“お”のいろいろな漢字の書き方と例文
カタカナ:
語句割合
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(注)作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
一般の健康状態はさてき、ある局部が不良なるために卑屈ひくつとなり引込ひっこみ勝ちとなり、憂欝ゆううつにに沈む傾向がありはせぬか。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
甲斐は「うん」と頷き、筆をいて、書いたものを読み返してから、「なにか云ったか」と問い返しながら、その料紙を折りたたんで、鈴を鳴らした。
『碌に銭を持たねえで、人の借りた船で、飯も酒も食つたり飲んだりして此処ここりるツて、好く言へたもんだ』爺さんもこんなことを言つた。
(新字旧仮名) / 田山花袋(著)
何時いつよりはやにはにかけりれば、若樣わかさま、とかさずびて、笑顏ゑがほをまづする庭男にはをとこ
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ゆつくり出掛でかけてくうちに、したちてたのをみんほか子供こどもひろはれてしまひました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
そのあをざめたかほうへには、たけまじつたすぎむらのそらから、西日にしびひとすぢちてゐるのです。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
いたつて未熟みじゆくもの、此後こののちともお見知みしかれて御懇意ごこんいに願ひますとふと、まづ此方こちらへと
にゆう (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
まへふかしをするならるやうにしてさむさのしのぎをしていたらからうに、わかしはみづつて
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ぼうさんは「あっ。」といったなり、しばらくこしかして目ばかり白黒しろくろさせたままがることもできませんでした。
安達が原 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
たとひある一二のいへ潰倒くわいたうしても、ひきつゞいて火災くわさいこしても、それはほとん問題もんだいでない。
日本建築の発達と地震 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
香は天つ風の烈しく吹くにもされず、色は白璧を削りたればとてかくはあらじと思はるゝまで潔きが中に猶あたゝかげなるおもむきさへあり。
花のいろ/\ (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
気丈なその女は、すぐに何か直感したが、それが生命の問題であると知ると、自分で自分の心をし沈めて、今夢から覚めた風をして身動きをした。
秋の日はたちま黄昏たそがれて、やや早けれどともしを入るるとともに、用意の酒肴さけさかなは順をひて運びいだされぬ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
われらが次をうてその運命をたどり来たれる敵も、味方も、かの消魂も、この怨恨えんこんも、しばし征清せいしん戦争の大渦に巻き込まれつ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
むろんさけもございました……にごってはりませぬが、しかしそう透明すきとおったものでもなかったようにおぼえてります。
山男は、大へん恐縮きょうしゅくしたように、頭をかいて立ってりました。みんなはてんでに、自分の農具を取って、森を出て行こうとしました。
狼森と笊森、盗森 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
かへりはれいまどたゝいてと目算もくさんながら横町よこちやうまがれば、いきなりあとよりひすがるひと
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ガチョウは、ニールスが一生けんめい走ってくるのを見ますと、すぐ、おそろしいてきいかけられているにちがいない、とさとりました。
が七になつても、ふねはひた/\と波止場はとばきはまでせてながら、まだなか/\けさうにない。
検疫と荷物検査 (新字旧仮名) / 杉村楚人冠(著)
「若いうちは七分五厘まで引きました。しは存外今でもたしかです」と左の肩をたたいて見せる。へさきでは戦争談がたけなわである。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それから、幾月いくつきがなかったのであります。やぐらにのぼって見張みはりをしていた家来けらいが、あわててりてきて、
春の日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そして、前の棒切ぼうきれが反落はんらくしてくるのと一しょに、クロの巨影きょえいもそれにつれて文字もんじに地へりてきた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
焼け焦げたような顔色からしてこの男が、焔硝えんしょうのけむりはともかく、煙草のけむりには相当お馴染になっていることがうかがわれた。
雲仙がその景観において、山岳中の首位にされることの当然さを、一たび普賢の絶頂に立ったものは、たれでも首肯しゅこうするであろう。
雲仙岳 (新字新仮名) / 菊池幽芳(著)
野に生まれて、野にって、そして野に食物をあさる群れの必ず定まって得る運命——その悲しいつらい運命にお作も邂逅でくわした。
ネギ一束 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
大来皇女おおくのひめみこ挽歌ばんかにある「いそのうへにふる馬酔木あしびを手折らめど……」の馬酔木はこれでなくてはとおもった。
大和路・信濃路 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
赤い丸い月が出て居る有様を朱肉で丸印がしてあるものとして、一行の雁字と共に一幅いっぷくを成して居るかのやうにしやれて見たのであらう。
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
かめ「そうじゃアありません、彼奴から私の方へ此の娘を渡したという証文を入れ、印形までしてよこしたから、金子を五両遣ったのでございます」
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
なども民謡風の歌を転じて風雅の作としている。だから時にはつぎの歌のように、原作の生彩を失って、おさまり過ぎた感じにちることもあるし、
中世の文学伝統 (新字新仮名) / 風巻景次郎(著)
現実をいとい果てるように成ったものが悲痛な心でちて行ったデカダンの生活の底こそは、彼の遁れて行こうとした氷の世界であったのである。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
で、なおその正体を見届ける為に、そのかたわらへ一歩進み寄ろうとする時、頭の上から大きな石が突然転げちて来た。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
