“闃寂”のいろいろな読み方と例文
読み方割合
げきせき35.7%
ひっそり14.3%
げきじゃく14.3%
しんかん14.3%
ひつそり7.1%
しん7.1%
ひッそ7.1%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
棚の物がかすかにこたえるのを見て、また例の日だなと合点する、やや慣れた心持が現れている。それが冬の夜長の闃寂げきせきたる気分と合致しているように思う。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
深い谿たにや、遠いはざまが、山国らしい木立の隙間すきまや、風にふるえているこずえの上から望み見られた。客車のなかは一様に闃寂ひっそりしていた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
九州帝国大学構内を包む春の夜の闇は、すさまじい動物どもの絶叫、悲鳴のうちに、いよいよ闃寂げきじゃくとしてけ渡って行くばかりで御座います。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
急に周囲そこいら闃寂しんかんとして来た。寺院おてらのように人気ひとけが無かった。お種は炉辺ろばたに坐ってひとりで静かに留守居をした。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
道が段々山里の方へ入つて行くと、四辺あたりが一層闃寂ひつそりして来て、石高いしだかな道をき悩んでゐる人間さへがんな心をもつてゐるか判らないやうにおそれられた。
或売笑婦の話 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
岸本は節子と一緒に石を敷きつめた墓地の一区域へと出た。そこまで行くと人足達の姿も高い墓石に隠れて、唯土でも掘り起すらしい音が闃寂しんとした空気にひびけて伝わって来ていた。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
と、しばらく闃寂ひッそとなる——そのそばから、直ぐ又穏かにスウスウという音が遠方に聞え出して、其が次第に近くなり、荒くなり、又耳元で根気よくゴウ、スウ、ゴウ、スウと鳴る。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)