“峡”のいろいろな読み方と例文
旧字:
読み方割合
はざま32.8%
かい31.1%
かひ19.7%
けふ3.3%
たに3.3%
カヒ1.6%
あい1.6%
1.6%
けい1.6%
たにあい1.6%
はけ1.6%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
川が崖に沿うて走るようになり、白い巌壁からなるはざまの鉄道橋を渡ったとき、ドナウが依然としてそう細くなってはいなかった。
ドナウ源流行 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
その夜、李陵は小袖短衣しょうしゅうたんい便衣べんいを着け、誰もついて来るなと禁じて独り幕営の外に出た。月が山のかいからのぞいて谷間にうずたかしかばねを照らした。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
めゆきて死所と定めむ天竜のかひちかき村清水湧くところ(原君、飯田市より二三里を距てたる山本村の清水に疎開し来れと誘はるるにより、かかる夢あり)
枕上浮雲 (新字旧仮名) / 河上肇(著)
蛾眉山のふもとの河々皆此大河に入る。此大河瀘州ろじうを流れ三けふのふもとをぎ、江漢こうかんいた荊州けいじうに入り、○洞庭湖とうていこ赤壁せきへき潯陽江じんやうこう楊子江やうしこうの四大こうつうじて江南こうなん流湎ながれめぐりて東海に入る。
ある時ある所で、私は山の中のたにのふちに立ったことがあります。絶壁がむきだしで、垂直になっていて、下の方には、岩石の上を水がどうどうと流れている。
幻滅 (新字新仮名) / パウル・トーマス・マン(著)
クラぐらと 山の空より淡雪のまひつゝ、なほぞ 汽車カヒに入る
鵠が音:01 鵠が音 (新字旧仮名) / 折口春洋(著)
籐椅子に身をうづめた光代はこれ等の会話を聴きながら黙つて深い瞳をぢつと山あいの闇に凝らしてゐた。彼女は身動きもしなかつた。いや、さう言ふのは適当ではない。
水と砂 (新字旧仮名) / 神西清(著)
「またその身にこけまた檜榲ひすぎい」というのは熔岩流の表面の峨々ががたる起伏の形容とも見られなくはない。「その長さ谿たに八谷やたに八尾やおをわたりて」
神話と地球物理学 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
十九日、朝のうちに付近の景勝を探ろうと、宿の女の子を案内に吹割ふきわりへ行ってみる。片品の水せばまりてけいをなしている処、奔流碧潭へきたん、両岸の絶壁いずれも凡ならず。一行いずれも意外の景色に驚く。
「えっ、御承諾ごしょうだく下さいまするか……」畳を下がって礼をのべた。あたかも主君へ対する作法である。その上、おびただしい金布きんぷ贈物おくりものを残して、刈屋頼母かりやたのも大川内おおかわちたにあいからかごを戻して行った。
増長天王 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
甲武線の附近ではたとえば小金井の字峡田はけた、調布町小島分の字はけ上、谷保の字岨下。北郊にあっては田端の字峡附はけつき、岩淵町大字袋字峡通りの類、多くは古くから峡の字が用いてある。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)