なれども私は亡きあとにて皆様の御弔ひを受けやうとは存じませぬ。たとひ、どのやうな悪道、魔道にちませうとも此の怨みを晴らさうと存じまする。
白くれない (新字新仮名) / 夢野久作(著)
細い両眼の外は黒一色の影法師の背中に、長い髪の毛をふり乱した、白衣びゃくえの青ざめた女幽霊が、ぶさるようにしがみついているのだ。
悪魔の紋章 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
望月の家をせ出した兵馬が、この村をあとにしてもと来た道。そこへちょうど通りかかったのは、空馬からうまを引いた、背に男の子をうた女。
大菩薩峠:10 市中騒動の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
時々は、客間にける男性の華やかな笑い声が、遠く彼女の居間にまで、響いて来ることがあったが、彼女の心は、そのために微動だにもしなかった。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
疑いもなくそれは「邪悪の化身」であって、そして同時に、彼女の体と魂とが持つことごとくの美が、最高潮の形にいて発揚された姿なのです。
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
有王 私の尊いご主人様、私はあなたのために命をしみませぬ。幼い時からあなたに受けたご恩を思えば、私はよろこんであなたのために死にまする。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
老人ろうじんはもう行かなければならないようでした。私はほんとうに名残なごしく思い、まっすぐに立って合掌がっしょうして申しました。
雁の童子 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
ついにゴンゴラ総指揮官の勘忍袋かんにんぶくろが切れ、警衛隊に命令して、金博士をオムスク酒場から引き立て、官邸へ連れて来させたのであった。
今日の劇場の草履ぞうりの鼻緒は大抵青いようであるが、その頃の草履の鼻緒は白と紅との太いにしてあったように記憶している。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
運命なのか、地面へ飛び下りるつもりの彼女は、丁度そのあなへどんと俯伏うつぶせにちこんだ時、如何どうとも全力が尽きてしまった。
私は病院の助手をやっていたが、恰度その頃、或る婦人と恋にちました。私としてはこれが後にもさきにもたった一度の、そして熱烈な恋でした。
麻酔剤 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
すると二階にいる主人の逸作は、画筆をくか、うたた寝の夢をきのけるかして、急いで出迎えてれるのである。「無事に帰って来たか、よしよし」
雛妓 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
事ここに至った縁起えんぎを述べ、その悦びを仏天に感謝し、かつは上人彼みずからの徳に帰すことをねがい、ここに短き筆をきたく思います。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
おにくるしまぎれに子供こどもかみをつかんで、けずにこれもくびこうとほねりました。
雷のさずけもの (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
敦子あつこさまのほうでもれたらしく、とうとう両親りょうしんすすめにまかせて、幕府ばくふ出仕しゅししている
奉修の事へて帰るさ、行脚あんぎゃついでに此のあたりに立ちまはり給ひしが、此の仔細を聞き及ばれて不憫ふびんの事とやおぼされけむ。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
しかし、袖子そでこはまだようや高等小学こうとうしょうがくの一学年がくねんわるかわらないぐらいの年頃としごろであった。
伸び支度 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
うす浅黄色あさぎいろのかすみの中に、ほたるがいくつもほの青い光のをひいて、高く低くとんでいましたが、林太郎はそれをつかまえようともしません。
あたまでっかち (新字新仮名) / 下村千秋(著)
そこでねこはすっかりとくいになって、をふりてながら、みんながくびながくしてっているところへ行って、
猫の草紙 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
二三日の後、我は新月の光をひて、又同じところに來しに、こたびは自ら禁ずること能はずして、進みて灰色の寺壁の下に立ち、格子窓を仰ぎ視たり。
そして晝間でも御殿の下の日当りのよい石崖いしがけりかゝって、晴れた秋の空を見上げながらひとりぼんやりと幻をいかけたりした。
だが、三年兵のうちで、二人だけは、よう/\内地で初年兵の教育をえて来たばかりである二年兵を指導するために残されねばならなかった。
雪のシベリア (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
幸いに面の色は真黒だから、表情が更にわからないけれど、どうも黒さんの調子が甚だ変なのであります。それでもやっと数番の槍投げをえて、
しかして自分らの水游ぎを戒むるとて、母がいつも通し蛇が水游ぐ児の肛門より入りてその腸を食い、前歯を欠いて口より出ると言うを聞きじた。
それほどに無邪気な可憐な恋でありながら、なお親にじ兄弟に憚り、他人の前にて涙も拭き得なかったのは如何に気の弱い同志であったろう。
野菊の墓 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
それより、何より不愉快なのは、坑夫の半数を占める十二、三から十五歳位の惨めな少年坑夫達までが彼をじ恐れていることだった。
雲南守備兵 (新字新仮名) / 木村荘十(著)
キャラコさんが、威勢よく襖を開けて茜さんの枕元へ飛んで行く。茜さんが、ものじしたような眼付きで、キャラコさんを見あげながら、
葉をけんして見ると、バナナの方が葉質ようしつがじょうぶで葉裏が白粉はくふんびたように白色はくしょくていしており
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
五二 馬追鳥うまおいどり時鳥ほととぎすに似てすこし大きく、はねの色は赤に茶をび、肩には馬のつなのようなるしまあり。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
自然しぜん法則はふそく依然いぜんとしてもとまゝです、人々ひと/″\猶且やはり今日こんにちごとみ、
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
すでに自分のさきめいを自覚している石舟斎は、この雛鳥ひなどりの孫や子を如何にもして世に出したいと思っていたに違いない。
剣の四君子:02 柳生石舟斎 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その着物は、半分はんぶんきんったビロードでできていて、もう半分は、灰色はいいろ手織ておりぬのでできていました。
