“ひっそり”のいろいろな漢字の書き方と例文
語句割合
寂然43.8%
寂寞29.2%
寂静4.2%
森閑3.1%
寂寥2.1%
寂莫2.1%
閑寂2.1%
闃寂2.1%
1.0%
寂滅1.0%
(他:9)9.3%
(注)作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
家内やうちが珍らしくも寂然ひっそりとしているので細川は少し不審に思いつつ坐敷に通ると、先生の居間の次ぎの間に梅子が一人裁縫をしていた。
富岡先生 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
と呼べど、家内かないの者はきの騒ぎにいずれへか逃げてしまい、一人も居りませんから、寂然ひっそりとして返事がなければ、
がんりきはお絹の横顔を見ながら、扉をガタビシさせて出て行く。あとは寂然ひっそりとして百匁蝋燭のほのおがのんのんと立ちのぼる。
大菩薩峠:07 東海道の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
を隔てた座敷に、あでやかな影が気勢けはいに映って、香水のかおりは、つとはしりもとにも薫った。が、寂寞ひっそりしていた。
売色鴨南蛮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
光る雨、輝く、此の炎天の下蔭したかげは、あたか稲妻いなずまこもる穴に似て、ものすごいまで寂寞ひっそりした。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
が、その座敷もまだ寂寞ひっそりして、時々、階子段はしごだん、廊下などに、遠い跫音あしおと、近く床しき衣摺きぬずれの音のみ聞ゆる。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「お泊まりなさいまし」「柏屋でございます」「へいへいこれはお早いお着きで」——などと云っていた出女の声も、封ぜられたようになくなって、萩村の駅は寂静ひっそりとなった。
生死卍巴 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
が、そういう周囲の騒ぎも、今は全く静まっていた。数間を離れて百姓や旅人、そういう人々の見物の群が、円陣を作って見守っているばかりで、気味悪いばかりに寂静ひっそりとしていた。
剣侠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
やがて門は内から閉ざされ、松火も隠れ音楽も消え、あたりは全く寂静ひっそりとなった。
南蛮秘話森右近丸 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
森閑ひっそりしているようですけれどどこに耳が付いていないにも限りません。用心しましょう」とシャアが私の耳許でささやいた。
ナリン殿下への回想 (新字新仮名) / 橘外男(著)
せっかくはいってはみたものの当惑して、映写中の森閑ひっそりとした休憩室に少年と肩を並べてもたれていると、突然少年は涼しい眼を挙げてこんなことを言い出した。
ナリン殿下への回想 (新字新仮名) / 橘外男(著)
それで小屋の中が森閑ひっそりしたところへ七兵衛が水を呑みに下りて来たのでした。
鳥より他には声を立てるもののないような、その寂寥ひっそりとした森の中から、祠は一目に農耕の部落むら俯瞰ふかんしていた。
或る部落の五つの話 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
談話はなしは尽きて小林監督は黙って五分心の洋燈ランプを見つめていたが人気の少い寂寥ひっそりとした室の夜気に、油を揚げるかすかな音が秋のあわれをこめて、冷めたい壁には朦朧ぼんやりと墨絵の影が映っている。
駅夫日記 (新字新仮名) / 白柳秀湖(著)
鼠も寂莫ひっそりと音をひそめた。……
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
すぐに降りやんだものですから、可塩梅いいあんばいだ、と然う云つてね、また、お前さん、すた/\駆出して行きなすつたよ。……へい、えゝ、お一人。——他にや其の時お友達は誰も居ずさ。——変に陰気で不気味な晩でございました。ちやうど来なすつた時、目白の九つを聞きましたが、いつもの八つごろほど寂莫ひっそりして、びゆう/\風ばかりさ、おかみさん。
夜釣 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
外はすっかり暮れてしまって、茶の木畑や山茶花さざんかなどの木立の多い、その界隈かいわい閑寂ひっそりしていた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
タキシイで通る海岸の町は閑寂ひっそりしたもので、日暮れの風もしっとりとわびしかった。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
さながら城楼にもったように閑寂ひっそりしていた。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
後は闃寂ひっそりして、下のちゃ簷端のきばにつるしてある鈴虫の声が時々耳につくだけであった。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
町幅のだだっ広い、単調で粗雑がさつな長い大通りは、どこを見向いても陰鬱に闃寂ひっそりしていたが、その癖寒い冬の夕暮のあわただしい物音が、さびれた町の底におどんでいた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
阿母かあさんが茶の間から大きな声で叱ると、台所は急に火の消えたように闃寂ひっそりとなる。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
ほぼ三十里あまりもゆくと、山が重なりあって、山の気がさわやかに肌に迫り、ひっそりとして人の影もなく、ただ鳥のあさり歩く道があるばかりであった。
嬰寧 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
「あ、」というとたちまち寂滅ひっそり
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
とぐるぐると廻って突立つったつから、慌てて留める婆さんを、ね飛ばす、銚子ちょうしが転がる、膳が倒れる、どたばた、がたぴしという騒ぎ、お嬢さん、と呼んで取さえてもらおうとしても、返事もなけりゃ、寂閑ひっそりはどういうわけ?……
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
近付くまゝにうちの様子を伺えば、寥然ひっそりとして人のありともおもわれず、是は不思議とやぶれ戸に耳をつけて聞けば竊々ひそひそささやくような音、いよいよあやしくなお耳をすませばすすなきする女の声なり。
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
さなきだに静かな庭が、一増ひとしお粛然ひっそりして、凝然じっとして、ながめて居ると少年心こどもごころにもかなしいようなたのしいような
運命論者 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
下女はまた面白そうに笑ったが、室の中からはこのにぎやかさに対する何の反応も出て来なかった。人がいるかいないかまるで分らない内側は、始めと同じように索寞ひっそりしていた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
内も外も蕭寂ひっそりとなった。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
一際ひときわ蕭然ひっそりとする。時に隣座敷は武士体さむらいていのお客、降込められて遅くなって藤屋へ着き、是から湯にでも入ろうとする処を、廊下では二人でそっのぞいて居る。
「それは毛頭間違いない。質素ひっそりとした暮し向きでもわかる」
時々雪の中を通る荷車の音が寂しく聞える位、四方そこいらひっそりとして、沈まり返って、戸の外で雪の積るのが思いやられるのでした。
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
そして猩々緋しょうじょうひ絨氈じゅうたんが、天井からの電気に照り映えてこの深夜、最早召使たちもスッカリ眠り就いてしまったと見えて、邸中は闃寂閑ひっそりとして針の落ちたほどの物音とてもないのであった。
陰獣トリステサ (新字新仮名) / 橘外男(著)