
(
た
)
でも
畑
(
はた
)
でも
人間
(
にんげん
)
の
手
(
て
)
を
藉
(
か
)
りて
到處
(
いたるところ
)
をからりとさせる。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
それから荒川の土手のところを歩いて行くと、土手の上の雑草が踏み
躪
(
にじ
)
られて、
血痕
(
けっこん
)
があちらこちらに飛んでいます。
大菩薩峠:09 女子と小人の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
蹂
(
ふ
)
み
躪
(
にじ
)
ったものであることを知ってからは、私達の無念は二倍にも三倍にも深められぬ訳には行きませんでした。
ある抗議書
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
と互に謙譲の美徳を発揮しながら、清君を間に挾んで一二寸宛ジリ/\と漸くのことで客間へ
躪
(
にじ
)
り進んだ。
好人物
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
蹂
(
ふ
)
み
躪
(
にじ
)
られてしまった! あのお方に取って、魂を焼き焦すほどのわたしの想いは、何でもなかったのだ。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
日曜毎に東京から押し寄せて来る多くの人々の足に
蹂
(
ふ
)
み
躪
(
にじ
)
られて、雑草は殆んど根絶えになり、小砂利まで踏み出されている地面から、
和
(
なご
)
やかに伸びた杉の樹は
首を失った蜻蛉
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
引きちぎったり踏み
躪
(
にじ
)
ったりした藁束を、憎さがあまって我ながら、どうしていいのか分らないように足蹴にしながら、水口まで来ると、お石は上り
框
(
かまち
)
に突伏してオイオイ
禰宜様宮田
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
と、その一足一足の下に、幾十という小さい虫、幾百という
細
(
こま
)
い草が、その生命を奪われる。踏み
躪
(
にじ
)
られて殺されるのである。尚彼らは川狩りをして沢山の魚の生命を取る。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
全く私はどれ程の多くの思索の種子を寢床の闇の中でむざ/\と
躪
(
にじ
)
り潰して了つたことか。
かめれおん日記
(旧字旧仮名)
/
中島敦
(著)
その人達の足で、昔の泉は踏み
躪
(
にじ
)
られて跡には汚い泥が残つてゐる。セルギウスは稀に心の明るくなつた刹那には、こんな風に考へてゐる。併しそれは稀の事で、不断は疲れてゐる。
パアテル・セルギウス
(新字旧仮名)
/
レオ・トルストイ
(著)
枕の上の顔よりも青じろい顔して、清十郎はその側に
寂然
(
じゃくねん
)
と坐っていた。自分が
蹂
(
ふ
)
み
躪
(
にじ
)
った花の痛々しい苦悶に対して、
自責
(
じせき
)
の
首
(
こうべ
)
を垂れたまま、さすがに彼の良心も苦悶しているらしい。
宮本武蔵:04 火の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
セメント
煉瓦
(
れんが
)
で固めてある機関銃の巣まで踏み
躪
(
にじ
)
ったが、敵の戦線からは、不思議な
恰好
(
かっこう
)
をした弾がタンクに集中されて、弾丸不貫通という折り紙付きの鉄側にさかんに穴があくのである。
戦雲を駆る女怪
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
「うまいこと云ふ」と
呟
(
つぶや
)
きながら笑つて牧瀬は、すこし歳子に
躪
(
にじ
)
り寄り、
籐
(
とう
)
で荒く編んだ食物
籠
(
かご
)
の中の食物と食器を
掻
(
か
)
き廻した。
夏の夜の夢
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
屍体
(
したい
)
の近くに二個所ばかり強く踏み
躪
(
にじ
)
ってあるのが兇行当時の犯人の
足跡
(
もの
)
らしかったが、単に下駄じゃないという事がわかるだけで推定材料にはテンデならない。
近眼芸妓と迷宮事件
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
「いやならあたし、誘惑するわよ。———譲治さんの決心を
蹈
(
ふ
)
み
躪
(
にじ
)
って、滅茶苦茶にしてやるわよ」
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
この大江戸には、父親を、打ち
仆
(
たお
)
し、蹴り仆し、
蹂
(
ふ
)
み
躪
(
にじ
)
り、狂い死にをさせて、おのれたちのみ
栄華
(
えいが
)
を誇る、あの五人の人達が、この世を我が物顔に、時めいて暮しております。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
母親は娘の側に
躪
(
にじ
)
り寄って
女婿
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
眼はどんよりしながら
剥
(
む
)
き出されています。しまは少し
躪
(
にじ
)
り出すと、「旦那さま、お蝶さまですよ」と言いました。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
攪
(
か
)
き
廻
(
まわ
)
されて濃くなった部屋の空気は、サフランの花を踏み
躪
(
にじ
)
ったような一種の甘い
妖
(
あや
)
しい匂いに
充
(
み
)
ち、肉体を気だるくさす代りに精神をしばしば不安に突き抜くほど鋭く
閃
(
ひらめ
)
かせた。
母子叙情
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
躪
漢検1級
部首:⾜
26画
“躪”を含む語句
蹂躪
踏躪
民権蹂躪