祖母おばあさんの着物きもの塲所ばしよはおうち玄關げんくわんそばいたきまつてました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
「嘘をけ、君が音楽学校の試験なぞを受ける資格があるものかね。第一、中学はえていないし、英語はビイルのレッテルも読めないじゃないか。」
幻影の都市 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
もっとも、この青年が中学をえて大学へ進んだころには、エフィム・ペトローヴィッチも、天才的な教育者も、すでにあの世の人となっていた。
いっ腕力付うでづくで奪い取ろうかとも考えたが、剣をびたる多数の警官と闘うことは、彼も流石さすがはばかった。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
わたくしは此最後の丹後、眞志屋の鑑札をびて維新前まで水戸邸の門を潜つた最後の丹後をまのあたり見て、これを緘默かんもくに附するに忍びぬからである。
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
それで、根本の公娼廃止と云ふ問題はあなたのつしやるやうな正当な理由から肯定の出来る事ですが、私は矯風会の人達の云ひ分に対しては矢張り軽蔑します。
青山菊栄様へ (新字旧仮名) / 伊藤野枝(著)
「いまは会うこと成らぬが、が隠居でもした後には、ゆるゆる会ってつかわそう——と、かように惣左衛門どのへっしゃったことがおありだそうで」
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「あら、そう何でも一人できめてしまいになるから悪るいんですわ。昨日きのうもあんなに親切にいろいろ言って下さったじゃありませんか」
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
出るくいが打たれて済んで小普請、などと申しまして、小普請入りというのは、つまり非役ひやくになったというほどの意味になります。
幻談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
私は五日か七日き位に父に背負はれて二里余り離れた或る村の医者へ通つて居たが、医者は関節炎だとか云つて、ヨヂュムチンキか何かを塗つて呉れたりして居た。
世の中へ (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
文「なに、一軒いて隣は小野うじの家に相違ないが、小野に怪我があっては相成らんゆえ、わしが往って取鎮とりしずめて遣ろう」
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
テーヴェロとアルノの間のあらき巖の中にて最後の印をクリストより受け、二年ふたとせの間これを己が身にびき 一〇六—一〇八
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
いま吾等われらは、重大ぢゆうだい使命しめいびながら、何時いつ大陸たいりくくといふ目的あて
お千代が心ある計らいによって、おとよは一日つぶさに省作にうて、将来の方向につき相談をぐる事になった。それはもちろんお千代の夫も承知の上の事である。
春の潮 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
だが、その夜は、あいにく、にもめぐまれず、しかもそれ以後まもなく、二人の恋は、致命的な事件に会わねばならなかった。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わが目は澄める泉に垂れぬ、されどそこに己が姿のうつれるをみて我これを草に移しぬ、恥いと重く額をせしによりてなり 七六—七八
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
けるにしたがつてしもは三にん周圍しうゐ密接みつせつしてらうとしつゝちからをすらしつけた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
しかしそこから南の方へまわって、紀伊国きいのくに水門みなとまでおいでになりますと、お傷のいたみがいよいよ激しくなりました。命は、
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
「遊びの心を乗せるにふさわしい急流だ。——けれど、後朝きぬぎぬを、また、都へもどる日は、舟あしも遅いし、ものういそうだぞ」
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この古家ふるいえの静かな壁のうちから、れ自身の生涯が浄められて流れ出るような心持がする。
されどそはかならずよく燃ゆとこの群の年かさなる子、のが力にあまるほどの太き丸太を置きつついえり。
たき火 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
れゃ、うちへ帰ったら、早速、かゝあを貰うんだ。」シベリアへ志願をして来た福田も、今は内地へ帰るのを急いでいた。
雪のシベリア (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
ら、ほんにやんだ(厭だ)ごんだ。——耄碌したにつけ込んで、何するか知れたこってねえ。こないださがした銅鍋だって、俺が山本へ売ったちゅうごんだよ」
伸子 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
その時この白い女人柱カリヤチイドの張切つたの上に、神々かみ/″\の涙がちて、突き刺された怪獸シメエル痍口きずぐちから、血のれるのがみえる。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
くづちたるついぢの石に、三頭の馬を繋ぎたるが、皆おの/\顋下さいかりたる一束のまぐさを噛めり。
現に此方こちらの広海さんでは懇意な牛乳屋に特約なすって飲料にする牛乳はろし相場即ち一升二十五銭でお買入れになりますし、クリームやバターをお取りなさるのは一日の余り物をお買入れなってそれよりも非常にお安いそうです。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
先刻さっき取次に出た書生がそっとへやの中へ入って来て、音のしないようにブラインドをろして、また無言のまま出て行った。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
『今昔物語』巻二十六の九にいわく、加賀の某郡の下衆げす七人一党として兵仗を具えて海に出で釣りを事とす、ある時風にうて苦しむと遥かに大きな島ありて、人がわざと引き寄するようにその島に船寄る
私は誰のうらみを受けてこのような目にうたのか知れぬがほんとうの心を打ち明けるなら今の姿をほかの人には見られてもお前にだけは見られとうないそれをようこそ察してくれました。
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
赤松は一に※松、黒松は※松といいます。
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
汝らこの蛇のいづれかにしていづれかなるを別ち得るや、別ち得ばよし、別ち得ずんば国王よく聞け、汝を亡ぼし、汝の国をも我が神力じんりきもて滅すべし、七日なぬかの間にこの棄老をばほろぼすべきぞ
