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陥
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お
ふりがな文庫
“
陥
(
お
)” の例文
旧字:
陷
それより目がどんよりと
陥
(
お
)
ち込んで、ちからのない
弛
(
ゆる
)
みを帯びていること、ものを正視するに余りに弱くなっていることに感づいた。
蛾
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
その手紙によると、あなたは彼女と恋に
陥
(
お
)
ちた時に、不倫の思い出の何もかも打ち明けてしまわなければならなかったというのです。
世界怪談名作集:12 幻の人力車
(新字新仮名)
/
ラデャード・キプリング
(著)
もちの木坂に足場をかためて、待ちもうけていた敵の重囲の中核に
陥
(
お
)
ちつつ、法月弦之丞がことさらに悠々と腰をかけたのもその心。
鳴門秘帖:03 木曾の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
俄然
(
がぜん
)
鉱山の敷地が陥落をはじめて、建物も人も恐ろしい
勢
(
いきおい
)
を
以
(
もっ
)
て
瞬
(
またた
)
く間に総崩れに
陥
(
お
)
ち込んでしまった、ということが書いてある。
謀叛論(草稿)
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
墨を流した空の下に、怪物のような
巨濤
(
なみ
)
が起伏して、その大穴へ船が
陥
(
お
)
ちこんでゆくときは、今にも一呑みにされるかと思われた。
ラ・ベル・フィユ号の奇妙な航海
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
▼ もっと見る
抜け荷の取引を済ませて帰ってきた弾三郎は、一杯機嫌で桟橋へかかると、首尾よく茂野の仕掛けた
罠
(
わな
)
に
陥
(
お
)
ちて、板を踏み外した。
銭形平次捕物控:139 父の遺書
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
この間を縫うて四人は一歩一歩
辿
(
たど
)
った。ちょうど中頃の最も崩壊の甚だしい処に至ると、
頭上
(
とうじょう
)
唸
(
うな
)
りを生じて一大石塊が地に
陥
(
お
)
ちた。
本州横断 痛快徒歩旅行
(新字新仮名)
/
押川春浪
、
井沢衣水
(著)
あのひとがほんとうに間者であったといたしましたら、死に際に臨んであんなに迷いのふかい気もちに
陥
(
お
)
ちこまれるわけはございません。
蜜柑の皮
(新字新仮名)
/
尾崎士郎
(著)
橋桁
(
はしけた
)
の
陥
(
お
)
っこった土橋、水が
涸
(
か
)
れて河床の浮きあがった小川や、
畦道
(
あぜみち
)
は霜に崩れて、下駄の歯に
絡
(
か
)
らんでひどく歩きにくかった。
冬枯れ
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
彼のいま
陥
(
お
)
ち
込
(
こ
)
んでいる異様な心的興奮が何かそんな考えを今までの彼の安逸さを根こそぎにする程にまで強力なものにさせたのだった。
菜穂子
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
慌
(
あわ
)
てていたこととて、思わず眼下の暗黒のなかに、くらくらっと
陥
(
お
)
ちかけたとき、足もとの階段が、独りでに、すうっと降りだしました。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
半五「へい成程、あゝ悪いことを云った、そんな事とは知らず
迂濶
(
うっかり
)
といったが、旦那お
前
(
めえ
)
さん
行
(
ゆ
)
けば見す/\
穽穴
(
おとしあな
)
へ
陥
(
お
)
ちるので」
松の操美人の生埋:02 侠骨今に馨く賊胆猶お腥し
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「でも、また半面には熱情家でもあったんですの。だからこそ宮本夫人ともああした関係に
陥
(
お
)
ちたんではございますまいか?」
情鬼
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
運命なのか、地面へ飛び下りるつもりの彼女は、丁度その
坑
(
あな
)
へどんと
俯伏
(
うつぶ
)
せに
陥
(
お
)
ちこんだ時、
如何
(
どう
)
とも全力が尽きてしまった。
ある遊郭での出来事:公娼存廃論者への参考資料としての実例
(新字新仮名)
/
若杉鳥子
(著)
何しろ深い
谿間
(
たにあい
)
のじめじめした
処
(
ところ
)
だから、ずるずる止め度もなく、
辷
(
すべ
)
って、到頭深い
洞穴
(
あな
)
のなかへ
陥
(
お
)
ちてしまったもんですよ。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
彼は暫時の間、茫然として、部長の顔を
凝視
(
みつ
)
めて居た。やがて、彼の眼には
陥穽
(
かんせい
)
に
陥
(
お
)
ちた野獣の恐怖と
憤怒
(
ふんど
)
が燃えた。(完)
奥間巡査
(新字旧仮名)
/
池宮城積宝
(著)
「危険な深淵! そうです。貴君のお兄さんが、誤って陥った深淵へ貴君までが、同じように
陥
(
お
)
ちようとしているのです。」
