かひ)” の例文
旧字:
めゆきて死所と定めむ天竜のかひちかき村清水湧くところ(原君、飯田市より二三里を距てたる山本村の清水に疎開し来れと誘はるるにより、かかる夢あり)
枕上浮雲 (新字旧仮名) / 河上肇(著)
さすがにかひと申すだけの事はありて、中々難渋な山道に候へども一同皆々元気にて、名所古蹟などをとぶらひつつ物見遊山ものみゆさんのやうな心持にて旅をつづけ居り候、また人事にも面白き事多く
かぜは……昼間ひるまあをんだやまかひからおこつて、さはつてえだ岩角いはかど谷間たにあひに、しろくものちぎれてとりとまるやうにえたのはゆきのこつたのか、……とおもふほど横面よこづらけづつてつめたかつた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
妻の依羅娘子よさみのおとめが、「けふけふと吾が待つ君は石川いしかはかひに(原文、石水貝爾)まじりてありといはずやも」(巻二・二二四)と詠んで居り、娘子は多分、つぬさとにいた人麿の妻と同一人であろうから
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
たけながく引きてしらじら降る雨のかひの片山に汽車はかかれり
渓をおもふ (新字旧仮名) / 若山牧水(著)
わが住める山のかひより見わたせば都は雲のしたにぞありける
礼厳法師歌集 (新字旧仮名) / 与謝野礼厳(著)
きあまる水量みかさ梢をうちひたし空ちかづきぬかひのふところ
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
「山のかひそことも見えず一昨日をとつひも昨日も今日も雪の降れれば」(同・三九二四)を作り、大伴家持は、「大宮の内にもにも光るまでらす白雪見れど飽かぬかも」(同・三九二六)を作って居る。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
九十九折けはしき坂を降り来れば橋ありてかゝるかひの深みに
みなかみ紀行 (新字新仮名) / 若山牧水(著)
煙立つ紅葉もみぢかひにしろがねの入江ひらけて舟はしるなり
雲母集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
この山に湧きいだしたる幾泉いくいづみあひ寄りかひの底ひに落激おちたぎ
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
北のかひ雲ひたひたと押しかぶし降雪かうせつちかし紅葉も過ぎぬ
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
深きかひみなみひらきておちたぎつ滝のゆくへを吾はおもひき
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
かひの底。
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
やうやくに秋のふかまむやまかひ朝のいかづち鳴りとどろけり
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)