印度の古話 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
お二人の身體はもつれ合つたまゝ、夜の眞黒な水の中へ、音も立てずにち込んでしまひました。
幾度かめては、廣間の樣子を覗き、幾度か氣をうしなつては何刻となく深い眠にちました。
それが村で持余された重右衛門の亡骸なきがらを焼く烟かと思ふと、自分は無限の悲感に打れて、殆ど涙もつるばかりに同情をそゝがずには居られなかつた。
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
始めは木の間をめた霧の間から、時折八ヶ岳の頂上が望まれたが、下るに従って霧は大粒となり、梢から露が雨のようにちて来る。
そうしてさっきの電話では盗難にうたようにいうたけど、実はただの盗難ではない。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
こうして、たがいにうたものは、また永久えいきゅうわかれてしまいました。いつまた、おじいさんと利助りすけのさかずきとまごとが、相見あいみるときがあるでありましょうか。
さかずきの輪廻 (新字新仮名) / 小川未明(著)
れも、あの創を目標めじるしにしてしゃつらを覚えておりますのだ。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しようさんおまへところた、れがあんこのたねなしにつていまからはなにらう
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「無礼すな。これにわすは、御台所の政子の方様である。伊豆の秋戸の里よりお渡りあって、今この鎌倉へお着きなされたところだ」
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
予の母は日輪胎に入ると夢見て予を産んだ。占者はこれを占ってこの児長じて世界を一統するであろうと。しかし我国には万世一系の天皇がわす。よって予は先に朝鮮を戡定し、支那また和を請い、王女をわが皇室に献ぜんと約した。しかも彼はこの盟約を実行せざるによる、ふたたび兵を出してこれを征服しようとしている。
「はい。ありがたい事に達者で——針も持ちます、もうみます、御団子おだんごきます」
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
この二人が相談をして、めいめい一枚のあさのきものをこしらえようということにきめ、の糸をみはじめた。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
Y子さんはモデル女の中では美人かも分れしませんけど、光子さんの方がもっと美人で、その絵エの感じにうてるとしましたら、光子さんモデルにしても差支さしつかいないではあれしませんか。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
故に夫婦家にるは人間の幸福快楽なりというといえども、本来この夫婦は二個の他人のあいうたるものにして、その心はともかくも、身の有様ありさまの同じかるべきにあらず。
日本男子論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
明治三十何年かの有名な御茶の水のおこの殺しが、じき見世物になり、おこのの血だらけの顔を表看板のかわりに幕にかいて張り出してあるのをみて、ひどくおびえ顔をうて逃げたこともあった。
新古細句銀座通 (新字新仮名) / 岸田劉生(著)
お美代は到頭、両手でうた顔を、お婆さんの布団の端に伏せた。やがてすすきは、声にまでなって来た。
蜜柑 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
忠利は真摯しんしな求道者として沢庵の高示を仰ぎ、沢庵もまた、忠利を教え導くにあらゆる努力をしまなかった。
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼女は、彼女のながい人生に必要のない余計なものはみんな、しげも無くすてて了って、今では血の色まで透きとおっていた。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
づ/\橋板を踏むと、足の底がふわりとして、一足毎に橋は左右に前後に上下に搖れる。
熊の足跡 (旧字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
ず/\橋板を踏むと、足のそこがふわりとして、一足毎ひとあしごとに橋は左右に前後に上下にれる。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
と目をうていた袖口をはらりと落すと、瓦斯がす遠灯とおあかりにちらりとかえる。
第二菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
深山に連絡している周囲が、女のことについて、いろいろに自分を批評し合っているその声が始終耳にかぶさっているようで、暗い影が頭にまつわりついていた。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
しかれども井伊大老すでに彼を死地しちかんとす、それた何の益有らん。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
軽躁けいそうと心附かねばこそ、身を軽躁に持崩しながら、それをしとも思わぬ様子※醜穢しゅうかいと認めねばこそ、身を不潔な境にきながら、それを何とも思わぬ顔色かおつき
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
われは今これに反して、獨り泉下に入りて身を古の羅馬人の精靈の間にきたりとおもひぬ。
北尾辰宣の筆ならんてふ異体の百人一首に、十種の男を品隲ひんしつして白を第六等にき、リチャード・バートンはアラビア人が小唇の黒きを貴ぶ由をいった(一八九四年版『千一夜譚』注)。
「毎日ふみを書いたり、たまにはいろ男にもうたりせねばならんゆえ、それが忙しいか」
山県有朋の靴 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
その自分にたいして、去年きょねんうたときには、某牛舎ぼうぎゅうしゃておって、うん安藤あんどうかといったきり、おきもしなかった。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
専門家でもこれを完全に駆除するのは困難だとすると、自分等の手にえぬのは当然かと思われた。
蜂が団子をこしらえる話 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
日課をへてのちは、学校の向ひなる、「カッフェエ・ミネルワ」といふ店に入りて、珈琲カッフェーのみ、酒くみかはしなどして、おもひおもひのたわぶれす。
うたかたの記 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
そのきこと撃石火げきせきくわの如く、葡萄の林のあなたにちぬとぞ見えし。
地球に拙劣せつれつな着陸をして一命をとすよりはいいけれど、行方も見当がつかないのでは仕方がない。
地球盗難 (新字新仮名) / 海野十三(著)