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
何でも上州辺のある沼に鯰をうんと飼つてゐた、それが
洪水
(
おほみづ
)
に押し流されて、河に
陥
(
お
)
ち込んだのが、流れ流れて両国川に入つて来たのだといふ事だ。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
彼はそれから一歩一歩と、無限の地獄に
陥
(
お
)
ち込むような怖ろしい思いを繰り返しながら、石の階段を登って行った。
白菊
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
外では夜に入るとともに豪雨にひどい
嵐
(
あらし
)
が吹き添って来たと思われて、よっぴて荒れ狂うていたが、私はそれとは反対にかえって安らかに眠りに
陥
(
お
)
ちた。
狂乱
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
案外もろく父もそこに
陥
(
お
)
ちいらぬとも限らない。陥ちいってくれることを自分は父に望むのか。それを望むよりほか二人の生きて行く道はないのか……。
渾沌未分
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
そうしてその時期にめぐり合せた俊才たちは、きまって憂鬱になるのだ。著しかった精神活動の時期を回顧して、だん/\深い憂鬱に
陥
(
お
)
ちこんで行くのだ。
闘争
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
高次郎氏が看守長となった年の秋、
漢口
(
かんこう
)
が
陥
(
お
)
ちた。その日夕暮食事をしていると長男が突然外から帰って来て
睡蓮
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
丁度
(
ちょうど
)
、サイパンが
陥
(
お
)
ちた直後で、どうせ私達は南方の
玉砕
(
ぎょくさい
)
部隊だと、班長たちから言われていた時で——
桜島
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
ところが、背後は池の半分
跳
(
は
)
ね出しだから、池の中へ群衆はひと溜まりもなく
陥
(
お
)
ち込んでしまった。
幕末維新懐古談:42 熊手を拵えて売ったはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
と見る……ああ、なんという大凄観! とつぜん、目前一帯の地がずずっと
陥
(
お
)
ちはじめたのである。
人外魔境:01 有尾人
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
ほんとうに空のところどころマイナスの太陽ともいうように
暗
(
くら
)
く
藍
(
あい
)
や黄金や
緑
(
みどり
)
や
灰
(
はい
)
いろに光り空から
陥
(
お
)
ちこんだようになり
誰
(
だれ
)
も
敲
(
たた
)
かないのにちからいっぱい鳴っている
インドラの網
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
なぜならば、山本正雄の語った言葉、そして更に語ろうとした言葉は地獄からでなければ聞き得ず、また地獄に
陥
(
お
)
ちなければ語り得なかった事実であったであろうから。
黄昏の告白
(新字新仮名)
/
浜尾四郎
(著)
鼻と尖つた頤とのあひだへすつかり
陥
(
お
)
ちこんで、絶えず毒々しい薄笑ひを浮かべてゐる口許、火のやうにキラキラ光る金壺まなこ、かはるがはる始終その顔にあらはれる
ディカーニカ近郷夜話 前篇:03 ソロチンツイの定期市
(新字旧仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
それ
驕
(
おごり
)
をもて治めたる世は、
往古
(
いにしへ
)
より久しきを見ず。人の守るべきは倹約なれども、
一五二
過ぐるものは
卑吝
(
ひりん
)
に
陥
(
お
)
つる。されば倹約と卑吝の
境
(
さかひ
)
よくわきまへて
務
(
つと
)
むべき物にこそ。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
娘子
(
じょうし
)
軍をひきつれて若紫は、
陥
(
お
)
ちたばかりの町へすぐさま乗りこんで行ったのだ。その若紫に会ったのは、俺がピーを買いに行ったからだが、そこんところをちょっと言うと——。
いやな感じ
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
唯、
或
(
ある
)
ものに囚われての作はどこまでも窮屈である。また、理窟に
陥
(
お
)
ちていい作品は出来ない。客観写生より進んで行った作品は何らの拘束がない、そうして自然と共に自由である。
俳句への道
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
疳
(
かん
)
にうち
顫
(
ふる
)
う
皓
(
しろ
)
い
歯列
(
はならび
)
は、いつしか唇を噛み破って真赤な血に染み、軟かな頭髪は指先で激しぐかき
毮
(
むし
)
られて
蓬
(
よもぎ
)
のように乱れ、そのすさまじい形相は地獄に
陥
(
お
)
ちた幽鬼のように見えた。
ヒルミ夫人の冷蔵鞄
(新字新仮名)
/
海野十三
、
丘丘十郎
(著)
戦時中は兵隊にひき出されて南方へ行き、終戦になつて帰還して見ると親兄弟も女房子も行方が
