“ひっそり”のいろいろな漢字の書き方と例文
語句割合
寂然46.3%
寂寞26.9%
寂静3.7%
森閑2.8%
閑寂1.9%
闃寂1.9%
寂寥1.9%
寂莫1.9%
静寂1.9%
0.9%
寂滅0.9%
寂閑0.9%
寥然0.9%
粛然0.9%
索寞0.9%
蕭寂0.9%
蕭然0.9%
質素0.9%
0.9%
闃寂閑0.9%
静閑0.9%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
池の面は黒ずんで、合歓に渡る風が一きわ高く、静かな山中やまなかの夜は物凄い程に寂然ひっそりとしている。……耳を澄ますと虫の音が聞こえて来る。
稚子ヶ淵 (新字新仮名) / 小川未明(著)
急に自ら思いついたらしく、坂の上から右に折れて、市ヶ谷八幡の境内へと入った。境内には人の影もなく寂寞ひっそりとしていた。
蒲団 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
彼は楊柳の蔭へこっそり姿をひそませて、じっと様子を窺った。船中の唄声はやがて絶えて、また四辺は寂静ひっそりとなった。
沙漠の古都 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
それで小屋の中が森閑ひっそりしたところへ七兵衛が水を呑みに下りて来たのでした。だから七兵衛は、ちょうどこれらの連中を始末するためにここへ下りて来たようなことになりました。
タキシイで通る海岸の町は閑寂ひっそりしたもので、日暮れの風もしっとりとわびしかった。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
雪江さんがあとから追蒐おっかけて行って、また台所で一騒動やるうちに、ガラガラガチャンと何かがこわれる。阿母かあさんが茶の間から大きな声で叱ると、台所は急に火の消えたように闃寂ひっそりとなる。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
談話はなしは尽きて小林監督は黙って五分心の洋燈ランプを見つめていたが人気の少い寂寥ひっそりとした室の夜気に、油を揚げるかすかな音が秋のあわれをこめて、冷めたい壁には朦朧ぼんやりと墨絵の影が映っている。
駅夫日記 (新字新仮名) / 白柳秀湖(著)
鼠も寂莫ひっそりと音をひそめた。……
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と、一瞬間ざわめいたへやなかは、すぐにまた静寂ひっそりとなった。時計のチクタクもちょっと息どまったが、又もせわしげに無限の彼方に向って、例の小エゴイストの小刻みな歩みをつづけて行った。
孤独 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
ほぼ三十里あまりもゆくと、山が重なりあって、山の気がさわやかに肌に迫り、ひっそりとして人の影もなく、ただ鳥のあさり歩く道があるばかりであった。
嬰寧 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
「あ、」というとたちまち寂滅ひっそり
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
寂閑ひっそりはどういうわけ?……
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
近付くまゝにうちの様子を伺えば、寥然ひっそりとして人のありともおもわれず、是は不思議とやぶれ戸に耳をつけて聞けば竊々ひそひそささやくような音、いよいよあやしくなお耳をすませばすすなきする女の声なり。
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
僕は土蔵くらの石段に腰かけていつもごと茫然ぼんやりと庭のおもてながめて居ますと、夕日が斜に庭のこんで、さなきだに静かな庭が、一増ひとしお粛然ひっそりして、凝然じっとして
運命論者 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
下女はまた面白そうに笑ったが、室の中からはこのにぎやかさに対する何の反応も出て来なかった。人がいるかいないかまるで分らない内側は、始めと同じように索寞ひっそりしていた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
酌婦の笑い声も聞えなくなった。内も外も蕭寂ひっそりとなった。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
一際ひときわ蕭然ひっそりとする。時に隣座敷は武士体さむらいていのお客、降込められて遅くなって藤屋へ着き、是から湯にでも入ろうとする処を、廊下では二人でそっのぞいて居る。
「それは毛頭間違いない。質素ひっそりとした暮し向きでもわかる」
時々雪の中を通る荷車の音が寂しく聞える位、四方そこいらひっそりとして、沈まり返って、戸の外で雪の積るのが思いやられるのでした。
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
そして猩々緋しょうじょうひ絨氈じゅうたんが、天井からの電気に照り映えてこの深夜、最早召使たちもスッカリ眠り就いてしまったと見えて、邸中は闃寂閑ひっそりとして針の落ちたほどの物音とてもないのであった。
陰獣トリステサ (新字新仮名) / 橘外男(著)
この数日来、多数の人の出入りやら悲歎やらで込合っていたが、今は家の中が静閑ひっそりとがらんどうになって、妙に改たまった感じがするのであった。
(新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)