“ひっそり”のいろいろな漢字の書き方と例文
語句割合
寂然43.3%
寂寞28.9%
寂静4.4%
森閑3.3%
寂寥2.2%
寂莫2.2%
閑寂2.2%
闃寂2.2%
1.1%
寂滅1.1%
(他:8)9.1%
(注)作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
自身番の老爺が途中で若い者を二人ほど根引にして、一行急ぎ足に現場へ着いた時には界隈は寂然ひっそりとして人影もなかった。
活動を見にはいっても活動も見ずに寂然ひっそりした休憩室でこんな夢みたいな話と取っ組みながら葦原邦子の額を眺めている状態を
ナリン殿下への回想 (新字新仮名) / 橘外男(著)
がたがた音がした台所も、遠くなるまで寂寞ひっそりして、耳馴れたれば今更めけど、戸外おもて万のかわずの声。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
つまさぐりに、例の上がり場へ……で、念のために戸口に寄ると、息が絶えそうに寂寞ひっそりしながら、ばちゃんと音がした。
眉かくしの霊 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
やがて門は内から閉ざされ、松火も隠れ音楽も消え、あたりは全く寂静ひっそりとなった。
南蛮秘話森右近丸 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「お泊まりなさいまし」「柏屋でございます」「へいへいこれはお早いお着きで」——などと云っていた出女の声も、封ぜられたようになくなって、萩村の駅は寂静ひっそりとなった。
生死卍巴 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
森閑ひっそりしているようですけれどどこに耳が付いていないにも限りません。用心しましょう」とシャアが私の耳許でささやいた。
ナリン殿下への回想 (新字新仮名) / 橘外男(著)
それで小屋の中が森閑ひっそりしたところへ七兵衛が水を呑みに下りて来たのでした。
鳥より他には声を立てるもののないような、その寂寥ひっそりとした森の中から、祠は一目に農耕の部落むら俯瞰ふかんしていた。
或る部落の五つの話 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
談話はなしは尽きて小林監督は黙って五分心の洋燈ランプを見つめていたが人気の少い寂寥ひっそりとした室の夜気に、油を揚げるかすかな音が秋のあわれをこめて、冷めたい壁には朦朧ぼんやりと墨絵の影が映っている。
駅夫日記 (新字新仮名) / 白柳秀湖(著)
鼠も寂莫ひっそりと音をひそめた。……
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
すぐに降りやんだものですから、可塩梅いいあんばいだ、と然う云つてね、また、お前さん、すた/\駆出して行きなすつたよ。……へい、えゝ、お一人。——他にや其の時お友達は誰も居ずさ。——変に陰気で不気味な晩でございました。ちやうど来なすつた時、目白の九つを聞きましたが、いつもの八つごろほど寂莫ひっそりして、びゆう/\風ばかりさ、おかみさん。
夜釣 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
外はすっかり暮れてしまって、茶の木畑や山茶花さざんかなどの木立の多い、その界隈かいわい閑寂ひっそりしていた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
タキシイで通る海岸の町は閑寂ひっそりしたもので、日暮れの風もしっとりとわびしかった。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
後は闃寂ひっそりして、下のちゃ簷端のきばにつるしてある鈴虫の声が時々耳につくだけであった。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
阿母かあさんが茶の間から大きな声で叱ると、台所は急に火の消えたように闃寂ひっそりとなる。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
ほぼ三十里あまりもゆくと、山が重なりあって、山の気がさわやかに肌に迫り、ひっそりとして人の影もなく、ただ鳥のあさり歩く道があるばかりであった。
嬰寧 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
「あ、」というとたちまち寂滅ひっそり
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
とぐるぐると廻って突立つったつから、慌てて留める婆さんを、ね飛ばす、銚子ちょうしが転がる、膳が倒れる、どたばた、がたぴしという騒ぎ、お嬢さん、と呼んで取さえてもらおうとしても、返事もなけりゃ、寂閑ひっそりはどういうわけ?……
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
近付くまゝにうちの様子を伺えば、寥然ひっそりとして人のありともおもわれず、是は不思議とやぶれ戸に耳をつけて聞けば竊々ひそひそささやくような音、いよいよあやしくなお耳をすませばすすなきする女の声なり。
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
さなきだに静かな庭が、一増ひとしお粛然ひっそりして、凝然じっとして、ながめて居ると少年心こどもごころにもかなしいようなたのしいような
運命論者 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
下女はまた面白そうに笑ったが、室の中からはこのにぎやかさに対する何の反応も出て来なかった。人がいるかいないかまるで分らない内側は、始めと同じように索寞ひっそりしていた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
内も外も蕭寂ひっそりとなった。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
一際ひときわ蕭然ひっそりとする。時に隣座敷は武士体さむらいていのお客、降込められて遅くなって藤屋へ着き、是から湯にでも入ろうとする処を、廊下では二人でそっのぞいて居る。
「それは毛頭間違いない。質素ひっそりとした暮し向きでもわかる」
時々雪の中を通る荷車の音が寂しく聞える位、四方そこいらひっそりとして、沈まり返って、戸の外で雪の積るのが思いやられるのでした。
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)