先君のとむらい合戦と申して、せがれ秀勝も髪をろさんといい、堀秀政も剃髪すると云い出したが、お身らは若い、それまでには及ばぬ。武者振むしゃぶりこそ作れと、ようやくあちらで止めて参った。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
藤孝は、仏間ぶつまにはいって、信長の霊に誓の仏燈あかしを捧げ、その日に、黒髪をろしてしまった。
わたしが、おもつても! ……」
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
この玲瓏れいろうとして充実せる一種の意識、この現世うつしよの歓喜と倫を絶したる静かにさびしく而かも孤独ならざる無類の歓喜は凡そ十五分時がほども打続きたりとぼしきころ、ほのかに消えたり。
予が見神の実験 (新字旧仮名) / 綱島梁川(著)
林羅山はやしらざん曰く、「人物の生や、みな天地陰陽の感ずるところ、生は自息、死は自消。たとえば、く川の昼夜をかざるがごとし。さらに一息の間断もなし。今年の春は去年の春にあらず、樹頭の花はまた、根の花にあらず」と)
通俗講義 霊魂不滅論 (新字新仮名) / 井上円了(著)
子、川のほとりに在りて曰く、逝く者は斯くの如きかな。昼夜をかずと。——子罕篇——
論語物語 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
「それ。」といって警官の一行は泉原を残したまゝ、五階へ上ると、A夫人は顔を両手にうて、恐ろしさにワナ/\と打震えていた。寝室にはA老人が冷たくなって既に縡切こときれていた。
緑衣の女 (新字新仮名) / 松本泰(著)
あの聲は旦那であると思ふ間もなく、反齒そつぱの突き出た唇を尖がらして、小皺の多い旦那の顏は、頭の上からかぶさるやうにして、お光の眞上に現はれた。
兵隊の宿 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
平吉は主婦に背を向けて中腰になった。お高の体がそれにんもりと負ぶさった。
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
天気が変ったのかんもりした空気が酒のあるほおにそそりと触れて暖かった。
港の妖婦 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
さくき、花をくうし香をくような事は僕婢ぼくひの為すがままに任せていたが、僧をひつぎおさめることは、其命を下さなかったから誰も手をつけるものは無かった。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
それを眺めそれに手をく時、私には心と心とが触れ合う想いがある。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
泣いてもれても、ちたらお陀仏おだぶつ
畑の祭 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
なぜわしのぶんも米や青物をとっておかなかったかともうしますと、ことしの三がつの十日にあなたが見廻りにこられることがわかっていましたから、それまでにぜひとも壊血病くずれになるつもりで、ちた海鴨とロッペンの卵のほかは喰うまいとかくごをきめたのでございます。
海豹島 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
五百の姉安をめとった長尾宗右衛門は、兄の歿した跡をいでから、終日手杯てさかずきかず、塗物問屋ぬりものどいやの帳場は番頭に任せて顧みなかった。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
ノッケから読者を旋風に巻込むような奇想天来に有繋さすがの翁も磁石に吸寄せられる鉄のように喰入って巻をく事が出来ず
露伴の出世咄 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
校長先生いうのんは、随意科の方に英語ありまして、それせてなさるのんやそうですけど、学士でも何でもあれしませんし、何処の学校出られたのんか、学歴やかいもろくろくないらしい人やのんです。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「やっぱりあたしが不注意やってんなあ。電話かけたりする時に何とかあの人に分らんような云い方もあってんけど、まさか子供にせたりするとは思てえへんよってに、………」
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
地丸左陣は静かに進み、定めの席へ端座すると、グイとめず相手を見たが、五分の隙もない構えである。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
小酒井さんは場所慣れた人であり、何人にもめない人であり、どのような環境にも融合することの出来る人でした。
小酒井さんのことども (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
処へ宗八、丸官閣下お使者といたし、車を一散に乗着けまして、隣家の豆屋の女房立会い、戸を押開いて見ましたれば、いや、はや、何とも悪食あくじきがないたいた様子、お望みの猿は血を吐いてち果てておりましたに毛頭相違ござりません。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
はい。昨年の五月頃だと覚えて居ります。十羽ほどの鶏を籠に入れて、売りに来た者がありまして、雌鶏めんどり雄鶏おんどりのひとつがいを買いましたが、雌鶏の方は夏の末にちてしまいまして、おすの方だけが残りました。
半七捕物帳:51 大森の鶏 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
岸をトンとすと、屋形船は軽く出た。
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
岸をトンとすと、屋形船やかたぶねは軽く出た。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
……浪がうっすりと裾を慕って、渚の砂が千鳥にあしあとをして行く。
露萩 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
流寄ながれよった形が判でした如く、皆三方から三ツにかたまって、水を三角形に区切った、あたりは広く
三尺角 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
先に駈け出していた池田三助が扉をして、階上に呶鳴った。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
旗岡巡査は、暗い窓口から内へ顔を退くと、跫音しずかに運んで、一室のドアを、そっとした。
旗岡巡査 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
去年去られし時、かの家に属するものをばことごとく送りしも、ひとりこれのみしみて手離すに忍びざりき。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
