“瞬”のいろいろな読み方と例文
読み方(ふりがな)割合
またた46.6%
またゝ10.6%
まばた10.6%
またたき7.1%
まばたき4.7%
しゆん3.5%
とき2.9%
しばたた2.7%
しゅん1.8%
またゝき1.6%
(他:36)7.9%
(注)作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
閉め込んだ部屋のなかには春の夜の生あたゝかい空氣が重く沈んで、陰つたやうな行燈の灯はまたたきもせずに母子おやこの枕もとを見つめてゐた。
半七捕物帳:01 お文の魂 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
空は高く晴れ、数限りもない星がチラチラとまたたき、ちょうど頭の上に十八九日ごろの月が、紙片かみきれでも懸けたように不愛相に照っていた。
六月 (新字新仮名) / 相馬泰三(著)
ブラックバードの後を目送しながら、「飛ぶ」に相当する動詞を案じていた辰男は、どんよりした目をまたたきさせた。すぐには返事ができなかった。
入江のほとり (新字新仮名) / 正宗白鳥(著)
またゝくひまに街の兩側に避けたる人の黒山の如くなる間を、兩脇より血を流し、たてがみそよぎ、口よりあわ出でたる馬は馳せ來たり。
教場で背後から何ほど鉛筆で頸筋くびすぢを突つつかれようと、靴先でかゝとられようと、眉毛一本動かさずまたゝき一つしなかつた。
途上 (新字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
銀色ぎんしよくかひのまゝかさねた鹽蒸しほむしさかなに、相對あひたいして、そのときは、ひなまたゝくか
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
まず『本草綱目』に『礼記』に兎を明眎めいしといったはその目まばたかずに瞭然たればなりとあるは事実だが兎に脾臓なしとあるは実際どうだか。
それがかすかに揺いで、ふと二つ三つまばたきをしたかと思うまに、彼女はいきなり両の手でハンカチを顔に押し当てて、そばめてる肩を震わした。
野ざらし (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
父はえる腹をこらえ手を握ってさとすのである。おとよはまばたきもせずひざの手を見つめたまま黙っている。父はもうたまりかねた。
春の潮 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
けれども三人はまたたき一つず、身動き一つ出来ず、只黒光りする鉄の死骸の、虚空を掴んだ恐ろしい姿を、穴の明く程見つめて立っていました。
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
うながすように言いかけられて、ハタと行詰ゆきつまったらしく、ステッキをコツコツとまたたきひとツ、唇を引緊ひきしめた。
春昼後刻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と、片頬夕日にまぶしそう、ふくれた片頬は色の悪さ、あおざめてあいのよう、銀色のどろりとした目、またたきをしながら呼んだ。
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
黙ってまばたきでうなずいた目が消えると、たちまち井戸端へ飛んだと思う、総長屋の桝形形ますがたなりの空地へ水輪なりにキャキャと声が響いた。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
満場の人影が残らず消え失せてしまった後までもまだ揃って頬を硬ばらせたまままばたき一つせず、身動き一つしないまま一心に真紅の幕を凝視していた。
二重心臓 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
万田龍之助は、お染を振り返って「安心して待っておいで」と言わぬばかりのまばたきをして見せ、男に従って、元来た小路を戻りました。
大江戸黄金狂 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
伊勢屋新兵衞の顏には、一しゆん躊躇ちうちよの色が浮びましたが、思ひ定めた樣子でくわんの側に近づくと、暫く物も言はずに突つ立つて居りました。
壇に吸ひ付けられた六百の眼は、暫らくは氷の如く凝つと靜まりましたが、次の一しゆん忽然としてそれが恐ろしい動搖に變つたのです。
頬冠りの男の辭色は、一しゆんはげしくなりましたが、ハツと氣のついた樣子で、元の靜かな絶望的にさへ見える態度に變ります。
甘いすすり泣きに一ときしいんとなったかと思うと、あまりにも早いうちに、ろうのどこかで衆僧の呼ぶ声がここの男女ふたりを驚かせた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
廓内かくないは、一ときのまに、大騒動となり、かえりみれば、月の夜空は、火の粉をちりばめ、どこかでは早や、軍隊がうごいている。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
無事、無為に、赤穂の片田舎に、暮してしまえば、こういうめた生涯しょうがいの一ときは、思えばなかった筈である。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
正覚坊しょうかくぼうも、平助の言葉がわかったかのようにうなだれてしまいました。涙をこぼすまいとつとめているように眼をしばたたきました。
正覚坊 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
真箇ほんとに何時も/\先生に許り御迷惑をかけて。』と言つて、うるみをつた大きい眼を気毒相にしばたたく。左の手にはまだ封も切らぬ手紙を持つてゐた。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
「いや、元来わしは、そういう哲学問答が不得意でしてな」と警戒気味に、博士は眼をしばたたいて法水を見た。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
その一しゅんだ。富田六段の右の手が、さっとひらめくように動いたと見ると、モンクスのみ出した足首をさっとすくい上げた。
柔道と拳闘の転がり試合 (新字新仮名) / 富田常雄(著)
無言。眼と眼がガッチリ合って、火花を散らしそう——危機をはらんで、今にも激発しそうな沈黙が、一しゅん、また二瞬——。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
明滅めいめつの一しゅん、十字架のうしろにかくれていたおぼろげなかげは、たしかに怪人、和田呂宋兵衛わだるそんべえ
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
千年ちとせに亙らむや、しかも千年を永劫に較ぶればその間の短きこと一のまたゝきをいとおそくめぐる天に較ぶるより甚し 一〇六—
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
