“寂然”のいろいろな読み方と例文
読み方割合
ひっそり23.3%
せきぜん21.4%
しん20.5%
じゃくねん20.5%
ひつそり5.1%
じやくねん3.3%
しいん1.9%
じゃくぜん1.4%
ひっそ0.5%
じっ0.5%
さびしく0.5%
しーん0.5%
じやくぜん0.5%
ひつそ0.5%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
家内やうちが珍らしくも寂然ひっそりとしているので細川は少し不審に思いつつ坐敷に通ると、先生の居間の次ぎの間に梅子が一人裁縫をしていた。
富岡先生 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
おとひとつしない、寂然せきぜんとしたへやのうちにすわっていると、ブ、ブーッという障子しょうじやぶれをらすかぜおとだけが、きこえていました。
深山の秋 (新字新仮名) / 小川未明(著)
寂然しんとして、はては目をつむって聞入った旅僧は、夢ならぬ顔を上げて、葭簀よしずから街道の前後あとさきながめたが、日脚を仰ぐまでもない。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と——二人がことばもなく、寂然じゃくねんと、坐り合って、花世の帰るのを待っていると、二間ほど隔てた奥のへやで、人のせきばらいが聞えた。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「溶けたツて、此方こつちの眼じアあるまいし、餘計よけいなおせつかいだわ。」と輕く投出すやうに謂ツた。かと思ふと海酸漿うみほゝづきを鳴らす音がする。後はまた寂然ひつそりする。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
この風雨のすさまじい音の中に、この洪水こうずゐのやうになつた大破した堂宇だううの中に、本尊の如来仏によらいぶつ寂然じやくねんとして手を合せて立つてゐられるのである。
ある僧の奇蹟 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
海の底のように寂然しいんとしたなかで、藤吉の声だけが筒抜けに響く。はらはらした提灯屋が思わず袖を引いた。
しばらくすると、それが、みんな人間にんげんになってえるのでした。寂然じゃくぜんとして、ものこそいわないが、永遠えいえん真実しんじつ正義せいぎとをもとめている。
少女と老兵士 (新字新仮名) / 小川未明(著)
囃子の音寂然ひっそとなりぬ。粛然として身を返して、三の松を過ぎると見えし、くるりといたる揚幕に吸わるるごとく舞込みたり
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
昨日きのう……たしか昨日きのうと思うが、を負ってからう一昼夜、こうして二昼夜三昼夜とつ内には死ぬ。何のわざくれ、死は一ツだ。いっ寂然じっとしていた方がい。身動みうごきがならぬなら、せんでもい。
四辺あたり寂然さびしくひそまり返り、諸所あちこち波止場はとば船渠ドックの中に繋纜ふながかりしている商船などの、マストや舷頭にともされている眠そうな青い光芒も、今は光さえ弱って見えた。
沙漠の古都 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
床の上へ起き直ッて耳をすまして見ると、家内は寂然しーんとしていて、ねずみの音が聞えるばかり……自分はしばらく身動かしもせず、黙然としていたが,ふと甲夜よいに聞いたことを思い出して
初恋 (新字新仮名) / 矢崎嵯峨の舎(著)
はた袈裟けさつたかづらをけて、はち月影つきかげかゆけ、たなそこきりむすんで、寂然じやくぜんとしてち、また趺坐ふざなされた。
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
わめき散らして立去りたる後は、家内寂然ひつそとして物音もせず。
心の鬼 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)