判
(
わか
)
らず、更に手がゝりがなく、遂に現在のやうな境遇に自然に
陥
(
お
)
ちこんだといふのである。
老残
(新字旧仮名)
/
宮地嘉六
(著)
谷多き地を旅するに駱駝谷底に
陥
(
お
)
ちて荷物散乱するを防ぐため、谷に遭うごと駱駝の荷を卸し、まず駱駝を次に荷物を渡してまた負わせ、多少行きて谷に逢いてまたかくする事
度重
(
たびかさ
)
ねる内
十二支考:05 馬に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
祖父の墓石には苔が生えたであろうと心配し、庭の黄菊に
錆
(
さび
)
がはいったにちがいないと思いなやんだ。文字通り、風の夜、雪の日には、何べんとなく思いに
陥
(
お
)
ちて涙をこぼした郷里であった。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
私はその中にまじつて、こはれ掛つた椅子にもたれて、アスピリンで微熱を下げながら、自分の運命のやうに窮地に
陥
(
お
)
ちた王将が、命からがら逃げ出すのを、しよんぼり悲しんでゐたのだつた。
聴雨
(新字旧仮名)
/
織田作之助
(著)
苺
(
いちご
)
のように点々と毛穴が見え、その鼻が顔の他の部分と何の連絡もなく
突兀
(
とっこつ
)
と顔の真中につき出しており、どんぐりまなこが深く
陥
(
お
)
ち込んだ上を、誠に太く黒い眉が余りにも眼とくっ附き過ぎて
狼疾記
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
すでに太宰府はきのうのうちに
陥
(
お
)
ちており、
少弐妙恵
(
しょうにみょうけい
)
入道以下、あえなく、内山の城で自害し終ッていたということを——である。
私本太平記:11 筑紫帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
恐ろしい不名誉と
陥
(
お
)
ちかかった貧苦の淵から救い、その代償として、——誠に
怪
(
け
)
しからぬことですが、お嬢さんの志津子さんを迎え容れ
奇談クラブ〔戦後版〕:01 第四の場合
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
あたらしく恋愛に
陥
(
お
)
ち、日本で結婚式を挙げるために、オランダからアメリカの貨物船に乗って帰ってくるという通報が入った。
叛骨・中野正剛:――主観的な覚え書き
(新字新仮名)
/
尾崎士郎
(著)
男が彼女のこゝへ
陥
(
お
)
ちて来た径路などを聞かうとして、色々話しかけると、若い癖にそんなことは聞かなくともいゝと言つた風で、笑つてゐた。
或売笑婦の話
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
私は病院の助手をやっていたが、恰度その頃、或る婦人と恋に
陥
(
お
)
ちました。私としてはこれが後にも
前
(
さき
)
にもたった一度の、そして熱烈な恋でした。
麻酔剤
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
ズルリズルリと下がって来るうちに、見る見る綱が詰まって来てポチャンポチャンと海へ
陥
(
お
)
ち込む。そのまま
爆弾太平記
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
雨はいよいよ
繁
(
しげ
)
く、
悒
(
いぶ
)
せさは二人にとって何か突然な出来事の期待をかけるほど、
陰鬱
(
いんうつ
)
に
陥
(
お
)
ち入らせた。
姫たちばな
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
前に横たえてある棒をしっかり
握
(
にぎ
)
っているうち、車は
滑
(
すべ
)
りだし、深い穴のなかに
陥
(
お
)
ちてゆきます。再び、登りだしたときは、背も
反
(
そ
)
るような急角度の
勾配
(
こうばい
)
でした。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
皆が有頂天になつて騒ぎ立つてゐる一刹那、どうした
機
(
はづ
)
みか氷はばり/\と音を立てて割れた。そして四人が四人とも、その割れ目に
陥
(
お
)
ち込んで死んでしまつた。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
「木曜日にワルシャワ
陥
(
お
)
つべし」と書いてあった。何週の木曜日だか、正確な時日はわからなかったが、それが、ワルシャワの市街を、ほのかに運命づけたようにみえた。
勲章を貰う話
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
氏はあまりねつきのいい方でないので眠りに
陥
(
お
)
ちたのは二時頃だろうということであった。
黄昏の告白
(新字新仮名)
/
浜尾四郎
(著)
ここを出て地獄茶屋でひと休み
息
(
やす
)
んでいると、
只事
(
ただごと
)
ならぬ叫び声が聞える。スワ何事の
出来
(
しゅったい
)
と、四人一度に飛び出す。見れば一頭の
悍馬
(
かんば
)
谷川へ
陥
(
お
)
ちて今や押し流されんず有様。
本州横断 痛快徒歩旅行
(新字新仮名)
/
押川春浪
、
井沢衣水
(著)
陥
常用漢字
中学
部首:⾩
10画
“陥”を含む語句
陥落
陥没
陥穽
欠陥
陥入
陥阱
陥込
陥欠
陥擠
陥滅
陥穴
陥穿
陥溺
陥没地震
陥没地
陥窪
陥殺
陥羂
陥隔
陥擠山
...