三千代みちよかほげた。代助は、突然とつぜん例のみとめて、思はずまたゝきを一つした。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
八方はつぱうくばつても、またゝきをすれば、ひとせ、はなをかめばふた
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そうして上げて、貴方あなた、そうして上げて頂戴ちょうだい! と、私の方を向いている妻の眼が、しばたいている。
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
彼女は唇を絶えずしめし、眼を異様にしばたたいて、その高まりゆく情熱から逃れようとしたが、無駄だった。
白蟻 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
そして再び机の前に坐ると、眤と洋燈の火をみつめて、時々気が付いた様に長い睫毛をしばたいてゐた。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
しかし青年は急に返事をしなかった。なおもマジマジと大きなまたたきを続けていたが、やがて何事かを警戒するように恐る恐る問い返した。
霊感! (新字新仮名) / 夢野久作(著)
けれど十六露里ヴェルストの里程標もまたたく間にとおり過ぎてしまったのに、村らしいものはいっこう眼につかなかった。
彼は闇の中でまたたきをした。睡魔—敢えて此の場合「睡魔」と云う—が彼を見捨てようとして、足で彼の肩を蹴ったのだ。
それではどうもお位牌に対しても済まぬから、おれ始終しょっちゅう其が苦になっての……と眼をしばだたかれた時には、私も妙な心持がした。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
つかつかと行懸ゆきかけた与吉は、これを聞くと、あまり自分の素気そっけなかったのに気がついたか、小戻こもどりして真顔まがおで、眼を一ツしばだたいて、
三尺角 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
つか/\と行懸ゆきかけた與吉よきちは、これをくと、あまり自分じぶん素氣そつけなかつたのにがついたか、小戻こもどりして眞顏まがほで、ひとしばだたいて、
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
四里ぐらいの道程みちのりまたたく間に、行きついてしまうに相違ない。
生死卍巴 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
酒や女に徒費するにはそれだけの金額などまたたくく間だ。
現代詩 (新字旧仮名) / 武田麟太郎(著)
またたく、あなただれ、百合のなか、
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
病人は歪んだ顔をして悲しさうに目をしばたゝいたが、それでもすなほに枝に手をかけて柿の木に登つて行つた。
「僕か?」と少年は眠むさうに眼をしばたゝき乍ら、
不思議な船 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
『然うね。』と云つて、智惠子は睫毛の長い眼をしばたゝいてゐたが、『かたじけないわ、私なんかに御相談して下すつて。……あの小母さん、兎も角今のお家の事情を詳しくう言つて上げた方が可かなくつて? 被行いらつしやる方が可いと、まあ私だけは思ふわ。だけどうせ今直ぐとはいかないんですから。』
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
というため息を胸の中に曳いて、まじろぎもせず眺め入っていた。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
藤作はそう云う右衛門の顔をまじろぎもせず見ていたが、
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
逆立った眼で葉之助を見据みすえ、紋兵衛はまじろぎもしなかったが、ようやくホッと溜息をくと、「人違いであった。山吹ではなかった。そうだあなたは葉之助様だ……が、それにしてもあなたのお顔があの山吹に酷似そっくりとは? おお酷似そっくりじゃ酷似じゃ! やっぱりお前は山吹だ! おのれどこからやって来たぞ!」
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
お久はじっと眼を伏せていた。何かに心動かされたとみえて、涙ぐんだらしいめばたきさえしていた。それでも溜息をつくことを忘れなかった。そして云った。
神棚 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
自分は室を出てから、何を皆は話しているのか、なぜまた自分がいてはわるいのか? と思ッたが、なアに、思い込んだのではない、ほんの目の前を横ぎる煙草のけぶりめばたきを一ツしたらすぐ消えてしまッた。
初恋 (新字新仮名) / 矢崎嵯峨の舎(著)
旦那様も笑ってりかえりました。やがて、めばたきをしたり、眼をこすって見たりして、眼鏡を借りようとはなさいません。
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
それまでは数知れぬおそれと気づかわしさとが血管ちくだの中を針の流れるように刺しまわって、小さなめばたきをするにも乳までひびくようでございましたが、あの音が一つ一つ幾重の網を重ねたお山の木の葉からのがれて
道成寺(一幕劇) (新字新仮名) / 郡虎彦(著)
「あの様子では最早もう先が永くは有りますめえ、不吉なことを言うようじゃが……」と倉蔵は眼をしばだたいた。この時老先生の声で
富岡先生 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
駄夫は変にモソモソして、何んだか妙にまじろぎばかり為たいやうな気になりながら、階段に浮かぶ朦朧とした薄暗うすくらがりを吸ひ又吐いて静かな階下したへ降りて来たら……
竹藪の家 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
ト袖を捲いて、扇子おうぎかざし、胸を反らしてじっと仰いだ、美津の瞳は氷れるごとく、またたさもせずみはるとひとしく
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それも船員の服らしく、袖口と襟とに見るもまばゆい、金モールの飾りがついていた。
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
そういう窟屋いわやに住んで居りながら金を沢山拵えることを考えて、己れは隠者という名義をもって財産を集めるところの手段にして居る似非えせ坊主が沢山あるものですから、もしやそういう奴ではあるまいかと案じられてその夜はまんじりとも出来なかった程想像に駆られたです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
彼は、私が部屋を間違えたような風を装って這入って行ったのにもかかわらず、私の顔を見ると、驚きとよろこびとの眼をみはりながら腰を上げた。