その時私はます/\「こりゃ好い女を見付けた。此の先きどうか自分の持物にして、モデルにもしたい。」と腹で考えた。そう思うと尚お女がしくなって、一層声を和げてすかすように、
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
と、片里はかたわらからしえるように、
艶容万年若衆 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
孤軒老師のしえからして思い到った雪之丞、広海屋の顔いろが、すさまじく変って来るのを見きわめると
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
ぐらきかげにわれを招ぐもあだなれや。
雨瀟瀟 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
ここに天皇詔りたまはく、「奴や、おのが家を、天皇おほきみ御舍みあらかに似せて造れり」とのりたまひて、すなはち人を遣して、その家を燒かしめたまふ時に、その大縣主、かしこみて、稽首のみ白さく、「奴にあれば、奴ながらさとらずて、過ち作れるが、いと畏きこと」とまをしき。
ここにその國主こにきし一二かしこみてまをしてまをさく、「今よ後、天皇おほきみの命のまにまに、御馬甘みまかひとして、年のに船めて船腹さず、柂檝さをかぢ乾さず、天地のむた、退しぞきなく仕へまつらむ」とまをしき。
白馬が尊ばるる理由は、多般だがその一を述べると、明の張芹の『備辺録』に、兵部尚書ひょうぶしょうしょ斉泰の白馬極めて駿し、靖難せいなんの役この馬人の目に立つとて墨を塗って遁げたが、馬の汗で墨がちて露顕し捕われたとある通り、白馬は至って人眼を惹く。
四階の屋根裏には、エリスはまだねずとぼしく、烱然けいぜんたる一星の火、暗き空にすかせば、明かに見ゆるが、降りしきる鷺の如き雪片に、たちまち掩はれ、乍ちまた顕れて、風にもてあそばるゝに似たり。
舞姫 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
あなたは私が呼んだあの最初の晩、私を困らせたでせう。あれ以來私は殆んどあなたを忘れてゐた。他の考が私の頭の中からあなたのことをひのけてゐたのです。だが今夜は、私は氣樂になつて、心にしつこく迫つてくるものを退けて、心を愉快にする想ひを呼び返さうと決心したのです。
水戸の今の殿様は、結城ゆうきから入ったいねというのを御寵愛になるげなが、この女子おなごは、昼はおすべらかしにうちかけという御殿風、夜になるとつぶし島田に赤い手絡てがら浴衣ゆかたがけといういきな姿でお寝間入りをなさるそうな。
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
うつそを麻績おみおおきみ海人なれや伊良胡の島の玉藻刈り
中世の文学伝統 (新字新仮名) / 風巻景次郎(著)
足を蹈み、さきふ声が、耳もとまで近づいて来た。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
ここにその熊曾建白さく、「信にしからむ。西の方に吾二人をきては、たけこはき人無し。然れども大倭おほやまとの國に、吾二人にましてたけき男はいましけり。ここを以ちて吾、御名を獻らむ。今よ後一一倭建やまとたけるの御子一二と稱へまをさむ」とまをしき。
ここに天皇見けたまひて、問はしめたまはく、「このやまとの國に、あれきてまた君は無きを。今誰人かかくて行く」と問はしめたまひしかば、すなはち答へまをせるさまも、天皇のみことの如くなりき。
富の勢力は槍先功名やりさきのこうみょうまでもかせり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
この神聖なる疾にかされる時、あるいはその少し前に、ドストイェフスキーは普通の人が大音楽を聞いて始めていたり得るような一種微妙の快感に支配されたそうである。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「年頃になつたから、家内を持たせる。年頃になつたから、片付けてやる。……それでよいのぢや。……生れようと思うて、生れるものはないし、死なうと思うて死ぬものもまア滅多にないのとなしことぢや。婚禮だけが本人の承知不承知を喧ましく言ふにも當るまい。親の決めたものと、默つて一所になつてたらえゝのぢや、他力本願たりきほんぐわんでなア。」と
ごりがん (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
蝮蛇のうちにも毒質のおいのとすくないのがありましてアルコールや焼酎へ漬けた時肉の縮まるのは良いし肉のゆるむのは悪いと申します。猪の肉にも一々検査したら毒質の違いがありましょうけれども何にしろ寒くない時と鮮しい肉は決して食べるものでありません」小山の妻君「そういうものですかね、私は猪でも雉子きじでも鮮しいほど好いと思っておりました。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
何事かをこらへたやうな顏をして入つて來るのを認めるであらう!……
嘘をつく日 (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
と言葉せわしく尋ねました。娘はどこまでも真面目まじめいて返事を致しました——
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
春分を以て交わる、とも二歳でく交われど、二歳以上で交わる方強い駒を産む、牡は三十三歳まで生殖力あり、かつて四十まで種馬役を勤めた馬あったが、老いては人に助けられて前体を起した。
器に盛り遠く無人処にくべしと。
五月といへば、此處北海の浦々でさへ、日は暖かに、風も柔らいで、降る雨は春の雨、濡れて喜ぶ燕の歌は聞えずとも、梅桃櫻ひと時に、花をかぬ枝もなく、家に居る人も、晴衣して花の下行く子も、おしなべて老も若きも、花の香に醉ひ
漂泊 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
今にして思へば政海の波浪はおのづから高く自からひくく、虚名を貪り俗情にはるゝの人にはさをつかひ、かいを用ゆるのおもしろみあるべきも、わが如く一片の頑骨に動止を制し能はざるものゝ漂ふべきところならず。
三日幻境 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
欧米には花言葉というものがあって、なにがしの花と某の花とを一緒にくれば「あなたを愛する」という意味になり某の花と某の花とを一緒に送くれば「私を愛して下さい」という意味になるとか、その他花と花との組み合わせによって自分の意志を先方に伝えることが出来るようになっているそうですね。
雑草一束 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「甚助。まきろして来やい」
剣の四君子:03 林崎甚助 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ッ様。ちょ……ちょっと、それは違いますだ」
(新字新仮名) / 吉川英治(著)
る、宮は行き行きて生茂おひしげる柳の暗きに分入りたる、入水じゆすいの覚悟にきはまれりと、貫一は必死の声をしぼりてしきりに呼べば、咳入せきいり咳入り数口すうこう咯血かつけつ斑爛はんらんとして地にちたり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
