寂然しいん)” の例文
海の底のように寂然しいんとしたなかで、藤吉の声だけが筒抜けに響く。はらはらした提灯屋が思わず袖を引いた。
と、一昨日おととい見た飯田と誌した表札は取りはずしてしまって、相変らず潜戸は寂然しいんと閉まっている。
狂乱 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
成程、寂然しいんとしている。開けて踏み込むと同時に、恐しい叫び声がマダムの口を突っ走って、彼女は、背ろに続くポウルの腕へ倒れ掛った。四度び、凄惨な光景が、室内に彼女を待ち構えていたのだ。
ロウモン街の自殺ホテル (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
白昼まひるの一刻一ときが、寂然しいんと沈んで、経ってゆく。