其處そこには海面かいめんよりすうしやくたか白色球燈はくしよくきうとうかゞやき、ふね右舷うげん左舷さげんぼしきところ緑燈りよくとう
斯う云ふ意味に假名遣の發音と相違する點を、もに語原的と外國では申して居るやうであります。
仮名遣意見 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
其で思い合せられるのは、此頃ちょくちょく、からうしの間に、里から見えるこのあたりのに、光り物がしたり、時ならぬ一時颪いっときおろしの凄いうなりが、聞えたりする。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
そのうちに亭主がいて行った銭もなくなりかけるし、女房は弱りきっていた。
世間師 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
なおきを挙げてこれをまがれる(人の上)にけば、すなわち枉れる者なおからん。
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
渠はこの夜の演芸をわりしのち、連日の疲労一時に発して、楽屋の涼しき所に交睫まどろみたりき。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
まっ暗な風が時折り、笠置のいただきからちてくる。そして、容易にうごかないそこの白刃しらはぐように吹いて、ビラ、ビラ、とりんのようにそよぎを闇の中に見せる。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かつら んでもないこと、天下一でも職人は職人ぢや、殿上人や弓取ゆみとりとは一つになるまい。
修禅寺物語 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
厚きしとねの積れる雪と真白き上に、乱畳みだれたためる幾重いくへきぬいろどりを争ひつつ、あでなる姿をこころかずよこたはれるを
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
で、その中から死体を出しますと、もはやかちかちになって全く木で拵えたもののようになって居り、腹などもすっかり引っ込み眼もちてしまって水気は少しもありません。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
やあ! 壁を突通つきとおして紺青こんじょうなみあつて月の輝く如き、表紙のそろつた、背皮に黄金おうごんの文字をした洋綴ようとじ書籍ほん
貴婦人 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
私は義兄に見舞を云おうと思って隣室へ行くと、壁のち、柱の歪んだ部屋の片隅かたすみに小さな蚊帳がられて、そこに彼は寝ていた。
廃墟から (新字新仮名) / 原民喜(著)
それとも釜の仕込みか叩きの工合いか、ともかく、伝来の味がぐっとちてお江戸名物が一つ減ったとは
それは年若い婦人が五階の窓から敷石の上へ墜落ちて惨死したという報知しらせであった。
緑衣の女 (新字新仮名) / 松本泰(著)
「ほうお、爺様もわずらったのがね。俺もこれ、このっき孫、嫁にやってがら、こうして床に就いたきりで……」とお婆さんは眼を閉じた。
蜜柑 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
ごらんの通りな山家やまがのこと、何もおかまいはできませぬが、雪の夜の馳走には、しずから富者貴顕にいたるまで、火にまさる馳走はないかとぞんじまして、このように、焚火たきびの支度だけは沢山にしておきました。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
岩下或は渓間に一小屋せうおくを構臼を長柄杵ながえぎね(大坂踏杵ふみきね也)を設け、人のふむべき処にくぼみをなして屋外に出す。泉落て凹処降る故、たちまち水こぼる。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
「その長さ谿たに八谷やたに八尾やおをわたりて」は、そのままにして解釈はいらない。
神話と地球物理学 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
パチ——と一せきいて、かまきりが、横を向き、
魚紋 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
駅路えきろのさざめきもひなびておもしろく、うさるさの旅人すがた。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「馬の大きさはけしからず候。男もけしからず大きく候。上方衆(日本軍のこと)もけしからずじ入り候也」とある。
碧蹄館の戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
すみのような長い廊下を途中で曲がって小さい灯が一ツ風にじながらおどおど奥へすすんで行く。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さてこの意識の内容を紙へ写す際には好は好、は悪で判然と明暸に意識された事でありますから、勢い悪の方すなわちきらいな事、いやなもの、は避けるようになるか、もしくはこれを叙述するにしても嫌いなように写します。
創作家の態度 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「畜生奴! すっかりぢて了やがつた。」
眠い一日 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
男は漸く我にかへりて、おどろける目をみひらき、
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
或拗枝妄抛 或はえだりてみだりになげす
向嶋 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
今や平民主義の運動は火のごとく、いなずまのごとく地球の表面を快奔雄走し、しかしてかの生産境遇の必要は人民を駆り、社会を駆り、いかなる人類をもいかなる国体をもことごとくこれを平民的の世界にさんとす。
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
——高氏は水を浴びたように立ちすくんだ。誰か自分へ近づこうとこころみた者があるにちがいない。南無三、逃げてくれ、逃げおせてくれと、彼は祈った。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
欣々女史も鏡花会にはいって、仲間入りの記念しるしにと、帯地おびじとおなじにらせた裂地きれじでネクタイを造られた贈りものがあったのを、幹事の一人が嬉しがって、
江木欣々女史 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
「しツ! かつしやい。馬鹿言ふぢやない。お前がたの今言つてたやうな事が、あの若旦那の耳へ入りでもしたら、」と、その隣に並んで同じ労働しごとに従事してゐた三番目の男が、前の二人をたしなめるやうに言つて、その会話に加つた。
新らしき祖先 (新字旧仮名) / 相馬泰三(著)
倫理の矢にあたつてちる倫理の小禽ことり。風景の上に忍耐されるそのフラット・スピン!
測量船 (新字旧仮名) / 三好達治(著)
と、つかれてきたはねにバサバサとちからめて、ひつかうとするけれど、ラランのやつはさつさとさきびながら、いたもので、
火を喰つた鴉 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)
——(ようゆう)ですね、老婆ばばあは、今度は竹箆を口にくわえて、片手で瓶のふたおさえ、片手で「封」という紙きれを、蓋の合せ目へしながら、ニヤリとしている。
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
福建の将楽県に蛟窟あり、相伝う昔小児あり渓傍の巨螺を見て拾い帰り、地に穴し瀦水ちょすいしてこれを蓄え、いまだ日をえざるにその地横についえ水勢洶々きょうきょうたり
わが方丈の一室もようやく工をえ、この日はじめて諸友をここに会した。
左千夫先生への追憶 (新字新仮名) / 石原純(著)
彩管さいかんうてしょくの国にり、嘉陵江水かりょうこうすいを写し、転じて巫山巫峡ふざんふきょうを越え、揚子江を逆航ぎゃっこうして奇勝名勝を探り得て帰り
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
清三の家では、その日父親が古河こがに行ってまだ帰って来なかったので、母親は一人でさびしそうに入り口にうずくまって、がらを集めて形ばかりの迎え火をした。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
ところが、三度目には、ひょうッと矢うなりがして、まさしく一本の矢が飛んできた。そしてその矢は、関羽のかぶとを、ぷつんと、見事に射止めていた。
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わたしは、このちいさなをいじめるのではありません。つよく、つよく、つよくならなければ、どうしてこの曠野こうやなかでこのちましょう。そうするにはわたしが、を、つよくするようにきたえなければならないのです。」
明るき世界へ (新字新仮名) / 小川未明(著)
れば、馬琴の八房は玉梓の後身たること、仏説につて因果の理を示すものなること明瞭なり、しかして、この八房をして伏姫をひ去るに至らしめたる原因は何ぞと問ふに、事成る時は、伏姫の婿むこにせんと言ひたる義実の一言なり。
戸塚はびえたように足の下の火の海を見た。中野学士がそう云う戸塚の顔を振返って冷然と笑った。白い歯並がやみに光った。
オンチ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
大勇猛心を振りこし、幸い手もとに残っている陰陽秘伝一巻を、朝昼夜に読みけり、人の一念岩をも通す、十二の春に意味をさとり、十四の秋に祈祷きとうを覚え、十五の夏に蘊奥うんおうを極め、今年十九の四年間を諸国を巡って暮らしたが
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「ここは、徳川代々の廟所びょうしょじゃないか。このおごり誇った霊廟の金碧こんぺきを見ろ。おそれ多いご比較ではあるが、吉野の御陵ごりょうには、雑草が離々りりいて、ここの何分の一の御築石みきずきもない——けがれもくそもあるものか、俺は、斬る」
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これあ道理じゃと思って、菊ばかりじゃない、胚子たねろすもの刈るもの
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
仲達軍の先鋒に大将としてされた者は、河南の張郃ちょうこう、あざなは雋義しゅんぎ、これは仲達から特に帝へ直奏して、
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そちは終日たふに坐して、文を手よりかじと心掛くべし。
名利みやうりの外に身をけば、おのづから嫉妬の念も起らず、憎惡ぞうをの情もきざさず、山も川も木も草も、愛らしき垂髫うなゐも、みにくき老婆も、我れに惠む者も、我れを賤しむ者も、我れには等しく可愛らしく覺えぬ。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
「岩の上に彼の僧侶の仮装を残してな」とブラウンはぎなった。
かつら んでもないこと、天下一でも職人は職人じゃ、殿上人や弓取りとは一つになるまい。
修禅寺物語 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
そのことばわらざるに、車は凸凹路でこぼこみちを踏みて、がたくりんとつまずきぬ。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
が、かしい事には、誰一人として、主役を買って出た、彼の演技に触れるものはなかったのである。所が、次の話題に持ち出されたのは、いまの幕に、法水が不思議な台詞せりふを口にした事であった。
オフェリヤ殺し (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
白川をここまでびきよせておいて、ついと引つ離してしまつては彼の立場は全然失はれるであらう。
瘢痕 (新字旧仮名) / 平出修(著)
おお栗樹カスタネア 花ちし
春と修羅 第二集 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
巻中の香以の影画にはかみに引いた「針持つて」の句の短冊がしてある。
細木香以 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
当時近代音楽の勃興ぼっこう時代で、真物ほんもの偽物にせものも、ひたむきに新奇をうてやまなかった時、ブラームスは雄大、厳重、素朴、敬虔けいけんな古典精神にかえり、ひたむきに「絶対音楽の聖地せいち恢復かいふく」の理想に突進したのである。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
つなぎ烽火というのは、一里き二里距きに備えてあるのろし筒が、次々と轟煙ごうえんを移して甲府の本城へと、
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
死は必らず、生をうて来る。
膝にきたる骨太の掌指ゆびは枯れたる松枝まつがえごとき岩畳作りにありながら、一本ごとに其さへも戦〻わな/\顫へて一心に唯上人の一言を一期いちごの大事と待つ笑止さ。
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
水草をうて自在に移るという時代には、それが南下して支那とたびたび衝突する。
三たび東方の平和を論ず (新字新仮名) / 大隈重信(著)
では、もし、挙国一致、婦人が髪を切って弓弦として、国難に赴く如き態勢を、時期にくれずに採用したならば、せいぜい擡頭期に於けるローマ如きにああもミジメに亡ぼされなかったであろう。
世界の裏 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
さらにそれを貫いて進むと、ついに漠然たる生活に充ちた、波瀾重畳のちかたに没してしまう。
神童 (新字新仮名) / パウル・トーマス・マン(著)
天文五年十一月、武田信虎八千を率い信濃海口城を襲ったが城の大将平賀源心よく防いで容易に陥落ちない。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
女将も評判のキンキン声であったが、きょうは何となくびえている様子……。
冗談に殺す (新字新仮名) / 夢野久作(著)
其をごけにつなぎためて行く。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
放心うつかりしてたもんだからにやあねえで、れかうえに怪我けがしつちやつたな、いま蒔物まきものいそがしいところんで
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)